angel beats : music of the girls, by the dead, for the monster   作:カリー屋すぱいしー

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Chapter.1_16

 やつがそこにいた。

 

 昨日校舎で出会った。

 気持ち悪いほど透き通った少女。

 

 どうしてここに。

 いや、生徒なのだからいるのは普通か。

 食堂から寮へと帰る道中なのかも知れない。

 普通だ、普通。でも

 

 異常なまでに無機質な表情が。

 心臓を締め上げるような雰囲気を纏うあの声が。

 なんの根拠もないただの直感が。

 

 こいつを警戒しろと訴えてくる。こいつは化け物だと無理矢理認識させられる。

 

 その黄金の双眸と視線が交差する。

 

「ひっ」

 

 入江の悲鳴が耳に入る。

 あの少女の雰囲気に怯えるのは俺だけではないのか。

 自分が異常では無いことに場違いながらも安堵を覚えた。

 

 しかし、次のセリフがその考えを否定する。

 彼女の恐怖は俺とは違ってもっと明確なものだった。

 

 

「なんでここに、

        て、天使が」

 

 

 俺は迷わず引き金をひいた。

 

 ●

 

 入江のセリフを聞きったからかどうかわからないタイミングだった。

 多分聞いていなくても撃っていたかもしれない。

 いや、確実に撃っていた。

 不思議なことにあれだけビビっていたガバメントの引き金を躊躇なく引けた。

 

 なるほど、こいつが天使。

 戦線の敵

 理不尽な神の使い手

 忌むべき存在

 

「ってぇ!?反動でけーなおい!」

 

 さすが45口径。

 やはりゲームのように片手で撃つのは無理か。俺素人だし。

 弾も標的を外して地面を跳ねていた。

 おかげで天使がこちらを完全に認識する。

 

 近づいてくる前に今度はしっかりと両手で握り、腰を据えて2,3発ぶっ放した。

 弾は見事に天使の腹部を貫いた。

 

「足止めするから逃げろ!」

 

 残りの弾もばら撒きながら岩沢たちに向かって吠える。

 天使は肉を穿れてもなお進んでくる。

 化け物かよ。

 

「逃げるって何処に!」

「寮への道にあいつがいるってことは予測が外れたってことだろ!なら本部まで逃げろ!ついでに応援でも呼んでくれ!」

 

 岩沢たちに指示をしながら最後の7発目を撃ち込む。

 反動を抑えられなくて跳ね上がった弾は腹部でなく運良く頭部へと向かって突き進んだ。

 流石に頭を破壊すれば止まるだろう。

 だが、

 

「GuardSkill_HandSonic」

 

 機械的な声色で天使がつぶやく。

 すると彼女の右手から透明な刃が甲に沿いながら生えてきた。

 そしてその手を振り上げ、迫り来る弾丸を斬り捨てた。

 カランっと割れた弾が地面に落ちる。

 

「……いやいやいやゲームかよ!まじかよ!チートじゃねえか!」

 

 弾丸を斬り落とすってどんな反応速度だよ。

 なんなんあいつ。

 まじで前世がアサシンかなんかじゃねーの?

 忍者とかそういう職業だろ。

 サイボーグ忍者とニンジャスレイヤーとかそういう類の方だけど。

 

「GuardSkill_Distortion」

 

 天使が再度詠唱する。

 今度は左手がサイコガンにでもなるかと思ったが、見た感じ変化はない。

 肉眼では見えないが体の内部が変化でもしたのだろうか。

 もしくは加速しているとか。

 

「どっちにしろ俺が出来ることは限られている」

 

 空になった弾倉を抜き予備を挿し込む。

 渡されているのはこれしか無いから、あと7発しか使えない。

 大事につかわなければ。

 

 岩沢たちはすでに走って本部へと向かっている。

 余裕をもって考えても10分稼げれば彼女たちは逃げ切れるはず。

 運が良ければ途中で他の戦線メンバーに会えるかもしれない。

 なら俺はここで彼女らが無事逃げきるまで精一杯足止めをするのみだ。

 

 再び銃口を天使に向ける。

 依然として天使は怯えること無くゆったりとした足取りでこちらに詰めてくる。

 武器をもったことによる自信からであればわかるのだが、始めからあの余裕はやはり異常だ。

 

 腕がぶれないようしっかしと構える。

 照準をぴったりと天使の頭部に合わせる。

 先ほど剣で防いだとき、弾は頭を狙っていた。

 守ったということは、やはり奴の動きを止めるには頭部を破壊すればいいのだろうか。

 だが、先ほどのような反応速度でまた防がれてしまう可能性がある。

 ならばだ。

 

 俺は腕の力を弱める。銃口が少し下がる。

 照準が頭から胸へと移る 。

 

「そのぺったんこな胸に風穴でも開けてろ」

 

 容赦なく引き金をひく。

 連続して3発。

 ただし、反動をある程度だけ受け流しわざと跳ね上がらせる。

 そうすることで銃口が上がり、同じ場所ではなく縦に並んで狙う。

 胸、喉、頭。

 ある程度タイミングはズレるが守るには動きづらい方法。

 本来は反動が強いAKなどのアサルトライフルで使うやり方。

 ハンドガンで再現しようだなんてバカな考えではあったが案外上手くいった。

 手首めっちゃ痛いけど。

 

 弾丸は予想通りの軌道を描く。

 もし致命傷を避けるなら頭を守れるはずだ。

 ただしそれは俺の考えを見抜いていたら。

 連射して撃った弾の弾道など素人にはそうそうわからない。

 

 しかし、やつの反応速度は異常だった。

 目もいいかもしれない。

 だとするとこの攻撃もバレているだろう。

 

 それでもいい。

 俺の目的は足止めだ。

 やつに致命傷を負わせなくても時間さえ稼げればそれでいい。

 頭を防がれたとしても胸に当たればそれなりに動きは鈍くなる。

 

 だが、そんな浅い考えすら化け物には通用しなかった。

 

 予想通り天使は頭に向かっている弾丸を斬り落とし。

 そのまま流れて喉に向かっていた分もはじいた。

 だが胸までは間に合わなかったようで弾はそのまま体へと吸い込まれていく。

 はずだった。

 

 弾丸は、貫かなかった。

 そのまま体を穿つはずだった弾丸は体にぶつかったと同時に斜めに弾かれていった。

 まるで跳弾したかのように。

 

「はあああああああああああ!?」

 

 意味がわからない。

 なんで弾が跳ねていった?

 防弾チョッキどころじゃねえぞ。

 まるで奴の体に見えない防壁があるかのように。

 昔アメリカのミリタリー記事でみたメタルマテリアシールドなんちゃらみたいな絵空事じゃねえか。

 

 まさかさっきのよくわからん2回目の詠唱の効果なのか?

 そんなんチートじゃん。足止めどころじゃねえよ。

 

 もう一度確認するために腹にめがけて2発撃ちこむ。

 今度は守る必要がないと判断したのか無抵抗で進んでくる。

 案の定弾は跳ねて明後日の方向へと飛んでいった。

 

「……」

 

 どうして日向たちがあんな火力で応戦していたのかよくわかった。

 今俺がもっている武力じゃ足止めすら無理だ。

 でも時間はかせがないと。

 どうやって、どうする。

 

 焦ることで思考の渦に嵌ってしまった。

 おかげで天使が間合いに侵入したきたことに眼前にくるまで気づかなかった。

 

「うぉあ!?」

 

 急いで飛び退く。

 しかし化け物チートを相手にするには遅すぎた。

 天使が振り上げた剣は容赦なく俺の左腕を斬り上げた。

 

 「…………っっっってえええええええええええ!!?」

 

 恐ろしく鋭利なのか切られた瞬間痛みはこなかった。

 だがすぐ後に焼けるような痛みは襲ってきた。

 左腕の感覚が痛みに埋め尽くされ無くなってゆく。

 

 肘から下を斬られたが、幸運なことに一応かろうじてつながっている。

 骨まで斬られて片側の微妙に残っている肉がギリギリつなぎとめている。

 多分引っ張ったら普通にとれそうなくらいふ心許ない程度。

 絶対痛いからやらないけど。

 

「いてぇ……いてぇよお……」

 

 さっきまで躊躇なく人様に発砲していたのにこの有り様。

 でもまじで痛い。

 泣いてどうにかなるレベルじゃない。

 血だってドバドバでている。

 踏ん張らないと意識が飛びそうなほどだ。

 

「あなた、まだ立つの……」

 

 天使が不思議そうに尋ねてくる。

 そりゃそうだろう腕ちょんぎれ欠けているのに俺はまだ立っている。

 腕がまるで焼けて落ちてしまいそうだけれど、俺はまだ天使を睨み続けている。

 

 俺は時間を稼がないといけない。

 たとえ痛かろうと彼女達が逃げきるまでは立っていないといけない。

 いくら死なないからって、彼女達にこんな苦痛を味わわせるわけにはいかない。

 

「あ、当たり前だ。お、俺はあいつらのま、マネジャーだぞ」

 

 痛すぎて呂律が回らなくなってきた。

 でも、踏ん張らなければならない。

 歯を食いしばり、痛みに耐え、呼吸を整える。

 そして天使を睨みつけた。

 

「音楽と関係のない障害は総て俺が被る」

 

 そう言い放ち、天使の前に立ちふさがる。

 左腕は処置している暇はないから宙ぶらりんなまま放っておく。

 それよりもまずは今できることを考えねば。

 

 そんな姿をみて天使は小首をかしげる。

 なにが可笑しいんだ。

 言葉が通じないわけはないから意味をとれていないのだろうか。頭の弱い子か。

 やがて納得したように首を戻し、再び能面のような表情で俺を見据える。

 

「そう……虚勢でなければいいけれど」

「はっ」

 

 ごめんぶっちゃけ見栄をはってます。

 マネジャーとか知らんし痛くて今すぐ逃げたい。

 ただかっこいい事言ってみたかっただけですよ。

 

「まあでもアイツらにも宣言しちゃってるんでね。男なんだし頑張らないと」

 

 右手のみでガバメントを構える。

 残弾は2発。

 自決用とかここじゃ意味ないから使い切る方向で行く。

 今でも十分足止めはできているけれど、正直あとどれだけ立っていられるかわからない。

 ならやはり致命傷とまでは行かなくても、行動不可能かそれに等しいダメージを負わせることが必要か。

 

 方法を考える。

 厄介なことに奴は無敵の防御と最強の攻撃をもっている矛盾さんだ。

 銃撃は効かない、今の武力で致命傷を与える方法は他にないか?

 考えろ。

 …………

 ……

 …

 

 1つ思いついた。

 

 効果があるかどうかわからない。

 むしろ勝算がない。

 だがこれ以外思いつかない。

 というかもう考えてられるだけの思考能力がもたない。

 やるしかないな。

 けれどそれには決定的な隙をつくらなきゃいけない。

 あの無表情天使さまの動きを止められるだけの隙を。

 銃は効かない。

 鋭利な刃物を構えている。

 無感動。

 

「なら、俺らしくこれしかねーよな」

 

 天使に向かって踏み込む。

 透明な刃を水平にして斬り込んでくるが、身を低くして躱す。

 そのまま頭突で天使にぶつかる。

 

「よっこらせ!」

 

 ぶつかった天使は体勢を崩しながら後ろへと下がる。

 俺は素早く頭を上げて銃口を天使に向け、1発撃ちこむ。

 

 それに気づいた天使はバランスを取りながらも弾丸を剣ではじく。

 頭を狙っていたわけではないのに、わざわざ不安定な体勢でも剣で防いだ。

 先ほどの頭突きは反射されなかったから、謎の防御で弾けるのは銃弾だけなのか。

 頭突きをしたせいでシールドが弱まったか。

 はたまた、ただ動揺しただけなのか。

 もしくは、はじく際には対象の認識が必要で動揺して頭突きと今の弾丸を認識しきれなかったか。

 どうにせよ、無敵の盾をつかわなかった。

 アレには何かしらの法則が存在しそうだ。

 

「うおおおおおおおおお」

 

 再び体勢を低くして天使に向かって突進する。

 気づいた天使は今度は垂直にして斬り降ろしてきた。

 刃を体を逸らして躱す。

 そのまま天使の横を通り抜けようとする。

 

 そのとき通り抜ける直前で左腕を振り上げて攻撃しようとと肩をあげる。

 天使は気づいていたのか振り下ろしていた剣を斜めに斬り上げるように振ってきた。

 だがその刃は空を切る。

 多分本来なら腕が吹き飛んでいそうだが、斬られて宙ぶらりんだったおかげで肩や二の腕の動きよりもかなり遅く手は上がって動いていた。

 そして攻撃すとかと思われた左手は天使の予期せぬ動きをした。

 

「なんだ白か、つまらん。縞パンとかカボチャパンツとか履けよネタ的に」

 

 俺の意志が通用しなくなった(物理的に)左腕は、天使のスカートをめくった。

 そしてラッキースケベな映像を網膜に焼き付けてくれる。

 なんとか隙を作った、いまがチャンスだ。

 

「もっとかわいいのを……」

 

 煽りながら天使を見据える。

 銃をむけようとすぐさま反転しようと体勢をとる、が。

 

 不意にプレッシャーを感じる。

 無表情の天使が無表情のままものすごいオーラを醸しだす。

 身の危険を感じて、急いで俺は銃を向けようと反転する。しかし、

 

「GuardSkill_Delay」

 

 天使が新たに3つ目の詠唱を唱えた。

 今度は何が起きるのかと目を凝らすが。

 その姿がブレて。

 消える。

 

 気づくといつの間にか俺の目の前に立っていた。

 

「っ!?」

 

 急いで間合いをとろうとするも遅かった。

 天使はそのまま無言で右手の剣を振り払う。

 俺の左腕を今度こそきっちりと斬り落とした。

 

 そして天使の攻撃は止まらず。

 そのまま剣を構え直す。

 

 追撃の予感しかしないのでなんとか回避しようと反応するが逃げようがない。

 そして天使は俺の行動よりも数段早かった。

 

 構えた剣をそのまま俺の胸元へと突いた。

 

「っかっは!?」

 

 切られた腕とはまた違う痛みがはしる。

 刺されているのは肺なのか心臓なのかわからないがとにかく痛い。

 息をする度に痛みは増していくのでこれは確実に死ぬなと悟る。

 

 もう立つことすらつらい。

 全体重を支えていた力を抜き、そのまま天使に覆いかぶさる。

 彼女はこちらの戦意の喪失と察し、倒れこむ体を両手で支えてくれた。

 

 死してゆく者を介抱するかのように。

 むしろ天に召す子羊受け入れるように。

 まさしくその姿は天使のようにだった。

 

 だが、

 

「……やっと隙を見せたな、化け物」

 

 その声に天使が目を見開く。

 すぐに危機を感じたのか、胸に刺さった剣を抜いて離れようとする。

 しかし、剣を抜こうも俺が体重をかけて続けているため離れることが出来ない。

 完全に身動きがとれなくなっている。

 

 悪戦苦闘している天使と違って 俺はさっきまでと違って落ち着いていた。

 無事な右手に持っていたガバメントを持ち上げる。

 銃口をそっと天使の頭部につけた。

 

 考察の一つが正しければ天使の無敵防御は対象を認識する事が条件。

 かつ、その認識は視覚に入っていることが前提とする。

 不意をつくなど目で捉えきる前に自身に到達する攻撃に対しては対象外とみなされる。

 その場合にはやたら鋭利な透明の剣で防ぐ。

 

 ならば俺のすべき行動は認識の対象外となる攻撃。

 及び剣戟では防ぐことのできない攻撃。

 ネックだったのは剣で防ぐことのできない攻撃は現状の火力では不十分。

 ならば隙を作ることによって剣自体を不能とする。

 本当はスカートめくって硬直したところを狙うはずだったんだが。

 まあ結果オーライでいいだろう。

 

 頭にきっちり合わせたまま引き金に指をかける。

 

「流石に死角からのゼロ距離はよけらんねーだろう。いい加減死んでみてくれ」

 

 ゆっくりと最後の一発を撃ち込んだ。

 

 爆ぜる。

 

 肉と骨がえぐられる。

 多量の血と共に周囲に四散する。

 

 

 天使の頭部ではなく、俺の右手が。

 

「あ、が!?」

 

 吹き飛んで手首から下が無くなっている。

 左腕と同様に流れでる血液が周囲に撒き散り汚す。

 

「くっそ!外れたか!」

 

 発射された弾丸は天使に傷つけることなく反射して出てきた銃口へと戻った。

 おかげでガバメント暴発し俺の右手と一緒に爆発四散した。

 

「ちくしょうが!」

 

 左腕は切り落とされた。右手は吹き飛んだ。貴重な飛び道具も爆発した。

 意識は朦朧している、圧倒的不利な状況。

 

 けれど。

 

「このまま死ねっかよ!」

 

 顔を振り下ろし天使を完全に覆いかぶさるようにして裏へとまわす。

 そのまま天使の首筋へと噛みついた。

 

「!?」

 

 あまりにも原始的な攻撃に流石の天使も驚く。

 もしくはここまで瀕死の状態でなお愚かにも刃向かおうとすることに対してはだろうか。

 

 だが、こちらも驚いたことがある。

 この攻撃が反射されなかったのだ。

 やはり鉄壁の防御というわけではない。

 何かしらの条件があるはずだ。

 

 しかし原因を考える余裕はない。

 反撃されたら確実にヤられる。守る術もない。

 だからそのまま噛みつく力を強める。

 骨ごと砕こうといわんばかりに歯を立てた。

 

 けれど強まることはなく逆に弱まった。

 力が抜けた顎は引っかかることなく外れる。

 そのまま膝をついて地面に倒れこんだ。

 

「……」

 

 あーやべ、力はいんね。

 血、抜け過ぎたな。

 

 周囲を見渡すと鼻血だとか吐血だとかというレベルで済まされない量が撒き散らされている。

 これはもう確実に死ぬな、視界もだんだん狭まってきたし。

 

 だがもう岩沢達は逃げきれているだろう。

 応援は間に合わなかったようだが、最重要目標は達せられた。

 少しはマネージャーらしい行動がとれたかな。

 

「あなた……」

 

 天使が倒れ込んでいる俺の横にしゃがみ込む。

 右手の剣も0と1のように見える光を散らしながら消失した。

 流石にもう戦意は無いと判断したのか、剣先ほどまで殺し合っていた相手だが無防備な姿をみせる。

 悔しいことに俺は今更刃向かう体力はない。

 はらいせにパンツをもう一回拝めてやろうかと思ったが、スカートが邪魔して見えなかった。

 くそ、やっぱ戦線の制服の方がいいな。

 一般生徒のは色気がない。つまらん。

 って、死に際に何考えているんだ俺は。

 

「あなたは、一体なにがしたかったの……」

 

 パンツのことかと思って少し焦る。

 ぶっちゃけスカートめくった事はセクハラ紳士のポリシーに反した行為だった。

 謝ろうかと思案したが、天使は真剣な表情を向けていた。

 その顔を見て俺のくだらない考えではなくもっと真面目な質問のようだ。

 

 あんなに冷たく何もなかった瞳にわずかながも熱が見えた。

 化け物と思っていた天使が今この時は何かを求める一人の少女にみえる。

 なるほど、これがこいつの本質か。意外なものをみれた。

 だが、そんな期待に答えてやるつもりはない。

 こんなに傷つけられたんだ、それに俺はこいつが好きではない。

 よって答えてやる義務もない。パンツも色気なくてつまらんし。

 

 俺はなんとか首を回す。

 天使を真正面に捉えて言い放った。

 

「うるせー、知るか」

 

 俺の返答を予想しなかったのか。

 わずかながらも目を見開いて驚いた。

 またしても新しいものを見れた事に満足し、そのまま目を閉じた。

 

 3度目の死に、その身を委ねた。

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