鎮守府での艦娘の関係性にもいろいろとある。高速か低速かとか、昔の方で命を助けられたとか、お国が違うだとか。
一つ例を上げるなら、秘書艦と同じ艦は他よりもちょっとだけ偉くなったりする。MUR艦隊でならば、重巡は他よりもちょっとだけ偉い。
……二番目は潜水艦かな。最上は思った。
最上が頬杖ついてだらだらと提督の横に座っているのも同じ重巡だからだ。工廠へ視察に行っている筑摩の代わりのお目付け役という事だ。でも……最上としては、別に扶桑とかでもいいんじゃないの、と思っていたりする。
「朝雲。ここ、間違ってるよ。二重線引いて、書き直して」
「あ、そうなの? ごめん司令官、ちょっと机借りるわね」
「おっそうだな」
そう言って朝雲はぴょんとつま先立ちすると、執務机に覆いかぶさった。
休暇の申請書類をその場で手直しするために、駆逐に机の上を使われる提督ってのも、けっこうすごいんじゃないかな。
いや、すごくないからかな。
申請却下の判子を準備しながら、最上は少しだけ考えた。
その提督はなおざりな返事だけして、再び手元に視線を戻した。ごつごつした指先が掴んでいるのはいわゆるケータイだ。近頃のは画面に直接さわって操作ができるらしい。
その横にパイプ椅子を置いてちょんと座っているのが神風だ。
普段はでかいリボンにモガなロングブーツ、たすき掛けのよく似合う可愛らしいばあさんとして親しまれているが、同じくケータイを手にまんじりともせず提督の話に耳を傾け、瞳をくわっと開いて冷や汗を幾筋も垂らしている。
「ここで番号を押せば電話がかけられるゾ~」
「そ、そっか……」
「(ぺちん)よし、じゃあぶち込んでやるぜ」
「ていうか、一々打つの億劫だし、番号登録したらいいじゃない、それ?」
「ちょ、ちょっと待ってね……!!」
最上が面白がって横から適当にちゃちゃを入れたら、鬼のような形相の神風に睨まれてしまった。肩をすくめて知らぬ顔をした。
「えっと、最上。じゃあこれでいいのね?」
「え、ああ、うん。いいんじゃない」
朝雲から訂正の終わった書類が差し出された。面倒くさかったから、適当に目を通すフリだけしてすぐに判子を押した。
朝雲に差し戻された紙面には「申請却下」の赤い文字がてらてらと光っていた。
「ちょっと! 直させたくせになんでダメなのよ!」
「だってボク、筑摩からこれしか預かってないし」
「う、ううう……山雲と一緒に約束してるのに……!!」
「ボクじゃなんとも。筑摩が戻ってきてからまた出直してよ」
「やぐぞぐじだもん……」
提督が下を向いた朝雲をちらっと見た。
その時、試験終了チャイム直前まで問題を解いている受験生のような必死こいた気分でケータイをいじっていた神風が、どうやら提督に電話をかけるのに成功したようだった。
「……し、司令官? ご、ご機嫌よう……聞こえる?」
「おっそうだな」
「そう? ふーん……じゃあ、これにて任務は終了ね……」
ふふん、どう? 電話ぐらい楽勝よ! 途端、神風は露骨に調子に乗り始めた。
目のまえにいるのに聞こえるも聞こえないもないんじゃないかなあ。最上はちょっと思った。
「ていうか、二人とも……楽々スマホ……」
朝雲は微妙な顔をした。
「……って、あー!! 司令官、アンタまた海峡章文鎮にしてるぅー!!!」
「おっそうだな」
「そ、それでこれ、どこに受話器を置くのかしら……?」
「扶桑さあん!! ちょっとみてみてみてみてって~!!」
「ポッチャマ…」
最上は時計を見て、それから大きくあくびをした。
まあ、とにかく、もうすぐおやつ休憩だ。そういう事にしてもいいだろうと思った。
・「やったあ! やりました!」→やりますねぇ!
・「お待たせ?」→アイスティーしかなかったんだけど…
・「私だって、航空母艦です……! やります!」→ありますあります。
・「艦隊、出撃しますね!」→白菜かけますね。
・「大丈夫…?」→おっ大丈夫か大丈夫か?
・「軽空母、祥鳳です」→学生です。
・「痛っ!よくもやったわね!?」→頭にきますよ!
・すぐ脱ぎたがる。
祥鳳さんはひょっとして……?