特にネタもなく書き始めたのに
なんとなく上手くいった感じがしました。
とりあえずまぁ、これはこれでよし
ではごゆっくり
「今日は疲れた。」
男は用事を終えると、旧都に向かっていた。
「相変わらず旧都は騒がしいな…」
「おいお前さん、今から一杯どうだい?」
「すまないな牛頭、今日は疲れてるから帰って休むよ」
「そうかい、そりゃ。しゃーねぇか。」
男は誘いを断ると
真っ直ぐ帰路を進んだ。
「お帰り。今日は遅かったね、」
「ああ、途中であの姉にちょっと捕まってね」
「何もなかった?」
「まぁ、ちょっと冷やかされて終わったから大丈夫だ。」
「良かったね、ところでその袋は?」
「これか、見てみるか?。」
中は果物が沢山入っている
それもまだ新しいものばかり。
「ど、どうしたのこれ?」
「地上に行って買ってきた。」
「ええ!?でも地上って…もしかして、」
「ああ、お前が言ってただろ。」
「覚えてたんだ、私すっかり忘れてたのに」
「そりゃひどいな、俺の骨折り損だったとは」
「そんなことはないよ。だって私の為にわざわざ持ってきたくれたんでしょ?私は嬉しい。」
「まぁ、今用意するから待ってろな。」
「うん」
この二人は以前、なんともない出会いをした
…
男は地底に住む妖怪の類である。
名は域蜂湖蝶(いばち、こちょう)
そして家で待っていたのは
土蜘蛛、黒谷ヤマメ
地底で男が役所仕事から帰る途中にちょっとした出来事で出会った。
それ以来、男はヤマメと住むことになった
「急がないとな。また怒られちまう」
男は書類の詰まった鞄を肩からかけ、
旧都の役所を出た
走って向かうのは地霊殿。
古明地さとりに頼まれて、旧都の治安状態についての書類を渡すことになった。
書類を持っていくのは別の妖怪の担当だったのだが、その妖怪が古明地さとりにひどくやられた(精神的な意味で)ので行きたくないと駄々をこねたので。男が行くことになった
「あら、遅かったわね。」
ああ、前の妖怪がボイコット起こして俺が急遽呼び出されたんだ
「そう、それで書類は?」
これでいいだろ。
一応中は確認してある。
「確かに受け取ったわ。ありがとう」
あまり役所の妖怪を虐めてやるなよ?
「虐める?私は何もしてないのだけど。」
担当の妖怪がボイコットを起こしたのは、あんたのせいだって。
「うーん…私は特に何もしてないわ。」
そうか、ならいい。
「ところで貴方。」
ん?なんだ?
「なんで口を開かないわけ?」
なんでだろうな。
「教えなさいよ、何か理由があるんでしょ」
あんたは心が読めるんだから
俺がわざわざ口で話さなくても何が言いたいかくらいわかるだろ?
「それはそうだけど…でも、話をする上で何も喋らないのは失礼よ。」
そうかもしれないな
でもな、あんたは心を読めるんだ。
だったら読んで話が早く済んだ方が
あんたにとっても都合がいいだろ?
「間違いじゃないけど…」
それに、口で話すと心が読まれてしまう。
なら口で話さず考えを読んでもらったほうが、その先が読まれなくて助かるからな。
「どういうこと?」
あんたは心が読める。
つまり、相手が口で話しているから、心の奥底のことがわかる訳だろ?
俺の場合は考えを心に表して口は閉じてる。
つまり心の奥が出てこないわけだ。
その方が心を読まれなくて済む。
「なるほど…考えてるわね」
話しているうちに無駄なこと考えて
それがお前にとって揚げ足を取るネタになるわけだろ。簡単なトリックみたいな感じだ
「そういうことなのね。どうりで違和感がある訳だわ。」
そもそも口で話をするのは苦手なんでね。
「コミュニケーションも欠片もないわね」
うるせえ言ってろ
「それじゃもらった書類でも眺めてくるかしら」
眺めるだけじゃなくてしっかりと策を出してほしいね。
「余計なお世話よ」
はいはい、それじゃ、帰るから
「ご苦労様」
男は地霊殿をあとにして
旧都に向かった
「相変わらず。睨みが強いな…」
男は役所に戻って鞄を返した。
「睨みが強いって誰のことだい?」
唐突に話しかけてきたのは鬼。
星熊勇儀だった。
「地霊殿のお姉様の方だよ。いつも余計な話を持ち掛けてくる。面倒なんだよな。」
「まぁ、そう悪く言うな、元々心が読めるというだけで嫌われてきたからな、少し捻くれている部分もあるだろうさ」
「まぁ、それは仕方ないが」
「あれでも旧都の為に頑張ってるんだ、館のこともあるだろうし、まぁ悪いやつではないよ」
「まぁ、お互い様ってとこだな。」
「あんたもお疲れ様。」
「ああ、それじゃ、俺は帰る」
「おう、また何かあれば呼ばれるだろうけど、そんときはよろしく」
「ああ。」
役所を出て旧都の離れの場所に家がある。
その帰路途中、少し寄り道をすると…
「ん…?」
男の足が何かに摑まれている。
「これは…蜘蛛の糸か?にしても太いな…まぁ…あいつか」
大体の予想はついていた
「ひっかかったね」
声を掛けてきたのは土蜘蛛の妖怪
黒谷ヤマメだった。
「ヤマメだったか?」
「よく知ってるね」
「まぁ、一応旧都で少し話を聞いた程度だけど」
「あなたは?」
「域蜂湖蝶、」
「い、いばち?」
「わかりにくかったら別に覚えなくていいぞ。」
「が、頑張って覚えとくよ」
「それで、俺は帰りたいんだが。」
「んー。蜘蛛の糸にひっかかったってことは。私の餌食なんだけど。」
「まぁ。そうだよな。」
「どうしようかな。」
「何かしようにも、俺は半端な妖怪だから、抵抗するのも無駄そうだけど」
「半端な?ああ、あの旧都の役所の…」
「そうだ。」
「ふーん」
「まぁ。好きにするといい」
「役所の…か」
「どうかしたか?」
「いや、何でもない」
「そう。」
「あんたさ、自由になりたい?」
「この状態では、選択権はないだろ」
「そっか。ならさ、一つお願い聞いてもらってもいい?」
「どんなことだ?」
「地上の果物の料理が食べたいんだ。」
「つまり、地上に行って買って来て作れってことだな」
「そう、私が満足したら自由にしてあげる。」
「それはいいんだが、俺が逃げたらどうするんだ?」
「んー、それじゃあ。」
ヤマメが男の腕に触れると
男の腕には蜘蛛の入れ墨のような絵柄が出来上がっていた。
「これは?」
「簡単に言えば毒の呪いみたいなもの。私が逃げたと思ったらその呪いを強くしてあなたを苦しめるの、」
「なるほど。毒か。」
「それじゃお願い。」
「ああ、それはいいんだが、お前の家は何処なんだ?」
「私の家?旧都にあるけど。」
「一応教えてくれるか、そうした方があとが楽だから」
「う、うん、ついてきて」
二人は旧都に逆戻りして。
ヤマメの家に向かう。
「いつもここにいるんだ。」
「普通の家みたいだな」
「まぁ、ね」
「一つ提案があるんだが」
「なに?」
「ヤマメが問題ないなら、ここに住んでもいいか?」
「え?」
男の突拍子もない発言に
ヤマメは固まってしまっていた。
「ヤマメの好みとか、そういうの知っておいたほうがいいかなと思うんだ、」
「ああ、そういうこと…」
「それに、俺自体料理が得意というわけでもないから。少しずつ練習もしていきたいし。」
「まぁ、いいよ」
「ありがとう。これから世話になるよ。」
「う、うん」
男はすぐに荷支度をして次の日にはヤマメと同じ家で暮らし始めた、
「ほんとに住むんだね」
「嫌だったか?」
「うーん…まぁ、いきなりはびっくりしたかな」
「そうか、無理言ってすまないが、よろしく頼むよ」
「うん」
…
それ以来、二人は同じ家で暮らしている。
「まさか、本当に買ってくるなんて。」
ヤマメはいつも男の行動に驚かされていた。
「でも、やっぱり、少し楽しみかな」
少し待っていると男が部屋に戻ってきた。
「出来た。」
男が持ってきたのは果物を使うデザートばかりだったが、ヤマメはそれを見るととても感動していた。
「これが…デザート。」
「見たことなかったのか?」
「うーん。本で見たくらいだから、デザートとかで食べたことあるのはプリンとかそういうのばかりで。」
「まぁ、食べてくれ。」
男が用意したのは。
果肉入りリンゴのゼリー
苺のショートケーキ
果物盛り合わせのクレープ
など。
「沢山用意してもらっても一度には食べきれないよ。」
「もちろん俺も食べるつもりで作った」
「そっか、よかった。」
ヤマメは、悦に入りながら、そして、男は悦に浸りながらデザートを堪能していた。
「美味しかった~」
「美味く出来てよかったよ」
「まさか本当に作ってくれるなんて思わなかった。」
「作らなかったら俺はずっと不自由じゃないか」
「まぁ、そうだね。」
「流石にな、俺にも俺の生活があるから。ずっとここにいるわけにもいかない。」
「そっか、そうだったね。」
ヤマメはなんとなく寂しい感じがした。
「さてと、とりあえずこの呪いを解いてくれるか」
「うん。わかった。」
ヤマメが男の腕に触れると、
入れ墨の様な模様は消えた。
「消えたか。」
「うん。」
「実際のところ。俺には毒は効かないんだけどな。消してもらったほうがありがたい」
「毒が効かない?」
「実は俺は神経毒を主に使う毒蜂の、その半妖ってとこだ。」
「蜂の妖怪…」
「多分毒とかは俺にはあまり効かない。」
「そっか…そうなんだ…」
「そう気を落とすな。」
「…効かないってわかってて、なんで逃げなかったの?」
「逃げる理由はなかったからな、それにあの場合お前の餌食の状態だったから。大人しく従ってた方がいいと俺は判断した。」
「そっか。」
「さっきの蜘蛛模様もあまり見た目は良くないしな。すぐ見える位置にあるからちょっとな。」
「わざと、私の我儘に付き合ったってこと?」
「わざと…?んー…そうなるのかもしれない。」
「そうだったんだ…」
ヤマメは男の言動ににショックを感じていた。
毒が効かないという事実を男が隠していたこと、男への想いがあったのか、それが理由で悲しくなって俯いていた
とはいえ、話を持ち掛けたのはヤマメ本人であり、それも少し悔しく感じていた。
「気分悪くさせたかもしれない、すまない」
「ううん…私があなたに話を出したんだから、あなたは悪くないよ。」
「泣きそうになってるけど、大丈夫か?」
「泣いてないよ。」
悔しくて、悲しい。
ヤマメはただそう思っていた。
「ヤマメ?やっぱ泣いてるじゃないか」
ヤマメは気がつくと涙を流していた。
それを隠そうと手で顔を覆った。
「なんで…」
「ん…?」
「なんで先に言ってくれなかったの!」
「す、すまない。」
「あなたが効かないって知ってたらこんなことする必要なかった!なんであなたは私を利用したの!」
「ヤマメ、頼む落ち着いてくれ。」
「なんで…わざと…」
どうしても悔しかった。そして、男への想いがその悔しさを強くしていた。
「信じられないよ…こんなこと…」
「ヤマメ、」
ヤマメは男に向かって、毒を振りまいた、普段使うことの無いかなり強力な神経毒を。
しかし、男は何事もなく平然としている。
「やっぱり…やっぱり効かないんだ…」
「うん…まぁ。」
ヤマメはただ落ち込んでしまった。
悔しさがどこかに行ったような感じがして。
少し虚ろになっていた。
「ヤマメ、大丈夫か。」
「一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「なんで、私と一緒に住むことにしたの、あのとき言ったのがそのままの理由じゃないんでしょ…」
「んー。」
「もしかして本当にそのままだったの?」
「いや、なんて言えばいいかな。」
男は少し考えていた
ヤマメは黙って答えを待っていた。
「一目惚れって言うのが近いのかな。」
「一目…惚れ?」
「うん。俺が聞いてたヤマメのイメージは確かに人気者だって話なんだが。それが強いんじゃないかなって。」
「どういうこと?」
「着飾ってて、あざとくて、そういうイメージがあったんだが」
「なにそれ。誰から聞いたの、」
「まぁ、酒場いたやつから」
「ふーん。」
「でも、実際のヤマメはそんなことはなくて、普通の妖怪なんだなって。」
「それって、褒めているの?」
「なんとも言えないかな。」
「あっ、そう。」
「でも、会ったその時は少し気が惹かれた、それは確かだし。少しヤマメのことを知りたいと思った。」
「そうなんだ。」
「それに、一緒に住むうちにヤマメのこと好きになっていって、それで喜んでもらいたくて、さっきみたいにデザートも作った。」
「模様を消すためじゃなかったの?」
「まぁ、それもあるけど、でも俺がヤマメのことが好きでも、ヤマメがそうじゃないかもしれないだろ。ヤマメが言った本来の目的っていうがそれだったしな」
「別に、私は…」
「最初、乗り気じゃなかったように見えたんだ。俺はここの生活が楽しかったけど、ヤマメがそうじゃないなら、早く済ませるべきだと思っていた。でも、ヤマメと、もう少し居たいという我儘な気持ちもあってなかなか切り出すことができなくてな。」
「私も、あなたと居て楽しかった。デザートも美味しくて、毎日のあなたの料理も美味しかった。だから、嫌だなんて一度も思ってない。最初は、少し驚いただけだよ。」
「そうか、よかった、ありがとう」
「これでさよならかな。」
「うん、まぁ。」
「あの。こんなことの後なんだけどさ、もう一つお願いを聞いてほしいの」
「今度はどんなお願いだ?」
「このまま、ここにいてほしい、私と一緒にいてほしい。」
「いいのか?」
「はっきりと考えたことはなかったけど、私もあなたと居て楽しかったし、貴方が仕事に行って暫く帰ってこなかった時はなんだか寂しく感じるときがあった、私もあなたの事が好きだって思い始めてたのかもしれない。」
「そうか…」
「だから、まだ居てほしいって思うときが時々あった。」
「なら、俺はここにいる。ヤマメと一緒に居ることにする。」
「ありがとう。」
「これからもよろしくな。」
「うん、またデザート作ってね」
「ああ、美味しかったからな。」
二人はその後も旧都で暮らしていた。
時々男は地上に出向いて果物や野菜を買い。
ヤマメと二人でデザートを堪能している。
暫く一人称が続いていたような気がしてたので。
たまには三人称も良いかと。
ではまた会えたら会いましょう