やはり俺の界境防衛機関での物語は間違っている   作:つむじ

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彼は初めてを2つ体験する

俺は今界境防衛機関、通称『ボーダー』と呼ばれる本部にいる。

ボーダーにいるのは当たり前だ。

ならどうしてこのような説明をしているかって?

だって今俺がいるのはボーダーはボーダーでも会議室にいるんだよ?

さーなんででしょう。

理由は今日起こったイレギュラーな(ゲート)についての会議が開かれることになったからだ。

あ〜なんで俺も参加しないいけないの。

確かに俺は上層部の一員だし今日起きた事の当時者でもあるけどそれは城戸司令や忍田本部長達など大人だけでやって欲しい。

こちとら今日の晩ご飯の食材買いに行かないといけないのだ。

因みに今日の晩ご飯はスパゲッティにする予定だ。

早く帰りたい・・・。

「それではこれより総武高校に出現したイレギュラーな(ゲート)に対する緊急会議を行う。」

城戸司令の一声で会議は始まった。

「まず最初に鬼怒田開発室長、原因は分かったか。」

「いや、まだだ。未だに原因がわからんままなのだ。」

「わかった。引き続き原因を調べてくれ。」

どうやらまだ原因がわかっていないようだ。

ここで俺は少し気になっていたことを聞いた。

「鬼怒田さん、誘導装置の故障という訳では無いんですか?」

「いや、それは無いだろう。調べてみたがどこも異常がなかった。」

ふむ、誘導装置関連ではないようだ。

だがお陰で今日起きた原因が絞られてきた。

「次に根付メディア対策室長。」

「はい、今回に対しては特に何もありませんでした。

と、言いたいところですが思いの外風当たりが強く未だに収まっておりません。」

は?なんでだ?

今回の事は総武高校とボーダーだけという事になっていたはずだ。

誰が一体何について話したんだ。

「すいません根付さん、今回の事は総武高校とボーダーの間だけの秘密となっていたはずですが。」

「実は苦情の来た内容は『生徒を誰一人として学校から出す気は無い』というものでして。教師方には決して他言しないようにと言っておいたのですが比企谷君、心当たりはありますか?」

恐らくあの人だろう。

俺の前で堂々と言ってたし、まず間違いないだろう。

「比企谷君、どうやら心当たりがあるようですね。その証拠に貴方の顔がどんどん青くなっていますよ?」

「はい、心当たりあります。恐らく教師が生徒に言い、生徒が広めたのでしょう。」

「その教師と生徒の名前はわかりますか?」

「教師の方はわかります。教師の名は平塚静です。生徒の方は候補が2人います。1人は雪ノ下雪乃、もう1人は由比ヶ浜結衣。」

「わかりました、その2人を洗ってみましょう。」

そう言うと根付さんはタブレットをいじり始めた。

恐らく部下の人たちに指示を出しているのだろう。

「比企谷、どうした浮かない顔をして。何か気になることでもあるのか?」

忍田本部長が俺の顔をのぞき込むような形で聞いてきた。

「気になることという程でもないんですが今回出現したイレギュラーな(ゲート)にもし何かの条件があるのかもしれないと思いまして。」

「条件?」

全員がこちらを見る。

ふぇ〜、大人の視線って怖いよ〜。

「はい、と言っても仮説ですが。」

「構わん、話せ。」

「俺の考えてる事は、誘導装置をたまたま抜けてきた、(ゲート)を発生させる装置がここにある、トリオン能力の高い人間の近くにいる、という3つです。」

「1つ目2つ目に関しては分かるが3つ目のは何故だ。何故近くにトリオン能力の高い人間がいると出現するのだ。」

鬼怒田さんが物凄い勢いで食らいついてきた。

なるほど、だからそういう体型なのか。

「理由としては2つあります。1つ目は(ゲート)を発生させる装置があったとしても我々が気付かないような物です。恐らく大きさはあまり大きくないかと思います。だから近くにいるトリオン能力の高い人間を利用し(ゲート)を発生させているのかと思います。」

「なるほど。たしかに、筋は通っているし可能性としては高いな。で、2つ目は?」

「2つ目の理由は・・・俺です。」

は?と上層部の皆様方は口を開け締りのない顔になった。

「言い方が悪かったです。俺の近くによくイレギュラーな(ゲート)が発生してたんですよ。ここ最近は無かったですが。」

「そうか・・・では鬼怒田開発室長、比企谷の言ったことも頭に入れ調査をを頼む。」

「わかりました。」

「ではこれにて会議を終了する。解散。」

ふ〜、やっと終わった〜。

あまり長くなかったが沢山喋ったから疲れた〜。

マックスコーヒーでも買って疲れを癒そう。

そうしよう。

そうと決まればさっそく自販機にレッツゴー!

 

 

 

 

ガコン

と自販機からマックスコーヒーが出てくる音する。

ボーダーの自販機には3箇所マックスコーヒーがある。

俺が城戸司令に無理言って増やしてもらったのだ。

あの時は大変だった。

糖分の大切さを長々とプレゼンし城戸司令を折るにはなかなか骨がかかった。

まぁ、飲んでるのは俺と影浦隊ぐらいだけど。

俺が近くのベンチに座りカシュッとマックスコーヒーを開けた時だった。

「よっ、今日はお疲れ八幡。ぼんち揚食べる?」

ぼんち揚でお馴染みの迅さんがやって来た。

「いりません。それよりも早く要件を言ってください。早く帰りたいので。」

「相変わらずせっかちだな〜。ま、今日は俺も時間が無いから要件を言うよ。要件は今週1週間、特に夜は本部で待機していてくれ。」

「わかりました。ただし条件があります。」

「ん?なんだ?」

「貴方の暗躍に俺の家族を巻き込まないでください。」

「わかった、約束する。じゃな。」

どうやら本当に時間が無かったらしく迅さんはそそくさとその場を離れた。

さて、俺も帰るか明日普通に学校あるらしいし・・・

 

 

 

 

「お前ら〜二人組作れ。」

イレギュラーな(ゲート)が開かれた翌日、学校は何事もなかったかのように開かれた。

そして今は体育の授業。

「すいません先生。あまり調子が良くないので壁打ちしてていいですか?あまり他人に迷惑かけたくないので。」

「おう、わかった。」

俺は先生の返事を聞き壁に向かい歩き出した。

なんで壁打ちをするかって?

分かりきったことを。

ここに何人いるかざっと見たが31人と1人は余ることになるのだ。

だったら最初から抜けていればダメージは無い。

尚且つ相手に罪悪感を残さずにすむ。

ここで一句

『ボッチかな、ボッチじゃないよ、ボッチだよ』

完全にボッチですね〜。

一句読んでる時点でボッチの無限ループからは逃れられそうにもない。

そう思いながら俺はボールを壁に投げラケットを構えた。

サイド・エフェクト発動

この壁打ち練習はボーダーに入った頃からやっていた。

お袋曰く

『この練習はサイド・エフェクトを強化するための練習』

らしい。

だがこれをやっていくにつれわかるようになってきたことがある。

ボールの返ってくる向き、ボールの回転数などが次第に見えてくるようになったのだ

お陰で擬似的ではあるが次の行動がわかるようになったのだ。

俺はこの練習のおかげで強くなったと言っても過言ではない。

その時だった。

あさっての方向からボールが飛んできた。

「あ、ごっめーんマジ勘弁。えっと、えー・・・ヒキタニくん?ヒキタニ君、ボールとってくんない?」

誰だよヒキタニくん。

訂正する気も起きず、俺は転がっているボールを拾い上げて投げ返してやった。

「ありがとねー」

金髪リア充の葉山が笑いながら俺に手を振ってきた。

それに、俺はうすと会釈を返した。

なんで俺は葉山なんかに会釈してるのん?

どうやら俺は本能的に葉山の方が上だと判断してしまったらしい。

く〜や〜し〜い〜。

 

 

 

 

昼休み。

俺はいつもの昼食スポットで飯を食う。

購買で買ったアンパンをもぐもぐと食べる。

今月は紅覇が入学したことにより少し金銭的に余裕が無い。

だから一番安かったアンパンを1つだけ買ったのだ。

ずずーっと途中自販機で買ってきたマックスコーヒーを飲んでいるとびゅうっと風が吹いた。

風向きが変わったのだ。

臨海部に位置するこの学校はお昼を境に風の方向が変わる。

俺はこの風を肌で感じながらひとりで過ごす時間が嫌いじゃない。

「あれー?ヒッキーじゃん。」

いつもこうだ。

俺が1人で黄昏ていると邪魔が入る。

「なんでこんなとこいんの?」

俺のベストプレイスをこんなとこ呼ばわりとは・・・ゆるせん!

「普段ここで飯食ってんだよ。」

少し怒気の混ざった声で返したがそれにこいつは気にもとめず

「へー、そーなん。なんで?教室で食べれば良くない?」

ホントこいつは人を苛立たせる。

本人は自覚がないようだが言われたくないことをまるで狙い済ましたかのようにど真ん中に当ててくる。

奈良坂でも言葉では狙わねーぞ。

「それよかなんでここにお前いんの?」

「それそれっ!じつはね、ゆきのんとのゲームでジャンケンしてー」

「簡潔に短く答えろ。」

「パシリです。」

なるほどたしかにこいつは猫か犬かと聞かれたら犬のような感じだ。

まるで忠誠を誓ったかのようなそんな犬だ。

少し頭が残念そうだが。

俺は残りのマックスコーヒーを飲み干しテニスコートの方を見た。

その時だった。

俺は恋に落ちた。

先程まで練習していたであろう女子がこちらに近づいてきたのだ。

見えなかった顔は、顔のパーツひとつひとつがくっきりと見え額に垂れる汗は輝きを増しまるでその娘を引き立てるようなエフェクトに見えてきた。

「あ、さいちゃーん!」

由比ヶ浜が手を振って声をかける。

まって、まだ心の準備が・・・

「よっす、練習?」

「うん。うちの部弱いからお昼休みも使えるようにして貰ったんだ。由比ヶ浜さんと比企谷くんはここで何をしてたの?」

「やー別になにもー?」

だよね?と俺に確認してきた。

「そーだな。お前が一方的に話しかけてきただけだもんな。」

そうなんだ、とさいちゃんと言う女子はくすくす笑った。

「あ、そういえば比企谷くん、テニスうまいよね。」

予想外にも俺に話しかけそれどころか俺のことを褒めてきたのだ。

心がドキドキしてきた。

顔赤くなってないよね?

そんな俺をよそに由比ヶ浜はへーっと感心するような吐息を漏らした。

「そ〜なん?」

「うん、フォームがとっても綺麗なんだよ」

「いやー、照れるな〜」

で誰?と由比ヶ浜に聞いた。

さいちゃんに聞かれないよう最新の注意を払って小声で言ったのだがこのアホは

「はあぁっ!?同じクラスじゃん!っていうか体育一緒でしょ!?飲んで名前覚えてないの!?信じらんない!!」

超大声で喋った。

「バッバカお前、知ってるし。服装が違っててわからなかっただけだよ!後、女子は体育は体育館じゃねーか。」

こいつ・・・、俺の気遣いが台無しじゃねーか。

俺がこの娘に嫌われたらどうすんだ。

少し焦り俺はさいちゃんのほうを見ると、さいちゃんは瞳をうるうるとさせていた。

この瞳はやばい。

どれくらいやばいかというとマジやばい。

言葉にも言い表せれない破壊力。

絵にもかけない美しさ。

この二つが今オーバーレイ!!

「あ、あはは。やっぱり僕の名前覚えてないよね・・・。おなじクラスの戸塚彩加です。」

「わ、悪い。クラス替えであまり時間が経ってないから、つい。」

「1年の時も同じクラスだったんだよ・・・。えへへ、僕影薄いから・・・。」

「やーそんなことないない。俺、同じクラスの女子、操とくまちゃん以外知らないからコイツとだって昨日知り合ったんだ。」

「ヒッキーなんでみさちゃ下の名前で呼び捨てでゆうちゃんの事はあだ名呼び名の!?ヒッキー、マジキモイ!。」

「アイツらはいいんだよ。お互い認めあってる。」

くまちゃんには認めてもらって無いと思うが。

「ぼく、男なんだけどなぁ・・・。そんなに弱そうに見えるかな?」

え?今なんて?

男?そんなわけない。

俺の初恋の相手が男?

「わるい、俺、教室に戻るわ。」

俺は何かの喪失感とともに教室にトボトボと歩き出した。

 

 

 

 

 

放課後。

「さあ、比企谷。玲の家に行くよ!」

俺が落ち込んでいると言うのに元気よくくまちゃんが話しかけてきた。

「ああ、行こう・・・。」

俺は未だに立ち直れていない。

「ちょっと比企谷どうしたの?」

「くまちゃん、聞いてくれ。俺初恋して失恋した。」

俺は昼休み起こった事を下駄箱に向かいながら話した。

するというくまちゃんは

「アハハハハ、ハハハハッ、あー、面白い。まさか初恋が男で失恋も男だなんて。」

盛大に笑い出した。

人の不幸を笑いやがった。

よし、那須の家に行く際はこいつが恐怖に落ちるような運転で行こう。

そうしよう。

俺がくまちゃんに対する復讐を心に決めたその時だった。

「比企谷、部室はそっちじゃないぞ。」

平塚先生が現れた。

校長の指示に従わなかったため減給をされたらし。

この際だ、昨日部活に行った理由を話そう。

「先生、俺はもうあの部活に行く気はありません。」

「何故だ。昨日しか行っていないだろう?」

「昨日行ったのは(ゲート)が開く際、一番近い教室があそこだったからです。」

「まるで君はあそこに(ゲート)が開くことを知っているような口ぶりだな。偶然ではないのか?」

「あそこに(ゲート)が現れたのは偶然です。ですがあそこに(ゲート)が開くのは分かっていました。だから昨日ボーダー隊員達には放課後残ってもらうよう呼びかけトリオン兵を殲滅しました。」

「そうか、だが君は昨日仮入部すると言ったんだぞ?そのことについてはどうする。」

「すいませんがあそこに入部するつもりもありませんし部活をやる時間など俺にはありませんので。ではこれで失礼します。」

俺とくまちゃんはその場から離れ駐輪場に向かい歩き出した。

 

 

 


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