東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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戦力強化計画(前編)

並行世界より来訪した3人の男女・・・イチカ、セシリア、シャルロット。

彼らの助けにより、同じく並行世界より召喚されたチフユを退けた一夏達は、一先ず異変の実行犯である少名針妙丸も含めて命蓮寺へと戻り、外界より帰還した千冬と弾、幻想郷の代表者として紫を交えて3人の事情聴取を行い、チフユの正体とイチカ達の素性と目的を聞かされていた。

 

「並行世界と世界を司る神、ね・・・前者は存在自体は知っていたけど、それに干渉する事は境界を操る私の能力を以ってしても不可能だった。

後者は、少なくとも私の観測出来る範囲ではその存在を感知出来なかったわ」

 

「知らなくて当然だ。この世界には俺たちの世界と違って世界そのものを管理する神は存在しない。

言わば世界そのものが独立独歩している状態だからな。

俺達がここに辿り着いたのも、奴(チフユ)の辿った道を追ってきたが故。

本来ならば干渉不可の領域だからな」

 

「もはや異変を超えて災害級の事例ね・・・」

 

一通りの事情を聞き終えた後、紫が目を細めながら呟く。

その表情には彼女にしては珍しく困惑した様子が見て取れる。

同時にその声色には並行世界をも巻き込み厄災を撒き散らす篠ノ之束に対する怒りと苛立ちも滲ませている。

 

「つまり、アンタ達は並行世界の一夏達で、私達を襲ったあの女はアンタ達と同じ世界から来た千冬な訳?」

 

「ま、そう言う事だ」

 

訝しげに尋ねる霊夢にイチカは不適な笑みを浮かべながら頷く。

 

「並行世界のボク達・・・?」

 

「しかも、二人揃ってイチカさんの、妻・・・///」

 

「ふ、二人同時にって、どんなハーレムだよ・・・」

 

並行世界の自分達の関係に当事者のシャルロットとセシリアは思わず赤面し、一夏は千冬が居る手前バツが悪そうに目を逸らす。

ちなみにこの時、咲夜・妖夢・早苗に睨まれたのはまた別の話。

 

「驚きって意味じゃ、ボク達の方も同じだけどね。

こっちじゃボクのお母さんは生きてて、しかもお父さんと縒りを戻してるなんてさ」

 

お互い様と言うように肩を竦める並行世界のシャルロット。

 

「俺も事前に調べた時は正直言って驚いたな。妖怪やら魔法やらファンタジーな力がある上に、こっちじゃ弾も操縦者かよ?」

 

「ま、まぁな。そっちじゃISは一夏以外の男は乗れないままなのか?」

 

「ああ。正確には俺と俺の弟と仲間の転生者だけだ。少なくとも、俺達があの世界で生きていた内はな。

俺達が死んだ後は研究やら新型パワードスーツの開発も進んだらしいがな」

 

弾の質問にイチカは一瞬懐かしむような表情を浮かべる。

かつて自分達の属していた世界で共に戦い、最後は革命を果たしその世界の独裁者となった自分達を討ち取ってくれた弟と仲間達。

彼らは天寿を全うした後、新たな世界に生まれ変わり、今も平穏に暮らしているはずだ。

 

「私達もそっちの世界に存在していたのか?」

 

「ええ。流石に幻想郷の方や炎魔の方々は知りませんが、他の方々はよく知ってますわよ。

ただ、性格は私達の世界とは少々異なりますが。

例えば、箒さんはBL好きの腐女子でしたわ」

 

箒からの問いに答えたのは並行世界のセシリアだ。

 

「わ、私がBL好きの腐女子?・・・想像出来んな」

 

「うふふ。同じ人間でも、世界や環境が変われば変わるものですわ。

ところで・・・」

 

箒の反応を見て並行世界のセシリアは愉快そうに笑うが、不意に刀奈を訝しむように見る。

 

「な、何よ?」

 

「更識さん、ですわよね?髪型が変わってて印象が・・・。

外跳ねのショートだったような・・・」

 

「髪切っただけでそんなに訝しむ事!?」

 

今更ながら反省の為とはいえ、髪をベリーショートにした事を刀奈は少し後悔した。

 

「だが、一番驚いたのは・・・やはりアンタだな。織斑千冬」

 

「・・・」

 

イチカが目を細めながら見つめるこの世界の千冬。

先の戦闘の様子を機体の映像記録で見てから、彼女はずっと黙ったまま俯いていた。

 

「そちらの世界の私は、罪を犯し続けたんだな・・・。

実の弟達や教え子も裏切って束を選んで、そしてお前達に・・・」

 

「ああ。俺がこの手で殺した。尤も、奴がそれで罪を悔いる事は無かった。お前らが見た通りな」

 

「っ・・・!」

 

イチカの言葉に千冬は辛そうな表情で唇を噛む。

 

「千冬姉・・・。おい、もう止めろよ!

同じ千冬姉でも、そっちはそっちだ!この世界の千冬姉とは違う!」

 

「クク・・・その通りだ」

 

そんな(恋人)の辛そうな様子に一夏が声を上げてイチカを睨む。

その様子にイチカは笑みを浮かべて肯定の意を示す。

 

「さっきセシリアが言った通り世界が違えばそれはもう別人も同然。

織斑一夏(俺達)だってそうさ。

俺がセシリアとシャルロットを共に伴侶とした事に驚いていたように、俺からすればこの世界の俺が実姉である織斑千冬と禁断の関係だなんて、天地がひっくり返る程の驚きだった。

織斑千冬、アンタが並行世界の自分(あの愚者)を見てどう思ったかは知らん。

自分のIF(もしも)の姿と思い反面教師にするも、徹底的に拒絶するも良し。

幸い考える時間はあるんだ。せいぜい好きに考えると良い」

 

「あ、ああ。(・・・励まして、くれてるのか?)」

 

イチカからの思わぬ激励にも似た言葉に、千冬はただ呆然とする他なかった。

 

「それはともかく、アンタ達やそっち側の千冬の事は何て呼べば良いのよ?

いつまでも並行世界の一夏、とかじゃ面倒でしょ?」

 

話を切り替えるように霊夢が口を挟む。

それに対してイチカは少し思案して口を開いた。

 

「そうだな、俺の事は機体から取ってノワールとでも呼べ」

 

「ボクはシャルルで良いよ。

男装してた頃の名前だし、それなら呼びやすいでしょ?」

 

「では私は本名を略してセシルとでもお呼びくださいな」

 

「それと、俺達が追っている並行世界の織斑千冬・・・奴の呼称もはイニシャルで『C』とでも呼べば良い」

 

「分かったわ。

それで、アナタ達はそのCとやらを倒すまで私達に協力してくれる。と言う事で良いのかしら?」

 

「ああ、その通りだ。応じてくれるなら、戦力強化と特訓に打ってつけの環境と方法を提供する事を約束しよう」

 

「・・・了解したわ。一先ず、アナタ達との共同戦線を認めましょう」

 

最後に河城重工を代表し、八雲紫が締め括り、イチカ改めノワールと握手を交わす。

 

並行世界より来訪した3人、

織斑一夏改めノワール

シャルロット・デュノア改めシャルル

セシリア・オルコット改めセシル

 

この時を以て世界を越えた同盟が締結されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、針妙丸?アンタと一緒にいた正邪とかいう天邪鬼、どこ言ったのよ?」

 

「わ、分かんない。何か、アナタ達が敵対してるっていう篠ノ之束の名前を聞いたら、血相変えてどっか行っちゃって・・・」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

一方、篠ノ之束のラボでは・・・

 

「クソォォォォッッ!!!!

よくも・・・よくも・・・二度も私をコケにするなど、あの屑がぁぁっ!!」

 

「フン、息巻いていた割にその様か?滑稽だな」

 

「黙れ!貴様から殺してやるぞ!!」

 

「はいはい、そこまで。

ちーちゃん、キレたいのは分かるけどあの連中が出てくるのは予想外だったよ。もう少し力蓄えた方が良さそうだね。

彗ちゃんも、偉そうな事言ってるけど、アイツらに勝つのは今のままじゃ難しいよ」

 

「グッ・・・!」

 

「・・・フン!」

 

一触即発となるCと彗を魔力の圧で黙らせ、束は思案する。

並行世界からCを召喚したまでは良かった。戦力的には申し分の無い存在なのは間違いなかった。

だが、そこに余計なおまけが追いかけて来たのは正直予想外だった。

 

(世界を司る神に、その眷属・・・それが向こうの世界のいっくん達か。選ぶ世界間違えたかもなぁ〜〜。

でも、まぁ良いや。このちーちゃんを強化してやれば対抗馬にはなるし。データを取って無人機にフィードバックすれば戦力増強に繋がる。

そして後は・・・)

 

クロエから送られてきた『捨て駒』候補の資料に目を向けて束はニヤリと笑う。

 

(このガキを使えば、良い嫌がらせになるよ。さーて、どう組み込んでやろうかな?)

 

束が見上げた先には巨大な機械の塊がそこに鎮座していた・・・。




今後、アストレイ側のキャラへの呼称は、

一夏→ノワール
セシリア→セシル
シャルロット→シャルル
千冬→C

となります。
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