物語館   作:むつさん

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前話の続き


主と付喪神

「うぅん…なんの音…?」

 

ガタガタと揺れる何かの音で目が覚めた。

 

「雨強すぎね…」

 

「嵐みたい…」

 

「まぁ、そんな日もあるわ。」

 

まだ日は登っていないと思うけど、

外は夜のように暗かった。

…もしかしてまだ深夜…?

なわけ無いよね…

 

「二度寝してもいいんじゃないかしら。」

 

「朝…だよね?」

 

「多分ね。」

 

「外…暗い…」

 

「これだけ天気悪いと仕方ないわ、お天道様も隠れるでしょうね。」

 

「うん…」

 

「まぁ、少ししたら止むでしょ。降り始めてから時間も経ってるから。」

 

「そうだね…」

 

「それに、止んでからすぐ行けば、会えるかもしれないわよ?」

 

「そうかな…」

 

「さぁね、あくまで可能性があるってだけ、絶対とは私も言えないわ。」

 

「でも、会えるかもしれないなら…」

 

「その価値はあるわね。」

 

「止むまでどうしようかな…」

 

「果報は寝て待て。」

 

「寝過ごしちゃうよ?」

 

「その時は普通に探しに行けばいいじゃない」

 

「そっか、そうだね。」

 

改めて外を見てもまだ嵐のまま。

襖が揺れる音で上手く眠れなかった。

隣を見ると、何もなかったかのように気持ちよさそうに眠る霊夢さんがいる…

 

「こんな騒がしいのに寝れるんだ…」

 

そう言って布団に入り直すたけど。

やっぱり眠れなかった。

 

しばらくすると風が弱くなっているような気がした。襖はおとなしくなり、風の音もしない。

 

「唐傘…」

 

唐傘を差して外に出ると雨はまだ降っていた。

 

「雨…か。」

 

傘を差したまま、空を飛ぶ。

 

「なんか。不思議だなぁ。」

 

雨が降っているのに少しも気分が落ち込まない。それどころか。

ちょっと楽しい。

 

「雲は暗いけど。でも雨は…好き、かな」

 

誰に言ったわけでもないけど。

そう思って呟いた。

 

「そろそろ戻ろう。ちょっと服が濡れちゃったし。」

 

博麗神社に戻って。

部屋に入ると、霊夢さんが起きていた。

 

「探しに行ってたのかしら?」

 

「ううん。ちょっと散歩?空飛んでるから散歩とは言えないけど。」

 

「そう。」

 

「ちょっと疲れちゃったかな。」

 

「まぁ、ゆっくりするといいわ。」

 

布団に入ると。

少しもしないうちに眠たくなって。

寝入ってしまっていた。

 

……

 

 

「おい雨宮、いつもの傘持ってないんだな。」

 

「あの傘は、壊れてしまってね」

 

「壊れたのか」

 

「うーん…どうしたものかな」

 

「まぁ、今日は晴れてるだろうから大丈夫だろ。」

 

「まぁね。」

 

「結局どうするんだ?」

 

「どうしようかな。中棒はまだ使えそうだったんだけど布地がなぁ。」

 

「傘を直すのはそう簡単じゃないだろ?」

 

「だろうね…仕方ないか、別で買った傘もなかなか気に入ってるし。使ってようかな。」

 

「ふーん、あの傘は?どれぐらい使ってたんだ?」

 

「うーん…3年くらい?」

 

「そんなもんだったけ。お前のことだからもっと長いと思ったが。」

 

「傘は寿命短いってのもあるし。ここ最近嵐も多かったから仕方ないかもしれないね。」

 

「また何年か使い込むんだろ?」

 

「そうだね、丈夫そうだから5年は持ってくれるといいな。」

 

「いやいや、幾ら物の扱いが良くても5年は厳しいだろう。」

 

「まぁ、持ってくれたらって思ってるよ」

 

「まぁ、物持ち良ければ。」

 

「そうだね。唐傘か。初めてかもしれないね。」

 

……

 

「うぅん」

 

まだ眠たい。布団で横になってよう…

 

「誰かいないかな。霊夢さーん」

 

外から声が聞こえる…

男の人の声だ…

 

「居るわよ何の用かしら?」

 

霊夢さんも居るんだ。

 

「知人から聞いたが俺を探してるって」

 

「私が?あんたを?」

 

「勘違いか?」

 

「ちょっと勘違いね、まぁ、間違ってはいないけど。あんた名前は?」

 

「雨宮翠蓮。聞いてなかったのか?」

 

「雨宮翠蓮ね、知ってるわよ」

 

「なら何で聞いたんだ?」

 

雨宮翠蓮…なんか聞いたことあるような…

眠たくてうまく考えが纏まらない…

 

「念の為の確認よ。ちょっと待ってなさい。」

 

「あ?ああ。」

 

 

 

「小傘、起きなさい。」

 

「うん…なんとなく起きてる…」

 

「探してた人が自分から来てくれてるわ。会って来なさいよ」

 

「んー…ううん?」

 

雨宮…

そうだ、思い出した。

 

「ほんと?」

 

「ええ、早く起きてほら。」

 

外に出ると縁側で座る雨宮さんがいた。

 

「あのっ…」

 

「こんにちは、探してたのっていうのは君なのか?」

 

「はい…えっと…」

 

「はじめまして。俺は雨宮翠蓮。君は?」

 

「多々良小傘…です。」

 

「多々良小傘…?その名前は誰から?」

 

「貴方は…この傘覚えてますか?」

 

「ああ。よく覚えてるよ。お気に入りの傘だったんだ。なぜ君が?」

 

「貴方が置き忘れてから。この傘は…私はいろんな人に持たれて。いろんな人に置き捨てられて…結局ボロボロになって捨てられてしまったんです…」

 

「そうか…そうだったのか…」

 

「それで私は、貴方に大切にしてもらった恩と、散々棄てられた恨みから付喪神になって、今やっと…貴方に逢えました。」

 

「君は…本当に小傘なんだね。」

 

「はい…変かな…」

 

「いや、とても素敵だと思う。」

 

「ほんと…?」

 

「服も唐傘も君にとてもよく似合ってる。」

 

「よかった…嬉しい。」

 

「あんた、小傘と会えて何かないの?」

 

「えっと、何かって?」

 

「…いや、いいわ、私の思い過ごしってことにしておくわ。」

 

「一体なんのことなんだ?」

 

「あの…霊夢さん、実際にこの姿出会うのは初めてだから…」

 

「まぁそうよね。」

 

「あの…雨宮さん。」

 

「なにかな?」

 

「えっと…私…雨宮さんと一緒に居たいんです」

 

「んーと…?一緒に?」

 

「だめですか…?」

 

「うーん…気持ちはありがたい」

 

「もしかしてあんた?」

 

「まぁ、結婚はしてないんだけどね。」

 

「ってことは…お相手がいるんですね。」

 

そうだ…彼にだって…好きな人がいる…

 

…悲しい…

ただそれだけだった。

また捨てられたのかと思ってしまう…

そんなことないってわかってるのに…

 

「小傘、小傘?」

 

気が付いたら泣いていた。

胸が苦しくて。声も出なかった

 

「泣かせてしまったな…うーん…」

 

「落ち着きなさい、小傘。」

 

「…なんて言えばいいかな」

 

「私は…忘れ傘だから…」

 

「でも、俺は小傘に会えて嬉しいよ、失くしたと思っていたのに、こういう形で再会出来たことがとても嬉しい。」

 

「うん…付喪神…だからね…」

 

夢で言ってた…

 

「本当にありがとう。付喪神になってしまうと記憶を失うって諸説には聞いてたが憶えてくれてるとは思いもしなかった。」

 

「うん。何度も夢に出てきてたの。憶えていたというより、思い出した…かな」

 

「そうか。」

 

「これからも忘れないよ。一緒に居られなくても、大切にして貰った日々も恩も絶対忘れない。」

 

「ありがとう。それとごめんな」

 

「いいの、私は妖怪だから、人間と一緒に居られなくても仕方ないよ。」

 

「そうね。あんたは妖怪だものね。」

 

「霊夢さん?」

 

なんのこと?

 

「何でもないわ。」

 

「それじゃ、俺は里に戻るよ。この後まだ用事があるからね」

 

「わかりました。」

 

「明日。改めて家に来てくれると嬉しい。」

 

「…うん」

 

雨宮さんは神社を後にして行ってしまった。

 

「わかりやすいやつね。」

 

「えっ…?」

 

「隠し事よ。」

 

「隠し事…?」

 

「とにかくあんた、必ず会いに行きなさい。わかったわね?」

 

「えっ?う、うん。」

 

気がつくと日は傾いていて、もう夕方だった

傾いた日差しがなんとなく寂しさを助長しているように感じる…

 

「小傘は付喪神になれて嬉しかったかしら」

「うん?」

 

「付喪神になれて、妖怪になって彼に会えて。彼のことをどう思ってる?」

 

「えっ…?どういうことですか?」

 

「単純な話よ彼のことどう思ってるのって」

 

「どう思ってる…?んー…なんていえばいいかな。好きだけど、それだけじゃなくて…一緒に居たくて。」

 

「そう。それならそれでいいわ。」

 

「うん。」

 

傘でいた頃の気持ちはもう思い出せない。

でも彼を見て思ったことは。彼と一緒に居たいという気持ちが溢れて止まなかった

 

好きだっていうのは確かだと思う、

でもそれ以上に何か感じていて…

それがイマイチまだよくわからない

 

どう表現すればいいのかな

 

「小傘の気持ちが、彼にしっかり伝わってるといいわね。」

 

「うん。もう一度…伝えたいな。」

 

「そうね。」

 

日が沈んで暗くなる頃部屋に戻った。

くしゃくしゃの布団を軽く整えて寝転んだ

 

相変わらず霊夢さんはすぐ寝付いている…

 

明日…何を話すのか不安で…

うまく寝付けない…

なんて言えばいいのかわからない

雨宮さんにとっての私は、一体どんな存在なのだろう…

 

考え事ばかりで眠たくならない。

次第に胸が苦しくなってきて、なんだか寂しくなる…

 

「…なんでだろ…あれ…?」

 

気が付くと涙が流れてる。

 

…きっとこの気持ちはこわいってことなんだ

不安で怖くて何が起きるかわからなくて。

 

何かに掴まりたくて、

誰かと居たくて。

誰かに支えてもらいたくて。

必死に助けを求めて…

 

「でも…今の私には…」

 

妖怪として此処に来て…

まだ日は浅い…

頼れる人も少ない…

 

霊夢さんはすぐ寝てしまうし…

それに妖怪退治の巫女に頼むのも…

 

「小傘。」

 

「うっ…」

 

起こしてしまったのかな

 

「こっちおいで。」

 

誘われて同じ布団に入る…

 

何も言わないでそっと寄ってみる…

霊夢さんは何も言わず腕で抱きよってくれた。

 

何故だろう…さっきまでの不安感が無くなって…とても暖かくて。

なんだか眠たくなってきた…

 

ふと横を見ると。

霊夢さんは気持ちよさそうに寝入ってる。

 

眠たくてうまく考えが纏まらない…

もう寝よう…

 

……

 

 

起きた感覚はないのに。

どこかを歩いている感じがした。

 

ひたすら続く真っ暗な道。

歩いていく度に。

色々と考えが浮かんでくる。

 

小傘…

私の名前は多々良小傘…

 

付喪神としてこの幻想郷で生まれて

私は…唐傘お化けの妖怪になった。

 

こんな私が誰かの役に立つのかな…

 

見ず知らずの私に。

いろんな人が優しくしてくれている

それなのに私は。感謝の言葉を返すことしかできない。

 

自分の存在価値は一体なんだろうか。

唐傘は雨傘として役に立つけれど。

私自身は…?

せめて。誰かに必要と思って貰えるようになりたい。

 

誰かと共に居て。

幸せに生きていたい。

 

私だけの価値がほしい…

 

……

 

目が覚めると。眩しい日差しが当たっていた

 

「うん…朝…?」

 

「おはよう小傘」

 

「おはよう…」

 

「ほら、お茶飲んでしっかり起きなさい。」

 

「うん…」

 

まだ眠たい。

でも、お茶が渋くて眠気が飛んだ気がした

 

「そっか。今日になったんだね…」

 

不意に思い出す昨日の出来事…

また少し、不安になる。

でも…話はしたい。もう一度…

 

「人里に行ってくるね。」

 

「うん。行ってらっしゃい。」

 

博麗神社を出て。

人里に向かった。

 

家の場所…確か…

 

「北口の甘味屋の2つ隣の青い…」

 

青い家というより。青緑…

 

「ここでいいのかな。」

 

恐る恐るノックをする。

 

「はーい、どなた?」

 

「こんにちは。」

 

「あ、小傘さん。」

 

「えっと…改めて話があるって…」

 

「立ち話じゃなんだから、上がって。」

 

「おじゃまします。」

 

部屋はきれいに整えてある…

一人で暮らしているのかな。

 

「お茶、飲むかな。」

 

「あっ、ありがとうございます。」

 

「粗茶だけど。」

 

嫌な苦味がしない、渋味の薄いお茶。

結構好きかも。

 

「話とは言ってもね。大したことないんだよ」

 

「どういう話なんですか?」

 

「昨日は済まなかった、俺も驚いてて気持ちが追いついてなくて。まさか本当に付喪神になってるとは思わなくて。最初は何かの間違いじゃないのか疑問に思ったんだ。」

 

「うん…」

 

「でも、わざわざ嘘をつく必要はないし…唐傘の中棒にある彫り込み。それで確信したんだ。あのとき失くしてしまった唐傘なんだって。」

 

「覚えていたんだね。」

 

「いろんな物を大切に使ってきた。唐傘は勿論、靴や服。でも付喪神として出てきてくれるのは始めてだ」

 

「物を大切に…だね。」

 

「それでな」

 

「うん、」

 

「色々と考えたんだけど小傘は付喪神になっても、俺のことを覚えてくれていた、それだけじゃなく、探してくれてた。だから俺はその気持ちを受け取りたい」

 

「なら…一緒に居てもいいの…?」

 

「うん、もうどこにも忘れない」

 

「ありがとう…!」

 

嬉しさが溢れて堪らなくて…

彼に抱きついていたい…

 

「おおっ!?」

 

「嬉しい…すごく嬉しいの」

 

「あはは、良かった」

 

そっと抱きしめ返してくれる彼

 

霊夢さんとは違った暖かさがあった

胸の鼓動が止まらなくて愛おしかった

でも、緊張が切れたのかすぐ疲れがきていた…

 

「あれ、小傘?」

 

どれぐらいだろう…

憶えてないけど長い間そのままだった気がしていつの間にか眠気が強くなってきていた

 

「おやすみ小傘。」

 

微かに聞こえた彼の声はどんどん小さくなっていたけど…ついに眠ってしまったけど、心に染み渡る心地良い暖かさはいつまでも変わらなかった。




連続投稿すいませんでした
話数稼ぎとか言われても文句言えません(後悔はしてない)

ある絵師様のある絵を見て書きたくなったんです


ではまた会えたら会いましょう
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