来客用の腕章を用意していると、すぐにその件の教会組がやって来た。全身を覆うローブに自分の身長に迫るくらいの大きな物体を背負っている姿はどう考えても不審者である。こいつらよく職質されなかったな。もしかしてお巡りさんもこいつらに関わりたくなかったのだろうか。もしそうなら職務怠慢だが、俺とお友達になろうぜ。すっごくわかるから。
心中で自分の冷静さを保つために現実逃避を行いつつ、教会組に腕章を渡たす。渡したところで俺の隣にいる支取が教会組に対して口を開いた。
「一応、リアスたちには前もって報告してありますから問題はありません。彼女たちはあちらに見える旧校舎に居ます。くれぐれも、問題は起こさないように」
「それはそちらの出方次第たな。少なくとも我々は戦いを望んではいない。貴様らはどうか知らんが、な」
なんでこいつ喧嘩腰なの?相手が悪魔なのはわかってるけど、話がしたいとか切り出しておいてこれはなくないか。大丈夫なの?こいつらをプライドの塊みたいなグレモリーにぶつけて大丈夫なの?
「ふっ、冗談だ。いくら何でも魔王の妹を殺したら大問題になる。もし戦うことになっても適当なところで切り上げるさ」
ちげーよ、そうじゃねーよ。なんでそこまで自分の実力に自信が持てるのか知りたいんだよ。その自信から生み出される慢心がさらに生み出す二次被害を俺は心配してんだよ。別にグレモリーがぶっ倒れようがお前が死のうが関係ないけど、この街で厄介事が起きたら他人事で済まされねえんだって。
教会側も何を考えてんだ。こんな脳筋を二人だけ悪魔の根城(不本意)に送り込むとか完全に捨て駒扱いだろ。ここにはコカビエルもいるしよ。
俺と支取の心中に多大なる不安を残して教会組は旧校舎にあるオカルト研究部の部室へと向かって行った。
「……なぁ、支取。俺はすっっっっごく不安なんだが……」
「流石ですね先生。私も同意見です。ひと悶着起こる気しかしません」
二人そろって溜息を吐く。
仕方ない。今やっている仕事が終わったら様子を見に行くとしよう。あのまま放置は流石に不安で仕方がない。
「そういえば先生」
「あん?」
「実はこの前のコカビエルの件でお姉さま……魔王セラフォルー様に連絡を取ったんですけど……その、妙なことを言っていたのです」
「妙なこと?」
「はい」
そうして、彼女は自分が魔王セラフォルーとした会話の内容を語った。
――――――――ソーナとセラフォルーの会話
「はーい!ソーナたん、愛しのお姉ちゃんですよ!珍しいね、ソーナたんから連絡をくれるなんて!もしかしてお姉ちゃんが恋しくなった?言ってくれれば仕事をダストシュートしてでも会いに行くよ!」
「しっかりと仕事をしてくださいお姉さま。後、次ソーナたんとか言うのであればもう口ききませんから」
「本気で泣いちゃうからやめて!………それで、本当にどうしたの?何か困ったことでも起きた?」
「はい。間違いなく今までの中で一番の困りごとです。………コカビエルがこの街に来たという情報を貰いました。信頼できる伝手からの報告なので十中八九事実だと思います」
「……コカビエル。コカビエルかぁ……。確かにそれはソーナちゃんやリアスちゃんには早いかもねー。うん、よく報告してくれたねソーナちゃん。偉いよ」
「…………ありがとうございます。お姉さまにはコカビエル対策としてこちらに増援を送ってほしいのです」
「んー……コカビエルクラスの堕天使をどうにかする戦力は今動かせないんだよねー。本当は私が行ってあげたいんだけど、魔王職だからそう簡単に動くわけにはいかなくて……」
「そうですか……。正直、私たちだけではどう考えても勝てません。それどころか時間稼ぎができるかどうかすら怪しいです」
「ソーナちゃんなら大丈夫!……って言いたいところなんだけど、確かにそうだね。えーっとどうしようか………あっ」
「どうかしましたか?」
「ソーナちゃん。確か駒王学園には野水黎凪って先生が居たよね?」
「はい。こちらの事情を知っている先生で、本当に……本ッ当にお世話になっている先生です」
「そっかそっか。だったら、そのクロ君に頼んでみるといいよ。多分あの子ならコカビエルもなんとかしてくれると思うから」
「えっ、それはどういうことですか?事情を知っているだけの先生ではないのですか?」
「ふっふっふ、それは本人に聞いてみた方がいいよ。でも、一応私たちも援軍を送る準備をしておくから、本当に大変なことになったら呼んでね!サーゼクスちゃんには私から言っておくから!じゃあね!」
「えっ、ちょ!?お姉さま!?」
――――――以上、終了。
「と、言っていたので」
「あのくそ女ァ……!」
結局俺に丸投げしただけじゃねえか!
アイツ、十中八九コカビエルの始末を俺にやらせるつもりだな。多分、ここでコカビエルと戦いになれば街一つ吹っ飛ぶような状態に絶対になる。特にあの戦闘馬鹿がこの街に来た理由もどうせ戦争を起こすために魔王の妹である支取とグレモリーにちょっかい掛けようぜって感じだろうし。例え街がぶっ飛ばなくても俺の近くにあいつが来ることは確定的に明らかだ(ブロントさん感)
「あの、聞いてもいいですか?セラフォルー様が先生を頼った理由を」
「昔ちょっと有名なはぐれ狩りだっただけだ。今は廃業して教師してるけどな」
このことに関しては特別最後まで隠しきりたいということではないので普通に答える。別に活動していた時の名前までは名乗ったりしないが戦っているところを見られたら普通にバレるので言わなくてもいいだろ。面倒だし。
「………コカビエルを倒せるくらいのはぐれ狩り、ですか」
「確証はねえけどな」
ここで一端話を終わりにした俺たちはそれぞれが自分の仕事に取り掛かることにした。一応簡単にコカビエルが出てきたら支取が俺に連絡を入れて、処理することになった。………あのくそ女には後で報酬を請求しておこうと思う。
――――――――――――――
思ったよりも仕事が早く終わった俺は先程送り出した教会組がやらかしていないかどうしても心配だったため旧校舎の方へと足を運んでいた。
そんな俺の耳に届いてきたのは甲高い金属音。ちょうど剣と剣をぶつけたときになるような音だ。
「何で話し合いに言ったのに、戦闘音が聞こえてくんだよ……」
やっぱり駄目だったじゃねえか。はじめから期待してはいなかったけどさぁ……。もう少し考えて行動してほしい。
そして続いて響く轟音と地震。おいおいおいおい!今度は何やらかしたんだ!?
今の音は確実にやばい奴だったと確信した俺は早歩きをダッシュに変更して現場に急行する。
認識阻害の結界を抜けてたどり着いた先には、あの怪しいローブを脱いで全身タイツのような恰好で戦う教会の連中とそれに対峙する兵藤と木場の姿だった。それだけではない。教会組の一人に関しては地面に大穴を開けてくれちゃっているのである。
その光景を視界に居れた瞬間強烈なめまいが俺を襲ったが、何とか立て直し、あの馬鹿どもを止めるために大声を出した。
「てめぇらぁぁぁぁ!ヴァカかぁぁぁぁあああああああああ!!」
『!?』
こちらに気づいたのか今まで戦っていた四人とその戦いを眺めていた残り四人もこちらの方を向いた。
「なっ!?野水先生!?」
「そんな!どうして先生が……ここには認識阻害の結界を張っているのに……!?」
兵藤と姫島が何やら驚いているがそんなことはどうでもいいんだ重要なことじゃない。
「双方剣を収めろ!こんなとこで、こんな時間に暴れるんじゃあねえよ、このクソガキども」
「なんだ。先程の教師か。自分の生徒がやられそうになって出てきたのか?しかし、やめておいた方がいいぞ。怪我ではすまん」
「そ、そうだぜ先生!どうしてここに入ってこれたのかはわからないけど、普通の人間の先生には!」
「心配してくれるのは嬉しいんだがな、兵藤。そもそも、戦いなんてもんをするな。ここは学校で、勉強するところなんだからよ」
ついでに地面も抉らなければ問題ないんだがなぁ……。
俺の言い分に納得したのか、教会組二名と兵藤はそれぞれ獲物を下ろす。しかし、木場だけは剣を持ったまま、青髪の方の教会の奴に向かって攻撃を仕掛けた。
だから面倒を起こすなと。
仕方がないので、木場の剣を右腕で受け止め握り潰してから、獲物を潰されて呆けている木場の腹に左手を放つ。
ここでまた戦いを始められたら困るんだよ。
「おい、そこの痴女ども。話し合いは終わったのか?」
「んなっ!?痴女ですって!?これは教会のれっきとした戦闘服よ!」
マジか。変態が多そうだな教会。大丈夫なのか。
さりげなく教会の行く末が気になる。
「話し合いなら終わっているとも。唯、そちらの悪魔君たちが私たちと戦いたいというのでねこうして相手をしていたんだ」
「何言ってんだ!先にアーシアを殺そうとしたのはお前達だろ!」
「黙って俺の質問に答えてろガキ共。今の俺は一段と機嫌が悪ィんだよ」
余計なことを話して再び戦闘に発展しそうになった兵藤たちを殺気を放つことで黙らせる。これ以上されると本気でキレそうになるから勘弁してくれ。
「要件が済んだらさっさと出ていけ。これ以上てめぇらがここに残っていたらろくなことにならん」
「あぁ、そのようだ。そうさせてもらおう。……リアス・グレモリー。先程の話忘れるなよ」
それだけ言って教会組は消えていった。
二人の姿を見送った俺は物凄く長い溜息を吐くと職員室に戻ろうとする。するとグレモリーが俺の目の前に立ちふさがった。
「祐斗を止めてくれたこと、感謝するわ先生」
「ありがたがるくらいなら自分の下僕の手綱くらい自分で握っとけ」
ほんと、頼むよ。
「ハァー……今日も一日疲れた……」
あの後、教会組が空けた穴に関しては何故か俺が処理することになった。何故か。まぁ大体権力の所為なんだろうけど。
「飯作る気にもならねぇ。コンビニに行くか」
そうして近くのコンビニに入る。
適当に中を物色していると、俺はある棚の商品に目を止めた。
「………」
その出会いはまさに運命的だったと言えるだろう。
俺は晩飯とそれを籠に入れて、レジへと向かった。
これこそが、支取とも肩を並べる戦友との出会い。
そう彼の名は、そう――――
――――イツラック(胃薬)