家庭版が出て、時間が取れなかったということもあるのですがそれにしても不甲斐ないです。
レリウスのギャグルートで心臓が止まりかけました。
あれでハザマの立ち位置が少し違う方向だったら本当に腰が抜けたかもしれないです。
実は、この話の他に設定を軽く話すという狙いと、出番の少なかったキャラの救済のために、教えてライチ先生、を書いているのですが中々難しいのでまた遅くなりそうです。
年内には仕上げることが出来るように頑張ります。
それとこれだけは最後に言っておきますが、カグラのアレは昇竜ではなくサマソですので間違えないようにお気をつけてください。
感想お待ちしています。
早朝、騒がしくしていた台所から出ると微かに鳥のさえずりが聞こえる。
家がある付近は落ち着いた場所で、朝は木漏れ日が差し入り、夜には色取り取りの街灯が辺りを照らす、妻の趣向に合致した中々にロマンチックな場所である。立地条件に見合っただけ取られる家賃には目を瞑るが、気になるのはどのようにしてこんな場所を見つけることが出来たのかという事だ。本当に気になるところはそこではないが、しかし良く見つけたものである。
見つけた事も驚きではあるが、見つけようとしていた事にも驚いた。妻は、場所なんてものは関係なく質素でも暮らせればいい、なんて言い出しかねない性格であったものだから家に関して拘りを持っていたことに関して一番驚いた。
妻らしいと言えばらしいのだが、未だ感性だけが昔に取り残されている様だった。様だったというのは、比喩表現なんかではなくそのままの意味で僕自身の意識が過去からいきなり飛ばされたと言っても過言ではないのである。僕だって歳はとったが、意識だけは時間というものがわかりづらい期間を過ごしていたので擬似的なコールドスリープをしていたと考えるのが妥当か。だから周りの人間の容姿が、昔の面影をちらつかせたままに歳をとっていて少しばかり狼狽したのを覚えている。
歳をとるなんてことは当たり前と言えば当たり前のことだが、僕がこの世界に復帰した時に視界が半分ながらも生きていた驚きも相まって困惑した。無論それも一瞬であり、視界に収めた人物を見るとその嬉しさによってかき消されもした。
簡潔に言ってしまえば、ギレル=リバースが復活するまでの間に僕が愛してやまなかった、今でも愛しているノエルが素晴らしい家を買っていて籍を入れたあとは二人で住んでいてちょうど朝食を作り終えた、ということである。因みに、再来月に第一子が誕生する。
妊娠しているため出来るだけ負担を掛けないようにしているノエルを起こして、朝食にした。ここにおいてノエルを起こした時の描写を省いている理由としては、僕が今日一日を語る上でのテンポを阻害する恐れがあるからだ。内容といっても、ノエルの可愛らしさとか、横になっているノエルの腹部を見て、僕達の子供に対する考えや思い馳せる、とかでしかなく無駄な時間を浪費しても意味を持たない。別段、僕は他の人に共感して欲しい人間でもないので心の内にしまっておくし、聞かされる側も共感を得られるとは限らないので聞き流す程度のことしかない。それに見たときのその瞬間だけでも少なく見積もって十数分もの時間を使うため今から再度口に出すとすると倍以上の時間がかかってしまうわけだ。
それに、今日語るうちでメインとなるのは僕に近しい事ではなく。どちらかといえば関係が薄い人間の話をせざるをえない。因縁を考えればそこまで無関係とは言い切れないが本人同士としては関係はやはり薄い。
「それでいつまでタダ飯食いにくる気なんですか、死神さん。」
「仕事が見つかったらだな。」
あからさまな異物が僕達の家に飯をたかりに来るのはここ最近の話である。いい迷惑なのだが、これでも一応ノエルの恩人という事で邪険には扱えない。
「仕事も何も犯罪者だった時だって金はあったんですから、足を洗った今お金がないと言うのは少々可笑しいですよ。」
「賞金首だった時はそれこそ金盗んだり、他の賞金首差し出して金を稼いでたからな。目立つ行動するなって言ったのはお前ら統制機構だろ。俺は学校も出てねえんだ。就職しようにもできないし、かと言って今から学校に通うこともできねえだろ。いっそ統制機構で雇ってくれれば楽なんだがどうにかなんねえのか。」
戦後色々と面倒だと言った総指令カグラ=ムツキが、犯罪者ラグナ=ザ=ブラッドエッジを戦争のさなか殺した事にした。酷く疲れきっていた指令は、ラグナに髪を染める塗料とそれなりのスーツを渡して司令室から放り出したというらしい。まあ犯罪者という足かせを外すのは条件としては悪くは無かったのだが生憎とラグナは学校を出ていない為に就職ができずにいるらしい。それで今現在、ご飯時だけこの家にのこのこと上がって来てまた何処かのビジネスホテルに泊まっている。現在のアルバイトでは宿泊費だけで無くなってしまうと言っている。
幾らノエルの恩人といえども、このままだと子供が生まれた後にも来て、悪影響になりかねないのでいい加減に追い払いたいと思っていたところだった。
「ああ、もうそれでいいや。死神、総司令の所に行くからさっさと食っちまえ。」
「マジでか、言ってみるもんだな。」
そうして僕は死神を連れて司令の所に行くのだった。
本当ならばノエルを一人にするのは、今まで僕が窯にいて一人にさせていた時期が長かったので嫌だったのだが、二人の時間を邪魔する異物、ラグナが個人的には余計に嫌だった。
「…、と言う訳でして仕事を下さい。」
「いいぜ。」
何年経っても部下から説教を受けることが日課とかしている司令が正座している所に鉢あってしまった。急ぎだと言って司令の危機を救い、お伺い申し立てた所二つ返事で了承された。これでやっと安心して平穏な日々を暮らせる、と思い帰ろうとした矢先に扉の前で司令に呼び止められた。
「ギレル、相談があるんだがよぉ。」
「何でしょうか。」
シリアスな面持ちで語り僕の肩を掴んで離さない司令からは嫌な予感がした。大抵、こういう時は厄介事を頼まれる。折角暇を貰っているのに仕事だろうか。仕事ならまだしも、無理難題を押し付けることがあるから厄介である。
「自分で言うのはなんだけどよ、俺は地位もお金もあるし、才能やそれに見合う努力だってして来たつもりでいる。当然他人には優しくするし容姿だって悪いわけじゃないんだ。自慢じゃないが滅茶苦茶もてる。」
司令は息を吸い直して続ける。
「それなのにどうして俺はまだ結婚が出来ないんだ!!!!」
「知りませんよ。」
だいたい話が読めてきたけど、僕に頼むのはお門違いだ。仕方なく話は聞くし、多分お願いも聞かなければならないのだろう。司令の部下、つまりは秘書官であるヒビキも呆れているし、死神も溜息をついている。
「でさぁ、ギレル。ものは相談なんだけどコンパとかのセッティングしてくれない。俺の方で男子は揃えるからさ。」
「揃えるたって、ここに居る三人でしょう。」
ヒビキとラグナがはぁ、と素っ頓狂な声を出す。指令はバレてたかなどと笑っており残りの二人のことなんて考えても無いようだった。
当然抗議の声は上がる。
「おい、黒騎士。何で俺がそんなものに協力しなきゃなんねえんだ。」
「仕事やるんだから大人しくしろ。取り消してもいいんだぞ。」
まず死神は押し黙った。チラと僕を見たときに睨んでやったら静かにしていてくれるらしい。
「総司令としての立場を考えてください。明日の予定もありますし書類だって片付いてないんですからさせられませんよ、そんな事。」
「おいおいヒビキ、俺をだしにして逃げようたって無駄だぞ。お前に彼女でもいるってんなら別だが俺みたいに行き遅れちまうと面倒だぞ。それにその程度の量の仕事くらい終わらせられることぐらい知ってるだろ。」
返す言葉が見つからないらしく反論もできないうちに話は固まってしまった。司令はそれなりに優秀なのでいつもはサボっていても本気を出せば直ぐに仕事を終わらせる。助けを求める視線を送られるが司令の提案に乗っかった方が手早く済みそうなので無視してやった。
まあ面白そうだから現場に行って覗き見してやろうか。
そんなわけで夜になった。
僕とて女性の知り合いが多いわけでもないのだから指令が知らない人物を三人も集めるなんてことは基本的に不可能なのだ。それでも司令との関わりが深くないであろう人物を三人拵えることができたのはひとえに仲のいい人物を当たってみたところ、司令との面識が薄かっただけというのが大きな理由である。実際、司令と面識があったら断られる可能性もある。
場所は、都会として発展しつつあるカグツチだ。ここを選んだ理由としては参加人物の一人がここカグツチに住んでいて、条件として明示されたからである。僕の力にかかれば世界中どこにでも飛ばすことが出来るのだが一応一般人に分類される女性であるので、下手に僕のアマテラスの力なんて見せたらそれはそれでまずいことになってしまう。
先に店に入って貰っている男子三人のうち司令は兎も角として、ヒビキとラグナは一応女性と会うということで緊張しているのか、お冷の減りが著しい。ヒビキは心配してなかったが、ラグナも貸してもらったであろう服装がきちんとしたもので、身だしなみを整えて来ているようだったし問題はないだろう。
それよりも問題だと思ったのは、この店で会った人物である。
「ギレル殿、久しぶりでござるな。」
僕達がイカルガを再び戦地にしてしまったせいで、未だにカグツチで暮らしているバングとその部下たちである。この店はそれなりの店で和風チックなのであるがバングも忍者頭領としてそれなりの資金があるらしく部下を労いに来ているのだという。それで僕を見かけて話しかけてみたところ僕があの三人を観察していることがバレてしまい。しかも司令と知り合いだというのだから驚きだ。
「カグラは拙者の弟弟子でござるからな。あやつも立派なイカルガ男児でござる。因みにでござるがイカルガ男児の勝負下着はふんどしでござるゆえ多分今日のカグラの下着はふんどしでござるな。」
「司令がふんどしか…。」
似合うには似合うのだが、普段酒を飲んだり女に手を出したり大剣を振り回している人物がふんどしを身につけていると思うと面白くなってしまう。黒騎士なんて異名があるのにその実、和風テイストというミスマッチもあって声をあげて笑いそうになってしまった。
至急メールを送って見ることにした。
遠目から観察していると司令はポケットから取り出した携帯端末を取り出して確認している。そこに書いてある文章はこうだ。
ふんどしをするならスーツより和服の方がいいですよ。
「ぶっ!!!!」
いきなり咳き込み始める司令を見て、残りの二人は怪訝な顔をする。必死に何かを打ち込もうとする司令であったが、店の扉が開く音を聞いて素早く携帯端末をしまった。全く、女性が絡むと勘だけは良くなる人である。マナーを守るところには好感が持てるがあの人は女性を目の前にした瞬間残念な性格になってしまうところがいけないんだと思う。
「えーと、このテーブルであっているでしょうか。」
そんな具合で彼らに訪ねたのは、この十年ですっかり大人になった人物だ。
ここで、僕が呼んだ女性三人を確認しておくと、元ライチ=フェイ=リンの助手であり現在自ら医者として活動しているリンファ、僕が指揮する統制機構航空部隊とは別に部下に任せられない仕事がらみで度々雇っていて、あの日のイカルガで知り合いになった凄腕の傭兵バレット、ラグナへの嫌がらせとしてのセリカ。この三人である。
セリカは兎も角として残る二人は面識が無いであろう女性である。流石にこれ以上の引き出しは無いので、司令には今夜限りでどうにかして欲しいのだがどうなのだろうか。因みに先程の司令に次いで吹き出したラグナはさっさとセリカを連れて退場して頂きたい。その為に呼んだのだから実質二対二のコンパになるだろう。まあ、盛り上げ役としては知り合いがいると進行が滞りなくなるんじゃないんだろうかと思い呼んだという理由もあるんだが、そこらへんはヒビキは気が利く人間であるから保険の様なものだ。
「あっ、ラグナだ。久しぶりだね。」
能天気に話しかけるセリカの姿が口火を切り、順当に自己紹介を進めていく。先程のセリカの発言に加えて、自己紹介をする元死神のラグナに対して圧倒されているバレットが見える。真面目な彼女は少し戸惑っているようだった。普通に考えれば死んだとされていた世界最高の犯罪者が生きていて足を洗って髪を染めてスーツを着て尚且コンパに来ているのだから、自分の目を疑うだろう。
実際、言われてみればシュールな状況だ。
「では早速、皆さんの趣味の話でもしましょうか。」
お酒が運ばれてくる間の時間を埋めるためにヒビキが話題を提案している。流石にあの司令の補佐であるためフォローなどはお手の物といったところだろうか。
本当に優良物件だな。司令を放っておいてバレットとリンファの両名とも持って行ってしまうのではないだろうか。そうしたらもう司令の相手するのが面倒くさいからココノエ博士あたりとお見合いでもしてもらおうか。
「俺の趣味は釣りだ。それとは別に夜釣りも得意なんだけどな。」
思った通り、司令は開幕から最低なことを言い放っている。隣にいるバングは、カグラは昔から変わらんでござるな、なんて呆れている。昔からという事は、子供の頃から司令はあんな感じだったのだろうか。いつもはあんなにキザなセリフを喋っていても、ふんどしだと考えると格好悪く見えてくるし今の司令が言い放った一言は完全な下ネタなので唯の変態にしか見えないのは余談である。しかも、苦笑しているリンファ以外の二人は司令が言い放った最低な下ネタを理解しておらず酷い雰囲気になっている。
あんなだから結婚ができないんだ。
「バレットさんのご趣味は?」
すかさず話題の転換を試みるヒビキを見ていると悲しくなってくる。普段説司令が説教を受けていても仕方なく思えてくる。結婚で人が変わる人物がいるというし、それこそ結婚をすれば落ち着くんだろうか。ジンは最近はおとなしくなったと聞くが、思うところでもあったのだろうか。
「わ、私の趣味か!そのだな、あの、刺繍です。」
確実にこういう場面に慣れていないであろうバレットがしどろもどろしながら答えている。声は上ずっていて、最後の方は自身がなくなってしまったのか敬語になっていた。雇い主としての事をちらつかせながら殆んど強制的に連れてきたから、僕も少しばかり申し訳ない気分になってくる。
しかし恥ずかしそうにしているバレットの破壊力は抜群らしくヒビキやラグナは面食らっており、司令は初々しい生娘を見て心を痛めている。そこまで自分の発言を悔やむのなら言わなければ良かったのに、本当に司令は余計なことしかしないな。僕の周りにいるバングの部下達もいつから見ていたのか分からないが荒んだ心が浄化されているらしく頬が緩んでいる。
僕はノエル以外に興味は無いからどうでもいいのだが、まあそれなりにきちんとコンパが成功している様で安心した。ヒビキは思ったよりも真面目にバレットを狙っている様に見える。ラグナは結局セリカとくっ付くのだろうし、仕事は貰えるのだから個人的にどうでも良い。態々呼んだリンファには悪いが、もうどうせ司令はどうしようもないだろうしこのあとはバングと飲みながら失敗するであろう司令の救済方法を考えるとしよう。
向こうのテーブルにも酒が届いた様だし大丈夫だろう。
そう思っていたのだが、僕の予想は裏切られる。
「なあ、バング。リンファさんについて何かライチさんから聞いてなかったか。」
「リンファ殿でござるか。んん~、そう言われても何か特別なことは無かったでござるが、そうでござるね。でも確か似た者同士だと言っていた事はあったかも知れないでござる。」
「そうか…。」
喧騒が続く彼らのテーブルを見ると酔っ払いがいた。
「ぬわぁ!リ、リンファ、何処を触っているんだ!」
「いいじゃないバレット、減るものじゃないし。…師匠の方が少し大きいわね。でも腰周りはバレットの方がいい感じかしら。」
「おい!誰か医者を呼べ、ヒビキが出血多量で死んじまう!しっかりしろ、お前はそんな鼻血を吹き出す様なキャラじゃないだろ!なんだと、そこいる酔っ払いがが医者だと冗談も大概にしろよ!…冗談、だよな。」
「はいラグナ、あ~ん。」
「セリカ、お前もう少し空気ってものをよめねえのか。いや、もう何でもいいか。」
飛び火する前に帰ることにした。
店を出ても中から聞こえてくる喧騒は、夜も明るく賑わっているカグツチの様であった。
「大人しく帰るか…。」
其処らの店で適当にノエルへのお見上げを買って帰ることにした。
余談であるが、その日外食を伝え忘れていた僕はそれ相応の天罰を受けたとだけ言っておく。