物語館   作:むつさん

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どうも夢子です

静かな心の氷結娘のちょっとした番外編みたいな感じで書きました


ごゆっくりどうぞ


氷結娘は夢を見る

「それじゃちょっと行ってくるよ」

 

そう言ってから彼はもう一日帰ってきていない…

 

「大変なのかな…でも私はここに居ないと…」

 

彼が帰ってきて私が居なかったらきっと残念に思うだろう。

 

「無事だといいけど…」

 

彼…レイはわたしの大切な人。

ボロボロの家をわざわざ人まで連れてきて建て直してくれた。

それだけじゃない、わたしが困っているときはいつもの助けてくれた。

そんな彼だから余計に心配してしまう。

 

「もうお昼になっちゃうな…」

 

昨日の朝、彼は手紙で呼ばれて

人里まで行った。それから帰ってきていない

 

 

「ちょっと、探してこようかな。」

 

家を出て人里に行く。

相変わらず、人里は賑やかだった。

子供達は元気に遊び回り、商売人が居て、話し込む大人達。そんな風景だった。

 

「前見た景色とは、なんか違って見えるのはなんでだろう?」

 

きっとイタズラしてた頃とは見方が変わったのかもしれない、その時はいつでも何でもかんでも標的だったから。

それと比べると今のわたしは…この人達と対して変わりがない。

家で過ごして、誰かと暮らして、誰かと話して周りを見ながら生きてる。

人の暮らしがこんなにも落ち着いているなんて思いもしなかった。

 

「あっ!お前!」

 

後ろから話しかけてきたのは肉屋の若い衆だった。

 

「あっ、えっと…前はイタズラばかりしてごめんなさい。あと、いつもお世話になってます、ありがとうございます。」

 

「えっ?お前?なんだ…なにが何だか…?」

 

「あの、レイ見てませんか?」

 

「お?レイは一昨日に少し話してから見てないな?何かあったのか?」

 

「そうですか…ちょっと探してるんです。わかりました、ありがとうございました。」

レイは肉屋とは縁深いのか仲がいいから、

何かわかるかと思ったけど。特に何もなかった。

 

「お、おう、だけどよお前さん…ど、どうしたんだ?そのなんだ?風格っていうか。」

 

「えっ?わたしが何か?」

 

「いや、だってよ、昔はイタズラばっかで喋り方ももっと生意気で、そんな落ち着いてなんかなかっただろ?」

 

「えっと…心変わり…?かな?」

 

「ま、まぁそうだよな…人間心変わりぐらいするよな。あ、妖精だったか。」

 

「わたしはそろそろ行きます、ありがとうございました、またお肉買いに来ますから」

 

「おう、いつでもおいで」

 

肉屋の若い衆は首を傾げながら店まで戻って行った。多分、まだここの人達はわたしがイタズラっ子だってイメージが消えてないんだ

 

しばらく見渡しながら歩いてもやっぱりレイは居なかった。いろんな人に声をかけても、声を掛けられてもその手がかりすら、見つからなかった。

 

「もう…帰ろう。」

 

そう思って人里を後にしようとした時、

 

「おい!そこのお前!」

 

多分わたしかもしれないと振り返ると

そこには大男が居た。

 

大男はいきなりわたしの腕を掴んできて、

思いっきり引っ張ってきた。

 

「い、痛い!やめてください!」

 

「へへ、やっと捕まえたぜ、これで借金まみれとはおさらばだぜ!」

 

「わたし!賞金首なんかじゃないです!」

 

「はぁ?何言ってんだ!十分な金になるほどおめえは悪人だよ!」

 

大切な事を忘れていた、今のことを言われて思い出した、わたしはイタズラっ子…その昔の歴史は消えない…だからわたしは…

 

でも、ここで立ち止まっているわけにはいかない、家に帰らないと、

もしかしたらレイは帰ってきて居るかもしれない、そうじゃなくても帰ってレイの帰りを迎えるんだ。

 

「やめてください!」

 

力を込めて大男の腕を振り払う。

そうすると大男は思いっきり殴りつけて来た

 

「いやっ…」

 

「ちっとはおとなしくしやがれ」

 

拳骨はわたしに思っきりぶつかり…

少しずつ意識が薄まって…

いつの間にか意識はなくなってた、

 

 

目が覚めると布団の中で横になっていた

起き上がって周りを見渡すと

屋敷の大広間のような部屋にぽつんとわたしは寝ていたみたいだった。

 

「ここ…どこだろう…」

 

その言葉を放った瞬間。

何かを思い出した。

ここは…見覚えがある感じがする…

 

「目が覚めたかい?」

 

聞こえてきたのは男の人の声、振り返ると歩いてきていた、さっき襖を開けて入って来ていたみたいだ。

 

「あ、あなたは…?」

 

「僕はレイ。金貸しをやっているんだ。」

 

…えっ?レイ…?

でも…見た目も背も全く違う…

この男は低くて…でも彼はもっと背が高い…

同じ名前の別の人…

 

「金貸し…なら、わ…わたし…売られたんですか…」

 

何か引っかかる…

さっきから見覚えのある風景ばかり。

何かあるの…?

 

「そう、君は僕が預かった。大男に君は襲われただろう?」

 

「はい…」

 

「彼は君を襲ったあと、僕のところに来て君を売ろうとした。」

 

「それじゃ…わたし…」

 

…人を売るなんて信じられないけど…でも…どうすればいいか…わからない…

 

「これから…わたしは…ねぇ…レイ…どうすれば…」

 

泣きそうだった。

いや、泣いている

胸が苦しくなって声が出なくて…

レイにもう一度会いたくて…

涙が止まらなかった。

 

「確か、君の愛人もレイだったね。」

 

「な、なんで…それを…?」

 

「僕は彼の弟分でね。彼とはとても仲良くさせてもらってるんだ。」

 

「そう…なんですね…」

 

「君がこんなに変わっているなんて思いもしなくて、最初、彼から聞いたときは嘘だと思っていたけど。ほんとに君は変わったんだね。」

 

「でも…もう、わたしは…」

 

涙が止まらなかった。

 

「泣かないでくれ。君にはそんなつもりはないんだ。だって君は彼の愛人だろう?僕が君に何かしたら彼が何するかわからないからな。」

 

「レイ…わたし…」

 

男は必死に弁明していたがよく聞こえていなかった。会いたい一心でずっと苦しかった。

 

「ちょっと落ち着いてくれよ…もぅ…仕方ないな…」

 

男は部屋を出ていった

わたしはそのまま泣いていた…

少しすると男が手に箱を持ってまた戻ってきた。男が箱を少し弄ると…

音程が高くて綺麗でゆっくりとした音色が聞こえた。

 

自然と気が落ち着く不思議な音色だった。

 

「これを聞くと不思議と落ち着くんだよね。」

 

男は音の鳴る箱をわたしに渡すと座り込んだ。

 

「これはね、レイが君の為にって、私に作らせたものなんだ。」

 

「レイが…これを?」

 

「そう、音程から曲調まで全部譜面で作ってあってね。題名まであるんだ、たしか…静かな心の氷結娘、だったかな」

 

「静かな心の氷結娘…」

 

「多分、今の君のことだと思う。」

 

「私の為に…」

 

「君も彼に愛されているね。」

 

悲しい気持ちが次第に薄れていったが。

それでも会いたい気持ちはより一層強くなった。だからこそ、ここにいるばかりじゃだめだと思えるようになった。

 

「それは君にあげるよ、元々彼から君へのプレゼントにするつもりだったそうだけど、先に君に見せてしまったからね、まぁ、仕方ないよ。」

 

「あの…ありがとうございます」

 

「お礼はいらない。彼の大切な人なら僕にとっても大切な存在だからね。」

 

わたしは涙を拭いて立ち上がって深々とお礼をした。いらないとは言われてもこんなに親切にしてもらってなにもしないわけにはいかなかった。

 

「ははは、ほんと君は変わったなぁ。」

 

音の止まった小箱を眺めると、とても勇気が湧いてくる感じがした。

帰らないといけない、

 

「あ、あとちなみに。」

 

「はい?」

 

「あの大男なんだけど、」

 

大男…わたしを襲ったあの…?

 

「今頃、慧音先生のとこで大罰を食らってると思うよ。」

 

「そ、そうなんですね」

 

「当たり前さ、女の子とっ捕まえて、拳骨や暴力振るったうえに人に売るつもりなんだ。人として失格だね。」

 

「でも、あなたは。」

 

「まぁ、確かに預かったとは言ったけど、そういう意味とはちょっと違うかな。僕ら金貸しの間では、人から何かを貰うときや預かるときは買うって言う癖がある人もいてね、それに近いのがつい出てしまったんだよ。勘違いさせてしまって申し訳ないね。」

 

「そうなんですね。」

 

「まぁ、正確には彼から取り返したんだ。多分あのままだと本当の意味で君は売られていただろうね。」

 

そう言われるとぞっとする…

彼がいてくれて助かった…

 

「あ、ありがとうございました。」

 

彼ならレイがどこか行ったか知っているかな…

 

「あの、レイのことなんですが…」

 

「彼がどうかしたかい?」

 

「昨日の朝から、帰ってなくて…探しに来てたんですが見つからなくて」

 

「昨日の朝からか…事故でもあったならすぐに何か騒ぎになるはずだし、僕のもとにその知らせも来るはず。どこかにいるとは思うけど、ごめんよ。僕もそれはわからないな。」

 

「そうですか…わかりました…」

 

帰ろう…

帰ってもう一日待とう、

 

「僕の方でも探してみるよ、流石にあの人が消えたって聞いたら困るからね」

 

「ありがとうございます。見つかったら心配してたって伝えてください」

 

「わかった。それじゃ気をつけてね。」

 

屋敷をあとにして霧の湖の家まで帰ってきた。

 

「ただいま。レイ、居る?」

 

家の中には誰もおらずお帰りの声も聞こえなかった。

 

「レイ…まだ帰ってないんだ…」

 

ただ待っているだけでは落ち着かなく

とりあえず本を読んでいた。

それでも少しすると会いたくなって胸が苦しくて読書に集中できなかった。

掃除をしても洗濯をしても終わる頃には彼の事が恋しくなる。

 

「早く帰ってきて…」

 

そう呟きながらソファに座り込んだ。

 

彼は今どこにいるだろうか。

人里…地底…迷いの竹林…?

この幻想郷にはいろんな場所がある。

それ故にいろんな人や妖怪がいる。

 

そういえば彼は言っていた

 

まだ俺は妖怪になって間もない、と

力も弾幕もそんなに強くない、と…

 

もしかしたら他の妖怪に襲われたのかもしれない。それかいろんな仕事が込み合って忙しくて帰りが遅いのか。

 

なんにしろ、わたしに何かできるかどうかと言われるとそう言う訳ではないのがとても悲しかった。

 

今までイタズラばかりしてきたから、他人に優しくするのが親切心だって、誰かに何かをしてあげたいって気持だよと、よく言われたけど、いまいちまだよくわかってない。

 

レイが帰ってきたら何かできることはないかな…ごはんを作る、一緒に話をするお風呂に入る、朝まで一緒に寝る

それくらいだろうか。いや、もっとあるはずだ

 

そうやって考えに更けていた。

でもやっぱり思うのは…

 

「レイ…どこにいるの?」

 

そればかり。

もしかしたら、別の女の人の家にいるのかもしれない、確かにこの幻想郷にはわたしよりももっと魅力的な少女達がいる

 

彼が目移りしてしまったら…わたしは…

 

考えるほど胸が苦しくなる

ソファに座っていると次第に眠気がやってきて、いつの間にか寝てしまった。

 

…薄っすらと誰かの声が聞こえる、

 

「チルノ…?」

 

わたしの名前を呼ぶ声…

 

「チルノ?大丈夫か?」

 

この声は…レイかな…きっと帰ってきたんだ。

 

「う、うん…レイ?」

 

目を開けて前を見ると心配そうにするレイがいた。でも、レイが帰ってきたことがとても嬉しく思わず抱きついてしまった。

 

「ちょ、チルノ?いきなりどうした?」

 

「帰ってくるの…遅いよ…」

 

「ご、ごめん?」

 

「もう2日くらい待ったんだから…」

 

「2日?俺はすぐ帰ってきたけど?」

 

「あれ?じゃぁ…夢…だったの?」

 

「そうかもな。結構うなされてたから、相当辛い夢見てたんだな。」

 

「あれ…でもそれ…?」

 

レイが持っていた小箱。夢に出てきた音の鳴る箱に似ている。

 

「これか?これはプレゼントに用意したんだけどな、チルノが落ち着いてくれるかと思ってさっき鳴らしてたんだ。」

 

「それ…あなたの金貸しの弟分さんの?」

 

「弟分?いや、双子の弟ならいるが…」

 

「そうなんだ…」

 

夢とは少し違ってる…でもこの箱の音色は…

 

「音、鳴らしてもらっていい?」

 

「ああ、いいぞ」

 

小箱からは夢で聞いた曲が流れていた

とても落ち着く綺麗な音色

 

「静かな心の氷結娘…だっけ」

 

「ああ、よくわかったね」

 

「夢でね、弟さんが、わたしにくれたの。」

 

「そうだったのか。」

 

音色を聴いているととても落ち着く。

でも、落ち着くだけじゃなくて何だか、とても冷たくて夢の様な感じもする。

 

「わたし…この音色、好きだな…」

 

「そうか、よかった。」

 

彼に会ってから、わたしは少しずつ前向きになれた。三月精達とは会うことは減っちゃったけど、それは仕方ないよね

 

大ちゃんとはたまに家でお茶会したり、

他の妖精達も家に来ることが多くなった。

 

「ねぇ、レイ。」

 

「どうした?」

 

「ありがとう」

 

「うん?どうした、そんないきなり」

 

「うん、なんかね、ちょっと感謝したくなったからさ。レイのおかげで楽しい毎日が送れて嬉しい。」

 

「チルノが楽しく笑顔でいてくれると俺も幸せだな。ありがとう」

 

「うん!」

 

いつまでも彼と居たい。

どれだけ日が経っても

その気持ちは変わらない

わたしは彼と今もこれからも

幸せを感じながら生きていくんだ。




番外編のつもりです
長めになったとか悔いてませんから

ではまた会えたら会いましょう
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