ハイスクールN×K(なんだかんだ)   作:トメィト

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大きな力にはそれなりのリスクが伴う。これは昔から言われてきたことである。


力の代償

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「おかえり。………?黎凪、疲れてる?」

 

「あぁ、悪魔との契約も正式に切れたことだし、良くて転勤で普通にクビになったと思ったんだが、どうやら俺の全力があいつらの想像をはるかに超えていたらしくてな。監視も兼ねてこのままあそこで働かされるらしい」

 

「黎凪、もしかして、困ってる?……悪魔や堕天使、天使たち潰す?」

 

「やめろやめろ!んなもんさらに面倒事が加速するわ」

 

 三大勢力陣トップによる和平の成立やテロリストからの襲撃、白龍皇の裏切りそして、無限の龍神オーフィスとの激闘。

 

 このおおよそ一日で起きたと思えないような濃い出来事を一日で体験したある意味奇跡の日から既に一か月の時間が過ぎ去っていた。夏休みまで秒読みと、学生たちが嫌でも浮足立つこの季節、黎凪はそんな学生たちとは裏腹に超絶ブルーだった。

 

 ちなみに、上で黎凪が愚痴った内容は、カテレアの襲撃と黎凪は知らない赤龍帝VS白龍皇戦の影響で壊れた校舎を直すために一週間の時間を置き、校舎がしっかりと直ってから出勤したときにいわれた言葉である。本人が言う通り、アンリミテッドモードは流石にやりすぎだったらしい。さらに追加情報として、アザゼルがグレモリー眷属を鍛えることと黎凪の監視を並行してオカルト研究部の顧問として駒王学園にやって来たのである。厳密には教師ではないアザゼルの負担が黎凪に来ているのである。これは泣ける。

 

「なぜ?黎凪は強い。天使や悪魔、堕天使がどれだけ来ても勝てる。なのになぜ言うことを聞いている?」

 

「社会っていうのは力(物理)だけで回っているわけじゃねえの。これは人間の社会だけじゃねえ。天使だろうと悪魔だろうと、堕天使だろうと変わりゃしねえよ。後、俺はお前みたいに無限じゃなくて人間だから。流石に物量で攻められられるのはきつい」

 

 グレートレッドを除くとぶっちぎり文句なしの最強であるオーフィスは、グレートレッドがやってこないこの世界において敵なしである。それ故に、彼女は人間社会をはじめとする集団生活を知らないし、何かあれば力で解決できるためにこうして弱いはずの存在に下っている黎凪が理解できなかった。

 首をコテンと傾げるオーフィス。その反応については予想していた黎凪は特にツッコミも文句を言うことはなかった。

 

「はぁ……飯でも作るか……。ちなみにオーフィス。禍の団に帰る気は?」

 

「ない。あと、ご飯は我も食べる」

 

「……ハァー」

 

 今度は遠慮知らずな無限の龍神様に溜息を吐きつつ、玄関を通りすぎ、台所に向かう途中にあるリビングに仕事用の鞄をホッぽり投げる。すると、後ろの方で鞄をせっせと片付けるオーフィスの姿があった。この一か月で随分と慣れたようで、その姿はまさにお父さんの世話をする娘だった。

 

 まぁ、そんなことを思いながら台所に近づくと、誰もいないはずの台所から黎凪の鼻腔をくすぐるいい匂いがしてきた。その匂いのおかげでお腹の虫も声を上げ始めている。だが、それ以上に台所に居る人物の予想が付き、足早に台所へと向かう。

 ちょっとばかり、急いで向かった台所には、黎凪の予想通りの人物……黒歌がエプロン姿で料理を作っていた。

 

「おかえりー。ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ・た・し・にゃん♪」

 

「おう、喧嘩売ってるっていうんなら買ってやるぞコラ」

 

 そこまで深い関係ではないが、そこそこ長い付き合いである二人。お互いのことはある程度わかっているのである。黒歌はその見た目と言動からこういったことは何のためらいもなくやりそうだと思われがちだが、実は黎凪といった知り合いにこういった冗談はしないのだ。

 そのこともあり、黎凪は妙に警戒すらしていた。まぁ、先程も言った通り相手を理解しているのは黎凪だけではなく黒歌も同じである。裏を疑われている黒歌は、今まで見せたことのないくらい柔かく微笑みを浮かべた。

 

「………ちょっとしたお礼だにゃん。……黎凪が私のはぐれ解除をしっかりと広めさせてくれたんでしょう?この前、冥界に行った時に耳に入って来たの。それで、本当かどうかを確かめるためにまた白音に私の存在をちらつかせてみたんだけどね、殺気じゃなくて戸惑いを含んだ声だったけれども『姉さま……』って言ってくれたのよ。……まぁ、これで仲が回復したわけじゃないけど、こうして希望を見せてくれたのは黎凪のおかげなの。本当に、ありがとう」

 

 普段からつけているあざとい語尾を途中で無くし、真剣に感謝を述べる黒歌。普段は飄々としている黒歌がそんなことを言うので黎凪は調子がくるってしまいそっぽを向いて口を開く。

 

「……別に、資料を集めたのは事実だからな。何より、あいつらがそれを行ったのは俺の力で逆襲されることが恐ろしかったからだろうよ。その力もお前のために開放したわけじゃない。だから、たまたまだ。俺に感謝すんな」

 

「あはは!照れてる照れてる♪」

 

「うっせえ!………んで?飯はもう食えんのかよ?」

 

「ふふっ、大丈夫。もうすぐできるにゃん。………ところで、ずっと気になってたんだけど、その子どもは誰なのにゃ?」

 

「我、オーフィス」

 

「らしいぜ?」

 

「にゃはっはっは!面白い冗談を言ってくれるじゃにゃいか。こんな女の子があのオーフィスなわけ……」

 

「ん」

 

 オーフィスを見て笑う黒歌に対して、オーフィスは黎凪にいわれて隠ぺいしていた自身の力を一瞬だけ引き出す。その一瞬だけでも膨大な魔力が渦巻き始めた。黎凪はその魔力を瞬間的に吸収して外に漏れるのを防ぐ。

 

「この馬鹿オーフィス!むやみに力を開放するなっつただろーが!」

 

「だから一瞬だけにした」

 

「それでも、急にされると対応に困るんだよっ!」

 

 最終的にしわ寄せがくる黎凪がオーフィスに食って掛かる。だが、彼女は首を傾げるばかり。やはり、一か月ではそうそう変わったりしないらしい。黒歌は急にぶつけられた魔力の影響で呆然としていた。

 そこから彼女が復活するまで約、十分の時が過ぎたという。ちなみにできた料理はしっかりと黎凪とオーフィスが食べました。黒歌の分を残して。

 

 

 

―――――――――

 

 

 

「黎凪、もしかして禍の団に入ったのかにゃん!?」

「んなわけあるか!」

 

 オーフィスショックから復帰した黒歌の第一声、それに対して黎凪はノータイムでツッコミを返す。普段から胃痛の苦悩を抱えている黎凪が、入った瞬間に人生終了状態になりそうなテロリスト集団に入るわけがない。当然、黒歌もそんなことはわかり切っているのだが、反射的に聞いてしまったのである。ま、テロリスト集団のボスであるオーフィスが家に居座っているのだから当然だとは思うが。

 

「そ、そうだにゃん。黎凪がそんなハイリスクなことするわけないわよね。……なら、どうしてオーフィスがここにいるのにゃ?」

 

「我、黎凪を強くして、グレートレッドを倒す」

 

「こいつが勝手に言っているだけだから気にすんな。そんな気は毛頭ねえから」

 

「わかってるにゃん」

 

 黒歌が食べ終えた食器を台所に下げて、ササッと洗うと黎凪は帰り際に冷蔵庫から缶ビールを一本とつまみになるものを取り出してリビングに戻る。

 そして、プルタブを開けて中身を一気に呷った。半分くらい飲み干したところで缶ビールを置いてつまみに手を付け始める。

 

「おー……どこか不機嫌なのかにゃー?」

 

「最近、面倒事が多くてな。夏休み中も、もしかしたらグレモリー眷属に引っ張られて冥界に行かされる可能性が出てきやがった」

 

「なぜ?」

 

「あいつらは毎回長期休暇になるたびに実家に帰っているんだが、今回はレーティングゲームをするらしくてな。鍛えるためにアザゼルも向こうに行くし、監視が誰もいなくなってもしかしたら……って感じだ。ま、奴らは俺に強く出ることはできないだろうから強制はないだろうけどよ」

 

 今、三大勢力と黎凪の関係はかなり微妙なところだ。彼らとしても自分たちを全滅させることが可能な力を向けられたくはないが、野放しにもできない。

 黎凪自身に敵対の意思はなくとも、鬱陶しくちょっかいをかけてくるなら多少被害がでても報復に動く。お互いが得するラインはあるのだが、少しでもバランスが崩れれば、致命的な間違いが起きてしまうようなバランスなのだ。

 そのおかげでグレモリー眷属とは元々そこまで仲が良くはなかったので関係ないのだが、生徒会メンバーであるシトリー眷属たちとは微妙な空気が流れるようになってしまい大変仕事が進まなくなっていた。

 

「………ま、私は白音と仲直りするっていう超重要事項があるから手伝えそうにないにゃ」

 

「手伝いなんているか。ガキじゃねえんだ。自分のケツくらい自分で拭くさ」

 

 出した缶ビールを飲みほした黎凪は空き缶を洗って捨て、つまみを全て胃の中に収める。

 

「俺はもう寝るからな。出ていくにせよ、泊まるにせよ、自分で勝手にしてくれ」

 

 それだけ言って彼はこの日就寝した。

 だが、次の日の朝。問題は起きる。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ程の力を所有しておきながら、それに己を見失わない精神力とひけらかさないその謙虚さ!やはり、君は俺達英雄派に必要な人間だ!」

 

 

 早朝から自宅のチャイムを鳴らす存在が居たので黎凪が渋々ドアを開けて外を覗いてみれば、漢服に身を包んだ黒髪のイケメンがよくわからない電波を飛ばしていた。いらいらが募っていく黎凪はなるべく感情を殺した声で目の前の人物に問いかける。

 

「誰だてめぇ」

 

「俺は禍の団、英雄派のリーダー。曹操だ」

 

「テロリストじゃねえか!!」

 

 黒髪のイケメン改め、曹操から自己紹介を受けた黎凪は反射的に変身してインフェルノディバイダーをその顎に見事にクリーンヒットさせたのである。

 

 

 

 響き渡る怒号、宙を舞う人の身体。胃薬を求める自身。

 

 

 今日も今日とて、彼の一日は騒がしいことが確定したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




大きな力にはリスク(苦労)が伴う。要するにあがくな運命を受け入れろということです。

次回予告

曹操「俺の仲間になってくれ!」
黎凪「インフェルノディバイダー!」
曹操「一緒にこの世界を変えよう!」
黎凪「ヘルズファング!」
曹操「くっ、言葉では通じないか。なら、俺が勝ったらついて来てくれ!」
黎凪「いいぜ、付き合ってやるよ。十秒間だけな!」(魂喰らう黒き獣発動)
曹操「イワーク!?」

次回、曹操死す!


嘘ですよ。
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