[習作]哀の果てに   作:解法辞典

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本編との繋がりはないです。
AHで派生する関係無いギャグルートだと思って頂ければと思います。
四ヶ月近くなるんだな、と思いつつもやっとまともな文章を書ける様になってきたと感じます。

こんな感じで細々と続けて完結まで行くんだろうと推測しつつ感想が増えるたびに小躍りする自分がいる事実。一日で三件来たら叫ぶかもしれません。

感想お待ちしています。


ギャグルート其のニ

「パクリか。」

「おい、馬鹿止めろ。」

 先日、後輩の三人から生徒会室に来るようにという内容の招待状を貰った。勿論生徒会の先輩である僕達の4人の全員に配られたものだった。急遽、では無いものの、後輩たちが準備をしているであろう間に僕の根城である図書室に集まって話している所であった。初めに僕達が催した歓迎会のお返しなのだろう。別に悪意を込めたつもりは無いが、ポロっと口から零れた言葉に反応したカイケイに頭を叩かれてしまった。

「そうよ。折角の行為だもの、受け取らないと失礼でしょう。…、たまには幸せになりたいし。」

「ローゼン、何か言ったか?」

 丸机を囲んでこの学校の権力者のトップが番茶を啜っているとは、何とも間抜けな光景である。本当はみんないつも仕事を真面目にやっている。けじめが大切だとか、全校集会で言わないといけない分必死に取り繕っているのだ。まあ、基本的に真面目な人間が多いので、取り繕っているのはカイケイと僕くらいのものだ。

「それより、やっぱり手料理だよな。女子の手料理とか食べる機会なんて、そうは無い。何処かの生徒会長様が女子人気を全部かっ攫って行くからな!」

「その代わりカイケイは男子受けが良いじゃないか。」

 さらりと、受け流すジン。嬉しくねえんだよ、というカイケイの怒号が響く。実際、見た目を除けばカイケイは漢の中の漢だから、本人の非公式で舎弟を名乗る人間がちらほら居たりする。カイケイは健全な男子学生なので校門で整列して待たれていても嬉しくないと項垂れている。まあ、何人かヤバイのが紛れているからそろそろ取り締まっても良い頃合だとは思う。

 見た目を除けばと言っても、身長が足りないだけで大きな問題は無い。一番の問題は漢らし過ぎるといった所だろうか。

「カイケイは誰彼構わずナンパしてるのが駄目なのよ。」

「寧ろ恐喝してんだよ。違反行為をしてる奴に『つらかせよ』って言ってるだけなのに向こうが勘違いして、訳わかんない噂が一人歩きしてんだよ。」

 どうせ自分が弄られる事が分かっているカイケイは、もう良い時間だろうと言って茶請けの片付けを始める。自分だってジンと御令嬢の関係を何時も囃し立てているのだからやり返されても強くは反論できない事を痛感している事だろう。

 

 

 

 

 

 親睦を深めるなんて銘打って開かれたこの前の歓迎会ではあったものの、普段は図書室に篭っての作業をしているのでノエル以外の二人とは親睦は深まって居なかった。悪名が高い魔眼の事を除けば僕を生徒会書記として知られていない事から分かる様に、定例会と全校集会の時くらいしか図書室を出て仕事をこなさないのが現実だ。顧問の先生にすら顔を忘れられる事がしばしばある。そんな訳で僕が廊下を歩いているのは愚か、図書室から出てくる事が中々に珍しい。文化祭が近くなれば忙しさが増して僕も走り回らなければならなくなるが、まだ遠い話だ。

 少ない機会を活かして少しでも仲を良いものにしようとは思うものの、結果的には思いの人同士で話を始める事は明らかなので、好意だけを受け取っておくことにする。見ているだけで、ジンが少しばかり芝居掛かった喋り方を意識しだしているのが常だったり、ナナヤがカイケイに猛烈なアタックを仕掛けていたりして入り込む隙が無いのだ。人のことを言えた身分では無いが、生徒会に入って居る人物は基本的に性根が腐っているのが大半なので精神安定がとれるのは素晴らしいことだと思う。

 皆が憧れる生徒会長様も大分いい感じに狂っている。僕がルームメイトだから知っている事だが寝言で高笑いを始めたり、「兄ィィィィィさぁぁんっ!!!」とか叫びだしたりするのは耳を疑ったものだった。趣味のビンテージ物のバイクを見せてもらった時に、免許を持っていないらしく口で、ブルン、ブルルン、と効果音を言い出した時は吹き出してしまった。この世には知らなくてもいいことが沢山あるのを学べた分、良しとしよう。

 他の二人も、セクハラ野郎とメンヘラなのでどうしようもない。

「入るぞ。」

 扉の前でネクタイを直したジンが生徒会室に入室の許可を求める。ジンが学校内で許可を求めている所は非常に珍しいので、新鮮に感じる。勿論、扉は開くわけだが普段資料などが置かれている机の上には多くの食べ物が置かれており、後輩の三人がエプロン姿で迎え入れてくれる。制服の上に軽く着ている程度だが僕ら男子は全員満足しきった、やり遂げた表情をしていた。ずい、と近づいて来たナナヤがカイケイに近づいて話しかけた。

「カイケイ先輩!ご飯にします?お風呂にします?それとも、寝る?」

「アイーン、って!アホか。」

 謎のコンビネーションを見せる二人を無視して入室する。あーあ、全く何時になったら春が終わるのだろうか。こんなに甘ったるいと胸焼けがしてしまう。僕の好みとしてはもう少しストイックに生きる事を信条にしていたいのだが、周りの友人たちが賑やかなので悩ましい限りだった。今では、誰でもという訳にはいかないが話す機会も増えてきて、友達がいると言える程度には意思疎通ができるようになった。その為心境の変化があることは自分でも実感できる程で、結局は急に変化する事に対する恐れの様なものだろう。恐ろしいと感じる自体は間違いでは無いがそれを克服して前に進めるかが重要になってくる。

 だから、青ざめた顔をして此方に近づいて来るジンも何か克服しなければならない何かを背負っているのかもしれない。

「HAHAHAHAHa、重要案件が片付いて居なかったのを思い出した。五分ほどで戻るが、ギルとカイケイは連れて行くぞ。」

 僕らの腕を引っ張りながら扉を盛大に開けたジンが、その額に大量の脂汗を滲ませながら生徒会室から出る。一体何があったのだろうか。握る手に必要以上に力が入って居る事から、尋常ではない事態が起こっていることは予想が出来た。

「どうした、ジン。保健体育の教科書でも置き忘れてたのか。」

「去年のお前と一緒くたにするな。」

 カイケイのどうでもいいボケにある程度の反応を示しながらも、両目は全くと言っていい程に笑ってはいなかった。呼吸を整えたジンは、よく聞けと念を押してから、今の僕達が置かれた状況を語った。

「鍋の中に、青い色をした流動体が入っていた。あれは食べ物と言って良いのかすらも検討をつけ様が無い悍ましい物だ。」

 一瞬、耳を疑った。後輩たちの用意してくれた物を食べ物じゃないと言ったのだ。そんな馬鹿な事が有るのかと再度問いただして、潔白であったならばどんなに良かっただろうか。ジンの性格と表情からして嘘を言っていることはまずないだろう。

「ギル、テーブルに載っている鍋の中だ。魔眼で成分を調べて責めて食べれるかだけでも調べてくれないか。」

「待てジン、つまりここから見れるって事はギルの魔眼は透視が出来て、尚細かい情報もわかるって事だな。ギル、全員のスリーサイズもついでに頼む。」

 真剣な表情なジンの為、ひいては自分の安全の為に魔眼を発動していると、丁度僕の横のあたりから気の抜けた要望を出される。そして、まるで盲点だったという表情をしたジンも其方もお願いするなんて言って、ギルのセリフを復唱しているのには正直呆れた。

 勿論、調べることには調べるが。

 魔眼を通して僕に伝わってくる情報を知って僕は、先程のジン以上の脂汗をかいていた。恐ろしいなんてものでは無い。明らかに人体に影響が出かねない代物が検出されている。

「如何だった。マコトのくびれはすごいだろ。なあ、何カップだった!」

「カイケイはまるで分かっていない。大きければ良い物では無い、大きくも小さくもない調律の取れたバランスこそが大事だ。で、何カップだった。」

 馬鹿なことを言って居る二人に心和む事もなく。印象に残った情報が頭の中を巡りまわって徐々に不安を大きくしていた。ジンとカイケイも分かっている事だが、既にテーブルに並んでいた料理が華やかである以上は、例の流動体が食べれなかった場合その料理人は一人である。全員の関係を考える限り、安全なのはそれ以外の後輩とその後輩たちの思いの人、それと独り身のローゼンとなる。必ずあの料理とも言えないあれを食べるためにこの三人の内の一人が贄として差し出される。

「…カリーだった。」

「カリー?何だ可笑しいのは色だけか、だったら大丈夫だな。」

 又も顔から血の気が引いているジンとは違い、聞こえなかったらしいカイケイが部屋に戻ろうとしている。何も知らないまま戻る危険性を示唆したジンがカイケイの肩を掴んでこの場に留めた。それから僕はもう一度聞こえる様に先ほどよりもはっきりと伝えたいことを口にする。

「着色の方は青一号。そして、カリーはカリーでも、青酸カリーだ。」

 無論食べ物ではない。

 

 

 

 

 

 

 何事も無かった風に僕たちは生徒会室に戻ってきた。そして、パーティーは始まって今は御令嬢が感謝の言葉を読み始めて丁度三分経った辺りであった。ノエルの方を見れば、苦笑いをしている。話を聞き流しながらも、先程建てた作戦を思い出す。主な内容としては、極自然に、誰がどの料理を

作ったのか聞いて、外れくじが責任を持って処理をするといったものだ。ノーリスクの人間が正直疎ましくなってくるが、もしもの場合に備えて精神を集中しなければならない。

「マコトはどの料理を作ったんだ。」

 立食会になるであろう直前にまずはカイケイが口火を切った。あの情報を聞いても、一歩すら引かないその姿勢は、イカルガ内戦の空気を思い出させる。死地へ死地へと自らの足で進んで行く勇気というのは並大抵の物では無い。本能が押し戻そうとするのを無理矢理にでも封じ込めて自分に濃い死の香りを滲ませる。体を侵食するかの様な緊張に呪われるあの空気を、此処で感じることになるとは思いもしなかった。

「ジャジャーン肉団子でした!下味もちゃんと付けてある自信作だよ。」

 取り敢えず、カイケイは無事だった。考えて見ればこれは確率論ではないのだし、後に聞いたところで死刑宣告を受けた状態で聞くことになる生殺しにされるだけの話であろう。度胸のないジンには悪いが僕は死ぬのなら責めて特攻して死ぬことを選ぶ。

「ノエルは、どれを作ったんだ。」

 そして再び時間が止まる。後輩たちからしてみれば何時も通りの時の流れを感じているのだろう。しかし僕たちにとっては正に死活問題であり、結果によっては死ぬほどの思いも同時に味あわなければいけなくなる。被害者を増やす訳にはいかないので一人で食い止めなければならないのだ。

「これです!」

 そう言って僕に見せてきたのは、青一色のカリーだった。

 改めて目の前に有るソレの印象は強大で、色と同じくらいに青ざめた顔が視界に映る。驚愕で声がでない皆の視線はただ一点に注がれている。溜息を付くことすら忘れた男子二人も、日常的な空間に突如として現れた存在に声を出すこともままならない様子に見える。

「じゃあ、皿にとってくれ。」

 他の人の時間が停止していても、僕は自分の手で始末をつけなければならない。皿いっぱいに注がれた流動体にスプーンを入れて掬い上げる。表面張力の働いた液体の色は鮮やかで、アクリル絵の具の青色を鍋で煮込んだとしても、決して真似は出来ない。前に私服を見たときの事を思い返して、芸術的なセンス事態は問題無い事を願う。口に近づける程にシアン化水素の特徴的な臭いが鼻を刺激する。このシアン化水素が毒物であるので先程から空調として使用している右足の魔道書が酷いうねり声を立てながら術式を行使している。

「御代わり。」

 一心不乱に腕を動かす。表情には出さない様にはしているが、宛ら能面に見える無表情であり、食いっぷりだけで柔かに笑ってくれるノエルに心を痛ませながらも食べ続けることに専念した。量にしても子供のキャンプかと言う程なみなみ鍋にあったものをみるみると減らす。僕の胃袋を膨らませながらも掻き込んで、喉を通していく。

 

 

 

 

 

 

 どれくらい時間が経ったのかは分らないが、何とか食べ終える事が出来たらしい。意識は既に朦朧としていて、周りの物音一つ聞こえなかった。最近の医療は発達しているからこの程度なら問題ないだろうと思いながらもノエルに率直な感想を口にする。

「ノエル、料理にはな。薬品の類は使ってはいけないんだ。」

 限界を感じた体が何処かの方向に倒れる。カイケイの無茶しやがって、という何時も自分が言われるネタを拾うことも出来ずに意識が闇に落ちていく。

 

 

 これが青の力か…。

 

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