季節外れの銀雪が、公園の中に薄く積もっている。一本の樹の根元に、寝床と決め込んだひとが横たわっている。
それは、潜水艦の形をしていた。
「うぇぇ……頭イッタぃ。……超ズキズキする。
……ここどこ?」
伊14号がぶつぶつと小声で悪態をつきながら起き上がる。上に積もった雪がさらさらと滑り落ちた。
……くしゅん。遠くで枝がしなる音がした。
「なんでイヨ、公園で寝てんの……? せめてベンチで寝なよ……(他人事)」
と、そこで何かに気づいたように、顔をしかめた。時報でも聞いているかのように、何もない空へ目を泳がせていたが、やがて、くるりと振り返った。
そこにいたのは、青い雪だるまのような「お化け」だった。積雪を無邪気に跳ね回っている。それは、おとぎ話に語られる伝承の存在。霜の妖精、あるいは、雪と氷で形作られる小人。
「ヒーホー! おいら、ジャックフロストだホー!
オイ、そこのアホ面……ヒホホ!? コイツめっちゃ酒くせーホ!」
「うう……ちょ、大声やめて……頭ガンガンするから……」
伊14号が頭と口を抑えて呻くと、雪の妖精はどん引きしたようにいった。
「これ絶対、イヨ、誰かに後ろから殴られて拉致されたんだ。頭痛ほんとすごいもん。
……っていうか、なに? なんで雪!?
いやいや、ついこの前まで、超夏日だったジャン! 令和の季節感やばすぎない?」
「ヒッホッホ、今頃気づいたのかホ。トロすぎるホ、この酔っ払い。もうベンチとかガッツリ雪積もってるのにホ」
「うぇ~ん……今度からはほどほどにするからさ~……」
伊14は心の底から反省した様子に泣きついたが、二日酔いが抜ければまたあっという間に深酒を重ねるのだから、青い妖精の冷たい態度は間違っていなかった。
「もう遅いホ! アンタここで、カチンコチンチンのアルゼンチンだホ~! ……ブフ!」
「ふぅ~ん、そういうこと言うんだ……」
くだらないギャグは、二日酔いで苦しむ伊14には逆効果だったようだ。
ぽかん(拳骨の効果音)。
「……驚いたなァ。結構マジでぶん殴ったのに、死なないんだね、あんた?」拳をグーの形に握りこんだまま、伊14が不思議そうにいった。
「ちょ……ま、待つホ!! ア、アンタ人間じゃないホね……!?」
「今頃気づいたの? 艦娘って……知らないの? 新聞とか読まない系? ……まァいいやなんでも。
イヨ、今は非番だけどさ。覚えてないけどたぶんね。お酒飲んで公園で寝てたんだから、たぶんそうでしょ……(震え声)。
で、いくら非番の艦娘っていったって、山から降りてきた熊ぐらいは始末しなくちゃ。
……そんで、あんたいったい、なんなの?」
「オ……オイラ、クマじゃないホ! “アクマ”だホ~……だから許してほしいホ~!」
たった一発。
伊14は、拳を振り上げてぶつけただけで、低級とはいえ、伝承に語られる「悪魔」を叩き潰してしまった。
全長113m、基準排水量2620tという人の英知の結晶は、その暴力的な質量で神秘を粉々に粉砕したのだった。
「う~ん、どうしよっかな~。イヨもな~」
「お願いだホ! 見逃してほしいホ! あ、アクマを殺して平気なのかホ?」
「イヨもさ……殺すほど悪魔じゃないしな~」
「な、なんでもするから食べるのだけは許してホ~……」
「ん? いま何でもするって……言ったよね!
ウチ(三浦艦隊)だと、それを言った瞬間、全ての人権を放棄する魔法の言葉なんだよ!(まあイヨたち元々そんなのないけど)あとはみんなのおもちゃですって感じの。
うんうん、とうとうイヨにも下っぱ……もとい、後輩ができたんだね~」
「いや、それは……。そ、そんなのイヤホ~!」
「嫌って言ったって、横向くんだよ90度!(酔っ払い特有のたわごと)」
●……数時間後、魔都トウキョウ
……悪霊ポルターガイストが 現れた! ▼
「悶絶少年専属調教師のタクヤと申します」
「うわっ、提督みたいなのが出てきた!」
「あっ、店長! ご無沙汰じゃないっすか!」
「気を付けるホ、DARK悪魔とは会話が通じないホ!」
「お前もう生きて帰れねえなぁ?」
「いやまあ、提督も大体こんな感じだし……」
「ズイブン変なやつなんだホ~」
「うーん、奇人変人の類なのは否定できないなー」
「もう許さ……ゆるっ、もう許せるぞオイ!」
「まー、物は試しだね。
ねえねえ、イヨたちちょっと探し物があるんだけど、手伝ってくれない?」
「あっ、いいっすよ(快諾)」
「いいねいいね、ノリいいじゃん~」
「お金、タダでいいから(良心)」
……悪霊ポルターガイストが 仲魔になった! ▼
「いいのかホ……(困惑)」
ゴジラマイナス、重巡「高雄」が登場するシーンすごくカッコよかったので、落ち着いたらみんな観よう
ドラマパートは全部スキップしていいよ(無慈悲)