ラブライブ!サンシャイン!!アンソロジー『夏――通り過ぎて』   作:鍵のすけ

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彼と彼女の些細な一幕 【秩序鉄拳】

幼い頃ならば、男女関係なしに一緒に風呂に入ることなんてざらにあった。

なぜか? 今ならばわかるのだが、その関係性に恥というものを一切感じないからだ。

更に、俺の住むこの町では地域住民同士のかかわりが深く、幼馴染とはもはや家族同然。

家族と一緒の風呂に入ることを、性差を意識して恥ずかしがる幼い子供がいるだろうか、いや居ないはずだ。

 

だが年を取るとどうなるか。

小学生の高学年ごろに、女子と仲良くしているとからかわれたりはしなかったか?

俺はめっちゃされた、何故ならいつも仲良くしてる幼馴染の三人が全員女子だったから。

普通ならそこで反発して『別にそんなんじゃねーよ』って言うのだろうが、幼き頃の俺は何かがおかしかったらしく『そうだよ文句あるのか』とか言ってたんだとか。

いや、ほんと子供の俺どんな神経してたのさ。誇らしいけど歳過ぎた俺には少し恐ろしく思います。

 

話がずれた。

まぁ、大体男女ともに性差を意識し始めるのがこの頃だから、着替えも別々になるし、修学旅行では部屋も別々、保健体育でもうちの学校では別々に行われていたりした。

そうなると当然家庭内での性差に対する意識も強くなり、俺と幼馴染達はいつしか一緒に風呂に入ることもなくなっていた――と、今の俺は考察する。

 

さぁ、ここで質問だ。

そうやって自然と互いの性差を意識するような関係と、共に風呂に入る展開が引き起こされるのは一体どんな状況があるのでしょうか?

 

――俺の回答は『帰宅時、突然の雨によって体がずぶ濡れとなり、近い距離にある相手の家に避難するのだが、そのままでは風邪をひくということで相手の親御さんのご厚意で風呂に入ることになったのだが、そこに当の相手も一緒に入ることとなり、互いに互いを思いやるあまり互いに出れる状況でなくなってしまう』

というもので。

 

今の俺の状況はその回答に一寸たりとも違わないものとなっている――ということを伝えておきたい。

誰に? そうだな、このモノローグを聴いているであろうどこかの誰かさんに、だ。

 

 

「――それってさ、確かに私たちの状況まんまだよね」

「……ああ」

「でもそれってさ、今じゃなくて前の方の話だよね」

「……まったくもってそうですね」

「もしかして、まだこの状況に混乱してる?」

「うん、実は少し」

 

 

俺の言葉に『しょうがないなぁ』ってニコニコしているのは、俺の幼馴染の一人であり、彼女の一人でもある【渡辺曜】。

朗らかで柔らかな笑顔を浮かべる彼女と俺の二人は今、渡辺家の風呂場で、二人そろって浴槽に浸かっている。

 

これに関しては別にこれと言って珍しいことがあるわけではない。

さっきは『今』と言っていたが、別にアニメ漫画よろしくなハプニングが起こって二人して浸かっているわけでもない。

単に、想い人から――

 

『今夜……泊まっていかない?』

 

――と、誘われたが故の副産物である。

いや、普通に考えればそこから混浴だなんて話になるのはおかしいのだろうか?

俺の生活はアニメとか漫画とかの世界でやることだって学校の友人からは怒られてしまったし……

うん、一番漫画持っているのがその友人だから今度見せてもらうって約束してから一向に果たされてないことについては目をつむろう。

 

 

「どうしたの、また考え事?」

「うーん……特に大したことじゃないかなぁ」

「そっかぁ、てっきり私たちとの今の関係でまた悩んでるのかなぁって思ってたんだけど」

「んー、それは最近振りきったよ。具体的に言うと大切なものを失ったあたりで」

「……果南ちゃんは本当にいいところもっていったよね」

 

 

俺と曜、そして幼馴染である高海千歌と松浦果南、そしてそして彼女達が中心となって結成されたスクールアイドルグループのAqoursの他六名のメンバーは恋人関係にある。

最初の頃は九人の彼女がいて人間としてどうなんだと四六時中悩んだり、金銭的に俺のヒエラルキーが実は最も下だったという事実によってプライドが木っ端みじんに砕け散ったりなどと色々あったのだが、今ではすっかりと順応していると自分で思っている。

 

その順応と言うか受け入れるようになった一番の原因だったのが――果南ことカナによる俺への捕食行為。

捕食と言ってもカニバリズムとかグロとかそういう方面ではなく……(性的な意味で)と後ろに付くタイプの捕食だ。

二人きりでのデートの後、縛られて押し倒されて――後は察してもらいたい。

 

まぁそんな経験によって俺は十数年ともに連れ添ってきた大事なものを失い、代わりに覚悟と付き合うことになった。

羨ましいと思うだろうか、思うものもいるだろう、何故なら学校の友人一同からは手厚い祝福という名の八つ当たりを受けることになったのだからそう思う人は間違いなくいる。

しかしながら、そんなカナとの一晩の後から主に一部からのアピールがより激しくなり、少しばかり胃に痛みが走り始めたのだから、良いことばかりではないと声を張り上げたい。

 

 

「大丈夫? また胃が痛くなったりとかしてない?」

「一応大丈夫……最近はマリーが制止する方に回ってくれたおかげでなんとか……」

「あー、となると問題なのはいつもの千歌ちゃんと善子ちゃんと――あとダイヤさんかぁ」

 

 

幼馴染の千歌については猪突猛進ゴーイングマイウェイハチャメチャガールと言えば通じると思う。

津島善子と黒澤ダイヤ、この二人はまぁ……千歌とは違うが結構思い込みとか早とちりの激しいタイプってやつだ。

そしてマリーこと小原鞠莉は……なんというかフリーダムだ。

そんな四人から『果南だけずるい』と迫られ続けてはや数週間――胃が痛む理由は大体俺の罪悪感と、曜質四人を加えた彼女達八人の誰を優先したらいいかと言う優柔不断さによるプレッシャーだった。

 

 

「でもさ、鞠莉さんが制止側に回ったってことは……まさか?」

「……言い訳はしない」

「うわぁ……また越されたぁ……」

 

 

――そう、言い訳も釈明もできないのだが、俺はマリーにも喰われた。

前のデートの時、あまりゆっくりと出来ないスケジュールだったからということで、改めてゆっくりできるように再びある旅館でのデートをしていたのだが、部屋でマリーのことを偶然にも事故で押し倒してしまったのだ。

なんら変な原因じゃなく、慣れない着物で歩いてたら自分の脚に自分で絡まって倒れ、その倒れた先にマリーがいただけの大変シンプルな状況。

 

……そのシンプルな状況が大変問題だったのだが。

互いに着物姿である以上、ふとした拍子に服がはだけることがある。

それに強い力がかかるとなると……後は言わずもがな。

ついでにだが、マリーは浴衣と着物を着るときには下着を付けない主義らしい……そう、予想通り、半裸のマリーの身体に同じく半裸の俺がバッタリ行ってしまい、その気になったマリーにろくな抵抗もできず……

火事場のバカ力というものを思い知ったぜ……

 

 

「君って俗に言う誘い受けなんじゃないかな?」

「なんて言葉を覚えてるんだ曜、俺はそんな子に育てた覚えがないぞ!」

「いやいやいや、女の子だって色々見たりするんだよ? そういうのは男の子の専売特許じゃないんだから」

「専売特許って何だよ!? いや、まぁ女子用のそういう漫画もあるっていうのは聞いたことあるが……ウォァ!?」

「なーに? どうかした?」

「おま、おまおま、あのあた、あたて、あたって!」

 

 

ニシシと笑う曜にふと抱き着かれる。

ここは風呂場、風呂場で水着を着るなんて選択は普通しないだろう。

つまりだ、俺たちは今裸である、つまりどうか、それはアウトな話である、つまりな、曜のその、あれ、アレが当たっている、やわからい!

 

 

「ふーん……言ってくれなきゃわからないんだけどなぁ?」

「おま、お前それ絶対わかってやって……!」

「ほらほら、きっちり言わないと丘にはあがれないぞー?」

「アッやめ、ダメ、ちょっ――」

 

 

 

……気付けば俺は曜のベッドに寝かされていた。

少し頭がボーっとしているのだから、あれだ、きっとのぼせたのだろう。

記憶の最後の方には曜の着やせする意外にたわわな――うん、風呂場じゃなければそうそう拝めるはずもなし、健全な男子高校生として感謝しておこうと思う。

違うそうじゃない、というか部屋の主は何処に行ったのだろうか。

 

 

「あ、起きたんだ……大丈夫?」

「おう、まぁ大丈夫だよ。幸いにも意識ははっきりしてる」

「ゴメンね、ちょっとふざけすぎたかなって」

「いや、その、なんというか役得でした」

「フフッ、正直だね」

 

 

部屋に戻ってきたパジャマ姿の曜の手にあるのは濡れタオルとコップ。

俺がのぼせたことに罪悪感があるのだろう、少しばかり申し訳なさそうな表情をする彼女を俺は慰め、乾く喉を潤そうとして曜からコップを受け取ろうと手を伸ばしたその時――

 

 

「っあ!?」

「キャッ!……うわービショビショだぁ……」

「ごっゴメン! 風呂あがったばっかなのに……」

 

 

――どういう了見か、コップが俺の手から跳ね、中身を曜に全部ぶっかける事態が発生。

まるでコップが意志を持ったかのような動きをしたことに困惑も隠せないが、中身がただの水であったことに今はとりあえずホッとしている。

ただ――曜のパジャマがビショビショになってしまったことについてはどうしようもない。

 

 

「もー……コップがあんな高さに飛ぶなんておかしいよ」

「ほんとそれについては同意する……あ、着替えるよな? 俺部屋でてるよ」

「あ、別に出なくてもいいよ?」

 

 

そういうと、曜は突然服を脱ぎだす。

『下着もさっきので濡れちゃったし、脱いでも仕方がないよね』とか言いながら脱いでいく彼女の姿から、悲しき本能かなどうしても目をそらすことができない。

もはやなんというか、この先で起こる展開を俺は予測し始めつつある。

ああそうか、おれはまたおいしくいただかれるのか……

 

 

「あ、なんだ、ちゃんと気付いてたんだね」

「三回目だからね、もう慣れましたよ、はい」

「んー、それじゃあ少し面白くないよね。そうだ、お風呂でシよっか」

「……のぼせるぞ?」

「大丈夫、ちゃんとぬるま湯で用意してるから!」

「用意周到ですね曜さん!?」

「ほらほら、じゃあ脱いで行こうか! 曜ちゃんの部屋発、お風呂場着の便出発だよ! ヨーソロー!」

「ヨーソローじゃないよ全裸で風呂場行きっておま――」

 

 

その後、俺も服を脱がされ、風呂場に全裸で向かうというトンデモ羞恥体験をしたあと、本当にぬるま湯だった浴槽の中で曜の良い様にメチャクチャされた。

 

 

 

 

「むー……なんか日に日に第一婦人っていう私のアイデンティティが失われている気がするんだけど」

「そんなことないよ千歌、千歌が一番頑張ってくれてるから私たちが……ね?」

「今回ばっかりは納得いかないよ果南ちゃん! もう怒った! 怪獣チカチーは怒りました! 次は私の番だからね! がおー!」

「あはは……それは彼次第かなぁ……うん」




テーマ内容:モノローグ内で二か所、曜の自室での水かけ


読了ありがとうございました、どうもおはこんばんにちわ秩序鉄拳です。
企画三回目の出演ということで皆様『またか』と思っていただけているでしょうか。
実は今回の作品は、第二回鍵のすけ氏主催ラブライブサンシャインアンソロジー企画の方で書かせていただきました内容の実質的アフターとなっています。
前回のオチがオチなので主人公が食べられまくりですが、まだあと六人もいますので――ゴホン。

計三回にわたる企画で、ラブライブサンシャインのキャラクターが皆様の中である程度かたまったのではないでしょうか。
この作品が投稿されている頃にはアニメも放送がきっと終わっていることでしょう、皆様が新しくサンシャインの二次創作に手を出してくれることを切に願います。
それでは皆さん、短い期間でしたがお付き合いいただきありがとうございました。
新しく描かれ始めるあなたのサンシャイン作品が輝ける一作になりますように。
夏はまだ――終わりませんから。
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