目が覚めると。霊夢さんは近くには見えなかったが外では騒ぐ声とそれに受け答えする霊夢さんの声が聞こえた。
「外にいるんだ…何して…えっ!」
襖を開けるといきなり誰かが飛び込んでぶつかった…
「あいたた…」
「あっ…ごめんなさい」
「あなたは…ルナだったかな…?」
「そう…ぶつかってごめんなさい。」
「いいよ、大丈夫。」
頭を撫でてあげるととても嬉しそうにして、もっと頭を寄せてくる…
「あー!ルナばっかりずるいー!あたいもなでてー!」
みんな寄ってきちゃって…
「ええと…順番にね?」
妖精たちを順番に撫でてあげる。
みんな可愛いな。
「あ、あれ?あうんさん…」
「えへへー、私も撫でてほしいなあ、なんて。」
尻尾も振って期待してるみたい…
「もう…」
仕方なく撫でてあげるととても気持ちよさそうにする…
「こらあうん、あんたが便乗してどうすんのよ、」
「いやぁ、流れでさぁ…」
「あんたねぇ…膝枕してるときだってそうじゃない。」
「あれは格別ですねぇ…ほんとでも彼女もとても優しい撫で方で…いやぁ…ほんといいですよ!」
「何言ってんのよあんた…」
「あ、あはは…」
気持ちいいなら…それはそれでいいかな、
「さぁ、まぁいつまでも戯れてないで、服を受け取りに行くわよ。」
「そうですね。」
「ええー、もう行っちゃうんですかー…」
「また妖精達の相手をしてくれてたら、膝枕でお昼寝させてあげるわ。」
「任せてくださいな!」
「それで、いいんだ…」
「いいらしい。ほんとわかりやすいやつ、」
私も少し期待しながら、服を受け取りに向かう。
「おーい!霊夢!」
あの声は…魔理沙さん、
「魔理沙じゃない、今から向かうとこよ」
「おう!そうか!一緒に行くぜ」
「まぁ、彼氏に会いに行くのも、当然よね。」
「だから…その話はよしてくれよー…」
「服出来てるかな。」
「ほら、ついたわよ、」
地上に降りて店に入ると、私の服の隣に似たような綺麗な服があった。
「ようこそ、昨日の服、出来上がってるよ。」
「あ、はい!」
「出来る限りは近く作ったつもりだけどね、気に入らなかったら作り直すよ。」
「えっと…着てもいいですか?」
「構わないよ、ちょっと席を外すかな。」
こーりんさんがお店を出てから着替える…
「うんと…こんな感じ…?」
「よく似合ってるじゃない」
「向こうの服とデザインはほぼ一緒なんじゃないか?特に違和感はない感じだぜ」
「うん!」
「おいこーりん!もういいぜ。」
「はいはい、おー、似合ってるじゃないか。」
「ありがとうございます!」
「喜んでくれて光栄だよ。」
「あの…唐傘は?」
「しっかりと修繕してあげたよ」
「ありがとう…よかった…」
「それと、中棒に名前らしき文字があったんだが…消さずに残しておいたよ。多分持ち主だった人間が書いたんじゃないかと思ってね。」
なんて書いてあるのかわからない…
「読めない…」
「まぁこれで、どこ行っても恥ずかしくない格好にはなったわね。」
「そう…だね。」
「それで、これからどうする?人里にでも行く?」
「人里…」
「あんたの生い立ち調べてもいいんじゃない、捨てた人間とあんたを大切にしていた人間がいるなら、探してみる価値はあると思うわ。」
「…私を大切にしていた人間…」
私は捨てられて…
その前は大切にされてた?
「いるのかな…」
「さぁ?探してみるのが一番早いわ。彫りを入れるくらいだもの。きっと居るでしょ。」
「そうだぜ。ほら、人里行こうぜ!」
「うん。行こう、唐傘。」
キレイになった唐傘。
唐傘も私の服も、キレイになって。
…これが…私の本来の姿…なのかな、
「また困ったら来るといい。」
「はい!ありがとうございました!」
お店を出ると、空は曇り掛かっていた。
「あれ、さっきまで晴れてたのになぁ」
「曇ってる…」
「雨降る前にさっさと行きましょ」
人里に着くと傘を持って歩く人が多くいた。
曇り空も段々と薄暗くなって今にも雨が振りそうだった。
「来たのはいいけど…どうやって探せばいいかな…?」
「そうね、とりあえず散歩がてら歩いてみる?」
「そろそろ雨降るのに?」
「傘さした方がわかりやすいでしょ?」
「なるほど、それはそうだな、でも私も霊夢も傘を持ってないぜ?」
「雑貨屋にでも寄りましょう。」
霊夢さんについていくと。
色んなものを売っているお店についた、
「さっきのお店とは…ちょっと違う。」
「こーりんのとこの店は基本的に外の世界の物が多いからな。こういう雑貨屋はしっかりと売れるものだけ売ってる感じだ。」
「傘も売ってるんだね…」
「もちろんよ、雨を凌ぐには傘がいいもの」
「小傘からすれば複雑な気持ちにはなるだろうな」
話をしていると、一人の男の人が駆け込んできた。
「雨降ってきそうだな…傘用意しないとな…」
「あっ…えっ…?」
初めて見たはずなのに何故か懐かしく感じる…
「あなたは…もしかして」
「んあ?俺のことか?」
「小傘?どうしたの?」
夢に出てきた人に似てる…
この人もしかして
「あの…その傘は…何本目、ですか?」
「なんか、妙な質問してくるな、何本目か?…いや覚えてないな。10はとうに超えてる。」
「…そんなに…」
「ちょっと待った、お前その傘、見覚えあるな…」
「…そうですよね…」
「でも、あのときボロボロだったから捨てたはずなんだがな…」
やっぱりそうだ…
間違いなかった
「ねぇアンタ今なんて?」
「え?だからボロボロになっていたから捨てたって、」
「そうか、そういうことか。」
「な、なんだよ、壊れた物は捨てるだろ?俺間違ったこと言ったか?」
「ううん…間違ってない、確かに壊れたら使えなくなるもんね…」
「ど、どうしてそんなに悲しい顔してんだよ」
「あなたはなんでこの傘を知っていたの?」
「知り合いが傘を忘れたって言ってたから探して届けようと思ったんだが、見つけたときには雨風に晒されててな。ボロボロで壊れてるもんだから使える状態じゃなかったんだよ、それで仕方なく捨てたんだ。」
「なるほどね、それは本人には伝えてあるの?」
「い、いや…なんか申し訳なくて…伝えてないんだよ…」
「なら今でも探してるのかしらね」
「どうだろうなぁ…正直なところ俺もわからない、ただ、お気に入りだって言ってたな。」
「お気に入り…そうだったんだ。」
なんとなく、心が昂って。
嬉しいけど。でも、もう忘れられているんじゃないかって思ってしまう。
「その傘は直したのか。」
「はい…」
「そうか、傘を直せるやつがいるもんなんだな、感心するよ。」
「それと…私は…」
「…なんとなく察したんだが、お前妖怪ってことだろ。」
「よく分かったわね。」
「まぁ、なんとなくな、でも唐傘お化けか、付喪神だったか?」
「そうだぜ、」
「あいつ…大切にしてたからな、いつか答えてくれるとか言ってたよ」
知ってる…夢に見たから…
「…会いたい…また会いたい…」
「普段は人里の外にいるからな…夕暮時に家に戻ることが多いが、最近は見てないな。」
「夕暮時…わかりました」
「その…すまねぇな…」
「いいんです。あなたが捨てていなかったら…私は生まれていなかったから」
「それはそうかもしれねぇけど…そんなずっと悲しい顔されてたらこっちも申し訳ねえよ。」
「まぁ、掃き溜めにゴミを捨てるなんて、私からすれば言語道断なんだけどね。」
「う…巫女にそんなこと言われたら…頭上がんねぇ。」
「今回は小傘のこともあるし許してあげるけど、今後ないようにね?」
「わ、わかったよ…物は大切にしないとな…」
「あのっ!」
「どうした?」
「中棒に名前らしき文字があって…なんて読むのかわからなくて…」
「中棒に?」
「なんて読むかわかりますか?」
「それハンドルネームだな。(Rain)レインって読むらしい。外の世界の英語って言ってたな」
「ハンドルネーム…ですか。」
「聞いて回れば誰かしら知ってるだろう。探すなら他も当たって見てくれ。」
そう言うと男の人は傘を持って店を出ていった。
「まぁ、なんとなくはわかったんじゃない?」
「うん、」
私は彼に捨てられて生まれた…私は捨てられる前、忘れ物として置いて行かれた…雨風に、晒されてボロボロになって…
「まだお昼だね。」
「夕暮れ時ねぇ…まだしばらく時間はあるわよ。」
「でも、さっきの男は最近見てないって言ってたんだぜ、時間があるなら情報収集してもいいんじゃないか?」
「そうね。そうしましょ」
店を出て団子屋や食事処に寄ってレインという人について聞く。
でも、レインという名前を知ってる人は居なかった。
「誰も知らないのかな…」
「ハンドルネームだからな。本名の方がわかりやすいのかもしれないぜ、」
「聞けばよかったわね。ハンドルネームだけだと、当人が言い広めない限り知らなくて当然ね。」
「とまぁ、丁度良く日も傾いてきたことだし、少し里の外でも行ってみるか?」
「うん、もしかしたら見つかるかもしれないね。」
「それじゃ、私は北の方見てくるぜ。」
「小傘と私は南から。」
「その他の入り口は…?」
「基本的には北と南が入り口だから。」
「でも、最近見ないって言ってたから…もしかしたら別の所からとか、ないかな」
「可能性としてはあり得るでしょうけど、そんなこと言ったらきりが無いわ。何箇所もあるんだから。」
「そっか、そうだね。」
「でも、すぐわかるものなのか?小傘は特徴とか思い出せたりしないか?」
特徴…夢に見たときは…後ろ姿だけだった…
でもなんとなく…
「黒髪で…青い服。髪は後ろだけ少し長かったかな。それくらいしか覚えてないかも…」
「黒髪で青い服はたくさんいるぞ…髪の長さが頼りって感じだな…」
「なんにしても情報量が足りなさ過ぎね。」
「ごめんなさい…」
「あなたが謝ることではないわ、私が興味本位で手伝ってるだけだから、最近暇だったから。良い暇つぶしになるわ」
「えっと、ありがとう、」
「ほら、もたもたしてると見逃すかもれないから行くわよ」
人里の南側の入り口。
人気の多い場所。
どこを見ても人集り
見覚えのない人ばかり…
「どう?」
「ん…やっぱりわからないかな。」
「まぁ、そうよね。」
「うん…」
雨が振り始めてくる。
仕方なく傘を広げた
「今日は諦めて神社に戻りましょ」
「そうだね。」
そう思って歩き始めたその直後。
後ろから何かを感じて振り向いたけど
そこには見覚えのない人達しかいなかった。
「おう、霊夢先に戻ってたんだな。」
「そっちはどう?」
「いーや、収穫無しだな。」
「そう、私達は神社に帰るわ。」
「だな、私も帰るぜ」
そう言って魔理沙さんは箒に跨って飛んでいった。
「帰りましょうか。」
「はい…」
「入り口までは歩いていきましょ。もしかしたらがあるかもしれないから。」
「わかりました。」
万が一…
可能性としてはあり得るけれど。
「おい。あんたらさっきの!」
声を掛けてきたのはさっきの男性だった。
「あら、丁度いいところに。」
「まだ探してるんだったら言っておく。あいつ今日はまだ里に戻ってきてないかもしれない、さっき家を訪ねたんだが、留守だったんだ。明日以降にするといい」
「ありがとう。今日は諦めようって話をしてたところなのよ。家を知ってるなら教えてくれないかしら?」
「ああ、里の北口付近にある黄桃甘味っていう甘味屋の2つ隣の青い家だ。雨宮って張り看板が扉についてるはずだから、すぐわかると思うよ。」
「わかりました、ありがとうございます。」
「おう、そんじゃな。」
男の人は家に帰っていった。
私と霊夢さんも神社に帰った。
「今日は止みそうにないわね。」
「雨。どんどん強くなってる。」
「これだけ降ると明日には晴れてくれるといいんだけど。」
「カンは?」
「んー、昼くらいまでは降ってるんじゃない?」
「そっか、夜は晴れるといいな。」
「そうね。」
「明日は会えるかな。」
「会えるといいわね。」
「雨宮…」
「何か思い出せる?」
「…わからないかな。特に何も。」
「そう、まぁ会えたら色々思い出すでしょ。」
「そうかな…」
「まぁ、今日はもう寝ましょ。」
「うん…おやすみなさい。」
続き話に続きます