俺は人に常に見られている。その為、人の視線というものに敏感だ。
例えば、道行く人が俺のことをチラ見したとする。俺はそのチラ見の視線の元を全て見つけることができる。さらに言えばその視線がどういったものを孕んでいるかも瞬時に見分けられる。何故なら俺は人に見られる前に、ある程度周囲の人を観察し、どういった性格、性質であるかを読み取っているからである。
自分でも気味の悪い理由だと思うが、大人数を前だとそうでもしないと『みんなの葉山隼人』はやっていけない。その為、観察力に関しては人一倍磨いてきた自負がある。……比企谷には劣るが。
そんなことを習慣にしているから、母になんの違和感を持っていないことで俺は安心していたのだ。故に、『娘』と言われた時は鉄球で頭を思いっきり殴られた気分だった。
「か、母さん。俺が娘ってどういうことだい?」
「どうって、アナタまさか自分が私の娘ではないといいたいの?」
母の眉間にシワが。腰が抜けそうだ。
「い、いや。何でもないです」
「そ、突然ヘンなこと言うから驚いたじゃない。後、いい加減その男口調やめなさい。他の子に育ちが悪いと思われてしまうわよ」
そう言って席を立った母は時計をちらりと見て、そろそろ時間よ。と言うのだった。しかし、整理できない現状に思考は回らず、返事に戸惑ってしまう。それを心配したのか、今日は休みなさい。と告げた後すぐに家を出ていってしまった。
カチカチと、普段気にもしない時計の針の音が、いやに頭に響く。しかし、動きたいとは微塵も思わない。
残された俺は放心状態のまま席にもたれ掛かっていたのだった。
あれから一時間ほど過ぎただろうか。
考えが纏まらない。娘ってどういうことだ。俺の体は少なくとも女の子に見られるような華奢な体型じゃない。むしろ明らかに男性らしい肉体だったはず。それがどうだ、体は女性になるどころか、母の認識も娘と来た。訳が解らない。
勿論母が何かしらの理由で俺をからかっているなど、これまた自分でも訳の解らない計算式を立てて、家を調べることを考えた。しかし、自室からアルバムを取り出そうとした時点でその考えは諦めた。もし、このアルバムの中身を見たとして、そこに写るのが取り返しのつかない物だった時、間違いなく精神がやられてしまう自信があったからである。
結局、家にいても女性になった自分のことしか考えられず、ふっ切る為に外に出ることにしたのだった。
後に俺は後悔する。予期せぬ事態に遭い、行動するといつも失敗する。そんな自分を忘れていたことに。
葉山くんの心理描写って、ホント難しい笑
でも、リア充であるためにこんな頑張ってるって言うのを想像したら、なんか楽しくなってきたこの頃です。