知将MUR   作:ピュゼロ

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・初月が姉たちの分まで間宮でガンバって豪遊する話
BGM “Ebony And Ivory” by Stevie Wonder

・夏イベのあいだ、114.0514時間ぐらい艦これってゲームしてました。
・e7攻略中の演習の後。
千歳甲「ありがとう。いただきます」「スパシーバ」「メルシー!」「アイヤムマチャチャチャ」←なんか一人犬っぽくない外人さんがいますね……。


第114514話 その⑤

 ※

 大井っちは「間宮」のエプロン姿でてきぱきといった。

「はあい、おまちどおさま。悪いけど後でお皿は下げて頂戴ね」

 コップを三つそれぞれ置いて、リベッチオにはくるくるしたストローの可愛いやつをサービスしてくれた。アリガトー! というつたない謝辞に、彼女はちょっとだけ笑顔を見せて、お勉強、頑張ってねと返事をした。

 初月は運ばれてきた目の前の、伊良湖の最中に肩をぎくしゃくと緊張させた。

 ポーラはグラスをかき混ぜたマドラーをはしたなく口に運んで、むふむふと頬を緩めていた。

「……ハツヅキ、マミーヤ、食べないの?」

「え? えと……いや、それは」

 伊良湖の最中は彼女お手製の餡子のねっとりとした甘さが人気の秘訣らしい。薄いぱりぱりとした皮もお店で直々に製造しているようで、中々お目にかかれない。具体的にいうと、個数が提督によって厳密に管理され(それはつまり、筑摩に管理されているのと同義だ)、許可の下りた艦にしか振る舞われないシロモノである。この頃は、コーヒー風味などのアレンジも進んでいるようで、そちらがアイテム「給糧艦伊良湖」の規制に引っかかるかどうかはまだ未定だ。

 リベッチオは子供らしい豪快さで瞬く間にジュースを飲み干してしまって、今度は初月の最中に粉をかけてきたようだった。わざとらしく下から見上げてくる、ぐりぐりと動く大きな瞳は、全ての人から愛されてきたものの雰囲気がした。これが美人という言葉になると(そして本人が、実際にとびきりの美形だと)ローマのようになる。

 リベッチオは伊国出身で、同型の駆逐艦はまだ配備されておらず、同郷もクラスは重巡以上しかいない。彼女たちの方も、見た目も中身もまだまだ幼いリベッチオには、ついつい面倒をみてしまっている。そのせいもあるかもしれなかった。

 それはとてもイタリアらしいのだろうし、そういう意味では、初月もなかなか、お国柄を反映した性格だといえなくもないかもしれなかった。

 そもそもは提督から手違いで伊良湖券を三枚頂戴してしまった事に端を発する。

 まず、まず、手違いで一枚のところを三枚渡してしまったのだろう。初月たちは姉妹で相談したが、結局そういう結論に至った。提督が提督だし。なにかと物入りなこのご時世で、姉妹全員分だなんてオイシイ話、あるわけがない。陽炎型(九名)や夕雲型(十名)でだってそんなの、聞いた事もない。

 である事を意味するので、初月は当然、この後センシティブに返却しに行くつもりだった。姉の秋月が代わりに行くと言ってくれたが、初月は末っ子だからと、二人の姉から最中を食べる権利をいただいてしまったのだ。サンクネスございます、だったらせめて、手間な些事ぐらいは自分で行きたいといった。

 だからちょっと、言葉に詰まってしまった。

 初月だって、甘いものは好きだ。

 その時、カラン、カランという澄んだ音がした。ポーラの手の中で小さな氷が揺れている音だった。

「だ~めですよぉLibeccio、ハツヅキのGelato、とっちゃったら」

「えへへ。えへ、えへ」

「そもそも、まだ全部、終わってないでしょ? ほらぁ~。つづき、つづき~」

「Uum……マミーヤ」

「Assolutamente, Libeccio. In questo modo, non desiderare altre persone.(怒りますよ、リベッチオ。そんなふうに、他の人のまで欲しがっちゃダメです)」

「Sembrava assaggiato……」

 そんなふうに、間宮のお店の中でわざわざ、ひらがなの勉強をしているのも、彼女たちぐらいしか見当たらなかった。

 すっかりしゅんとしてしまって、小さく何事かを呟いているリベッチオを見て、初月は苦笑をこぼした。

「いや、いいんだ。いいよ、そのぅ……一口ぐらいなら」

「ホントに!」

「リベ! ……いいんですかぁ?」

 ポーラの母国語は、普段よりも少しだけ高くて、ぴんとした響があった。

 続けて二つを喋られると、いよいよのんびりしているように聞こえるなと、初月は少しばかり思った。

 いいんだ。なんだかこのままじゃ、永遠に食べようとしないでいるかもしれないし。

 それに、姉さんたちに甘やかされてしまって、その抱えた鬱屈を、彼女に肩代わりしてもらっているだけかもしれないな。初月はぼんやりと考えた。

「わぁ~! おいしそう! でも、最初の一口は、ほら、ハツヅキ! あ~ん!」

「えっ? ちょっと大きすぎる……」

「ふふ。ほらハツヅキ、あ~ん、あ~んですよぉ~」

 

「Il semble assez bien,Navire a pates.(かなりゴキゲンみたいじゃない、パスタ艦)」

「Lo vedi? Ardisco ad ogni impresa……naturalmente, se hai l'alcool.(そう見えますか? そ~かもですねえ。えへへ。えへ)」

「いちじく、ちらちーの、じらーち、さんせべりあ、ぽっちゃま……」

「う、うう~……」

「ここは名前なのか。りべっさ……ああ、“ち”か。りべっちお。ちが、まだ難しいんだな」

「ニホンゴ、むつかしいよ~……リベ、わがんないよ~……」

 どこから持ってきたのか、ずいぶんとぼろぼろになったひらがなの書取帳のようだった。提督が練習用にと、子供のころ使ったのを用意してくれたらしい。ご丁寧に鉛筆の何本かと、消しゴムと、可愛らしい猫のイラストの鉛筆キャップと、削るための小刀などなどが広げられている。

「く……みーと……みーとそーす?」

 リベッチオは腕をテーブルに伸ばして疲れたようにすんすんべそべそしていた。初月は書取帳をぱらぱらとめくっていて、ふとした箇所で考え込む仕草をした。どうやら誤字があったようだ。

 ポーラの方は、そんなリベッチオを応援しているのかいないのか、手の中にグラスを抱え込んで、むふむふとにやけていた。

 ぼけぼけというのか、随分とのんびりしているその様子を、どこか呆れかえったように眺めているのが、フランス生まれの戦列艦、戦艦Richelieuだ。気だるげに組んだ長い足はどこまでもすらっとしていて、絡まってしまいそうなぐらいだ。

「そうそう。この前テレビでやっていたんですけど、お店で。アイスにお酒を入れて、火をつけてたんですよ~。とっても綺麗でした~。……でも、お酒はそのまま呑みたいですよね~」

「知らないわ」

「ふうん。そうなのか。そういう、ものなのかい」

「はい~」

 ポーラはジュースで薄くお酒を割りながら、気の抜けた返事をした。しゅわしゅわとグラスの底から炭酸の気泡が氷と一緒に舞い上がりそして散り散りになっていった。

 伊太利ののん兵衛は初月が間宮に来た時にはもうお酒と同席していて、今もくるくると踊り続けていたが、まだまだ元気なようだった。横に座っている初月はずっと、淡い桜のような甘い香りを嗅いでいた。あんまり強いお酒ではないようだったが、それにしたって、相当なザルである。

 とても、上手にお酒を飲むんだな。初月は生憎お酒を飲んだ事がなかったので、素直にそう思った。鎮守府にはそれほど飲むのが上手でもないのもちらちらいるので、彼女は、まだ明るいうちからの飲酒については別段、なんとも思わなかった。

「不勉強ですまない。僕はまだ、飲んだ事がないから。そんなに、いいものなのか?」

「はい~! とっても~」

「ま、こんな時間から楽しむものでもないけれどね」

「ハツヅキもリベも、まだまだ、お酒がなくったってへーきなんですね。でもでも、ポーラたちにはお酒が必要なんです」

 お酒で少し口を湿らせながら、ポーラは考え込むように遠くを見た。ね~、ですよね? とリシュリューにも同意を求めたが、こちらはすげなく無視された。

「お酒なんかに頼らなくても、毎日がきらきらしていて楽しいっていうのが、ハツヅキたちのお年頃だと思うんです。青春、って聞きました……素敵ですね。でも、大人は、お酒に頼らなくちゃいけなくて……だからお酒は、大人の勲章なんですよ~」

「そう……なのかな」

「むつかしいコト、ポーラ、よくわかりませんけどね~」

 ポーラはにへにへ笑って言った。小難しい理屈も、全ては今飲んでいるお酒を離さないため、そんな感じだった。

「ふうん……。頭の中までCave a vinってワケじゃなかったのね」

「……って、この前お酒をご一緒した時に、提督が言ってました~。ポーラ、すっごくその通りだと思います。ポーラカンゲキしちゃいました」

「……あきれたこと」

 リシュリューは眉根を八の字にして呟いた。リベッチオはとっくの昔に勉強に飽きてノートの隅に猫だか狸だかドラえもんだかをラクガキしていた。

 初月はそこで改めて、ちょっと欠けている伊良湖の最中に手を付けた。でぶの鳥みたいな模様で、そのお尻のところにかじりついた。ねっとりした甘さは彼女の想像以上で、思わず言葉を忘れて目を白黒させた。

 誰かのグラスの氷が割れて、パキンと澄んだ音がした。

 

 ちなみにその後、リシュリューは怒髪天の卯月に「警察っぴょん! いったいこんなとこでなに油を売ってるぴょん!」と連行されていった。あの格好のままで秋刀魚漁に出るのかなと初月は少し考えた。彼女は「何度も、イイカゲンに! このRichelieuをこんなコトに使うだなんて!」と叫んでいたが、初めは皆大体そう言うので、軽く聞き流していた。

 ポーラはマドラーでくるくるしながら、そうそう、と思い出したように言葉を足した。

 でもでも、ポーラ、提督の呑んでたビールはあんまり好きじゃないです~。

 ウォークマンは好きですけどね。

 そうして流し始めたのはおしゃれなクラシックで、リストの「ゴンドラを漕ぐ女」だった。

 

 ※

「提督! 伊良湖の配給、ありがとう! とても美味しかった!」

「あっ……初月か。それは良かったゾ」

「うん。丁度、リベッチオやポーラやリシュリューと一緒したんだ。お前はお酒が好きなのか?」

「おっそうだな。酒……冷えたビールいいゾ~」

「僕はまだ、お酒は飲めないみたいだから……少し、憧れるような気持ちはあるけれど。なあ提督、いつか僕と、お酒を飲んでくれるか?」

「当たり前だよなあ?(知将特有の快諾)おいHTDK早くしろ~?(せっかち)」

「あはは、今すぐってわけじゃないけどね……ああ、そうだ。忘れるところだった……ほら、これ。伊良湖の配給、多かったから……」

「お……?(理解不能)」

「今回は、姉さんたちに譲られてしまったから。その、次の時は、二人に直接渡してほしいって言いに来たんだ」

「……んんんぉぉおおおおおお!!(怒りに震え声)」

 結局、初月たちはペナルティとして素晴らし菓子(下北沢銘菓)のフルコースを堪能させられる事になってしまった。どうぞ遠慮なさらず、たっぷりと召し上がってください。完食なさるまで帰れませんよ? さぁお三方、特製ソースが残っておりますので……。

 筑摩は海図を広げて秋イベントの計画を練っていたが、二人のとぼけた会話を聞いていて、笑いが止まらなくなったようだった。




・友軍艦隊くん「わたしは必ず戻ってくる。I`ll be back」
←とかいってたらマジで戻ってくるっぽい? んにゃっぴ……っぽい!

・実話です。もともと、キラつけめんどくなって、秋月照月初月にモナカ食べさせたら照月だけ食べてなかった……という話。重巡はお酒も飲めるのに駆逐艦は間宮も配給制なのか……(困惑)
キラつけてる時間がその他の5倍以上あって淫夢や特撮の視聴がすすむゲーム。「四国空母化計画」見ました。
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