第1章1話 『始まりの願い』
「今日も学校疲れたなー」
そこら中に転がっている小石を蹴りながら、帰り道を歩く少年の名は【
「今日もハガサキ屋の書店でも見てくかな」
異世界大好き男の亮太の異世界への愛はすさまじく、『エレベーターで異世界に行く方法』などの都市伝説を手当たり次第に挑戦して行ったことから、『アナザーチャレンジャー』と呼ばれるようにもなっている。もはや学校で亮太の名を知らない者はいないと言っても過言ではないだろう。
「ええっと・・・ノーマネーノーサイフはっと・・・お、あったあった」
ちなみに、亮太は大きな夢を持っている。
その夢は叶うはずの無い夢なのだ。
その夢とは・・・・・・
「俺も異世界行きてぇなー」
異世界に行くことである。
よくあるラノベのお決まりといっていいほどの異世界転移や異世界転生などに憧れているのだ。先程も言ったが、『エレベーターで異世界に行く方法』という都市伝説に挑戦したのはこの夢の為である。
バカらしい夢でありながらも、亮太は今もその夢を追い求めている。
きっといつかその夢が叶うことを信じて―――――――
「異世界には美少女がいっぱいいるだろうからなー。きっと楽園なんだろうなー」
実にくだらないことを口ずさみながら、亮太は本屋を後にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ただいまー」
自分以外誰もいない部屋に向けて言った言葉は、とてもさみしいものだった。
本当ならば、『ただいま』と言えば『お帰り』と返事をしてくれる人がいるはずだが、亮太は一人暮らしだ。そんなことを言ってくれる人は、もういないのだ。『死んだ母親と父親に会いたい』そんな寝言は疾うの昔に捨てたはずなのに、忘れられない。亮太は家に帰ると必ずこのことを考える。
「ちょっと遅くなっちまったけど、飯にすっか」
現在の時刻は午後8時。一般的な家庭の夕食時間を午後7時とするならば、1時間も遅れていることになる。
普段なら自炊をしているが、帰宅が遅くなってしまったため亮太はコンビニで食料を購入してきた。
「ん?これって・・・」
コンビニのレジ袋から、おにぎりと飲み物を取り出し、机の上へ置いた。椅子に座り、おもむろにテレビを点けると、目を疑うようなニュースが流れた。
「ディザイアの彗星??」
それは、なんとも聞かない名前だ。
その内容は、数千年に一度といわれる彗星が見え、それがディザイアの彗星であり、その彗星に願うとどんな願い事も叶えてくれるという、なんとも疑わしい内容だった。
「どんな・・・願いもか・・・」
幾多の都市伝説やらを検証してきた亮太にはわかりきっていることだが、少し興味が沸いたらしい。
「ええと、彗星が見える日にちはっと・・・え!?明日!?」
ニュースで、彗星が見れるのは、明日の夜からだという情報が入ったのだ。
目を輝かせた亮太は、これは逃してはいけないと自分のカレンダーにしっかりと記しておいた。
――――――翌日
いつもより30分早めに家を出て、学校に行った亮太は、授業中も休み時間も、ずっとワクワクしていた。
その日は5時間授業であり、5時限目が終わり、いつもより早めにお気に入りのハガサキ屋の書店に飛んで行き、ゆったりと夜を待つ、はずだった。
「うおおおおおおおお!やらかしたああああああああ!」
ゆったりとしすぎた。
彗星が見えるのは夜8時からだというのに、ラノベを立ち読みするのに夢中になっていて、時間のことをすっかりと忘れてしまっていたのだ。
ちなみに現在午後8時30分。
「絶対的に間に合わねぇぇぇぇぇぇ!」
亮太は全速力で街で一番星が見えると言われている観光スポットへと向かった。
が、亮太が着いた時には人はおらず、周りには草木の揺れる音しか聞こえなかった。
それでもまだディザイアの彗星が見れるのではないだろうかと、亮太は必死に空を見上げ探した。
だが・・・
「クッソ!!駄目だったか・・・」
そこにディザイアの彗星らしきものは見当たらなかった。
息を切らせながら、地べたに座り込んだ。
立ち読みをしていて、のんびりしていて、ディザイアの彗星が見える時間をとっくの昔に過ぎていたことも知らずにいた自分への罰だろうと亮太は思った。
そもそも、願いを叶えるという情報を信じたのがバカだった。
信じなければ、こんなに後悔をせずに済んだはずなのに。
「仕方ないか・・・」
信じることを諦め、深くため息をついた、その時だった。
「なっ!?」
それは、絶対に現れるものではなかった。
「オイオイ・・・こりゃどうゆうことだ・・・」
再び立ち上がり、空を見上げると、そこには無数に流れる青色の彗星が流れていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「これがディザイアの彗星なのか!?でも時間が!」
亮太は慌ててポケットから携帯を取り出し、時間を確認した。
きっちり午後9時丁度だ。
亮太の携帯を持っている手は振るえ、彗星が流れると同時に、亮太の額に汗が流れる。
「神様・・・もしも・・・もしもこの星がディザイアの彗星であるのなら・・・」
頭をよぎる昨日のニュースを無視して、亮太は携帯を握り締め、大きく息を吸って言った。
『もしも、願いが叶うのであれば、俺を異世界に連れて行ってください!!』
その声は静かな平原に響き渡った。
しばらくの間声は響き、やがて聞こえなくなってしまった。
「やっぱり"願いが叶う"なんて嘘だ」
――――――その時だった。
『―――――いいよ!その願い、確かに聞き届けたよ!』
「え?」
どこからともなく聞こえた声に、亮太は驚きの声を出した。
「誰だ!誰なんだ!」
嫌な寒気が走り、緊張が亮太を不安に導く。
『僕の名前は『ネゼ』。君は星に願った。それは僕に願ったことになる』
「ネゼ!お前は何だ!」
『僕?僕は僕さ。まぁ教えてあげるよ。僕は神様だよ。だから君の願いを叶える。ただそれだけさ』
「神様?それは一体・・・」
『まぁ、話の続きは僕の所に来てからにしようか』
「は?――――――わっ!何だこれ!?」
亮太が何かの違和感を感じ、下を見ると、そこには巨大な魔方陣が浮かび上がっていた。
『それでは、神の世界へご案内~』
魔方陣が赤く光り、その光はだんだん強さを増していき、亮太を包み込んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ん?ここは・・・一体」
目が覚めた場所は、白く、ただただ白い空間だった。
あるものといえば目の前のただ一つ置いてある赤い玉座だけである。
「―――――目が覚めたようだね」
「!?」
亮太は咄嗟に後ろを振り返り、振り返った先にいたのは、黒いショートの髪形で、黄色いパーカーを羽織っている、小学4年生ぐらいの身長をした少年だった。
「君は一体・・・」
「改めて自己紹介をするよ、如月亮太君」
少年はコツコツと歩いて行き、玉座の前で足を止め、亮太の方を振り向いた。
『僕の名前はネゼ。この世界で神様をやっているよ』
少年は玉座に座り、そう言った。