[習作]哀の果てに   作:解法辞典

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独自設定が目立ってきます。
因みにですが、基本的に嫌いなキャラはいないので原作キャラが死んでも物語の都合上ですので許して下さい。


感想お待ちしています。


第十九話

 自らの事情を隠す為に使用していた一切の上着を脱いだ下には、少女の物であろう可愛らしい服を着ており、頭につけたリボンと共に容姿を引き立てていた。妨害能力を持つ衣が無くなった為に魂を確認できる様になった少女には、言っていた通りの二つの魂に加えて、後ろに携えていた武器に宿る魂が一つ確認できた。剥き出しになった長柄の武器は、アークエネミー雷轟・無兆鈴。そして、内包された魂は、六英雄のトリニティ=グラスフィールだった。

 この頃、アークエネミーとの遭遇が著しいと自嘲気味に思いはするものの、相手取るには少々きついのは覆す事が出来ない事実であるのも確かで、意識を逸らす余裕はない。亡霊、と独り言ちて体を起こす。爆発によって地面についた焦げ跡が視界を通り過ぎて、浮かび上がった僕の体が一直線に飛んでいく。正面から攻めるのは、得策と言えないがカルルと離れた状態で戦っていては無駄な時間を過ごすばかりとなる。必要以上に魔道書を蒸かして速度を上げると、相手も迎撃をするために新たにミサイルを生成してきた。雷轟・無兆鈴の能力は、物質の具現化だ。想像以上に応用性のある力であるが、イメージを固める為にはあまり多くの物は使えないのだろう。体の持ち主である二人の魂に引きずられて、打ち出すミサイルが猫柄のミサイルとなっている。その手の技術に精通している訳ではないのか威力こそ、第七機関が使うミサイルに届かないが、出てくる数が無数なので一度受けに回ると圧殺されてしまう。

「ルナさん、セナさん。攻撃を止めて下さい。そんな事、争いなんて望んでないでしょう。」

「応戦しろカルル。あれを相手に油断したら僕達の命が持っていかれる。」

 攻撃をしないカルルを構っている暇も無く、近づいたものの回収をし損ないまた空中へと体を投げ出す。下手に仲良くなったばかりに、カルルの動きが止まっている。それを計算しての行動であるなら策士と崇めてやらないこともないが、いけ好かないやり方ではある。

「ギレル先輩!アレはなんなんですか。」

 ニルヴァーナが前に出てミサイルを撃墜している隙に、カルルは僕の方に来て確かめる様に、先程までとは違う人物が少女を動かしている事について聞いてきた。彼女たちでない事が断言できているのは、カルルもまた魂を観る事ができている事にほかならなかった。同じアークエネミーだとしても僕らとの連携をなしに、ニルヴァーナだけでは長く持たないだろう。カルルが戦いに集中出来るように僕は説明を始める。

「六英雄は知っているだろう。あれの中の一人が、彼女の持つ無兆鈴の中に魂を潜ませていた。それでに加えて、アークエネミーの使用者の精神に干渉する特性を利用してあそこまで前面に出てこれているのが、話の種だ。」

「乗っとているということですか。」

「それに加えてあれが出てきている間の事を彼女たちは覚えていないだろう。カルル、始めにあった時にあの周辺にいた理由を彼女たちは話さなかった。いや、分からなかったというのが正しい。」

 流れてきたミサイルを弓を引いて迎撃する。爆発音が響いている状況下で、大声を出しているため相手にも声が聞こえていると思うが、自身の場所を知らせる程度では不利になる事はないので構わずに話を続ける。

「確かに、そうでしたがあの場所に態々六英雄が表立ってまで移動する必要はありません。」

「目を逸らすな。あの娘を見つけた近くにあっただろう。統制機構と第七機関の両方が死体としてあそこにはあった。その中には、同じ死に方の死体が両方の陣営に存在していた、殺害の方法は爆発物と推測されて、第七機関の基本装備にはそんな大層な物は無かった。」

「そんな、仮にも六英雄があんな虐殺をするなんてありえないでしょう。」

「切っ掛けは知らないが、元々アークエネミーは使用者の精神を侵食する。そんな中に何十年といれば正気を保っている方が可笑しい。正気だったとしても、必ず何処か壊れる。」

 決して理由があるからといって僕は六英雄トリニティ=グラスフィールを許すことはないだろう。罪の意識もないままにあの少女は自らの手を血で染め上げられていたのだ。知り合いが殺されたこと等よりもそちらに腹が立った。結局、この人間は世界を救いたい等の高尚な思想とは程遠いのにも関わらず他の英雄と同列に扱われてきたのだ。甘い考えをした英雄気取りは、自分が間違えた事をしている事を分からない。こんな奴に世界を導かせる訳にはいかない。

「僕だけでは、決定打を打ち込めない。正面を開けるからついてこい。」

 魔道書を起動、飛び上がると同時に前面に障壁を展開してミサイル郡へと突っ込む。夜の暗闇では可愛らしさよりも、周りに溶け込めない不気味な面持ちのミサイルのデザインは僕の目の前まで迫っては、障壁に阻まれて爆発をした。爆発に巻き込まれた新たなミサイルが淡い燐光を繋げていき僕の体を押し戻そうとする。恐ろしい物量の爆風で、階層都市の地面が悲鳴を上げている。視界が爆風で埋め尽くされて、聴覚が爆音で埋め尽くされて平衡感覚が惑っている。両者とも、突破出来ずにこのまま無駄な時間を過ごすことになりかねない。僕は急ぐ必要があるし危険な人物を野放しにするつもりはない。あちらも逃げられたりしたら堪った物ではないだろうから、別のアプローチを仕掛けてくるのは容易に分かるが、今の優位性を捨ててまで行う作戦もないだろう。僕は唯倒せばいいだけだが相手側はその後の尋問を視野に入れて生け捕りをする分面倒くさいだろう。

 お互いに相手の正確な位置を把握するのは難しい状況であるので、少し仕掛けを作る。障壁を先行させて本体同士の距離を誤魔化しつつ視界を確保する。相手が自爆してくれればそれに越したことは無いが、回避手段の一つや二つ持っているだろう。その後で、晒してきた肉体を狙い打つだけで良いので、無駄な労力をしなくて済む。単機で三次元的な連携を出来るのは、近年の戦闘では重要なことであり、多人数との連携の際に基盤となる技術なので戦闘を生業とする僕らの様な人間にしてみれば当然の事だが、研究肌の六英雄様には対応ができないだろう。

 睨んだ通りに爆風の後ろから僕の出した障壁を突破出来る武器を新たに生成して、力任せに突っ込んで来た。体の大きさを遥かに超えるハンマーは、戦艦の主砲を受け止めた事もある障壁を溶かす様に打ち砕いた。物質だけで無く概念まで具現化出来るのではないかと思いながらも、優位に立てた状況を手放さないために射撃を行った。目と鼻の先の距離であった為に直撃するかに見えた矢は、脊髄反射で投げ捨てられたハンマーに当たって相殺された。情にほだされたカルルを尻目に、この隙の間にニルヴァーナが相手の懐に入り込む。次弾を発射するまでのラグがある武器を使っている身からしてみれば、時間稼ぎの出来るのは有り難い話だ。実力の問題が大きかったにしても、適当な人間を壁として、大佐に見繕ってもらえば良かった、と今更ながら痛感している。

「先輩、何も殺すことはないですよ。ルナさんだって、セナさんだって、その人も、それに先輩だって争うことなんて望んでいない。話し合いで解決出来ることでしょう。」

「アレは納得のいく解決なんて望んではいない。ユウキ=テルミを探しているのだって自己満足でしかないし、仮にそれを達成したからといってそれ以上がある訳でも無い。生前のトリニティ=グラスフィールがこの世界に残した呪いだよ。体が滅んで、それでも世界に留まっている時点で自然の摂理を脅かす悪にしかなりえない。未だ、魂をきちんと説明できる脳みそは今の人間に備わっていない。預かり知らない所で彼女たちが人殺しになっていて、無罪の証明は出来ない。しかも、犯行中の記憶がないと分かれば一層の危険人物だ。」

 話の最中に前方から思いがけないプレッシャーが伸し掛ってきた。前で戦っていたニルヴァーナはカルルの所まで下がって来ていて、自分ではどうしようもない事を知っているようだった。

 宙に浮いた少女は、無兆鈴を此方に向けて構えたまま、何かを呟いている。吹き出していたアドレナリンが急速に引いて、思考回路を冷やす。丁度、杖状の武器を伸ばすのと、服装と、見た目の年齢が一昔前まで人気のあった「魔法少女」を彷彿とさせて、熱弁していたカイケイの懐かしい姿が思い出される。聞きかじった話と、この世界に置ける魔法の力を思い出した時に、杖の先に集まっていたエネルギーが一気に放出された。亀裂の入った地面を綺麗に平らにしながら突き進んで来る光が視界を埋めている。

「情報聞き出すんじゃないのかよ!」

 咄嗟に障壁を出したが、既に軋んでおり数分程持てばいいほうである。射線の関係を考えても防がなければ、一体どれくらいの人間が被害に遭うのか分からないもので、明らかに僕らを殺そうとしていると予想できる攻撃は、やはり自分のしている事がどの様な被害をもたらしているのか気に留めてもいないのだろう。

「今なら持ちこたえられる。カルル、遠くに逃げろ。」

「馬鹿にしないで下さい。僕にだって死ぬ覚悟くらいあります。先輩に死ぬ気がないことだって分かります。それに、先輩はあの子を殺す気でしょう。」

「ああ、此処等一帯を事象干渉して、存在をなかった事にする。一番安全な方法だ。」

「だからって、あの二人まで巻き込むことは無いでしょう!何も知らないまま利用されるだけされて何も知らないままで死ぬなんて可笑しいです。」

 もう悲鳴をあげている障壁を背後に、カルルと向き合う。その瞳には一歩も引くことのない力強さが灯っていて、僕に睨まれた程度では動じる事はない。

「言っている事が先程とずれている。理論めいて話せば良いという訳でもないんだ。素直に本心を曝け出すのも一つの手段として覚えておけよ。例えば、惚れた女を守りたいとかな。」

「ち、違います。そんなんじゃなくて、ただ。」

「恥じることじゃない。そうまでして人を思えるのは胸を張っていい事だ。カルル、その気持ちだけは忘れるな。何があっても手放すんじゃない。」

 勢い良く返事をしたカルルに、アレの対処を任せる事にして、僕はその道を開く事とした。飽くまでも今防げているのは僕らの前面だけであり、横から抜ける事は出来ない。だからまずは、前面では無く事象干渉で全面を止めて、カルルの歩く道を確保する。

「しくじるなよ、カルル。…事象干渉!」

「先輩!ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分体を酷使しているとビームが途切れた。

 カルルがどうにかしてくれたのだろうと思い、無残に地面に転がっている無兆鈴が視界に映り、次いで女の子の体を抱きとめているカルル、その傍らで見守っているニルヴァーナが見えた。正直に邪魔をしたくは無いのだが、少なくともアークエネミーの処理をしなければならないので申し訳ない気持ちになりながらも近づいていった。

「うぅ~、ルナとカルルくんがいちゃいちゃしてるから居心地が悪い。」

「セナ、い、いちゃいちゃなんてしてないだろ!唯、そのなんて言うか、その…。」

 本当に話しかけ難く、取り敢えず無兆鈴の回収をしたものの切っ掛けを見いだせずにいる。態々聞く必要も無いとも思って、どうせ悪役になるのなら僕で十分なので、無言で叩き折った。同じく見つめる他にする事が無いであろうニルヴァーナの近くに立って、二人を見守った。――――実際にはもう一人居るが当事者たちということでここでは二人としておく。

 現実に戻って話をするならば、護衛対象を増やしても僕へを負担が増えるだけなのだが、このまま別れるにしても、カルルはまだ子供であるのに、一般人を守らせていいものかと思うのも確かだ。咎追いとしてある程度の戦闘技術を磨いてきていたとしても、それは子供の域を出ない。ニルヴァーナがついているにしても不安が残るところだが、僕の本来の任務に支障をきたした場合笑い話では済まされない。それに、派手にやりあったせいでゆっくりしている時間もなさそうだ。

「カルル、ここからは別行動だ。」

「先輩、分かりました。」

「聞き分けが良くて助かる。良いかカルル、お前は特別だ。普通とは違うし、そのことで悩む事も有るだろう。でも、どれだけ悩んだとしても、その手だけは握っていろ。お前は、僕や大佐の様には決してなるな。」

 言い終わると同時か少し早く、僕の上空から人間が降りてきた。僕よりもずっと高い背丈で、剥き出しの上半身に見える刺青と屈強な体。地面を陥没させながら現れた大男は、僕の後ろで遠ざかっていく人間には目をくれずギラギラした目で僕を捉えてくる。

「貴様、魔眼だろ。ココノエの頼みというのは癪だが、存分に戦おうではないか!」

 暴力を体現した男、第七機関の封印指定「狂犬・アズラエル」が牙を剥いた。

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