ハイスクールN×K(なんだかんだ)   作:トメィト

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話が進まない&停滞してきたよハルトォォォォォオオオ!!


ちがう、そうじゃない

 

 ベシャリ。

 高いところからトマトなどが落ちたときに聞えてきそうな、何とも言えない音が黎凪の耳に届く。音の発生源は当然、テロリスト集団に所属していることを自ら明かし、インフェルノディバイダーを喰らった曹操だ。

 結構な高さまで打ち上げられ、普通だった例に出したトマトのごとく体内汁(血液やその他諸々)をブシャーしてもおかしくなかったのだが、意外なことに曹操はフフフ、と笑いながら再び立ち上がった。足は生まれたての子ジカの如く震えていたが。

 

「そ、そうだ。それでこそ、俺が求めた人間だ……!やはり、君には俺たちと共に来てもらわなければ……」

 

「何勝手なことほざいてやがんだ。さっきも言った通り、自ら英雄を自称するイタイ集団に入るわけねえだろ。しかもテロリストと来たもんだ」

 

 テロリストであり、最強の中二集団というある意味で最強の組み合わせに黎凪は不機嫌そうな顔を隠すことなく言った。

 

「確かに今は自称どまりだ。だが、俺たちがなすべきことを成した後は真の英雄となり、誰もが認めるものとなっているさ」

 

「お前のその自信は何処から来るんだ」

 

 というか、早く帰ってくれないかなというのが、黎凪の本音である。

 今日も今日とて仕事が待っているのだ。修行とか言って、急に十日も休むことができる学生や、仕事をほっぽって世界の破壊とか企てている超時季外れな中二病系テロリストとはわけが違うのである。

 自分に対して強硬手段を取るのであれば、情け容赦なく殺すのだが、先制攻撃としてインフェルノディバイダーをぶっぱし、この曹操というものが自分の前で何かをやらかしていないとなれば問答無用で攻撃するわけにもいかなかった。それに、テロリストの一部とはいえ、リーダー格のモノを殺すとそれ以降も割と面倒臭かったりするということもある。

 まぁ、そんなことは二割にも満たない建前のようなもので、実際は寝起きで処理するのが面倒くさいからである。もし、これが仕事帰りなどであれば曹操はこの世に居なかっただろう。

 

「それは俺の受け継いだ魂から―――――いや、これは次来た時にしよう」

 

「もう来んな。マジで」

 

「今日は朝早くからすまなかったな。次はもっと時間を考える」

 

「おい、耳腐ってんのかてめぇ」

 

「次は俺と志を共にする仲間も連れてくるさ。きっと君も俺に賛同してくれる。というわけでさらば!」

 

「だから聞けって!」

 

 何やら勝手に自分を語りだし、勝手に納得し、勝手に再びやってくることを伝えた曹操は早々にその場から消え失せた。その後に残されたのは曹操によって多大なるストレスを抱え込んだ黎凪だけだった。

 

「…………………………」

 

 とりあえず、今日の朝はイツラックではなく、バファリンを服用することになった。

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

「先生。話があります」

 

「わりぃな。ここ最近は忙しいんだよ」

 

 朝から英雄を自称する変人に絡まれてストレスがマッハな俺。しかし実を言うと学校に来たら来たで面倒くさいことが待っているのである。いつも通りの仕事をしつつ、グレモリーや支取達から遠巻きに監視されるがごとく見られる。資格を持ってないがゆえに生じるアザゼルの弊害をフォローする。授業を行う等々、職場をクビにならなくてよかったと思う反面、普通にクビになっておけばよかったと考えてしまうくらいの労働環境になっていた。

 

 そんな中、帰りのHRを終えて教室を出ようとする俺に塔城が声をかけてきた。その表情はかなり真剣なものであり、彼女にとって重要な案件なのだということが察せられた。が、残念。教師も大人で社会人。上からの命令には逆らえず、押し寄せてくる仕事を突っぱねることもできない。俺としては一応生徒である塔城の心情を加味して今すぐ相手をしてやりたいところなのだが、生憎今日の仕事は期限が短いのだ。

 

「でしたら、夜でもいいです。私もオカルト研究部での活動がありますから」

 

「そこまでしてか」

 

「はい。私にとってこれは今、何よりも重要なんです」

 

「ま、分かったわ。俺は職員室で仕事をしてるから、そっちが終わったタイミングで来な」

 

「はい」

 

 

 教室から出た俺は、職員室に行き、今まで地道に溜まってきてしまった仕事をこの機会で一掃することを決意するのだった。オカルト研究部の活動時間は不明だが、普通に20時くらいはやってそうだしな。アザゼルの所為で溜まった仕事もあるし久しぶりに本気出す。

 

 ばれないように闇を使って書類の整理などを行う。フフフ、これこそが、仕事に追われに追われた俺が編み出した技だ。これを行うことによって普段の三倍もの処理速度を手に入れることができる。その分、脳の疲労が酷いことになるけれども、せっかくやろうと思えたのだ。仕事や面倒なことはそのやる気がある時に片づけるのが一番いい。

 

 そんな感じで、周囲が暗くなり、職員室に俺以外誰もいなくなってしまうような時間にようやく塔城が職員室に顔を出した。その表情はいつもながらの無表情に近いものであるが、今朝よりも一層緊張の色が濃くなっていた。

 

「すみません。遅くなりました」

 

「別に構いやしねえよ。自分から待つっていたんだ。自分から言ったことでキレたりするほどの余裕がないわけじゃねえ」

 

 だからと言って常に余裕たっぷりなわけじゃないけどな。ここ最近はとんでもない勢いで厄介事が舞い込んでくるから比較的いっぱいいっぱいだし。いや、何も知らない生徒に愚痴ったりはしないが。

 

「んで、話っていうのは?」

 

「…………単刀直入に聞きます。野水先生。貴方は私の姉を……黒歌を知っていますね?」

 

「あぁ」

 

 黒歌なら今おそらく家に居ると思う。

 今朝の段階で話をしてみたが、オーフィスと共に居座る気満々だったぞアイツ。なんでも逃亡生活がようやく終わりを告げたのでゆっくり落ち着ける拠点が必要なんだとか。別にその考えは否定しないが、自分で探してくれよとは思う。まぁ、代わりとして、オーフィスの存在がばれないように結界を張ってもらったので許しているが。オーフィス?アイツは無理だ。実力が足りない。

 

 それにしても、まさか塔城が黒歌の愛してやまない妹の白音だったとは。よくよく彼女に意識を向けてみると、悪魔の気配に交じって黒歌と同じく猫趙の気配を僅かに感じ取ることができた。黒歌とは違って微弱すぎて全く気付かなかったわ。

 

「そうですか………。あの、部長から聞いたことなんですけど、先生が姉さまのはぐれ悪魔認定を消してくれたんですよね?」

 

「結果的にな」

 

「では、姉さまと先生は知り合いですよね?」

 

「あぁ」

 

 むしろ今では同居人にランクアップをはたしているまである。

 

「なら、先生を通して姉さまと接触することはできるんですか?」

 

「おう」

 

 俺の答えに塔城は体を震わせた。

 塔城にとって、黒歌は唯一の肉親であり、能力に暴走して悪魔に追われることとなった犯罪者となったものだった。だが、それがこの前の会議で裏返った。現魔王が己の政治能力を見せつけられ、本腰を入れたことから上層部の政治的攻撃を翻し、正しい情報が公開された。そのおかげで今の黒歌は犯罪者ではなくなった。

 

 ま、色々複雑だろう。

 自分が愛していた肉親が犯罪者となりその愛は憎悪とまではいかなくてもマイナスの感情に振り切った。しかし、それが誤解と判明した今では姉への感情はだいぶごちゃ混ぜになっているはずだ。

 

「……で、これらを聞いて塔城はどうするんだ?」

 

「………すみません。分からないんです。自分の中で整理がついていないと言いますか、もうどうしていいのかわからなくて」

 

「けれど居ても立っても居られなくなって、俺に聞くだけ聞いてみようってことか」

 

 コクリと首を揺らして肯定する塔城。

 そうだな。本来ならこのことは俺に取って何の関係もなしい、家族の問題に教師が介入するなんて事態は創作物の中だけになってしまった今日だが………まっ、今回だけは一応フォローを入れておいてやるか。あの妹キチならこの借りはかなり大きいものになるだろうからな。

 

「当事者じゃない俺には大したことは言えねえが、これだけは伝えといてやる。……近いうちに向こうからやってくる。だから、その時に自分の思いを考えを全力でぶつけに行け。どっちも生きてんだ。好きなだけ言い合って来い。万が一に何かあったら俺に言ってくれてもいいぜ?家庭訪問をしてやるよ」

 

 ま、あの妹キチに限ってそれはないと思うがな。アイツ、変なところでヘタレるから。万が一、あるかもしれない。

 

 そんなことを考えていた俺だったが、塔城はその間驚いたように目を見開き、その後、わずかに表情を柔らかくした。

 

「……ありがとうございます。先生」

 

「気にすんな。これも仕事だ」

 

 この行動の決定打が黒歌に対する貸し狙いってことに罪悪感を感じる位の感謝を貰った俺。

 これからは善意100パーセントで人助けすることも覚えようと思ったそんな一幕だった。

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

「で、帰ったらこの状況っと……」

 

 塔城の悩み事を解決……ではなく先送りにしたのち、普通に帰宅した俺だったのだが、いざ家に帰ってみると謎の霧が周囲を囲っていた。

 ……おかしい。確かにうちは黒歌の結界が張られているが、こんなミストタイプではなくもっとスタンダードなものだったと思うんだが。しかも、俺までこの結界は弾いている。黒歌が張った奴ではありえない効果だ。

 緊急事態ということで捕食者を発動、いつもの服と大剣を装備すると結界をこじ開けて中に入った。

 

 そこで俺が目にしたものは―――――――

 

「ん?黎凪、おかえり」

 

「あっ、おかえりにゃさい」

 

 再び登場エプロン姿の黒歌と相変わらず痴女っぽい恰好のオーフィスが今朝強襲してきた曹操とそれ以外の数人を纏めて地面に沈めている光景だった。やだ、ナニコレ……。

 というか、今朝のことがあったのにこいつはもう来たのか。いくら何でも早すぎだろうが。

 

「オーフィス、黒歌。状況説明」

 

「ん。こいつら、結界張って侵入してきた。黎凪、こまると思ったから、潰した」

 

「ご苦労。黒歌、詳しい補足」

 

「今朝も言っていたらしいけど、黎凪を勧誘しに来たらしいにゃ。今度は実力行使も辞さないって言って、幹部含めて全員で来たらしいのにゃ。オーフィスに潰されてたけどにゃん」

 

「わかりやすい説明をありがとう。後でご褒美をやる」

 

「マジで!?」

 

 白音と遠慮なく話し合いができるという報告を褒美として贈呈しようじゃないか。

 

「黎凪、我にも」

 

「はいはい」

 

 褒美をせがむというひと月前のオーフィスでは考えられない発言に驚き、それを適当に流しつつ、返事がない屍擬きとなっている曹操の頭を蹴っ飛ばす。

 人間の癖に妙に頑丈じゃねえかこいつら。オーフィスとやりあったっていうのによ。俺の時は喰らったら速攻でばらばらになりそうな攻撃ばかりだったっていうのに。

 

「我が手加減した」

 

「んあ?お前が?珍しいじゃねえか」

 

「ん。黎凪、禍の団の情報、欲しいと思って」

 

「なるほど」

 

 社会の仕組みには未だ理解はないものの情報の重要さは気づいたのか。そこまで行ったら、常識を身につけるまでもう少しだな。 

 と思いつつ、闇を使って曹操を含めた連中を拘束し、曹操の腹をパンチして起こす。早く起きろコラ。

 

「う゛っ!?げほっ!………ん?ここは………?」

 

 腹を殴られたことで咳き込みながらも意識を取り戻した曹操。そして、俺の顔とオーフィスの顔、そして黒歌の顔の順に視線を移動させた。

 流石のこいつでも、自分たちのトップがこんなところに居ることは予想外だったのか全員に視線を移した後俺とオーフィスを交互に見やる。

 

 そして、曹操はその口をゆっくりと動かして言葉を紡いだ。

 

「………そうか。野水黎凪、君は既に禍の団に入っていたのか」

 

 ちがう、そうじゃない。

 

 

 

 

 

 

 




今の黎凪の近辺情報


バファリン「ん?ここは……」
イツラック「ようこそ。くそったれな職場へ。歓迎しよう、盛大にな」


ストレス「青年よ。これが絶望だ」
黎凪「闇に喰われろ!(切実)」


こんな感じ。


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