やはり俺の界境防衛機関での物語は間違っている   作:つむじ

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彼らは長年の付き合い

木曜日の夜、千葉村行きの前日。

おふくろを除いた5人で夕食をとっている。

基本、我が家の食卓は何故か静かだ。

だが、今日は珍しくその静寂が破られた。

「ねぇ、お兄ちゃん。」

小町によって。

小町は手に持っていたお椀をテーブルに置き俺に話しかけてきた。

「ん、なんだ?味噌汁の味薄かったか?」

「ううん、おいしいよ。じゃなくて、小町、明日からお泊り行くから多分帰ってくるの日曜日になると思うんだけど・・・いいかな?」

日曜日か・・・千葉村に行く期間とかぶってるな。

「いいぞ。実は、俺と操も日曜日まで泊まりがけのバイトがあってな。・・・紅覇と綺凛もなんか用事あったんじゃなかった?」

俺は紅覇と綺凛に目で俺の考えてることを伝える。

通じてるかな・・・。

「あ、そうだった〜。僕も友達の家に泊りに行くんだった〜。」

「私は・・・あ、藍ちゃんと遊びに行ってきます。」

どうやら二人にはちゃんと伝わっていたようだ。

「お〜奇遇だね〜。じゃあ小町は明日の準備してくるね!」

小町はごちそうさまと言い、食べ終えた食器を台所に置き、ドタドタと階段を勢いよく上っていった。

「・・・話に乗ってくれてサンキューな。」

俺はまるで糸の切れた操り人形のように机にグデーとなった。

4人とも同じ期間に泊りがけなんて不自然すぎる話をよく信じたな、小町。

いつバレるかもわからない会話のせいで俺の緊張の糸はピンピンに張っていた。

「よくあんな嘘でバレなかったわね。なによ、2人で泊りがけのバイトって。」

「しょーがねーだろ。とっさに出てきた嘘がそれなんだから。ま、あながち嘘じゃねーけどな。」

なんにせよ、泊りがけのバイトというのは本当なんだ。

嘘、ではないと思う。

「じゃ、僕も明日の準備してくるね〜。」

「私も準備してきます。」

紅覇と綺凛は一緒にごちそうさまと言い、食器を下げ各自の部屋へと戻って行った。

今現在、リビングに残ってるのは俺と操だけ。

「・・・それで、何か私に話があるんでしよ?」

「ああ。実はな・・・迅さん曰く、小町に俺達がボーダー隊員だってことが近々バレるらしい。」

俺は、おふくろから言われたことを操に伝えた。

「なるほどね。で、それを私に言ってどうするの?」

「もしも、小町に説明する時が来たら一緒にしてほしい。俺1人でちゃんと言えるか不安でな。それに、一応お前も小町がボーダー隊員になれないことを知ってるしな。」

俺と操は同期なんだ、当然、結果も知っている。

「・・・わかったわ。話は終わり?」

「ああ。悪かったな、呼び止めて。」

「ホントよ。よくあれで気付いたなって我ながら感心してるんだから。」

俺がどうやって操を呼び止めたか。

答えはこうだ。

俺は、操がイスを引きたとうとした瞬間、操の座っているイスに足を掛け、イスを下がらせないようにしたのだ。

確かに、これだけだったらよく小学生とかが好きな子にするイタズラのように思ってもおかしくなかった。

ホント、よく気付いてくれたな。

「じゃ、私も明日の準備してくるから。」

操はそう言うと食器を片付けないで部屋へと戻って行った。

「・・・長年の付き合いってスゲーな。」

俺は一人、誰に言うわけでもなくポツリと呟き、操の食器と俺の食器を持ち台所に下げ、食器洗いを始めた。

・・・雑用押し付けられたクラスの嫌われ者みたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金曜日の朝、ボーダー本部前。

俺と操、紅覇、綺凛は集合時間より早く集合場所にいる。

小町に怪しまれないようにバラバラの時間に出てきた結果だ。

・・・小町が行った後に家出ればよかった。

俺は後悔し、腕時計を見る。

そろそろ時間か。

俺が時計から顔を上げると、こちらに1人、誰か近づいてくる。

一番乗りは誰かなー?

「お待たせしました、比企谷隊の皆さん。」

時間5分前にちょうど。

きっちりとした性格の持ち主、木虎が来た。

「あ、藍ちゃんおはよう。」

「お、藍じゃ〜ん。おはよ〜。」

「あら藍。おはよ。」

「流石だな。5分前ちょうどって。」

「おはようございます。綺凛ちゃん、練先輩、巻町先輩。」

・・・ナチュラルに俺のこと省くのやめてくれない?

後輩に省かれる先輩の気持ちになって!

屈辱に感じるから。

それか、むなしい気持ちか。

俺は4人で楽しそうに話しているのを尻目にしながら空を見上げ、雲を眺めてると

「ごめんね、遅れちゃったかな?」

綾辻が来た。

「いや、丁度ぐらいだろ。」

俺がそう言うと綾辻は、そっかと言い、俺のそばに荷物を置き操達の方へと向かっていった。

僕、別に荷物番じゃないんですよ?

そんな事を思いながら綾辻の置いてった荷物を俺達の荷物があるところにまで運び、ひとまとめにした。

さて、次は誰が来るのかな?

「あ、おはよう、比企谷くん。」

「お、比企谷、おはよう。」

「おはようさん。那須、くまちゃん。」

那須とくまちゃんがふたり仲良く来た。

朝からアツアツですねー。

怖いくらいね!

「比企谷、あと何人?」

「ん?ああ、あと5人だな。」

「そ、ならさコンビニ行ってきていい?」

「いいぞ。・・・あ、ならあったらでいいんだけどMAXコーヒー買ってきて。」

「いいよ。玲はどうする?」

「私はいいよ、くまちゃん。」

「わかった。じゃ、行ってくるね。」

くまちゃんはそう言うとカバンを俺の足元に置き、その中から財布を抜き取りコンビニへ向かっていった。

「ねぇ比企谷くん。」

「ん?なんだ?」

俺がくまちゃんの背中を目で追いかけてると

「今日ってさ、何するの?」

「さぁ?特に何も言われてねーからわからねーや。」

ほんと、一応俺が代表なんだからスケジュールくらい教えておいてくれよ。

「そっか。・・・あ、桐絵ちゃん来たみたいだよ。」

ようやくか・・・。

もう時間過ぎてんだけどな。

あ、そういえば陽太郎も来るって言ってたな。

陽太郎のこと待って遅れたのか?

「あ、八幡、那須ちゃんおはよう。」

「お、はちまん。きょうはよろしくたのむぞ。」

小南と同じく玉狛支部所属の園児、林藤 陽太郎と陽太郎を乗せて歩いてるカピバラ?の雷神丸。

「よ、小南、陽太郎。」

「おはよう、桐絵ちゃん、と・・・陽太郎くんでいいのかな?」

那須が陽太郎の名前を確認すると、やはりと言うべきか

「・・・きみかわいいね。おれとけっこんしたら、らいじんまるのおなかさわりほうだいだよ。」

と口説き始めた。

ほらみろ、那須の顔、スゲー戸惑ってんじゃねーか。

陽太郎、別にみんながみんな雷神丸のお腹触りたいわけじゃないんだよ。

俺が心の中で陽太郎にアドバイスしていると、くまちゃんと残りの3人が来た。

「悪い、比企谷。陽介が寝坊して遅れた。」

「わり、槍バカがなかなか起きなくてな。」

「よつ、ハッチ。今日はよろしくな。」

・・・何も悪くないふたりが謝り、当の本人は罪悪感の欠片もないようだな。

三輪、出水は少し疲れたような顔をし、米屋はすっきりとした顔。

随分と気持ちよく眠れたみたいだな。

そして2人とも、お疲れさん。

俺が心の中だけで合掌していると、俺達の前に1台の車が止まった。

「お待たせ、みんな。早速で悪いんだけど荷物詰めちゃって。」

出てきたのは意外な人物。

本部長補佐、沢村 響子だった。

「・・・今日の運転沢村さんですか?」

俺はあまりにも意外すぎ、沢村さんに聞いてしまった。

「そうよ。なにか不満?」

「いえ。ただ、こういうのにはあまり参加しないもんだと思ってまして。」

「・・・私だってあまり自分からやらないわよ。ただ・・・桐花さんにめいれ・・・お願いされて。」

俺のおふくろがすいません。

もうそこまで言っちゃったら言い直さなくても良かったと思いますよ?

別に俺に気を使うとか思わなくていいんで。

「お疲れ様です。」

俺と沢村さんが話していると荷物詰は既に終わっており、殆ど乗り込んでいた。

さて、俺も乗りますかね。

「沢村さん、今日はお願いします。」

「任せて。」

俺は車に乗り、空いていた三輪の隣に座った。

「それじゃ、出発するわよ。」

沢村さんの一声で車は走り出した。

 

 

 

 

少しの間だが、さらば三門市。

久しぶりに会おうぞ、千葉村!

 

 


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