angel beats : music of the girls, by the dead, for the monster   作:カリー屋すぱいしー

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Chapter.3_1

 この世界に季節というものはない。

 それが俺の出した結論だ。

 

 理由は在る。

 例えば植物の成長や日出日没の時刻。こういった季節に左右される条件を幾つかまとめて考察してみると、どれもチグハグなことがわかった。

 太陽の時刻から推察すると、3~5月あたり。つまり春から初夏にかけてだ。

 しかし、樹木の葉や植物を見てみれば、新芽や若葉はなく青々とした葉が大量に茂っていらっしゃる。この条件からは6~8月なのではないかと考えられる。

 そして野菜や花、意図的に育てた植物は旬やシーズンなんてもの関係なく何でも育つ。

 

 どうも噛み合わない。

 ここ世界の自然条件は、近いようで明らかに違う時期の環境が揃っている。

 それで普通自然というものは成り立つのだろうか?

 しいて言うならば、我々人間にとって身体的に過ごしやすい季節だということだ。

 死後の世界というのは随分と人間にやさしいものだ。

 

 そうそう、これとは別に季節がないのだと確実に決定付けるものがある。

 自然なんてあやふやなものよりも明らかにわかりやすい、目で理解できるものだ。

 特に、我々生徒とは切っても切り離せない季節感。

 

 そう、夏服だ

 

 くっそ暑いブレザーや学ランから解き放たれた至高の薄着!

 普段長袖に隠されていた二の腕が恥ずかしくも大胆に!

 心ときめく言葉、夏服!

 

 ……残念ながら無いんだけどね。

 この可能性に気づいた俺は一晩かけて部屋の中を捜索してみたけれど、夏用の制服が支給された痕跡はなかった。

 一応購買も覗いてみたけれど、半袖のワイシャツとか関係の有りそうな服は売ってないようだ。

 

 ああ……夏服が無いなんて何とも悲し……くはないな

 

 あったとしても戦線の制服はセーラーだから見た目はそんなに変わらないだろうし。

 それに普通に奴らは暑かったら平気で袖を捲るからな。二の腕のありがたみはない。

 多少生地がが薄くなって目の保養的イベントが発生するかもしれないけど、気づかれたら殺されそうだし。比喩ではなく本当に。

 嘆いてみたものの、正直あってもなくても変わらない。

 

 多少脱線した気がしないでもないが、そんなこんなでこの世界は季節というものすら死んでいるのだろうと実感していた。

 

 ただし、あくまでこれは俺や人間が主観的に感じる時間である。

 どうやらカレンダー上の暦、数えられた日数というものはしっかりと機能しているようだと、俺はゆりの話を岩沢と一緒に聞きながらそんなことを思った。

 

 

「文化祭?」

 

 校長室のソファに座りながら、俺は執務用の椅子にふんぞり返っているゆりに聞き返した。

 

 女の子がそんな恰好をしているなんて、ふざけているように思えるがゆりのそれはなかなか様になっている。

 部下が男だらけの組織で上司を務める女性というのは、マスコット的な役割を果たすものが多い。

 だが、彼女はそんな生易しい属性を持ち合わしているようには思えない。

 ゆるきゃらなんか見つけたら嬉々として襲いそう。

 当てはめるならあれだ、ロシアンマフィアの頭目とか。

 

 そんな上司の発言を俺は繰り返すように聞き直した。

 

「文化祭ってあれか?模擬店とかクラス劇とか、放課後の教室で準備に追われる中何故か近づく男女の距離を端から眺めて舌打ちする胸糞悪いあれ?」

「あなたがろくでない人生を送ったのはその思考にも原因が在るんじゃないかしら……まあその文化祭よ。あと1ヶ月半もすれば文化祭期間に入って授業後の時間が不規則になるわ、気をつけてね」

「あんな行事この世界にあったんだな。岩沢さんは知ってた?」

「いいや、初めて聞いた」

「そりゃそうよ、私も初めてだもの」

 

 おいおいじゃあ何故知っている。

 

「生徒会室で会議しているのを盗み聞いたの」

「趣味がいいとはいえないな」

「今更なに言ってんのよ」

 

 そう返事をしながらゆりは手元にあるノートパソコンをいじくり、くるりと画面をこちらに向けた。

 ディスプレイには長方形の図が細かく刻まれた状態で映しださている。

 そこに書き込まれた文字をみたところ、これは何かの進行表だろうか。

 

「会議の内容や捨てられていた資料から推測される文化祭のタイムスケジュールよ。大まかではあるけれど、おそらくこの通りに進むと思うわ」

「2日間だけなんだな」

「そうなの。珍しいわね」

 俺の高校生活は入学して1ヶ月もしないうち消滅したので実際にどうだったのかは知らないのだが、人から聞いた話や創作物の中にでてくる文化祭は金曜日に前夜祭、土日に一般公開と後夜祭の3日開催だったと思う

 しかし、このスケジュールを見るにここは前夜祭無しの2日のみだ

 

「前夜祭って要するに一般公開の前に身内だけで楽しみたいがためのものでしょ?ここは外部から誰も来ないのだから、文化祭自体が身内だけのものなのよ。意味がないのだからやらないのかもね」

「本番に向けて士気を向上させるためとかそういう理由も在ると思うんだけどなあ。その割に後夜祭はきっちりあるし」

 

 そもそも外から誰も来ない文化祭とか何をやる気なんだろう?身内だけで楽しいんだろうか。

 

 ……ま、NPCにとっては楽しいんだろうな。ああいうイベントって。

 開催当日だけじゃなくて、むしろそれまでの準備期間が彼らの青春を彩る非日常となるんだろう。

 こっちは毎日が非日常だけれども。

 

「で、俺らを呼び出した理由は?そのなんちゃら祭で発情するガキどものためにライヴでもやればいいのか?」

「あなた文化祭に恨みでもあるの?」

「いいやそんな行事参加したことねーし」

 

 参加したしない以前に学校自体に行かなくなりましたから。

 中学の文化祭は、ほとんどがステージイベントを強制で観させられる拷問だからカウントしなくていいだろう。

 嫌う理由はあれだな、リア充とかそれ未満の奴らがきゃっきゃうふふしてるのを見るのが気に入らない。

 別に俺の視界に入らず、hateを溜めさせなきゃどこで何してようが構わんが、文化祭っていうのは空間全体でそういう空気を作り出すじゃん。見ないようにするとか不可能じゃん。

 

「そう……可哀想にね。一人ぼっちじゃ参加したとは言わないものね」

 

 ん?変な方向に解釈されたぞ?

 

「違うよ?ボッチだったわけじゃないよ?そもそもその時期の高校には既に俺の居場所はなかったと思うし」

「ハブられてたの!?それじゃあ性格も歪むわ」

「そうじゃない!」

「リンゴ……大丈夫だ。人は一人でも案外何とかやっていける」

「違うよ!?別に俺ボッチじゃないしイジメられてたわけじゃないよ!?そもそもそんな相手すらいなかったし」

「星川くん……本当に可哀想」

「ダメだ!どんどん変な方向にいく!?」

「強がらなくても大丈夫よ。わかってるから」

「悩まなくてもいいんだ、今はあたしたちも居るんだから大丈夫」

「何一つ正確に理解されている気がしない……」

 

 俺別にイジメられてたわけじゃないし……高校行ってなかっただけだし……

 ……社会的に同世代からハブられてたという解釈もできるけど。

 

「星川くんのトラウマは置いておくとして、察しの通りあなた達には文化祭でライブをやってもらうわ」

「トラウマじゃないもん……」

 

 落ち込む俺をよそに岩沢はゆりへと質問をする。

 

「どこで演る?中庭でゲリラとか?」

「あ、それいいな。もしくはどっかの廊下とかでもいいじゃないか?」

「それ機材の方は大丈夫なのかリンゴ?」

「ミニアンプで電源さえどうにかすれば、音出すだけならギターとベースは何とかなると思う。ドラムは持ち運ぶのが大変だから厳しいかも。ミニドラムはさすがに音楽室には無かったし」

「ドラムだけ省くのは嫌だ」

「ならいっそドラム以外の打楽器を使ってみるとかどうだ?ストリート向けのやついくつか知ってるぞ」

「別の楽器か……そうするとあたしたちも変えてみたくなるな」

「じゃあそれこそ岩沢はアコギにするとか」

「なるほど。むしろ全員の楽器をエレキ抜きのストリートでやってみるか」

「お、いいな」

 

 岩沢と会話をしながらモリモリと妄想が膨らんでゆく

 ストリートか……アコギ2本にベースはそうだな、ヴァイオリンとかどうだろう。コントラバスとか。

 打楽器は持ち運び的にボンゴあたりが……いや、あれを試してみるのも悪くないな。

 

「それはそれで面白そうね。でも、残念だけれどそれでは意味がないわ」

「え、どういうことだ?」

 

 そう尋ねるとゆりはノートパソコンを閉じて、座り直す。

 背もたれに寄りかかるように座りながら、腕を組んで難しい顔をした。

 

「おそらく()()()()として認識されてしまうと思うの」

「すまん、わかりやすく言ってくれ」

「つまりね、()()()だから、いえ、()()()だからなのよ」

 

 ……余計わからなくなった。

 其れを察したのかゆりは更に思案するように険しい表情をして、もぞもぞと脚を組み替えた。

 

「つまりね、文化祭期間中のこの学園は特殊な空間になる、規則が変わると考えられるの。その空間では登校時間の無視や指定服以外の衣服の着用とか規定時間外の寮への帰宅っていう、本来であれば校則違反である行為が許されてしまう。『()()()だから』の一言でね」

「……なるほど、そういうことか。そりゃあゲリラライヴなんざ意味はないわな」

 

 奴らにとって非日常に変わる文化祭という期間は俺らが普段行なっている日常行為とリンクする。

 つまり、俺らが存在し続けるために普段から行なっている違反行為等がむしろ当たり前だという認識に変わってしまうのだ。

 あらゆる校則が緩まる、見逃されてしまう『文化祭だから』というワード。

 そんな中でゲリラライヴをやってみたとしても、恐らく音楽系の部活が似たうようなパフォーマンスをするかもしれない。それらと同一視されてしまう。

 彼らやこの世界、居るかどうかわからない神様がそれを見たら、抗っているという認識はされずノリノリで楽しんでいるとすら解釈されるだろう。

 むしろ、意味がない。

 

「……わりと戦線的にキツくないか、文化祭」

「そうね。普段通りに行動したら消えかねないわ」

「なら俺らはどうすればいい、軽音部あたりのステージにでも乱入すればいいのか?それなら楽しんではいないだろう」

「生徒会もとい天使の邪魔はしたいけれど、NPCの迷惑になるような行為は避けたいわ」

「じゃあどうする。正直俺にはお手上げだぞ」

「大丈夫、あなたたちには後夜祭でやってもらいたいの」

 

 そういってゆりは引き出しからクリアファイルに挟まった一枚の紙を取り出した。

 それには大きく『後夜祭進行内容』と書かれ、下には細かな文字で色々と書き込まれている。

 

「どうやら天使は後夜祭に校庭でキャンプファイヤーをするみたい」

「今時キャンプファイアーかよ。まさかフォークダンス踊るんじゃないだろうな」

「マイムマイムとオクラホマミキサーは確定のようね」

「中学生かよ……」

「そんなにめずしいものでもないとおもうけれど。昨今の高校でも普通にやるものじゃない?」

「あたしの学校でもあったな……興味なかったけど」

「さすが岩沢さん、ブレねえな」

「あなたたちはこのキャンプファイヤーと同時刻に食堂でライブをやってもらいたいの」

 

 ゆりはそう言いながら進行表のキャンプファイヤー点火の時刻を指さした。

 時間的にはいつも食券巻き上げ作戦(オペレーショントルネード)をやっているころとそう変わりない。

 演る上で問題はなさそうだが。

 

「あからさまにぶつけるんだな。理由は?」

「その後夜祭、キャンプファイヤーには任意参加なの、出なくてもいいってこと。まあこのまま何も起こらなければNPCたちのほとんどは参加するでしょうけれど」

「つまり、客の横取り?」

「そう。食堂はその時間も利用できるようになっているみたいでね、作戦の主旨としては、NPCを食堂に集めてキャンプファイヤーの参加人図を減らす、可能な限り0を目指して。そして誰も来なくて困り果てた天使が一体どのような行動にでるか、それを確かめるってところかしら」

「なるほどね。そういうことか」

 

 予定していた計画が実行不可能で失敗した場合、天使は一体どのような行動に出るのか。

 運が良ければ神、あるいは彼女に命令を下している存在に頼りに行くかもしれない。

 それを確かめることが出来れば、戦うべき敵の正体と居場所がつかめる。悪くない作戦だ。

 

「でも、普通にいつもみたくライヴを止めに来るかもしれないぞ」

「あの律儀で頑固で融通のきかない天使が、自らの定めた進行を放棄してまで来るかしら?ま、それはそれで天使の思考データとして収穫にはなるわ」

 

 一応納得をしてゆりにクリアファイルを返す。

 そして、再びソファに座り直し、ゆりに尋ねた。

 

「で、それを伝えるだけなら俺だけでもいいよな」

 

 この程度の説明ならいつもの作戦概要とそう大差はない。

 パシリ(連絡要員)の俺が聞いて彼女らに伝えるだけで十分だ。

 だが、この場には岩沢も呼ばれた。

 

「岩沢さんを呼び出した理由は?」

「ちゃんとあるわよ、岩沢さん」

「なに?」

 

 岩沢を顔を上げゆりをみつめる。

 それをみて、居住まいを直し、キリッとした上司の顔をした。

 

「調子はどう?」

「どうって、別に。普通だよ」

「そう、なら文化祭で新曲を発表してくれない?」

 

 その一言に、岩沢は一瞬だけしかめたような表情をした。

 それに気づいていないのか無視をしているのか、ゆりは淡々とセリフを続ける。

 

「ただライブを演るだけじゃいつもと同じでインパクトが無いわ。さっきも言ったけれど、可能な限りのNPCを食堂に集めたいの」

「ゆりっぺさんは新曲で客を集める気なのか?」

「ゲリラ公演としてはいるけれど『文化祭のどこかでガルデモが新曲を発表するらしい』という噂を流しておきたいわ。そうすればNPCの期待と注目を上げておくことが出来るでしょう。後夜祭直前にライブの確定情報を流せば申し分ない。正直賭けになるかもしれないけれど、けして部の悪い博打ではないはず」

「なるほどな」

 

 ゆりの考えは理解できる。

 普段のライヴがゲリラ公演であるおかげで、NPCたちもガルデモの演奏が聞けるかどうかは運次第なのだ。

 それに、今までガルデモに関心が無かったNPCも文化祭で高まった熱をキャンプファイヤーなんて地味なもので冷ますより、盛り上がって発散できるライヴのほうが断然魅力的だろう。

 そんな中で"新曲"なんてそれまた希少価値の高いエサをまいて、なおかつ確実な開催情報も流せば彼らの心は欲求のある側へと簡単に向いてくれる。

 確かに、いい考えだ。

 だが、

 

「岩沢さん、発表してない曲のストックとか今ある?」

「……いや」

「なら、文化祭までに作ってもらえないかしら。一曲だけでいいから」

「……」

 

 岩沢は返事をせず、ただ口をつぐんで黙った。

 ゆりも黙して待ち続ける。嫌な沈黙が続いた。

 やがて、岩沢がその口をゆっくりと開いた

 

「善処、してみるよ」

「……そう、期待しているわ」

「これで話は終わり?」

「ええ、お終いよ」

「わかった。リンゴ、先に行ってるから」

 

 そう俺に告げるもろくにこちらの顔を見ず岩沢はさっさと校長室から出ていった。

 扉が閉まると同時に、ゆりはフーッっと肩の力を抜いて楽な姿勢でふんぞり返り、つぶやいた。

 

「『善処』ですって。この世で3番目に信用ならない言葉ね」

「ここはあの世だけどな。ちなみに上2つは?」

「『先っぽだけ』と『安全日だから』」

「…………女の子が下品なことを言うもんじゃありません」

「あら、あなた好みだと思ったのけれど」

 

 ゆりはクスクス笑いながらそう言った。

 まったく、逆セクハラを受けるとは。俺もまだまだ甘いな。何がだって話だけど。

 

「それは置いといて、結局のところどうなの」

「どうって何が?」

「新曲」

 

 すっとぼけてみたものの、ゆりはその空気を読まずに端的に聞いてきた。

 横目でで表情を伺うと、先程までくだらない冗談を言っていた笑みはなくリーダーの顔へと戻っている。

 

 ……ここは誤魔化さないほうがいいか。

 俺は溜息を吐いてから答えた。

 

「無理だろうな」

「……理由は?」

「はっきり言ってスランプだ。俺が把握している限り、新しく完成した曲は一曲もない。作ってはいるようだけれど、あのペースでは到底文化祭には間にあわないだろうな。あいつの創作ペースってのがどういうものか知らないが、今はずうっと同じフレーズをこねくり回しているからいつ完成するかもわからない」

 

 俺がこの世界に来てからというもの、一から作り上げられて完成した新曲っていうのは1つもない。

 最近彼女がこねくり回しているやつや、その前に創っていたメロディーなどはどうやら1つの曲だと思うのだが、形となって通しで聴いたことは一度もない。

 最近は新しいところを足しては消して、消しては足してを繰り返しているようにみえる。

 あれでは一生完成することがないかもしれない。

 

「そんなにひどいの?」

「一歩進めば一歩下がり、それでその場が気になって足踏みをし続けてるようなもん。進みも下がりもしない」

「それは困ったわね」

 

 ゆりは頭の後ろで腕を組んで椅子にもたれかかった。

 俺も岩沢がスランプになっている現状は喜ばしくない。

 

「どうにかならないものかしら、星川くん」

「無理にでも創りあげることは可能だと思う。適当なものではなくて、それなりに聴けるものでね。岩沢さんにはそれだけの才能や技量があるから。でも、彼女は絶対に納得しないだろうし、俺もそれは大変好ましくない」

「……なんとかしなさいよ、マネージャーでしょう?」

「無茶言わないでくれよ、それに俺はパシリだったんじゃないのかよ」

 

 実を言うと、あの状態から抜けだす手立てが無いことはない。

 だが、それは俺が言うべきことではない。

 創作というものは、個々人のエゴによって生まれるものだ。

 エゴの塊に対して他人がどうこういう資格はない。

 そいつにはそいつのやり方とそいつの曲げられない信念がある。

 だから、俺は彼女にそのことで手を出すべきではない。

 

「新曲がなくても、文化祭という特別な興奮を上手く手玉に取ればNPCを誘導することはできると思うわ」

「なら別にいいじゃねえか」

「でも、可能な限り使える手札は多めに持っておきたいの。だからお願い、達成しなくてもいいから出来る限りの手は尽くしなさい」

「いやだから無茶を言うなと」

「し、な、さ、い。これは命令よ」

「お願いって言ったじゃん」

「なに?」

 

 ギロリと凄んだ目つきで思いっきり睨んできた。

 さすがにここまで命令されたは仕方がない。断ったら後が怖い。

 

 まったく。

 どうしてこの世界にいる女性の方々はこう意志が強いっていうか我が強い人が多いのかね。

 肩身狭い。

 俺は肩をすくめながら、ゆりに返事をした。

 

「善処はするさ」

 


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