矢張りブレイブルーの醍醐味である戦闘は上手く書けるようになりたいです。
感想宜しくお願い致します。
既に数時間が経過しているというのに第七機関の足取りは掴めない。任務は、難航の一途を辿っていた。抑も情報が少なく、戦闘員が出てきてはいるはずではあるが見ただけで分かるような人物が態々直接現地に赴くだろうか。
少しでも相手方が勝手に釣られるのを待って先程から辺りを飛んで巡回しているが成果はない。徐々に此処等一帯に住んでいる住民の目線も強くなって来ている。統制機構をよく思っていないものも当然存在していてその理由は人様々だろう。誰も彼もに好かれるような聖人君子など存在しない訳で、個人的な意見としては僕は統制機構は嫌いでは無いが、民間人にも内部にも今の世界の体制を気に入らない人間がいる。具体的に言うと外部では第七機関。身内には元生徒会のメンバーであるカイケイ、ローゼンという人間がいたという具合に不満は積もって来ているようだった。
歴史は繰り返すと言われるが、このまま何度も何度も繰り返すだけの歴史は正直に言って詰まらない。時代が進むにつれて出来る事の幅が広がったのに、今でもやることがクーデターだとは面白みが無いと思えたのだ。別に反逆罪で罪を問う気もないがやるからには派手にして欲しくて、それこそ発展さえすれば戦争に相応しい舞台だがいい加減雑兵ばかりが群がるだけのものは止めにして貰いたい。大体、自軍に被害者を出せば、後世ではただ戦犯扱いされるだけであろう。術式適正という才能で人を分配する様になったというのに適正の低い者まで配属され殺されに戦地に赴くのは話が可笑しい。強い人間が出世して偉くなるのだから勝手に煽られて、決めて、始めた戦争なら自分で死んでいろ、と言う部下をもう既に何人も請け負って来ているのだ。無論僕とて一部隊長だが、大佐の直属の様な部隊なので隊長が僕の限り断る任務は無い。まあ、契約上は作戦を行うのは部下では無いので訓練が辛い程度なのだが。
不意に何処からか物が飛んできて僕に当たった。常時展開の闇討ち対策である障壁にコツン、と音がする程度の威力で、大方誰かの冷やかしだろうと下を向いて犯人を探すと一人落ち着きのない動きをしながら、何か叫んでいる。士官としての面目を保つために地面まで降りて行く。見た限りだと文献で見たことのあるカカ族の人物である。
カカ族。平たく言えば獣人の一族でありフード付きの服を着て顔を隠していることが特別に珍しいと言えるだろう。獣人と言ってもナナヤのように人間の風貌に尻尾やら耳やらが他の動物と混じっているというよりも、寧ろ動物、カカ族の場合猫がベースとなって居るのだが進化して二足歩行が可能になった様な形をしている。因みにカカ族で人型なのは女性だけで男性、より適切に言えばオスは普通の猫と大差ないと聞いたことがある。
勿論そう見えるというだけで確証など無いに等しく言い掛かりと等しいものだが、人間に寄っているというには、それなりに高度を維持していた僕に投擲して当てた腕力の説明が一層難しくなってしまう。
実際には投擲出来た理由では無く投擲した理由を確認しなければならず場合に寄っては実力行使にでなければならなくなって来る。僕としては大佐に渡された試験機の運用実験が出来て序でに国家反逆罪で検挙できれば功績が上がってこの上ないが、世間体を考えると、物を打付けた程度で捕まえては早計にも程があり、統制機構の評判を下げかねない。一度話を詳しく聞いてから判断しても遅くは無いだろう。
「其処のカカ族。今、名前と、僕に物を投げ付けた理由。両方を話さなければ逮捕せざるを得ないが。」
高度を低くして、話しやすい状況を作る。とは言っても急な事態に対応できるように常に距離を測ることは怠らない。カカ族は一枚の紙を取り出して年相応に高い声で話し始める。
「タオの名前はタオカカっていうニャス。タオは長老に頼まれてこの紙にのっているやつを倒して、お金をい~っぱいもらうニャス。でも、どこにいるかわからないから前に聞いたことのあるトーセーキコーってところに聞いてみようと思っていたら、飛んでる人がいたから聞いてみようとしていたニャスよ。」
飛んでいる人、とは僕のことだろうか。まあ、このタオカカという人物単なる咎追いであることが分かった。
咎追いとは簡単に言えば賞金稼ぎだ。国家にはきちんとした職業とされていて、統制機構の目の届かないところにいる犯罪者を捕まえたりしている。差し出している紙は紛れもない指名手配書で大犯罪者であるラグナ=ザ=ブラッドエッジの名前が書かれていた。情報が漏れていることに対して、ここの支部に落胆の色が湧いてきた。
「済まないが渡せる情報は無い。抑も管轄が違うんだ。非常に申し訳ないと思うが他を当たってくれないか。」
「そうニャスか。じゃあ飛んでる人は何をしているニャス。まさかタオのことをあしらおうとしているんじゃないニャスか。」
フシャーっと威嚇して来るタオカカを見て苦笑する。
「そんな事はない。僕は不審な輩がいないか警備している。余計なことをしないように上司に釘を刺されてね。」
本当は上司とも言い難い様な関係でもある。
「じゃあ、飛んでる人は強いニャスね。タオは手合わせを所望するニャス。」
言ったなり姿勢を低く落として正面に見据えてくる。脈絡も無い話し方から頭は弱い。だが戦闘に関してはその限りではないらしい。試験機のデータも取れるから別段断ることもせず僕は一言、召喚、と呟いて武器を取り出した。
先に動いたのはタオカカと名乗った少女だった。常人では、否、人の限界を迎えても尚辿り着くことは叶わないであろう速度で迫って来る。彼女の武器は自身の爪であって既に服の隙間から出てきていて見ただけでも理解が及ぶほどに鋭利で、それでいて大きさもそれなりだ。
一度目の突進を難なく避ける。突進はやはり速く、正に突貫といった風に、風を切り裂いて向かって来ている。通り過ぎていった方を向けば建物の壁を蹴って、再度此方を目掛けて飛んでくる。振り返るだけで精一杯で障壁を展開して備える。一陣の風、今度は完璧に僕を捉えて右の腕を大きく振り上げて思い切り叩きつけて来た。衝撃でよろめいてしまう。相手は自らの土俵であろ地上に僕を引きずり下ろそうとしていて、何度も繰り返し突進を続けた。
結果は初めから決まっていたように思う。仮にも僕は航空部隊の小隊の隊長を務めれる程だから咎追い程度に遅れを取る筈も無く。あれからは一度もこの身に攻撃が掠ることも有り得え無い、程遠い事である。
試作機の性能を試すことなく身体強化の術式だけで空中戦は事足りるのであった。がしかし流石に手合わせと銘打っているのだから少し位戦闘訓練になるようにしなければ、試験運用にもなりはしないし、詰まらない。唯、間引くことが目的ならば作業的に、一方的な攻撃をする事も厭わないが相手方も哀れでならないから地上戦に持ち込んで見ることにした。
諦めず何度も挑んで来るそれに態々こちらも突撃する。防御用の術式による幾何学的な薄い膜で覆われた視界には敵の獲物との間で火花が散っている。双方が衝撃で静止して空中での加速が無くなり自由に行動可能な此方が明らかに有利であった。見ずとも相手が姿勢制御すら叶わない状況であることは鮮明で、僕はタオカカの首を掴んで術式を展開、後ろから伸し掛る重圧と共に地面まで急降下した。
土煙など巻き上がらない鉄筋のタイルに叩きつけた。声にならない悲鳴を上げて、暫くの間もがいていたが、起き上がって来たそれを尻目に、有利を捨ててまで地に足を着けた理由である大佐の試験機の術式を起動させる。起き上がった敵の行動は残像すら見える速度でこちらへと攻撃を仕掛けてきた。だが其れは僕が薙ぎ払う事で直撃に至らない。今回大佐が僕に与えた兵器、試験機とは名ばかりで、実践投入は既に実現可能な出来上がりとなっている。だが僕専用に開発、改良を加えた弓状の術式兵装で運用が比較的高難易度である為に、もし量産した時に他の衛士も使いこなせる様、データの収集をしているのである。その力の一旦で魔素を固定化させた矢の生成。その強度は、矢と評するよりかは、槍と言われるものである。
現に今、その矢を以てして攻撃を防いだ。矢には歪も無く完璧に仕上がっていることが伺える。難点として挙げる事があるとすれば、必ずもう片方の腕は弓を持たねばならず手数で負けている場合に対処方法が少なく、飽くまでも迎撃手段の一つか、ここぞという所で虚をつく運用が好ましいと言えよう。
防いだ方とは逆、右腕による薙ぎ払いが足元を狙い、放たれていた。今までの大振りとは違う研ぎ澄まされた一撃、当たれば足は僕の体とお去らばにならざるを得ない。
戦場では判断なんて迷う暇は無いその時毎に、真っ先に最適だと直感した物を即座にこなす。それを繰り返すうちにどれだけ相手方より正解数が多いか、それとも少ないかを競う。自分を疑う時間は無い中で如何に冷静でいるか、そして敵の思考を如何に乱すかなど。つまり我が強い、運が良い、効率が理解出来る程に経験を積む。自分の長所を生かしたまま、足りない部分を補う。必死になって、罠にかけて、転けながら、立ち上がって死力を尽くす。それが戦闘だ。
まあ、これは手合わせだから其処までやってはならないだろうが。迫る斬撃を飛んで避けると共に術式を使い空中で後ろに加速する。後退するだけでは無く弓を引き絞り、放って、牽制をする。牽制程度に使わなければ死人が出てしまいかねないポテンシャルがこの武器にはある。
そう簡単に当たる訳もなく再度相手が突撃しては避けて、牽制をする、その繰り返しでたまに掠る攻撃で互いに服の一部が解れたり、切れていたりしている。このまま相手が痺れを切らすまで待ち、粘り勝ちでもしていいのだが生憎と任務があるので時間に余裕が無くなって来た。
「やるニャスね。タオもここからは本気ニャス。行くニャスよ。」
タオカカの姿が振れている。宣言道理今までとは比べ物にならない速度で移動、攻撃をしてくる。
これまでは一度に二回、今は攻撃が三、四回と、殆ど倍近い数の攻め手がある。幾ら何でも防戦に回る必要が有り、防護術式を張るがどんどん削られて意味を成さない。手数の増加だけで無く、周りを囲むように攻撃して脱出を困難にしている。相手も調子が乗ってきたのか加速を続けている。
「身体強化術式起動。筋力補助確認。関節、及び各器官への負担削減術式の起動も確認。次いで術式による強化装甲を生成開始。」
相手の元々の速度程に強化された体で打ち合いを始める。魔素を凝縮した塊と戦闘に特化して進化したであろう爪とがぶつかり合う。一合、二合と重ねて、火花が散るたびにお互いの足が止まる。放つのは必殺の一撃、迎え撃つも同等に力が込められた攻撃。一度でも手を緩めようものなら瞬間風穴が空いてしまうだろう。弾き飛ばしては、常人離れした脚力で瞬く間に近づいて来る。敵も渾身の攻撃でなければ手を弾かれて防御をがら空きにしてしまう。故に彼女の一撃はより鋭利な物へと変化してきている。
対する僕は相手が来た所に回避不可能な一撃を入れるといったもので、後手に周りこそはするが攻め入られるまではいたって居らず、仮にその様な形になったとして、装甲の付いている状態だから相討ち覚悟の攻撃を仕掛けても、仕掛けられても、負けはないのが真実だ。この戦い、万に一つもタオカカに勝算はないのである。気づけば周りにギャラリーまで寄って来ていて、この子の手合わせは有名なのか応援する人まで出てくる始末である。
何度もしてくる突貫。何度もしてきた様に迎撃の攻撃を振り下す。が当たることは無く僕の腕は悲しくも空を切った。無茶な軌道を描き僕の背後に回っていた。人間の思考の丁度、外にある考えかた
意表を突くには十分過ぎる。
「タオの拳が唸るニャス。覚悟するニャス。」
目一杯、体全体をバネにして構え、そして解き放った。単純な攻撃。然れど威力、瞬発的な速度では今まで繰り出して来たどの攻撃よりも上回っていて、必殺をも通り越した、防御の上からも打ち砕いて仕舞いかねない強力な、無慈悲な攻撃であった。
当たりさえすればの話だが。
「グニャ!」
そう言ってタオカカは爆風に吹き飛ばされて、気絶してしまった。やったことは簡単な事で圧縮していた矢の拘束用の術式を開放して魔素による衝撃波を発生させた。術式で守られていた僕は無事で
傷一つ負っていない。多少の腕の痺れがあるが今回の戦闘は及第点としておく。
「もう少しだけデータが集まってから、大佐に報告しようか。」
ポケットから煙草を取り出して口に含む。昔は煙草を吸う人が格好いいと思った事も有ったが今の物は有害物質なんぞ入っていないし、本当に口が寂しい人ぐらいしか吸わなくなってしまった。矢張りこういう物は怖いもの見たさだったりで吸う人が、昔は多かっただろう。何でもかんでも便利にしてしまって趣だとか風流だとかを損ねてしまうのも考えものだ。
「運用実験程度にはなったか、協力感謝する。」
誰にも聞こえない程度の小声で呟いて、野次馬を見渡す。統制機構の服装か、経った今の戦闘に怖がって誰も動こうとしなかった。取り敢えず気絶している其処のカカ族をどうにかしない事には何も始まらないだろう。
「この中にお医者様はいらっしゃいますでしょうか。」
民衆のほうを向いて、そう問いかけた。