物語館   作:むつさん

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もみじもみもみ


ではごゆっくり


愛を探す天狗

妖怪の山。

 

天狗達の見張りにより人間は立ち入る事のできない、幻想郷では有名な山

 

半妖という立場と天狗達との縁でなら妖怪の山に立ち入ることが出来ていた。

 

「全く…これじゃ視界が悪い…」

 

妖怪の山でしか取れない珍味にも近い山菜を採りに山に来ていた。

 

「晴れていたのになぁ…」

 

里から出るときは青空がみえるほど晴れていたのにも関わらず。

急な天候の変化で雨が降り始めてしまった。

 

「雨具はあるとはいえ。視界が悪いんでは、採るものも見つからないな…」

 

今回は特に霧が強く、遠くが見えなくなってしまった。

 

「困ったなぁ…帰る道もわからなくなりそうだな…」

 

目印はあるが…霧のせいでほとんど見えない。

 

山道を進んでいると、正面に人影が見えた、

 

「なんだ…?人間…そんな訳ないか」

 

近づくと誰かはすぐわかった。

 

「椛…?椛か?」

 

犬走椛。白狼天狗だ。

 

彼女とは仲が良く、顔を合わせてはよく話し掛けてくる、

最近では付き合っている彼氏についての相談すらお願いされたこともある。

 

それぐらい親身な関係だ。

 

しかし。これだけ雨が降っているのに、雨具も無しに上向いたまま立ち尽くしている。

 

「おい椛!どうした!」

 

椛の耳が微かに動いた。

でも格好はそのままだった、

 

近寄って更に声を掛けた。

 

「椛!おい椛!」

 

やっとの事で反応を示した。

 

「あぁ…陸さん…」

 

こっちを向いて囁く様に声を発して。

 

それから下を向いて俯いていた、

 

「椛…?具合でも悪いのか…?」

 

椛は答える間もなく膝から崩れて座りこんだ。

 

「おい?、どうしたんだよ」

 

軽く体を揺すると力もなく倒れ込んでしまった。

 

「おい…?椛!、椛!」

 

息はしているが意識がない。

いくら声をかけても返事がなく。

かなり困ってしまった。

 

「おい誰かいるのか?」

 

後方から声が聞こえた。

 

聞き覚えのある声だ。おそらく哨戒中の天狗だろう。

 

「助けてくれ!白狼天狗が倒れている!」

 

力強く呼ぶように叫ぶとすぐに天狗が駆けつけてくれた。

 

「お前は?。」

 

「陸と言えばわかるか。」

 

「なるほど。噂は聞いてる。それより天狗は…椛殿?」

 

「あぁ…道の途中で立ち尽くしてて、いきなり倒れ込んだ。どこか安全なところは知らないか?」

 

「椛殿の小屋が近くにある。そこまで連れて行こう。」

 

天狗に道案内を頼み。

俺は椛を背負いながら歩いた。

 

そう遠くはないところで小屋についた、

 

「ここだ。先に中で休ませていてくれ。私は救護の天狗を連れてくる。」

 

そう言うと天狗は飛んでいった。

 

ベットに寝かせて様子を見ることにした。

 

「体が濡れて冷めちまってるな…」

 

秋季とはいえ雨が降れば気温も下がる。

しかも雨に濡れるとなれば体も冷える。

 

そこにあった暖炉に火を焚き、椛に毛布を掛けて、出来る限りタオルで体を拭いていく。

 

目が覚めるのはいつになるか。

 

そう思っていると小屋の扉が空いて先程の天狗ともう一人天狗が来た。

 

「陸ね、椛はどこに?」

 

「ベットで寝かせてる、出来る限りの処置はしたがあとは頼むよ。」

 

「わかったわ」

 

天狗は椛に近づくと。

急に振り向いて話しかけてきた、

 

「何したのかしら?」

 

「何したって、体が冷めない様に暖炉を焚いて毛布着させて体を拭いた。それだけだが?」

 

「服。脱がして拭いたわね?あなた男でしょ、わかってるの?」

 

「緊急時だしな。最初は気が引けたが、命に関わるならいけないと思ったし。仕方ないだろ、」

 

「まぁ…そうね…」

 

半分納得のいかない顔で答えた。

 

「姉さん。椛殿なら多分大丈夫ですよ。椛殿と陸殿はかなりの仲ですから。」

 

「わかったわ。」

 

俺も体をある程度拭いて。

椅子に座っていた。

 

「あなたもこのアメの中山に来ていたのでしょう。体調の方は大丈夫なのかしら。」

 

「俺は大丈夫だ、雨具もあったしな。」

 

「そう。」

 

「椛はいいのか。」

 

「見た感じ、怪我をしてるわけでもなさそうだし、体が冷えてるとはいえ。息が荒かったり熱があったりしてるわけじゃないから」

 

「今の段階では風邪ではなさそうだな」

 

「まぁ、そのうち目が覚めるでしょう。私が居ても変わらないわ」

 

「そうか、すまないな。」

 

「それじゃ、私は帰るわね。」

 

「ああ、」

 

「私も山の警備に戻ります」

 

「おう、ありがとうな。」

 

天狗の二人は小屋から出ていった。

 

しかしながら、外傷も無ければ病気でない、

 

となれば…何が原因だろうか。

考えてもわからない。

 

とにかく起きるのを待った。

 

多少雨に濡れていたからか。

疲れも相まって。眠気も来ていたが

 

気がつくと、眠ってしまっていた。

 

 

目が覚めて、窓から外を覗くと。空は曇ったままだが、雨は止んでいた。

 

顔を前に戻すと、椛が悲しそうな顔をしてお茶を飲んでいた。

 

「陸さん、起きたんですね。」

 

そう言うと椛は立ち上がって、お茶を出してくれた、

 

「ごめんなさい。迷惑かけてしまいましたよね、」

 

「さっきはどうしたんだ。」

 

「話…聞いてくれますか?」

 

「いつもみたいに話してくれ。」

 

「はい…この一週間ぐらいのことなんです…」

 

……

 

私の彼は…だんだん素っ気なさが見えてて。

 

私も不安に思ってたんです。

何か悪いことでもあったか聞いたら

彼は呟いたんです。

 

「もういいんだよ。俺達は知りすぎたんだ」

 

って、それで、一方的に別れられてしまって…

 

でも…私は納得もいかないので、話もしました、もう一度やり直そうって何度も説得して…

 

それで…さっき…言われたんです…

 

「お前は好きになれない」

 

って…

 

私は…私は彼に何もしてないのに…

なんで何でしょう…

 

私は…

 

……

 

「椛。あのな。」

 

「はい…」

 

「すごく申し訳無いが、俺にはその心はわからん、誰かを好きになったことはある、でも叶わなかったし、誰かと付き合ったこともないしな。」

 

「そう…なんですね…わかりました…」

 

「まて、それでだ、俺から話をするぞ」

 

「はい…」

 

「お前はあいつが愛しくて再びを願ったんだろ。」

 

「はい…」

 

「でも叶わなかった。それがなんでなのか考えたことはあるか?」

 

「…ないかもしれません。」

 

「そうか。俺から言えるとすれば、1つや2つだな」

 

「それは?」

 

「あいつが単純に椛に冷めた。」

 

「私が飽きたと言うことですね」

 

「そうとも言う。それでもう一つは」

 

「私が自然に彼が離れるようなことをした…」

 

「悲観的になるな、話を聞け。」

 

「…はい。すみません…」

 

「多分な、考えることとか、求めるものとか、合わなかったのかもしれんな。」

 

「考え…」

 

「まぁ、なんだ、あいつは狼でお前は白狼。多少なりとも違いはある。もちろん異種でも愛し合う奴らはいるが。意見が違うのは、仕方ないと思うぞ。」

 

「そう…でしょうか」

 

「まぁそうだろ、人間と妖怪の場合でもそうだ、元々違う生き物で環境も違う。そうなれば自然と考えも追求も変わるさ」

 

「…はい…」

 

「だからな椛」

 

「はい。」

 

「次、本当に誰かを愛したいと思うんなら。お前をこよなく愛したいと思う奴に尽くせ。」

 

「私を…愛してくれる…」

 

「不安か?」

 

「…はい…」

 

「まぁ、いつでもいい、気が晴れてからでもこのことを忘れてからでも。」

 

「そうですね…ありがとうございます、」

 

「だから、お前は早くその濡れた顔を拭け。」

 

「なっ…」

 

冗談を混じえると椛は驚くような顔をした。

 

「お前にそんな悲しい顔は似合わないって言ってるんだよ。」

 

 

「あっ、そうですね…すみません。」

 

「ほら、いつもの元気はどうした。いつもみたいに飛びついて話し込んで。それが椛だろう。」

 

そう言うとやっと椛の顔から悲しさが消えて行き始めていた。

 

「ふふっ、そうですね。」

 

「そうだ、笑って笑顔で。その方が気分がスッキリするしな。」

 

「ありがとうございます。」

 

「いつもの事だ、お礼なんて関係ないさ、」

 

 

お茶を飲んでひと呼吸おいた。

 

「ねぇ、陸さん。」

 

落ち着いた様子で椛は話しかけてきた

 

「なんだ?話なら聞くぞ?」

 

「いつも私の話ばかりなので、たまには陸さんの話を聞きたいです」

 

いきなりの提案で少し驚いたが…

確かに思えばいつも椛が一方的に話して別れていたから。それも悪くないかもしれない

 

「おっ?そうだな。何を話そうか…」

 

「あの…さっき誰かをを好きになったことあるって言いましたよね」

 

「まぁ、言ったな」

 

「陸さんが好きになった方ってどんな方なんですか?」

 

「ああ。そうだな。」

 

……

 

俺が好きになったのは人間だった。

 

もう八年も前だ。

俺は里の役場で仕事をしてた、

今でもまだ役場で仕事してるが

 

その当時ある人間の若めの女性が、新しく仕事場に入ったんだ。

 

その人は優しかった。

気が利いて、笑顔も素敵で。

それ以上ないくらい素敵な人だった

 

俺はいつの間にか彼女が好きになって。

話をしていても楽しかったし何よりも触れ合える事が嬉しかった。

一緒に仕事できることが幸せだった。

 

でも、数ヶ月経ってすぐ、彼女は仕事をやめてしまった。

その時は何故かはわからなかった。

 

彼女が仕事をやめてから数日後俺は我慢ならなくて彼女を探した。

 

近隣の人に聞いて彼女の家を教えてもらい。

尋ねることにした。

 

それで家を尋ねると、

両親であろう人達が向かい入れてくれた。

 

何故か最初に名前を聞かれて答えると。

悲しい顔をして手紙をくれた。

 

その手紙は彼女の手紙だったんだ。

 

“あなたと居れたことが嬉しかったです。一緒に話したことも一緒に仕事したことも、何よりあなたとの時間は私の一生の宝物です”

 

短い文だったけどそれでもとても嬉しかった。

 

その後彼女のことを聞くと。

両親は悲しい表情をして呟くように答えたんだ

 

「先日…亡くなったのよ…」

 

そう、一言だけだった。

 

彼女は元々体が弱く。

いつも病に苦しんでいたそうなんだ。

 

それで里では治せないような不治の病にかかって…寿命が短くなってしまっていた。

 

おおよその寿命がわかってるのにもかかわらず、仕事をしていた。

 

そして、僅かな寿命の間でも仕事をしたいと思い役場に来たそうだ。

 

そして、彼女も俺に恋をしていた。

 

でも…彼女は寿命も恋も隠したんだ。

 

両親が話してくれた

 

俺を悲しませたくないと。

出来る限り別れは避けたいと。

 

その優しさすら、もう虚しかった。

 

俺は思ったんだ。

もっと前に話していれば。

彼女に気持ちを伝えていればよかったと。

 

あいにく、俺は永遠亭の医者とも知り合いだ。あの人にならなんとでもしてもらえたはずだと。

 

ずっと、未練と後悔ばかりだった。

 

 

 

……

 

「そんな、つらい過去があるんですね…」

 

「もう何年も前さ。今は一人で暮らしてる。」

 

「今でもまだその人のことを?」

 

「いーや。流石にそれはないさ。その時は嘘だと強く願ったけど。葬式に同席したときから。もう諦めたさ。」

 

「そうなんですね。」

 

「それからは特に誰かを好きになったことなんてない。」

 

「誰かと居たいと思ったことはないんですか?」

 

「まぁ、疲れたときとかはな、誰かに甘えたくはなるが…居ないならそれまでだしな」

 

「強いんですね。陸さんは。」

 

「別に強くなんかないさ。意地を張ってるだけだ。」

 

「私はそんな意地なんてないですから」

 

椛は立ち上がるとお茶を淹れ直した

 

「山菜集めよかったんですか?」

 

「まぁ、ある程度は集まったしな。そろそろ帰ろうかと考えていたところだ」

 

「そうなんですね。私は今日はおやすみなので。ゆっくりしていってもいいですよ。」

 

「まぁ、俺の採ってきた山菜を目当てに訪ねてくる人もいるし。そう遅くまでは居られないかな。」

 

「それなら仕方ないですね。」

 

「まぁ、またあったときにでも来るよ。」

 

「いつでも来てください。」

 

お茶を飲み干し。立ち上がって山菜の籠を背負い扉に手を掛けたとき

 

「あの、陸さん…」

 

小さな声で話しかけてきた

 

「ん?どうした?」

 

「もう少しだけ。あと少しでいいので居てくれませんか?」

 

「別に構わないけど。」

 

籠を降ろして壁にもたれていると、

 

また小さな声で話しかけてきた。

 

 

「あの。陸さん…」

 

「どうした?」

 

「陸さんは私の事をどう思ってますか?」

 

「どう思う。か。」

 

「わ、私は…」

 

「そうだな…お前が俺のことを好きだと言うなら。愛したいと思うなら。俺はその気持ちに応える。」

 

「えっ…?」

 

「今お前が思ったように、椛が俺に対してどういう思いなのかは知っておきたかったのはあるからな。」

 

「そう、だったんですね」

 

「少なからず無関心なわけじゃない、俺だって気にはしてた。ただお前はあの狼が居たからな。」

 

「でも、もう彼は。」

 

「それで、気は晴れたか?」

 

「ええ、まぁスッキリしました、」

 

「正直に言うなら俺も椛の事は好きだと言いたい。それ以上の気持ちだってあるが今でも抑えてる」

 

「そんな、まだ意地張って…」

 

「そりゃ。お前はあの狼が好きだったんだからな。奪っちゃいけないだろ。」

 

「でも、もう彼は諦めましたから。だから、陸さんは抑えなくてもいいんですよ。」

 

「お前は…いいんだな?」

 

「あんなことあったあとですが…でもあなたなら私は大丈夫です。」

 

「ありがとう。」

 

「だって…あなたは私の唯一の親友でしたから。貴方が私の支えでもあったんです。もっとずっと一緒にいてほしいです。」

 

「ああ、俺もそう思うよ。」

 

「あの…なので…お付き合いから!お願いします!」

 

「こちらこそ」

 

 

妖怪の山。

 

天狗の監視で人間は立ち入る事のできない

幻想郷では有名な山

 

椛は今日も哨戒から帰ると。

 

愛おしい旦那が美味しいご飯を用意して出迎える。この二人はずっと幸せそうに過ごしていた

 

 

 




もみじもみもみ


ではまた会えたら会いましょう
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