首尾よく良い場所を見つけられ、休憩がてら近くに落ちていた謎の浮き輪を座布団代わりに座ろうとしたのだが……?
伊14「こんな僻地で場所取りとかそもそもいらない……いらなくなーい?」
提督「おっそうだな」
・ガンビア・ベイ相聞歌
ガンビア・ベイは工房で開発の真っ最中だった。
丁度、通算493回目の25mm三連装機銃レシピでの開発を行い、次の494回目にとりかかろうとしたところで、
“ぺたん”、
と、その場に座り込んでしまった。
あ……あれ。
どうしたのかな。
日本に来てからますます板についた愛想笑いを浮かべるけれど、どうにもそこから一歩も動けそうになかった。
一日中ずっと、風に乗ってイベント特有の喧騒が鎮守府全体にわんわんと鳴り響いている。ガンビア・ベイは工房の中で一人、ぽつんとしていた。遠くに明石はもちろんいる。隣の部屋にはサポートの妖精たちも。声を出せば誰かには聞こえるはずだ。しかし。
(あ……)
そのままへにょへにょと床に崩れた。無機質な床は、ひんやりとして、どこか懐かしい感じがした。
(お腹、すいたなー……)
ランチにはもうすっかり遅くなってしまったけれど、食堂に行けばまだ何か食べられるだろうか。でも、特別食べたいものもあんまり思いつかなかった。瞬きするのも妙に億劫で、まるでぬるいお風呂に肩までつかっている気分だった。全然暖かくならないけれど、出たら風が冷たいのはわかっていて、出るに出られない……。
確かに、ちょっと肌寒い気がする。
寒いというか、なんだか――
ガンビア・ベイはその時すっかり何かに飢えていた。
それは、お腹の中からごうごうと燃え盛る情動であったのに、悲しいかな、彼女は自分が飢えている事に気づいていないのである。それは丁度、今までずっと人の手で飼われていた猫が、目の前にあるものを食べられるなんて夢にも思わないまま、ゆっくりと弱っていくのに似ていた。
それは孤独という名の、慢性的かつ進行性、彼女たちの、死にすら至る病である。
動けばお腹がすく。お腹がすくと、動きたくなくなる。
彼女たちは、理屈ではもちろんわかっていても、「動けなくなる前に補給すれば大事無い」という感覚がどこか抜けてなかった。
(ヒトって――。お腹が空くと、ぜんぜん、いやになるんだなぁ――)
ガンビア・ベイは空腹だった。喉が渇いていて、何かに飢えていた。
それはただの鉄の塊だった頃には春風ほども気にしなかったもので、だけど、今はそれに、出来ることなら頭から噛り付いてやりたいような、そういう強烈ななまの衝動に戸惑っていた。
砂漠を放浪していて、水の一滴を見つけてしまったような。
雪山で遠くに焚火を見てしまって、目を離せなくなったような。
もしもその寂寥を救えるものがいたなら。
そいつは――
「あっ、ガンビア。探したぞ~」
「……Admiral?」
ガンビア・ベイが床から視線を上げると、普段通りに丸刈りでシャツ一枚の、三浦提督が扉のところに立っていた。
彼は腕を組んでちょっとの間難しい顔をしてから、「行儀悪いゾ、ガンビア」と言った。
彼女は赤面して、慌てて裾を引っ張ってぺたんと座りなおした。
「え、えと、Admiral、どうして……?」
「あっそうだな。筑摩が、そろそろガンビアも休憩した方がいいんじゃないかって」
提督が、持ってきた風呂敷包みを掲げた。
「お疲れ様だゾ」
「でも……まだ、装備が出来てないです……」
「俺も昨日、一日かけて一個も出来なかったから、全然大丈夫だゾ~」
提督は呑気に笑った。
むしろ、そのせいで12cm30連装噴式砲改二の開発が進まず、秘書艦の筑摩は大いに頭を悩ませているのだが、彼は気にした様子もなかった。
風呂敷包みからはお弁当箱が出てくる。衣のさくさくしたカツサンドは、とろっとした甘じょっぱいソースがスパイスと一緒になって、いくらでも食べられそうだ。ぶっとい水筒にはたっぷりのオニオンスープも詰められていた。
「It`s so delicious!」
「おっそうだな!」
ガンビア・ベイと提督は、顔を見合わせてこくこくと頷き合った。
彼女がにこにこと笑っているのは、何も美味しいものを食べているからだけではなくって、「美味しいですね」と口に出して、「イエス」と答えてくれる相手がいるからだった。一人ではないからだった。
「……ね、Admiral?」
「ウン」
「ダレかと一緒にご飯を食べるのって……す、素敵ですね?」
「そうだよ(便乗)」
それを聞いて、ガンビア・ベイはにへにへと笑った。
とうとう甲勲章取り逃したので、本編ゲームに関するモチベは、んまぁそう……。
平時も朝夜の演習ぐらいしかほとんどプレイしてなかったんですが、それもしなくなると、ガンビーちゃんの続きとか書けるしこれもうダメみたいですね。
コロラドの話はしないでくれるか(迫真)