ラブライブ!サンシャイン!!アンソロジー『夏――通り過ぎて』 作:鍵のすけ
ほんの数十分前までは、いつもの平和な部室だった。…あんなものが見つからなければ。
「……決まりだね。桜内 梨子、あなたが『レズ』です」
千歌の乾いた声が、部室に響き渡った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
事の発端は、千歌が部室でそれを見つけたことだった。9人全員で大掃除をして、偶然見つけてしまったものだ。
「え〜っと…なにこれ」
「これは…
「……」
2年生は困惑し、
「る、ルビィにはこういうのはちょっと早いかも…」
「大胆ずら…」
「よ、よよよ、ヨハネにはちょっと、し、し刺激が、つ、強すぎるようね…フ、フフフ…」
1年生は恥じらいを隠せず、
「っ〜〜〜〜!!こんなものは処分です!焼却です!シャットダウンですわ!!」
「ちょっと、ダイヤ落ち着いて…」
「wow…相変わらずこういうものには弱いのね、ダイヤ☆」
3年生は…まぁ、いろいろ。
彼女らのいう「こんなもの」がどんなものなのか全く触れないままここまで話してきた。ピンとこない方も多いだろう。だから今ここでハッキリと告げよう!部室には、部室には……
女性向け同人誌(R-18)が落ちていたのだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そんなこんなでこの本の持ち主は誰なのか暴くことになった。なぜならこれは18禁、高校生は買えない決まりがある。つまりこの本の持ち主は年齢偽称したことになるからだ。「このような悪事は認められないですわ!」といつになくハイテンションなダイヤの一言で、犯人探しが始まってしまったのだ…
そして冒頭へ戻る。
「桜内 梨子。あなたが『レズ』です」
なぜ梨子が犯人だとわかったのか、その過程は省こう。決して善子が口をすべらせ、梨子が薄い本を買っていたことを暴露したなんてことはない。本当なんです!信じてください!善子、お前は一週間の謹慎だ。
「ふふふ…そうよ、私が『レズ』よ」
逃げ場がないと悟ったのか、梨子は開き直り、何を血迷ったか「よしりこ」の素晴らしさを説き始めた。
「いい?私はレズ。そして…新世界の神よ。もはやレズ、いや…『よしりこ』は正義。世界の人間の…希望」
「世の中は腐っている。腐った人間が多すぎる……よしりこの魅力を理解しない馬鹿が多すぎる…ならばなくさなければならない」
「人間は幸せになる事を追求し.、幸せになる権利があるわ。しかし一部の腐った者の為に不意にいとも簡単にそれが途絶える」
「…事故じゃない。腐った人間が生きている事による必然」
「悪は悪しか生まないわ。意地の悪い人間が悪事を行い、世にはびこるならば弱い人間はそれを習い自分も腐っていき、いつかはそれが正しいと自分を正当化する。悪は…腐った者は…なくすしかないのよ」
「レズになる権利それは皆に平等にある。いや、なくてはならないわ。それは他のカプ厨を攻撃したり、陥れたり、ましてや殺す事で得るものではないわ。互いの幸せの邪魔をすることなく、互いの権利を尊重し、個々の幸せを求めていくのが人間同士のあるべき姿」
「世間の目が変わってくれば人間も変わってくる…優しくなれる…」
「本来レズビアンは地球上で一番優れた生物として 進化していかなければならない。だが、退化していたのよ…」
「だから…私がやるしかない!この本を手にした瞬間思った!私は…この世界を変えるために選ばれた存在!」
「私にしかできない…!年齢を偽るのは犯罪なんて事はわかっているわ、しかしもうそれでしか満たせない!いつかそれは認められ正義の行いとなるのよ!」
「同人誌ひとつで世界を…人間を正しい方向へ導ける?私利私欲の為にしか使えない、自分の為にしか使えない馬鹿な器の小さな人間しかいないじゃない!……千歌ちゃん。貴方だってわかっているはずよ、人間には明らかに死んだ方がいい人間がいる。糖質は殺せるのに何故害のある人間
を変えることを悪とするの?」
「ここで私を捕まえてどうするの?千歌ちゃんが嬉しいだけじゃない?それはあなた自身のエゴでしかないのでは?」
梨子は自信満々に言ってのける。その佇まいはまさしく、「
「違うよ」
だが千歌が放ったそのたった一言が、場の空気を、そして梨子の思惑をも切り裂いた。
千歌はそのまま続ける。
「梨子ちゃんは…ただの犯罪者だよ。私にもね、何が正しいか、間違ってるかなんてわかんないよ。だからね、私が正しいと思ったことを信じることにしたの。梨子ちゃんとおんなじ」
「そして私にとって、歳をごまかして
「…」
梨子は何も言わなかった。ただその顔は.「言っても分からぬ馬鹿ばかり…」とでも言いたげな表情であった。
「ふふっ…まぁいいわ。こいつがある限り…私の理想は潰えない!!」
梨子が不敵に笑い、机の上に置いてある「その本」へと右手を伸ばす。
その瞬間….
ビシッ……!!!!
「ぐぁっ…!!」
何処からか猛烈なスピードで飛んできた鉛玉が、梨子の右手を直撃した。手の甲から鮮血が迸る。
「うぅ……ううう!!!」
負傷した右手を押さえながら呻く梨子の眼前には…スリングショットを構えた国木田花丸の姿があった。
「お寺のカラスを追い払うのに使ってたやつ…こんな所で役に立つとは思わなかったずら」
「ゔ…」
「ゔ…ゔ…!!」
「馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉっ!!国木田、誰を撃ってる!?ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!!」
梨子の絶叫が部室全体に響き渡る。その時の顔は到底アイドルとは呼べないものだった。
「国木田ぁー!お前だけは理解していたはずだ、よしりこは正義!よしりこが必要!撃てぇー!千歌を、マリーさんを、そしてダイヤ達を撃つんだーっ!!」
もはや梨子の精神は完全に崩壊していた。そんな彼女に、花丸は冷たく言い放つ。
「善子ちゃんは…渡さないずら!」
そのままスリングショットを構え、弾丸を6発ほど放った。それらはすべて梨子の身体にクリティカルヒットし、傷だらけになった梨子はその場に倒れ伏してしまった。
「ちょっと、やりすぎよ!リリー…!大丈夫!?」
堪らず、善子が梨子の元へ駆け寄る。
「ゔ…よっちゃん…!」
梨子は反射的に手を伸ばし…
…ふにっ
梨子の手に柔らかい感触が伝わっていく。伸ばした手の先には、何の偶然か善子の発展途上な胸があったからだ。
それは孤独な闘いを終えた彼女へ、神がもたらした「
…いや、そんなことはどうでもいい。
はっきりしているのはただ一つ。
今、この瞬間。
桜内梨子が幸福の絶頂にいること…ただ、それだけ。
「よっ……ちゃん……………」
善子の控えめな胸の感触を楽しみながら、彼女は静かに目を閉じた。
……っていう夢を見た善子ちゃんは、しばらく梨子ちゃんと気まずくなっちゃったずら。
おしまい
こんなゴミを最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。
他の作家様方の素晴らしい作品を楽しんでいってください!今回は本当にありがとうございました。
「凛キチさん、くやしくないの?」
「あんなに構想練って、締め切りに間に合わせようって頑張って頑張って…それが0だったんだよ!?悔しいにきまってるじゃん!!」
締め切り遅れて申し訳ありませんでした。