知将MUR   作:ピュゼロ

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・飛龍改二の第2スロットの搭載数(36機)は1つのスロットの搭載数としては加賀改・加賀(未改造)に次いで第3位の搭載数を誇る(wikiより引用)←加賀さんすごくないかずい?


短編集 114514話 その②

・島風の下は水の星

 

 新規着任の際に長門がそこにいたのは単なる偶然である。

 彼女が駆逐艦島風に対し考えたのは、先んじてこの鎮守府にいる先達としてのちょっとした親切心、それだけに過ぎない。

 

「――つまり、これより艦隊所属となり、そこでよりよく活躍する為にはやはり、艦隊司令官への印象が大事になってくるわけだな」

「オウッ?」

「ああ、そうだ。つまり、こいつはいつもダメだ、砲戦二順目の敵旗艦から必ず中破ないし大破させられやがる――などと思われては、これはもうダメだ。いずれ第一線から遠ざかり、名誉ある遠征部隊へと配属になるだろう。誰しも、個人的な感情と無縁ではいられないからな。その良し悪しは別だが」

「そうなんだ。長門は?」

「私か? 私はこれでも、艦隊じゃあちょっとしたものさ」

「ふーん。長門、すごいんだ」

「ああ。――そうだな、例えば、大和のやつなんかは、あれも可哀想なやつだよ」

「カワイソウ? そいつ、遅いの?」

「あー……足で食ってるやつじゃないのは確かだが……。あいつはなあ、期待されすぎたんだな」

「期待……?」

「我等が大和殿も乱数には勝てぬというだけさ。もっとも、私たちも、少し浮かれて……過度な期待をかけていたんだろう。というのは、ここへ配属されたばかりの大和に、数度演習での慣らしだけをやらせて、いきなり最前線へ行かせたんだ。中破絵回収だからってのも、あるにはあったんだが」

「オウ……?」

「うん。まあそこでな。レ級に一撃でぶち抜かれて、大破。そして提督殿は、大和型戦艦を実践へ投入するという事の真意を、その修復に要する資材の数字によって思い知ったのさ。そして、思ってしまった。つまり……“なんだ、こんなものか?”とな」

「なら、じゃあ今はその遠征部隊についてるのね? その、ヤマト」

「ははあ。島風は察しがいいな。頭の回転が速い」

「そーお? でも、そうよね!」

「言う通り、大和は遠征の方にいるわけだな」

「でもそれって、すごく遅そうよね。カワイソーだけど、私はいや」

「そうか。ならやっぱり、第一印象だな。特に、一番初めの第一声、これは凄く大切だぞ、島風――」

 

 

・生やすな(神の一喝)

 

 短くはない戦火の飛沫によって人類は疲弊し、自分のような若造でさえこのような不相応な地位にある。だが、幸いにして秘書艦霞を筆頭に皆よく力になってくれている。ただ感謝の念しかない。

 しかし、女性ばかりの場の中に、つくねんと男が突っ立っているというのは、これは中々に大変な事やもしれぬぞと、うすらうすら思わせられるこの頃である。

 彼女たちは紛れもない女人の性であり、そして女性というものは、少なくとも自分という男に対しては極めて強固な一つの集団であり、さながら大海に一滴垂らした朱が、あっという間に溶けて見えなくなるように、こと私に関する事象、失敗も口舌の一つ一つまでも、彼女たちにとっては格好の話のネタになっているようである。

 先日、酒の席での話が弾み、それがいったいどう転がったものか、各々の持つ家庭観への議論がなされた。そこは流石に歴戦のネイヴィー、独立独歩の気風の高い彼女たちからは、家庭に入るというものは中々聞こえてこなかったと記憶している。けれど、恥ずかしながら自分はそうではない。妻として迎える伴侶には家を守ってもらいたい。それと小遣い制とやらに少しばかり憧憬がある。そんな事を言った。

 後日になって、その時は同席していなかった阿賀野が自分に尋ねてきた。

「提督はお小遣いがいいのね! でも、じゃあ、具体的にはどのくらいがいいのかしら?」

「……んん? いや……それはまあ、当人同士での話し合いにもなるんじゃないか。ああ、でも時々でいいから趣味の分を考慮して頂きたいものではあるかな」

「趣味?」

「洋酒さ。道楽だよ」

「ふーん、お酒ね。ほどほどにするなら、考えてあげる」

「ああ。ありがとう」

 まったくもって何がありがとうなのだったのだろう。そして阿賀野は何を考えてくれたのだろう。

 両者がよくわからない認識をすり合わせ合意に至ったあたりで、能代がしきりに畏まりながら姉を引き取っていった。扉が閉まるや否や、阿賀野をたきつけたらしき連中を叱り飛ばす能代の声が響いた。

 誰かに話してさえいればある程度は「こいつも聞き及んでいるだろう」というアテができるのは、考えようによっては、これはこれで便利なものでもある。

 あるいはまたいつだったか。

 レーベレヒト・マースが故国の民族衣装を披露した時だ。

 自分はこれを絶賛した。今まで衣装といえば和装、あの実に男の事を考えて作られた機能美とでも言うべき服装こそが女性を最も引き立たせるとの信念を抱いていたが、その幻想は、目の前の“彼女”によって粉微塵に打ち砕かれたのだ。

 目新しさ。それもあるかもしれない。なにせ周囲は同郷の女人ばかりであり、顔かたちはおろか、制服から伸びるすらりとした手足の寸法、肉の付き方からして異なるのだ。あの碧眼に下から見上げられ、ゆっくりと言葉を囁かれ、心の沸かぬ男がどこにいるというのか。それを一時の気の迷いとする事は至極当然で、けれど胸にある感じはこれはどうしようもない単なる事実だった。

「あ……あの。これ……ドイツの、その、キモノみたいなもので……」

「うん……」

「その……どうかな、提督。……変に見えないかな」

「……うん。いいね。いい……凄くいい。可愛いな。うん、可愛い。これは凄く可愛いな。好きだ」

「あ……ありがとう。……好き?」

 問題はこれが例によって酒の席で、前後がうろ覚えだという事だ。その時レーベもドイツ製ビールサーバーとして甲斐甲斐しくしていたようである。

 自分がそこで一体何を口走ったのか……考えるだに恐ろしく思う。当の本人には、幸い後日さけられたり、聞こえる距離で陰口を叩かれるといった様子はないが、艦隊の風紀が乱れたと秘書艦の霞には思い切り叱りつけられた。何が拙かったのだろうか。結果だけを鑑みるならば、翌日の朝一番にディアンドル姿の隼鷹が現れた事だろうか。しかし、あいつは酒精の信奉者だ。ドイツの水にいたく感動したのだと考えればそう不自然でもない。たしかに……たしかにその後、鳥海や摩耶といった連中までもがその格好をし始めたのは事実だ。流行ったのだといえる。

 部屋の扉をノックして、廊下で品よく屹立するマックスの、改めて彼女らドイツ人が纏うこの衣装の雰囲気というものを眺めながら、そんな事を考えていた。

「どうしたんだ、こんな時間にまた突然」

 私はその時随分怪訝な顔をしていたのだろう。もっと率直に言えば迷惑げだっただろうか。夜更けも夜更けだ。警報以外の何者にもたまの休息を邪魔されるつもりはなかったのだが、そこは彼女の日頃の行いか。秋雲などならば二言目の前に扉を閉めたかもしれない。

 マックスはもったいぶったようにため息をつき、薄紅色の流し目をくれてきた。

「Ja、少しお邪魔してもいいかしら。提督、ビールはお嫌い?」

「もう廊下も冷え込む時期だろう。まあ入れ」

 ちなみに彼女が携えたのは鎮守府最寄のコンビニのビールだった。これならば誰何の際、せめて酒の銘柄でも答えさせるべきであったかと自省する次第である。異国の美少女を肴にあおる酒は金だった。黒ならいいという話でもなく、プルタブを空ける音がする度に、「なにかが違う気がする」という漠然とした気持ちが募る。

 流行った、と誤解を恐れず言ってしまえば、それはそうかもしれない。

 しかしマックスが今さらになってこの格好をしてくるのは、何かしらの思惑か……都合か。腹回りの肉の都合がつかなかったのかもしれない。可能性は否定できない。

「……どうしたの、変な顔をして。もう、酔いがまわってきたの。赤くなってるわよ」

 怪訝な口ぶりは滑らかだ。彼女は酒に弱くないらしい。

 ならばなぜ、そういうお前も赤いのか。その様子はどうしたというのだ。俺だけに見せびらかしにでもきたのか。

「Ja、そうよ。……あなたに見せにきたの」

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