「なに?三竦みのトップがここで会談を行うだぁ?」
「はい」
コカビエルを倒して数日後、また生徒会室にて、仕事を片付けつつ支取からの言葉に衝撃を受ける。
なんで人外のトップが、人間界で会議を行うんだ。それも学校で。いくら悪魔が管理している場所だからっていってもそれはちょっとどうかと思うんだが。
「俺関係ないですよみたいな感じで言ってますけど、先生も無関係ではありませんよ?なんせあのコカビエルを倒した張本人なんですから。貴方も当然呼ばれていますよ。なんでも自分たちに敵対の意思がないかどうか確認したいとかなんとか」
なん……だと……?
セラフォルーの依頼でコカビエルを倒したのにそれで三竦みの会議に呼ばれるだと?どういうことなの……。というか、あいつら俺がどの程度戦えるか知っているだろうし、俺に敵対の意思がないことなんてわかりきっているだろ。
はぁ………もうそろそろ悪魔どもとも縁を切った方がいいかもしれん。あの案件を出されても対抗できる資料は大方揃っているし。次無茶振りを振ってきたらそうしよう。うん。
「まぁ、それはわかったわ。で?お前の顔からしてそれだけじゃねーんだろ?」
三竦み会談のお誘い(笑)も十分微妙そうな顔を浮かべる要因にもなり得るけど、それを話し終わってもまだ表情がすぐれないのはおかしい。後、支取があの感じの表情を浮かべるときは大体学校がらみの面倒事って決まってるし。
「………まぁ、今までのことに比べたら楽なものですよ?オカルト研究部……というかリアスがプール掃除をやってあげるから一番にプールに入れてくれと言ってきたんです」
「それ、許可は?」
「問題ありません。彼女にしては珍しくしっかりと話を通してくれました。唯、流石に生徒だけで行わせるわけにはいかないので、監督役として一人教師をつけることになったんです」
「ま、それが当然か」
普通に考えて生徒だけでプールの清掃なんてさせねえだろうしな。色々生徒が弄るとマズイ機械とかも当然あるだろうし。で、俺に白羽の矢が立った理由っていうのは何かにつけて事後処理してるから今回も俺に丸投げすれば何とかなるってところか。
「すみません、お手数をおかけして」
「別に支取が気にすることじゃあねーよ。これくらいの手間なら今までのに比べて可愛いもんだ」
要はあいつらが無駄に変なことをしないか確認すればいいだけのことだ。特にこれと言って戦うわけでもないし、そこらかしこで起きる問題に対応するわけでもない。あいつらからの質問攻めにあう可能性もあるがそれはそれで問題ない。なんていったって、この前悪魔化した教会組の片割れを無理矢理学校に突っ込む根回しをしたばかりだからな!
「何はともあれ、話は分かった。後はこっちの方で何とかしておく」
「よろしくお願いします」
――――――なんて、話をしていたのが約三時間前の話。
そうして、今の状況は……
「なぁ、待てよ。お前のそれ、結構洒落にならないやつだろ?俺もほら、立場とかがあってだな。堂々と外を出回るわけにはいかねえんだよ。な?」
「だからと言って、無人の家に魔法陣で侵入して、尚且つ勝手に冷蔵庫の中を取り出してくつろいでいいことにはならねぇんだが?というわけで、ギルティだ。大人しく闇に喰われろ」
勝手に部屋に侵入していた監督不届きなプリン頭総督を、変化させた右手で拘束しているところだった。ここのプリン頭曰く、俺に話があって家に転移してきたが、俺が不在だったので帰ってくるまで居させてもらっていたらしい。百歩譲って家の中で残っているのはいいが、冷蔵庫の中をあさった挙句に寛ぐのは論外だろ。俺の作ってたつまみと酒にも手を付けやがって……。
「ま、待て待て!俺が態々お前に会いに来たのはわけがあんだよ!」
「三竦み会談が駒王学園で行われ、それに俺が呼ばれているというふざけた話なら既に耳に入っているが?」
「え?マジで?」
「支取から聞いた」
「しとり?……あぁ、シトリー家の奴か。現レヴィアタンの妹」
俺の話にうなずきつつ、まだ中身が残っている酒を飲むプリン総督。それに対して俺はヘルズファングをそいつの顔面に突き刺した。
「まだ飲むか」
「お、おまっ!?普通殴るか!?これでも一応堕天使どもをまとめ上げる頭だぞ!?」
「うるせぇな。まとめて滅ぼすぞ」
「こいつ目がマジだ!!」
なんて傍から見たら物騒なことを言いながら、俺は無言で次の話を促す。こいつはまだ俺に話すことがあるはずだ。
「……ま、その様子から予想しているとは思うが、俺の話はそれだけじゃない。お前が倒したコカビエルのことだ。いや、正確にはお前らが、か」
「グレモリー達も含まれているのか」
「まぁ、お前一人だけでもコカビエルは死んでいたとは思うがな。報告に上がっている情報だと、リアス・グレモリーとその眷属たちが致命的な隙を作り、そこを狙ってお前さんが仕留めたという風になっていた」
「……となると、今後あいつらは何かと注目されることになったわけだ」
プリン総督の言う様に、あの時はグレモリー達が予想外のタイミングと予想外に強力な攻撃を行うことで隙ができた。これは赤龍帝の力を使ったとしても中々できることではない。そこを考えると今後、様々な勢力から一目置かれる存在になるはずだ。俺に関してはもうとっくのとうに知られているので全く関係ないが。
「元々の話題性はバッチリだからな。情報もそれだけ早く回る。……で、俺はさらにもう一個言いたいわけだ」
「あん?」
「お前、コカビエル倒した後、上空から高速で接近する鎧姿のやつを地面に沈めただろ」
「ん?あ、あー……まぁ、やったな」
「あれ、うちの身内」
「は?」
「コカビエルを回収しに向かわせたうちのメンバーなんだよ」
「だから?」
「お前、何の声掛けもなしにうちのメンバー攻撃しといてそれで終わりとか、流石にないだろ?」
何やら邪悪に笑っているプリン総督だがこちらにだって当然言い分はある。
「だったら、コカビエルを倒した直前のタイミングではなく、俺に向かって高速で突っ込まず、ついでに殺気も引っ込めてからにしろ」
「…………」
俺の言葉にプリン総督は頭を抱えてあちゃーと唸っていた。このことを貸しにでもして、何かやらせるつもりだったのかね。
「あの戦闘狂、我慢できなかったのか……」
「やっぱりディバイダーして正解じゃねえか」
プリン総督の話ではあの鎧の奴はコカビエルを回収するために来たらしい。しかし、あのコカビエルが唯の言葉で従うわけはない。回収という言葉からも無理矢理連れて来いという意思が見えるため、必然的にあの鎧はコカビエルを倒せるくらいの実力は持っているということだ。
久しぶりの本格的な戦闘の後で、コカビエル以上の奴と連戦を繰り広げるなんて流石に体が持たな―――――くもないが、精神的にかなりつらい。
「これをネタとして色々こき使ってやろうとおもったんだがなぁ」
「お前らそろいもそろって俺のこと酷使しすぎじゃね?そろそろ本気出すぞ?全力全壊でお前ら聖書組を潰して回るぞマジで」
「ハッハッハ、いくらお前が強くてもそれは無理ってもんだろ!」
「…………まぁ、そうだな」
「えっ、なんだその間。なんだその表情。冗談だよな?冗談だろう!?」
「どっちでもいいだろそんなこと。それより、てめぇの話はそれで全部か?もし全部ならさっさと帰れ」
しっしと右手を振る。
それに対してプリン総督は舌打ちを一つした後、よっこらせと腰を上げた。そして、転移用の魔法陣を展開してその上に乗ると、転移を開始する。
だが、完全に転移をする前にプリン総督はこちらを振り返り、真剣な表情を浮かべていった。
「そうだ。最後に一つだけ言っておくことがあった。野水黎凪……いや、反逆者。禍の団には気をつけろ。おそらく、近いうちに仕掛けてくるぞ」
意味深な一言と共に消え失せるプリン総督。
残ったのは俺と、あいつが散らかしていったゴミと皿だけ。
「……まだ、話あんじゃねーかよ」
一番最初に出ていけ的なことを言ったのは俺の方とは言え、どうして去り際でそんなことを言うのかね。アイツ。
しかも、このタイミングで言うってことは絶対何かあるってことだよな。………昔から色々なトップ同士の話し合いって狙われるのが相場だよなぁ……。
「はぁー………」
今日はもう寝よう。イツラックを飲んで。
―――――――――――――――――
「うぉー!ビバ、プール掃除!やっぱりプール掃除は最高だぜ!」
「兵藤ー。テンション上げるのはいいが、掃除を忘れんなよー。他の奴らもだぞ」
グレモリーが言った一足先にプールという言葉に露骨と思えるくらいテンションを上げる兵藤。アイツの表情とタイミングから何を考えているのか予想するのは容易い。ぜってぇエロいこと考えているわ。
別にそれが悪いこととはいわねぇけど、覗きとか直接的な行動に移すのは本当に勘弁してほしい。
「ところで、どうして野水先生が居るんですか。ここを頼まれたのは私たちだと部長から聞いているのですが………」
「塔城、常識的に考えてみろ。こんなこと生徒だけにやらせるわけないだろ。しかも、例外的にプールを使わせるとなれば尚更だ」
「……そういえば、そうですね」
「悪魔の常識は悪魔の常識だ。ここは人間界の学校ということを忘れんなよ」
「はい」
そう言った後、俺は彼らに声をかけてプール掃除に取り掛かるのだった。一応、俺自身も見ているだけではあれなので手伝うけどな。
その後、ちょっとしたひと悶着があったりしたものの、思っていたより早くプール掃除が終わり今は全員が水着に着替えてそれぞれプールを楽しんでいた。体力にものを言わせた動きが今回は物凄い役に立ったらしい。水は姫島が魔法で呼び出していた。……この場合水は普通に抜いていいのだろうか。
「イッセー。ちょっとオイル塗ってくれないかしら?」
「はい喜んで!」
オイルって塗った後プールに入ったら意味あるのだろうか。塗ったことないからわからないんだが……。
耳に入ってくるそんな会話を聞きつつ、一応度が過ぎることはするなと注意を飛ばしておく。そういえば、俺に対する何かしらの言及があると思っていたんだけど、そんなことはないな。もしかしたら自意識過剰だったのかもしれん。
「………野水先生」
「あん?」
「泳ぎ、教えてください」
唐突に行われる水泳指導のお願いに首を傾げる。
「別に構いやしねえが、何で俺?木場とか居るだろ」
「木場先輩は……あそこです」
塔城の指が示すほうを見ると、そこにはひたすら遠泳を行う木場の姿が。無駄にきれいなフォームだった。
「なんでもこの機会に、肺活量とか、筋肉とか鍛えるみたいです」
「はー……真面目なもんだ。よし、理由は分かった。簡単なことでいいなら教えてやるよ。近いうちに水泳の授業もあるだろうし、その時ようにな」
俺も腰をあげてそのままプールに向かう。正直あいつらなら掃除にかこつけて色々やらかし、そこら一体を水浸しにするところまで読んで水着を持ってきていたんだが、思ったより普通に終わったから使わなかったんだよな。
というわけで、さっさと水着に着替えた俺は塔城の指導をしたわけだ。その時は自分でも驚くくらい平和だった。
まぁ、その後兵藤をめぐって争った馬鹿二人の所為で色々台無しになってしまったけどな。
男の取り合いはいいけど、魔法はやめろ。
黎凪「なんで魔法をブッパするんだよ。いつもいつも、お前らの不始末処理すんの誰だと思ってんの?」
小猫「………もしかして、先生なんですか?」
黎凪「そうだ」
小猫「……………………なんかすみません」
木場「(無言の水泳)」