ストライク・ザ・ブラッド ~血塗られた吸血鬼~   作:ぅっchi_

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は・や・く、凪沙と悠斗をイチャイチャさせたい!


pklmさん、評価8ありがとうございます!


聖者の右腕 Ⅱ

 茜色に染まりかけた西の空から、強烈な日差しが降り注いでくる。

 

 

「熱い……焼ける。焦げる。灰になる………」

 

 

 午後のファミレス。窓際のテーブル席の隣でぐったりと突っ伏して、暁古城が弱々しくうめく。

 制服姿の高校生である。羽織ったパーカーを除けば、特徴というべきものはあまりない、どこにでもいそうな男子高校生だ。それなりに造りのいい顔には気だるげな表情が浮かび、眠たげに細められた目のせいで、ふて腐れたような雰囲気になっている。

 

 

「そうか、短い間だったけどありがとう。そしてさよなら」

 

 

 隣に座っている俺―――桐原悠斗(きりはら ゆうと)は古城に向けて合掌する。

 

 

「いやまだ死なねーよ!」

 

 

「なら早く課題やれよ」

 

 

 言い返す古城を見て、俺は先ほどからやっている課題へとシャープペンシルを走らせる。

 悠斗も制服姿であり、同じ高校へと通っている。黒髪に黒い瞳そして私服もほとんどが真っ黒と、この殺人的な日差しの中では暑苦しいが本人は毎回涼しい顔をしている。

 顔は整っており、はっきり言ってモテる。確か夏休み前も告白されていた。しかし、童顔でよく女と間違われることを気にしている。そのことをクラスのバカ(基樹)が弄ったあの時は、いつもと変わらない笑顔だったのだが震えが止まらなかったと古城が言っていた。

 

 

「しょうがないだろ、暑いもんは暑いんだから。ところで今何時だ?」

 

 

「もうすぐ四時よ。あと四分二十二秒」

 

 

「………もうそんな時間かよ。たしか明日の追試って九時からだったよな」

 

 

「今夜一睡もしなけりゃあと十七時間と三分あるぜ。間に合うか?」

 

 

 向かいに座るもう一人が、他人事のような気楽な声で訊いてきた。古城は沈黙。積み上げられた教科書を無表情で眺める。

 

 

「なあ………薄々気になってたんだが」

 

 

「「「ん?」」」

 

 

「なんで俺はこんなに追試を受けないといけないんだよ!この追試の出題範囲広すぎだろ!ここの教師は俺に恨みでもあるのか!?」

 

 

 古城の悲痛な叫びを聞き、俺たちはお互いに顔を見合わせた。

 俺と向かいに座っていた基樹と浅葱は呆れたようにため息をつく。

 

 

「いや………そりゃあ、あるわな。恨み」

 

 

 答えたのは短髪をツンツンに逆立て、ヘッドフォンを首にかけた男子高校生―――矢瀬基樹(やぜ もとき)だ。

 

 

「あんだけ毎日毎日、平然とサボられたらねぇ。舐められてると思うわなフツー。……おまけに夏休み前のテストも無断欠席だしぃ?」

 

 

 爪の手入れをしながら、藍羽浅葱(あいば あさぎ)が笑顔で言ってくる。

 華やかな髪形と、校則ギリギリまで着崩された制服が特徴的な少女だ。

 

 

「毎日(なぎ)に起こしてもらってるはずだろ?なんでそれで遅刻やら欠席するんだよ」

 

 

「いや………その、二度寝して気がついたら昼だったからもういいかなと思ったりして……。てか、なんで悠斗はそんだけなんだよ!」

 

 

「お前と違って俺は毎日凪とちゃんと登校して、授業受けてるからな。今回は日本史がちょっとやばかっただけだ」

 

 

 実は悠斗は成績優秀で学年でもトップクラスだったりする。ただ欠点を挙げるとすれば、社会科が壊滅的ということだ。そのおかげで日本史だけ追試を受けることになっている。

 

 

「しょうがないだろ……あれは不可抗力なんだって。いろいろ事情があるんだよ。だいたい今の俺の体質に朝イチのテストはつらいって、あれほど言ってんのにあの担任は………」

 

 

「体質って何よ?古城って花粉症かなんかだっけ?」

 

 

 浅葱が不思議そうに訊いてくる。古城は自身の失言に気づいて、口を歪める。

 

 

「あぁ、いや。 つまり、夜型っていうか、朝起きるの苦手ってつうかな」

 

 

「それって体質の問題なの?吸血鬼じゃあるまいし」

 

 

「は、はは。そうだよな」

 

 

 引きつった笑顔で言葉を濁す古城。

 俺は古城が吸血鬼であり、第四真祖であることも知っている。そして逆に俺が吸血鬼である事()知っている。

 

 

「あたしは那月(なつき)ちゃん好きだけどね。いいセンセーじゃん。出席日数足りてない分補修でチャラにしてくれるんでしょ。それにあたしも、あんたを憐れに思ったから、こうして勉強教えてあげてんじゃん」

 

 

「他人の金でそんだけ勝手に飲み食いしといて、そういう恩着せがましいこと言うな。それに教えてくれてるのほとんど悠斗じゃないか」

 

 

 浅葱の前に積まれた料理の皿を、恨みがましい目つきで古城は眺める。俺は呆れるしかない。これは古城が浅葱の大食らいを忘れていたのが悪い。まぁ少し同情したから、こうして自分の勉強の合間に教えているわけだが。

 

 

「あー……もう、こんな時間?んじゃ、あたし行くね。バイトだわ」

 

 

 携帯電話を眺めていた浅葱が、残っていたジュースを一息で飲み干し立ち上がった。

 

 

「バイトって、あれか?人工島(ギガフロート)管理公社の……」

 

 

「そそっ。保安部のコンピュータの保守管理(メンテナンス)ってやつ。割がいいのさ」

 

 

 そう言うと浅葱は、じゃね、と手を振って店かを出ていった。気楽な軽い口調だが、管理公社の保安部は一般人がおいそれとで入りできるような場所ではない。

 

 

「いつも思うけど、あの見た目と性格で天才プログラマーってのは反則だよな。未だに信じられん」

 

 

 浅葱の後ろ姿を見送りながら呟く。

 基樹と浅葱は小学生になる前からの幼なじみで古城たちの中では最も古くからの絃神市の住人だ。

 

 

「まぁ俺は試験勉強さえ手伝って貰えるならなんでもいい」

 

 

 古城は顔も上げずに言う。

 

 

「……浅葱も大変だな」

 

 

 俺がぼそっと呟くと、聞こえていたのか基樹もうなづいている。

 

 

「ま、そろそろ俺も帰るわ」

 

 

「あ?」

 

 

「宿題写し終わったし、俺の追試も一つだけだから、今夜一晩あればなんとかなるしな。まぁ、お前はせいぜい頑張ってくれ。悠斗もまたな」

 

 

「おう、またなー」

 

 

 基樹は手を振りながら店を出ていった。

 

 

「はぁ、やる気なくすぜ」

 

 

 古城はため息をつき、またテーブルに突っ伏する。

 

 

「まぁまぁ、俺が教えてやるから………っと、言いたいところだけど………」

 

 

「おい、まさか悠斗まで……」

 

 

 古城が勢いよく起き上がり、詰め寄ってくる。

 

 

「そのまさかなんだよな。さっき凪からメールで、一緒に鍋にしようって誘いが来てて、帰りに食材を買わなきゃ行けないんだよ」

 

 

 それを聞いた古城はガックリと肩を落とす。

 

 

「なら俺も一緒に行く。どうせもうやる気おきないし、荷物も多そうだからな」

 

 

「助かるよ」

 

 

 

 

 

        ♰ ♰ ♰

 

 

 

 

 

 絃神島は、太平洋の真ん中、東京の南方海上三百三十キロ付近に浮かぶ人口島だ。

 総面積は約百八十平方キロメートル。 総人口は約五百六万人。

 行政区分上は東京都絃神市と呼ばれ、実体は、独立した政治系統を持つ特別行政府だ。

 絃神市は学究都市だ。 製薬、精密機械、ハイテク素材産業など、また、日本を代表する大企業、あるいは有名大学の研究機関が、この島にひしめき合っている。

 

 ―――魔族特区。

 

 それが絃神島に与えられた、もう一つの名前である。

 獣人、精霊、半妖半魔、人口生命体、吸血鬼――この島では、自然破壊の影響や人類との戦いによって数を減らし、絶滅の危機に瀕した魔族が公認され、保護されているのだ。

 ―――絃神島は、その為に造られた人口都市なのだ。

 住民のほとんどが研究員やその家族、及び氏が認めた特殊能力者だ。

 

 

「―――にしても、この暑いのだけは勘弁してくんねえかな、くそっ」

 

 

 古城がパーカーのフードを目深にに被って、陽射しに精いっぱいの抵抗をしながら悪態をつく。

 俺たちが歩いているのは先ほどのファミレスの近くのショッピングモールだ。

 古城の財布が小学生のお小遣いほどになってしまったため、モノレールを使うわけにもいかず歩いて帰ることにしたのだ。

 

 

「そればっかりはどうしようもないだろ………それよりも」

 

 

「あぁ、やっぱりつけられてるのか」

 

 

 俺たちの15メートルほど後方を、ギターケースを背負った少女が歩いている。先ほどのファミレスを出てからずっとだ。この少女は、彩海学園の制服を着ていた。襟元がリボンということは中等部の生徒だろう。

 

 

「凪の知り合いか?」

 

 

「そうだとしても、なんで俺らをつけてるんだよ」

 

 

 問題はそこだ。俺はつけられるような原因がまったく浮かばない。

 

 

「………()()ね」

 

 

 思い当たることが一つあった。

 

 

「ん、どうした悠斗?」

 

 

「ちょっと試してみたいことがあるからいったん分かれるぞ」

 

 

「あ、ちょ、待てよ」

 

 

 古城の静止の声を聞かに近くの店へ入る。

 古城もゲームセンターに入っていったようだ。

 俺の予想が正しければ………やはり少女は古城の方を追っていった。

 思い当たったこととは―――

 

 

「だ……第四真祖っ‼」

 

 

 その声が聞こえて目を向けると少女と古城がゲームセンターの入り口で対面していた。

 そう、思い当たったのは古城が第四真祖ということだ。もしかしたら程度だったのだが、まさか当たるとは…。

 適当な言い訳で逃げてきた古城と合流しようと店を出ると、先ほどの少女がナンパされているのが見えた。

 そして次の瞬間、二人組の一人が少女のスカートをめくったと思えば、吹き飛ばされたのだ。

 

(なにしてんだよ。しかも相手はD種じゃないか)

 

 D種―――それはさまざまな血族に分けられた吸血鬼の中でも、特に欧州に多く見られる”忘却の戦王(ロストウォ―ロード)”を真祖とする者たちを指す。

 

 

「調子に乗るなよ―――灼蹄(しゃくてい)!その女を………っ!」

 

 

 俺は一瞬で距離を詰めると男の背後から紅いメスを持った手をまわし、首筋に当て男の動きを封じた。

 

 

「今何しようとした?まさかとは思うが眷獣を出そうとかしてないよな?」

 

 

 低い声で汗をだらだら流している男に問いかける。

 

 

「あ、あたりまえだろ。まま、街なかで眷獣なんか……」

 

 

「……だよな!ならさっさと行け、もう中学生なんてナンパするなよ」

 

 

 その言葉を聞くと俺は声を明るくし男を放す。

 もちろん注意も忘れず。

 

 

「わ、わかりました」

 

 

 男が仲間を連れて離れていくところを見送ると、少女の方を見る。

 少女の手にはいつの間にか近代的な形状の銀の槍が握られていた。

 

 

「どうして邪魔したんですか?」

 

 

「確かに街なかで眷獣を出して殺されてもしょうがないかもしれないが、あれはどうみても過剰防衛だったろ、それに目の前で人が死ぬのなんて御免だ」

 

 

「それはそうですが………」

 

 

「あと、あれは君から手を出したように見えたんだが?」

 

 

「そんなことは―――」

 

 

 反論しようとして、少女は途中で黙り込んだ。どうやら気づいたようだ。 

 

 

「そ、そんなことよりあなたは、いったい」

 

 

 槍はしまったようだが、警戒した表情で訊いてくる。

 今は力を少し使ったせいで目も赤くなってる。吸血鬼という事はバレてしまっただろう。

 

 

「ああ、俺か?俺はただの高校生の桐原悠斗だ。暁古城の友達のな。古城に用があったんだろ」

 

 

「ど、どうしてそれを!」

 

 

「まあ、それしか心当たりがないからな」

 

 

 実際は感だったんだが。

 すると古城が駆け寄ってきた。

 

 

「悠斗、大丈夫か」

 

 

「あぁ、古城か」

 

 

「まったく、パンツ見られたくらいで獣人吹き飛ばすとかマジでびびったわ」

 

 

「おい、古城!」

 

 

「……見たんですか」

 

 

 少女が蔑むような目で古城を睨んでいた。

 

 

「あ、いや、その…」

 

 

「…いやらしい」

 

 

 そういって少女は去っていった。

 相変わらず古城は地雷を踏むのがうまいらしい。

 

 

「………」

 

 

「はやく、凪のお使い済ませて帰るぞ」

 

 

「…おう。ん、これは……」

 

 

 特区警備隊(アイランド・ガード)がすぐに魔力を感知して来るので、帰ろうとしたときに古城が足者に落ちているものに気が付いた。

 どうやらさっきの少女の財布のようだ。

 カードホルダーには学生証が入っており、そこにはぎこちなく笑う少女の顔写真と姫柊雪菜―――という名前が彫り込まれていた。

 




試験が終わって、やっとゆっくり書くことができました!

これからも週1更新ですが、頑張ります!
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