金曜日午前、千葉村到着。
「あ〜、空気がうまいぜ。な、ハッチ。」
「そうか?味しねーじゃねーか。」
なんだよ、空気がうまいって。
こいつあれか、味のない食べ物食ってもうまいっていう系男子か。
因みに、俺は濃い系男子。
「さて、それじゃ他にもボランティアさんが来るみたいだから仲良くしなさいよ。それじゃ、比企谷くん、あとお願いね。私これから会議だから・・・。」
「はぁ、わかりました。」
普通こういうのって責任者同士がやるんじゃないの?
あ・・・俺が今日の責任者だ。
俺は沢村さんを乗せて走る車を目で追いながら、自分の荷物を肩にかける。
さて、どんな人達と3日間過ごす事になるのやら。
オラ、ワクワクしてきたぞ。
「じゃ、自分の荷物持って向こういくぞ。そこでボランティアさん達と待ち合わせてるらしいから。」
「お、ほかのところからも来てんの?可愛いい子いるといいな。」
「止めとけ、弾バカ。期待した分だけハズレた時のショック感ヤバイから。お前が唯我に負けるのと同じくらいのショック受けることになるから。」
「・・・期待すんの止めよ。」
それはそれで失礼だろ、唯我に。
でもまぁ、いいのか?
太刀川隊、唯我いてもいなくても変わんないし。
太刀川隊も大変だな。
唯我は親のコネ使ってボーダーに入隊している。
本人はA級1位である俺の隊、比企谷隊に入隊したかったらしいが残念ながらその頃にはもう、比企谷隊は定員いっぱいになっていた。
そのため、唯我はA級2位の太刀川隊に入隊したわけだ。
当時、俺は太刀川隊に軽く罪悪感を感じていた、んだが・・・これでよかったのかもしれないと、今はそう思っている。
だって・・・今の太刀川隊、楽しくやってるもん。
そんな事を思いながら俺は尻目で後ろにいる米屋とじゃれてる出水を見た。
「さて・・・着いたぞ。多分ここだ。」
みんなでキャッキャウフフしてる間にあっという間に着いた。
まぁ、歩いてこ5分程度で本当にあっという間だったんだけどな。
ここで待ち合わせということになっているんだが・・・まだ来てない。
ま、まだ時間になってないしな。
俺は少し手持ち無沙汰になったため、ポケットからスマホを取り出し、切っていた電源をつけた。
うわ・・・すごい量のメール。
発信源は・・・平塚先生。
・・・俺は何も見てない。
俺は目を伏せ、スマホの電源を切った。
そのタイミングがちょうどよかったのか、1台のバンが止まった。
お、もしかしてあれが今回のボランティア仲間?
すっごい見覚えのある顔か窓から見えるんだけど。
俺のサイド・エフェクトが見抜いた。
や、ほんとに見抜いたんだって。
俺のサイド・エフェクトって視力系だし、あんな窓1枚じゃ、俺からしたらないも同じだ。
俺がこめかみに手を当て、バンから出てきた人物と先程のメールの量を照らし合わせ、なんであいつらが来てるのか推測した。
俺はバンから出た人物のもとに歩き出した。
「今日から3日間よろしくお願いします・・・平塚先生。」
責任者であろう平塚先生に挨拶をする。
「比企谷!?・・・なるほど、君の妹君が言っていた泊りがけのバイトとはこのことか。」
・・・え?
俺の、妹?
俺の妹はあそこで元気よく遊んでるし・・・まさか!?
いや、それはありえない。
あいつと平塚先生に接点はないはずだ。
だが、他に思いつかない。
平塚先生は操ことは巻町って呼んでるし、綺凛とは接点がない。
・・・迅さんが言っていたのは、もしかしたら、今日起こりうることだったのかもしれない。
「う〜ん、空気が美味しいですね、結衣さん!・・・ってお兄ちゃん?」
やっぱりか・・・。
覚悟はしていたが、いや、ほんとは覚悟なんてしてなかったのかもしれない。
俺の鼓動は一定のテンポを崩しながらスピードを上げている。
毛穴の穴という穴から汗が吹き出し始めている。
俺の周りだけ時間が遅く、音がないように思えてくる。
俺は焦っている・・・これで家族の絆が壊れることに。
「比企谷、大丈夫か?」
平塚先生がこちらをのぞき込むかのような姿勢でこちらに問う。
「・・・はい。すいません、少し取り乱してしまいました。・・・スゥ、これから3日間よろしくお願いします、総武高校の皆さん。ボーダー代表兼今回の責任者、比企谷八幡です。」
俺は礼儀は通す。
それが社会に出ている人間としての態度だからだ。
「え・・・?お兄ちゃん、ボーダー隊員なの?」
それがどんな状況であっても。
「ああ、そうだ。」
自分の立場を重んじななければならない。
「そっか・・・じゃあさ、あそこにいる操お姉ちゃんも紅覇お兄ちゃんも綺凛ちゃんもなの?」
「・・・ああ。それと、おふくろと親父もだ。」
「そうなんだ・・・小町、1人だけ知らなかったんだ。」
小町はどこか悲しそうな顔をする。
「ねぇ、なんで誰も小町に教えてくれなかったの?」
「・・・おふくろの意思だからだ。」
「・・・お母さんの?じゃあ、なんで小町に教えないのか知ってるの?」
「ああ。」
「じゃあ、さ。教えてよお兄ちゃん。小町だけに知らされなかった理由を。」
小町の声は徐々に大きくなり、怒気が混じるようになった。
周りも気付いたのかこちらに目を向ける。
雪ノ下はこちらを静かに、由比ヶ浜は手を胸の前に握り、戸塚は悲しそうに、平塚先生は何かを後悔するように見ている。
操は何かを決意したかのように、紅覇は顔の表情を何一つ変えずに、綺凛は少々涙目に、小南はなにか心当たりを思い出したかのように、出水、米屋、三輪、那須、くまちゃん、木虎、綾辻、陽太郎は話の内容を理解しようと、雷神丸は草を食べながらこちらを見ている。
「・・・悪いが、今は言えない。そうだな・・・今夜俺の所に来い。包み隠さずすべて話してやる。それまで我慢しろ。俺も一応今は仕事中だ。」
「・・・わかった。小町が納得すること言ってね。」
小町は力強い目でこちらをまっすぐに見ると、小町は雪ノ下達の方へと歩いて行った。
俺も、ボーダー側に向かい、歩いて行った。
静かだった。
誰も、言葉を発しなかった。
そんな時、一台の車が大きな音を立て、総武側とボーダー側の間にまるで割り込むかのように駐車した。
当然、全員その車に注目する。
すると、中から出てきたのは意外なヤツら。
「やあ、ヒキタニくん。」
薄っぺらい笑顔を貼り付けた葉山隼人と、なんちゃってお嬢様三浦優美子、メガネをかけたどこか残念な少女海老名なんちゃら、っべーでお馴染み戸部翔の4人が出てきた。
重たい空気をものともせず、寧ろその空気を壊すかの勢いで話し出した。
「っべー、空気マジうめーでしょー。っべー、マジパネェ。」
「隼人〜、早く行こうよ〜。」
主に2人が。
流石リア充の王様、空気を読むことにも長けてるとは、恐れ入るな。
それともう1人、メガネ女子の海老名さん、この人も空気を読む、というよりは何かを感じ取った、と表現する方がいいかもしれない。
「先生、何故彼らもいるのでしょう?ボーダーはともかく、彼らは必要ないと思います。」
この空気に便乗するかのように一番ノリの悪そうなやつが平塚先生に素朴な疑問をぶつける。
「実は・・・少し前に募集していてな、その参加者というわけだ。」
ふむ、実に要領の得ない会話の内容だな。
「そうですか・・・。」
先生が要領の得ないことを言うと、雪ノ下は納得した様子はないが、あっさりと引き下がった。
別に多いほうがいいじゃん、仕事の効率よくなるし。
効率がいいと書いて楽すると読む。
これは俺がデスクワークなど仕事等する時に掲げているモットー。
「・・・ねぇねぇ八幡。私達、初対面なんだから自己紹介した方がいいの?」
小南が俺の袖を引っ張り聞いてくる。
「自己紹介?必要か?」
「当たり前だろ。比企谷、あの可愛い子達と知り合いなんだろ?紹介してくれよ。」
「無理だな。あん中で仲いいの一人しかいねーし。」
「・・・ハッチらしいな。」
俺らしいってなんだよ。
俺が学校で誰かと仲良くしてるのってそんなにありえないことなの?
まぁ、ありえないな。
八幡納得。
「黒髪が雪ノ下雪乃、ピンクの髪が由比ヶ浜結衣、あの可愛いやつが戸塚彩加、タバコ吸ってんのが平塚静先生、・・・あのアホ毛が俺の妹比企谷小町だ。他は知らん。」
葉山達の事はいわない。
当然だ。
よく知らないやつの事言って、知ったかって言われるとむかつくからな。
ソースは俺。
ほんと、大串くんマジムカついたわー。
「あ、八幡のクラスメイトの戸塚彩加です。」
戸塚は自己紹介し終わると俺に向かい微笑んだ。
もしかしたら俺にじゃないかもしれない。
いや、俺にだな。
なんと言われようが俺に対してだ。
自意識高い系男子だから。
「へぇ、ボーダー外での女子の友達初めて見たかも。」
「小南、失礼なこと言うな。戸塚は男だ。」
「え!?そうなの!?」
「止めろ、ハッチ。こんなとのろに来てまで騙されるなんて可哀想だろ。・・・後であの子、俺に紹介してくれ。」
「な!?きたねーぞ槍バカ!比企谷、俺に紹介してくれ!」
「はぁ、だからさっきから言ってんだろ、戸塚は男だ。」
「えへへ、僕、男です。」
戸塚は照れながらも自分の性別を伝える。
流石に本人の口から出ると信じるのか、さっきまで取っ組み合いしていたバカ2人は口を開け、微動だにしない。
結論、戸塚は男でも女でも俺は幸せです。