ではごゆっくり
ここは地底。
そして俺はその地底の地底に住まう半妖
元は地上にいたのだが。人間に裏切られ…地上の居場所を無くした。
そんなとき地底の主、古明地さとりという。覚り妖怪に地底に案内された。
そして今は旧都という地底の街の酒場にいる
旧都からは先の覚り妖怪、古明地さとりが住んでいる地霊殿が見える。
さとりに拾われた俺はしばらくは地霊殿に住むことになった、
「【なんであんな少女が地底の主なのか】
ですって?」
「さとり様。いたんですか」
「散歩よ、で、私が地底の主の理由を知りたいのかしら?」
「別にいい。ちょっと疑問に思っただけだから」
「【知ったところで何の得もない】、そうね確かにあなたにはなんの得もないわ。」
「ところでこんな酒場までなんの用で?」
「散歩ついでにこいしを探してるの。」
「こいし様か。なにかあったのか?」
「まぁ色々よ、見かけなかったかしら?」
「無意識なんか見つけれるわけない。」
「まぁそう言うと思ったわ、」
「見かけたら話はしておく」
「お願いするわ」
古明地さとりはそういうと酒場を後にしてまだどこかに行ってしまった。
一口酒を飲むと離れた机の牛の妖怪が話しかけてきた。
「あ、あんた、古明地嬢と平然と話するなんて…信じられねぇぞ。」
「変に気を遣ったり、緊張するから怒らせたり不機嫌にさせるんだ。普段から普通に接していればいい」
蜂みたいなものだろうと俺は思っている。
なにより地霊殿の茶会の支度もするから、これくらいできないといつ何されるかわからないからな
「流石…古明地嬢に話しかけられるだけはあるな…」
牛の妖怪は酒場を後にして行った。
今日も酒場は騒がしく。
腹踊りする者や、ひたすら飲む者、泣きながら飲む者。ヤケになって飲む者、
様々な奴等がいる。
俺はそんな派手にすることもなく。
普段から弱い酒しか飲まない、それに十数分に一口飲むだけだからそんなに酔わない。
一杯飲み終えた頃酒場を後にした
古明地さとりに拾われてから、地霊殿で寝泊まりしているが…
どうもここは大きすぎる。
そう思いながらも。
俺は用意された部屋へ向かった。
長い廊下を歩いていると、
道の途中に古明地こいしが歩いていた
俺に気づいて振り向いてこっちを見る。
一瞬目が合うと、俯いて下を向いた。
「どうかしました?」
「………」
何も言わない。
「ちょっと来て…」
かと思ったら一言呟いた
言われるままついていくと
こいしの部屋についた。
こいしはベットに座り込むと俺に隣に座るように促した。
断る理由もないから隣に座る。
寄り掛かってくるこいしは、悲しそうだった。
「お姉ちゃんのペットである貴方だから…こうしていられるなぁ…」
「どうかされましたか?」
暫く黙ったままだったが数分経つと話し始めた。
「私ね…地上の人間が好きでね…付き合ってたの。」
そのことを聞いた瞬間、昔のことを思い出して俺は少し気分が下がった
そんなことも気にせずこいしは話し続けた
「すごく仲良くしてくれてね。私も楽しかったの…でもね。その人は…」
言わずともわかるような気がした
「こいし様を裏切った。」
こいしは何も言わずに首を縦に振った。
「妖怪だって知って。でもいいよって言ってくれたのに。結局はお金がある人に寄っていちゃった。私なんて可愛いだけなんだって言われたの…」
「酷いですね…」
こいしは泣き始め。蹲った。
優しく抱きしめてなぐされることしかできないと思っていた
「こいし様…悲しいのはわかります、でもそうやって強くなっていくんです。」
「うん…」
「俺も…ここに来た理由は人間に裏切られたからなんですよ、」
「そうなんだ…」
「…信じていた人間が俺を裏切り、財産も立場も居場所も何もかも壊されてしまった。終いには地上に居ると腫れ物扱いされてしまったのです。」
「あなたは…私より…」
「でも…俺には地底という、素晴らしい世界がある。さとり様がいてこいし様がいて、地霊殿がある。」
「そうだね…」
「こいし様も、お燐様やお空様それにさとり様だっているんです。」
「うん。」
「ですから…」
「だから?」
この先の言葉が出なかった。
どう声をかければいいかわからなかった
「いいよ…ありがとう。」
「えっと…はい。」
「さとり様以外にこんなに優しくしてもらったの初めてかな」
「地上の付き合ってた人間は?」
「結構。子供っぽいし…あなた以上に優しくなんてなかったな。」
「そうだったんですね。」
姿勢を戻すとこいしは涙を拭いた。
「ありがとう。」
「いいんです。俺もこいし様と同じで裏切られたので…」
「でも。あなたも辛かったでしょ?」
「まぁ…それは確かに」
「私より…大変だったんだね。」
「もう、地上になんか戻れませんし。」
「悲しい?」
「もう、悲しくないですよ。」
「そっか。」
「裏切られたから、今俺は地霊殿にいるんです。こうやってこいし様と話していられるんです。」
「うん。そうだね。」
「確かに嫌な過去ですけど。それでも今の為の過去なら。なんとも思いませんよ。」
「ほんとに、強いんだね。」
「そう…でしょうか?」
「ねぇ。」
「はい。」
「貴方はわたしを裏切らない?」
「裏切るのも裏切られるのも俺はもう嫌ですから」
「なら…」
「こいし様、俺は古明地姉妹のペットです。断ることも裏切ることもしません。」
「私のこと好きになってくれる?」
「えっと、お付き合いなら喜んでお受けします。」
「うん!ありがとう、」
「ただ。」
「何かいけない?」
「さとり様はどう言うでしょうか。」
「お姉ちゃんならきっと大丈夫だよ、」
「だと良いのですが。」
こいしはベットに横になると大きな欠伸をした。
「なんか、スッキリして眠たくなってきたな。」
「なら寝ましょう。俺も戻りますね、、」
「待って。」
「どうかしました?」
「今日は…一緒に寝てくれる?」
「わかりました。」
こいしの隣で横になると、こいしは寄り添ってくる。
「好きな人とこうやって一緒に寝るのって、なんかドキドキしちゃうな。」
「そうですね…ちょっと寝れそうにないです」
「あはは。そうだね、ドキドキして眠たくなくなっちゃう。」
そうは言ったが。
数分するとこいしはすぐに眠たくなってきたようで。体が暖かくなってきていた。
「眠たいですか?」
「うん…ちょっとぼぅっとしてきたかな…」
「俺も眠たくなってきましたね…」
「お休み…」
「はい…お休みなさい」
俺とこいしはすぐに寝入った、
………
夢も見ることなく体を軽く揺らされて、目が覚めた
「起きて?」
「うぅ…もう起きたのですか?」
「長い間寝てたみたいだね」
「そう…ですか…」
「ねぇ、お姉ちゃんのとこに行こ」
「いいですけど何かありましたか?」
「私ねお姉ちゃんに心配されてたんだ。その…さっき話した裏切られたことで…」
「うん…」
「もう大丈夫だって。言っておきたいの。」
「そうか、そうですね。」
「私には…あなたがいるから、、」
地霊殿を少し歩いてさとりの部屋に向かった。
その途中でペット達に会った。
「ねぇお姉ちゃん見てない?」
ペット達の話によるとどうやらお空とお燐と一緒にいたという。
「ってことはペット達の部屋かな」
一度道を戻り別の方向に向かった。
部屋の前に着くとさとりが出てきた。
「待ってたわ。」
「待ってたって、どういうこと?」
「こいし、ちょっとだけそこで待ってて、」
「えっ?うん…」
そして俺とさとりだけ部屋に入った
「話があるんでしょ」
「そうですね、」
「…何よその目は」
「心を読めば全部わかるんだろ」
「まぁ、そうね。」
「俺の口から話すくらいなら読んでもらったほうが早いだろ」
「【余計な詮索は必要ないからな】そうね、そうだけど、貴方は…」
俺はさとりが言い切る前に言った
「俺はもう逃げも隠れもしないぞ」
「なんのつもり?」
「さとり様が俺をどうしようが俺は抗わない。でもそうなれば俺はここから消えるだけだ。いや、この世界からか。」
「あなたね…」
「心を読んで本音を読んでみろよ」
「【ここが最後の居場所なんだよ】…本当のことを教えて頂戴」
「地上から逃げたとしか行ってなかったな。本当は逃げたわけじゃなくて追い出されたんだ、地上からな。」
「…」
「必然的に俺は死ぬしか道がなかった、だがそんなとき、さとり様が、あんたが俺を救ってくれた。」
「【命の恩人に捨てられる覚悟】…そんな覚悟…私は望んでないわ。」
「ココにとって俺は邪魔者だろう、他のペット達も俺を軽視してる。あんたにとっても俺はちょっとした障害じみた存在でもあるんだ。だから、いつか捨てられるんだろうと俺は思ってる」
「誰も捨てるなんて…」
「いつだったか聞いた。居場所は与えられるものじゃなくて作るものだと」
「どういうこと?」
「あんたは、どうか知らないが。俺にはもうここしかないんだ。俺は最期までここにいるつもりだ。」
「少しいいかしら」
「なんだ?」
「大きな勘違いをしていないかしら?」
「勘違い?」
「別に私は貴方を捨てようなんて思ってないし、ここに来た理由が知りたかっただけなのだけど」
「あぁ…そうか、最近はいろいろあって焦ってたものだから…」
「別にいいわ、ここに残りたいなら好きにしなさい。」
「あぁ、そうするよ。」
「こいしを呼んで頂戴。」
「わかった。」
扉を開けてこいしを呼ぶ。
するとこいしは不満そうにしていた。
「なにもそんな顔しなくていいじゃない。」
「だって私だけ仲間外れにするんだもん」
「悪かったわ。」
こいしは部屋に入るとすぐに俺にくっついて来た
「相当気にいられてるようね。」
「気にいられてるというか。」
「こいし、地上の人間はどうするの?」
「あの人はもういいの。」
「そう。別れるのね」
「うん、だって、他の人と付き合うって。言ってたからもう私はいらないって」
「そう…許せないわね…」
「でも、いいの、」
「そう。」
「だって私にはもうこの人がいるから。」
「でも彼はペットなのよ?」
「じゃぁ、今日からペットじゃなくて私の恋人にする。」
「そう…それなら構わないけど。あなたはいいの?」
「ええ、もちろん。」
「そう。よかったわね、こいし」
「この人は…私より辛かったみたいだから…」
「そうかもね…」
「でもすごく優しいんだよ。」
「そう。」
「さてと。そろそろ掃除に行ってくるよ。」
「この時間だと私の部屋かしら、」
「そう…だな、あとこいし様の部屋も」
「待ってるね。」
「はい。」
俺は部屋を出たあと、さとりの部屋を片付けていた。
読みかけの本やお菓子の箱、机に広げられたペット達の資料。
さほど散らかってはいないが、
ベットだけはいつもくしゃくしゃだった。
一通り終えるとすぐこいしの部屋に向かった。
扉を開けた瞬間こいしが飛びついて来た。
「待ってたよ。」
「えっと…そんなに抱きつかれたら掃除が…」
「えへへ、ごめんごめん。」
本や棚はある程度片付けてあった。
ベットも少し手入れするだけで
特に何もしなくてもすぐ片付いた。
「こいし様がある程度掃除していてくれたおかげですぐ終わりましたよ。」
「掃除は全部終わった?」
「ええ、しばらくはまたゆっくりしてますから。」
「それじゃあ!またここにいてくれる?」
「ええ、いいですよ。」
俺とこいしはまた部屋で話をした
地上の話、恋人の話、人間の話、いろいろ話していた。
そして疲れたら隣同士で寝て。
たまにさとりが割り込みにきて…
俺はたまに酒場にいって。
そんな幸せな日々を送っていた
ご拝読ありがとう御座います
また会えたら
会いましょう