東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜   作:神無鴇人

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決死の反撃

「ちーちゃん、何のつもり?」

 

「一夏は……一夏は、絶対にやらせない!!」

 

唇を震わせ、目から涙を流しながらも、千冬は束の肩口に叩き込んだ魔力の大剣を両手でしっかりと握り、彼女を睨み威嚇する。

一方、僅かながら肩に剣が食い込み、そこから血を滲ませながらもダメージのまるで無い様子で、束は千冬を冷ややかな視線で見詰める。

 

「へぇ、意外だなぁ?きっちり心折ってやったつもりなのに、こんなに早く復活しちゃうなんて」

 

「 ……今でも怖いさ。

怖くて怖くて仕方ないし、膝だって震えてる。

だけど!一夏を失ってしまうのはそれ以上に怖いんだ!

それに比べればお前なんか……お前なんかぁぁ!! 」

 

破れかぶれも同然に再び大剣を振るうが、束はISを纏った腕でそれを引き剥がし、そのまま千冬の身体を引き寄せ、彼女の首を鷲掴み、そのまま砂浜に叩きつけ、その首を締め上げる。

 

「かっ…ぁ……!?」

 

ふざけた口調ながら、それに反して鬼気迫る表情を浮かべ、束は千冬の首にかけた手の力を強めていく。

それに伴い、徐々に千冬の顔から血の気が失せ始め、首下からミシミシと嫌な音が漏れ出す。

 

「じゃあね、裏切り者」

 

そして、束の手が千冬の首をへし折ろうとしたその刹那……

 

「させるかあっ!」

 

不意に背後から聞こえた叫びに、思わず振り返った束の視界に入った者がいた。

先程、束に叩きのめされ、気絶していた筈の妖夢だ。

 

「喰らええぇっ!!」

 

接近と同時に妖夢は白楼弐型を振り上げ束に切りかかる。

 

「チッ!」

 

思わぬ伏兵に束は舌打ちし、振り下ろされた刀を空いている方の手で防ぎ、そのまま振り払うと共に白楼弐型をへし折った。

 

「っ……今だ!」

 

だが、妖夢は突然笑みを浮かべる。

そして次の瞬間、脚を振り上げてから一気に振り下ろし、砂浜目掛けて蹴りを放ち、束の顔面に向けて砂を蹴り上げた!

 

「うわっ!?……め、目が……!!」

 

砂の目潰しを喰らい、束は思わず千冬の首にかけた手を離してしまい、目を押さえてたじろぐ。

 

「咲夜!」

 

「任せて!」

 

そして妖夢の合図と共に、今度は咲夜が飛び出すように突撃し、束の背後に組み付いた。

 

「どうやら、一夏を倒して強化を解除していたみたいね?好都合だわ!!」

 

そして、千冬が付けた肩の傷口にクロック(腕部ビームガン)を密着させ、その引き金を引いた!!

 

「グゥぅぅぅっ!!」

 

零距離から放たれた熱線(ビーム)の連射が傷口を焼き、そして抉る。

さしもの防御力を誇る束であってもこればかりは苦悶の声を上げ、表情(かお)を歪めた。

 

「二人とも、今の内に!」

 

そして、その隙を見逃さず、妖夢は傷ついた一夏と千冬を抱きかかえ、咲夜と共に束と距離を取ることに成功したのだった。

 

「くっ……どいつもコイツも、どうしてこんなにしぶといのかなぁ?本気で腹が立つんだけど……!!」

 

目にかけられた砂を払い落とし、不快感を露にしながら妖夢たちを睨みつける束。

ダメージを受けても尚、自分達を圧倒して余りある力を感じさせるその姿に、妖夢達は戦慄を覚えながら倒れている一夏を守るように前に出て身構える。

 

「ち、千冬姉……妖、夢……咲夜……」

 

「一夏さん!?今喋ったら傷に」

 

倒れた身体を僅かに起こし、一夏は自分を守る三人に声をかける。

息も絶え絶えながら、その表情には強い意志と覚悟を浮かべいる。

 

「聞いてくれ。このまま奴と戦っても勝ち目は無い。

だけど、一つだけとっておきの手があるんだ。最後の賭けだ……時間を稼いでくれ」

 

「そのとっておきとやらで、勝てるの?」

 

「分からない。けど、ダメージを与えるには、もうこれしかない!」

!」

 

咲夜からの問いに一夏は僅かに表情を曇らせつつもはっきりと返答する。

その姿を確認した三人は、それぞれ顔を見合わせて頷き合い、束の方へと向き直った。

 

「良いわ。どの道、三人掛りでも勝ち目なんて見えないんだから」

 

「それなら、大好きな人(一夏さん)の賭けに乗るのも一興」

 

「信じているぞ、一夏。

咲夜、妖夢……行くぞ!!」

 

それぞれの決意を胸に、三人は一斉に束へと飛び掛ったのだった。

 

「皆、頼む。……俺の身体、持ってくれよ!」

 

突撃する三人を見届けた後、一夏は静かに魔力を右手に集中させていく……。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「姉御、今です!」

 

「良い位置です!」

 

「美鈴さん、下って!」

 

「わわっ!?すいません、助かりました」

 

ラウラが敵機の動きを止め、椛が止めを刺す。

また一方で弾がスタークラッシュで美鈴を防御する。

駆けつけた武術部メンバーの的確な支援と援護は確かな成果を挙げ、無人機はその数を瞬く間に減らしていった。

 

「くっ……!まさか、魔力も使えない者達が加わっただけで、こんなにも戦力が減るとは……こうなったら!」

 

腹立たしげに自身の能力を駆使して他の者と距離を取りながら、墜ちていく無人機を眺め、クロエはISスーツの腕部に備え付けられた通信機を起動する。

 

「ノエル、予定が狂いました。

こうなった以上、仕方ありません。追加の無人機をあるだけ出してください!」

 

通信機越しにノエルに命令を飛ばし、クロエは再び能力を発動し、自身の存在を隠して姿を消し、細心の注意を払って敵陣に近付き、他者の視線からも死角となる位置を見定め、ビーム砲を構える。

今度の狙いはレミリア達幻想郷のメンバーではない。

突然横槍を入れて邪魔をしてくれた武術部のメンバーだ。

 

(どんな小さい戦力でも、今回のような大きなイレギュラーになる可能性がある者は早々に始末する。少しでも敵の戦力を削るために!!)

 

視界に映るスターライトmk-Ⅲ(レーザーライフル)で必死に援護射撃を行う蒼い機体を身に纏った少女……セシリアへと狙いを定めて、引き金に指をかける。

 

「能力、解除!消えr『ひゃあああ〜〜〜!ど、どいてぇ〜〜〜〜!』え!?」

』え! ?」

 

突然聞こえてきた場違い且つ間抜けな悲鳴に思わず引き金に掛けた指を止め、振り返ったクロエの視線の先に映ったもの……それは、ラファールを纏った山田真耶が自分に向かって一直線に突っ込んでくる姿だった。

 

「ちょ、待っ……ギャン! ?」

 

「へぶっ!?」

 

突然の出来事に対応できず、クロエは真耶と正面衝突し、セシリアを撃つ筈だったビームは見当違いの方向へと飛んでいってしまった。

 

「や、山田先生?どうしてココに……J

 

自身の危機を思わぬ形で救った真耶の存在を確認し、セシリアは彼女に駆け寄る。

 

「な、何でって、追いかけて来たに決まってるじゃ『動くな!』···ひっ!?」

 

何とか体勢を立て直して起き上がろうとした真耶。

しかし、それを憤怒の表情を浮かべたクロエが止め、真耶の頭とセシリアの身体にアサルトライフルをそれぞれ突きつける。

 

「さっきから次々と邪魔をして、もう許さな『そこまでだ』……な、何?体が動かない!?」

 

怒りのまま二人を撃とうとしたクロエの身体が突如として凍りついたかのように止まった。

そして、その直後に背後に一人の人物が現れる。

 

「ったく やっと合流できたぜ」

 

「あ、アナタは警備員の ?」

 

「き、貫樣は……グアアッ! !」

 

SWを纏い、逆立った茶髪を靡かせながら現れたその男、田所アキラが姿を現し、動きを封じられたクロエの背後から肘打ちを叩き込んだ!

 

「アキラ、やっと来おったか!」

「隊長、遅すぎですよ」

 

「まったくだ。どこで油売ってたのよ?」

 

「うるせぇな。無人機(ガラクタ)共に邪魔されてたんだよ」

 

騒ぎに気づたマミゾウと炎魔の隊員二人がアキラの下に近付き、それを見てアキラは肩をすくめつつ、倒れているクロエに近付き、彼女の身体を押さえつける。

 

(くっ……な、何とか、逃げなければ)

 

「おっと、妙な真似はさせないぜ」

 

能力栈区使して逃れようとするクロエに対し、アキラの目が光を放ち、彼女の脳波に干渉し、盛大にかき乱す。

 

「うっっっっ! ?き、気持ち悪い…………一体、私に何をした?」

 

脳波をかき乱され、込み上げる不快感がクロエの精神を大きなダメージを与え、能力を封じる。

 

「能力は封じさせてもらったぜ。大人しくしな!」

 

(ま、まだだ!まだ無人機はある!何とか隙を作って逃げれば……『どぉりゃぁぁぁぁっ!!』……!?)

 

突然上空から聞こえた雄叫びにクロエは視線を空へと向ける。

目に入ったのは三人の男女の姿、

周囲の無人機を徒手空拳の格闘を以って次々に豪快且つ華麗に撃墜していく屈強な肉体を持つ男、高原日勝。

同じく拳を振るいその豪腕で無人機を次々とぶち抜いて額から一本の角を生やした女、星熊勇儀。

そして、両の手に大量の破壊された無人機の残骸を握り、それらを砂浜へとたたきつけるのは、巨大な体躯(能力による巨大化)を誇る二本角の少女、伊吹萃香。

河城重工より派遣された肉弾戦最強の三人だ。

 

「ったく、ようやく到着か。アキラの奴、一人で先に行きやがって。

つーか、殆ど敵倒した後か?」

 

「残ってても、向こうの(かしら)以外はこの鉄屑だけどね」

 

「ココに来るまでに増援も潰しちまったし、後は残りの片付けと、親玉の相手だけだ」

 

三人それぞれがぼやくように呟きながら、三人はアキラの下へと降下し、組み伏せられているクロエを囲むような形で砂浜へと着地した。

 

「勝負ありだ。お前はこのまま拘束させてもらうぞ」

 

「くっ !」

 

宣告にも近いアキラの言葉にクロエは苦虫を噛み潰したように俯く。

しかし……

 

「クク……私を拘束して、束様への人質にでもする気ですか?

そんなもの無意味だ。どんな手を使おうとも賁様ら如きが束様に敵う訳が無い……グッ! ?」

 

「黙ってろ」

 

不気味な笑みを浮かべながらこちらを醜みつけるクロエをアキラは押さえつける力を強めて黙らせる。

 

「ぐ……くっ……あと、もう一つ。私が貴様なんかの思い通りになると思うな!」

 

その言葉を発した時、クロエの身体に異変が起こった。

両腕が突然発光し、その直後にクロエの両腕が眩い閃光を発しながら爆ぜた(・・・)のだ。

 

「な、何だ!?」

 

両腕に埋め込まれた小型の閃光爆弾。

その不意打ちにも近い捨て身の策に、アキラは驚愕から一瞬クロエを抑えていたカを一瞬緩めてしまう。

 

「今だ!」

 

「し、しまった!!」

 

その一瞬をクロエは見逃さず、能力を発動して姿を肖し、逃げ果せたのだった。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「はぁ……飛び出した生徒を追いかけるためとはいえ、私も勝手に飛び出したちゃったし、

これ、下手したらクビかも……」

 

「クビになったら重工(ウチ)で雇ってやるわよ」

 

余談だが、真耶とレミリアの間でそんな会話があったのは、また別の話である。

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

「奇術『エターナルミーク』!!」

 

「絶技『《真》零落白夜!!』」

 

満身創痍の状態の中、咲夜の手から放たれる繰り出される大量の投げナイフ。

そして、それに続く千冬の剣擊。

同時に襲い掛かるそれらを前にしても束は怯まず、魔力だけで全て弾き飛ばしてしまう。

 

「何で解んないのかなぁ?お前らの力じゃ不意打ちしても束さんに軽い怪我を負わせるのがやっとなの。

小さいナイフ3本でダイヤの鎧を壊せる?無理だよね?

お前らがやってるのはそういう事だってのがなんで解らないのかなぁ!?」

 

「グゥッ!」

 

「ガハッ!」

 

魔力弾を用いて千冬と咲夜を吹っ飛ばし、そのまま砂浜へと叩き付けながら、いい加減うんざりした様子で千冬の方へ近付き、容赦なくその顔を踏みつける。

 

「ぐ、ぁぁぁぁっ!!」

 

苦悶の声を上げる千冬。

それに対して束は、まったくの無表情で徐々に力を強めていく。

 

「この、やめろぉーーーっ!!」

 

だが、それ阻止せんと妖夢が残された二本の刀、楼観弐型と妖を手に束に襲い掛かる。

 

「邪魔!」

 

だが、束はこれを払い飛ばし、そのまま勢いに乗せて妖夢を一本背負いで砂浜へと叩き付け、そこから更に、倒れている妖夢の両肩を魔力のレーザーで撃ち抜いた!

 

「あ゛ぁぁっぁぁーーーっっ!!!!」

 

「うるさいなぁ……黙ってろ半人が!!」

 

「ギャアァァァァッッ!!!!」

 

絶叫が周囲に木霊する。

苦しみもがく妖夢を見下ろす束は、不快そう表情(かお)を歪め、更に両脚を容赦なく踏み潰す!

 

「本当、妖怪とか幽霊もだけど、コイツらってどうしてこんなに見ててムカつくのかなぁ?

まぁ、良いや。真面目に相手してやるのも飽きてきたし……」

 

最早動く事さえ儘ならなくなった三人を眺め、束はニヤリと不気味に笑い、やがて静かに上空へと浮かび上がっていく。

 

「元が付くとはいえ親友のちーちゃんに最大限の敬意を込めて、

最後に束さんのスペル、見せてあげるよ」

 

口調を少し前までのふざけた態度に戻し、ニヤニヤと気味の悪い、しかし満面の笑みを浮かべて束は右手を上空に掲げ、その掌に魔力を集中させる。

 

「災厄『カラミティ・スパーク』!!」

 

スペルの宣言と共に溢れ出す禍々しき魔力の奔流。

これまでのただ破壊力に満ちただけそれとは違う

例えるならば、それは純粋な悪意……目の前の憎悪の対象を苦痛を与え、悶え苦しみながら散リ逝く様を見たいと言わんばかリの漆黒(クロ)よりも黒い意志の表れ。

それが今、千冬へと向けられているのだ。

 

「さよなら、ちーちゃん。

大好きだったよ、裏切られるまでだけどね」

 

そして、束の手から巨大な魔力がレーザー状となって放たれた、その刹那……

 

「やらせねぇ! !」

「!?……いっくん!?」

 

その斜線上に一夏は現れ、束の放ったレーザーの前に立ちふさがった。

 

「粉砕『デスジェノサイド』!!」

 

迫りくる光に向かって放たれる一夏のファイナルスペル。

束のスペルと形の似た魔力の光線が、束のスペルとぶつかり合った。

 

「何のつもりかな、いっくん。

いっくんのパワーじゃ束さんには敵わないってさっき証明したよねぇ!!」

 

突如割って入った一夏に一瞬面食らった束だが、すくに余裕を取り戻す。

束の言葉通り、二人のパワー差は歴然、魔力同士の押し合いになったは良いが徐々に束の魔力が一夏の魔力を押し、千冬諸共一夏を飲み込むのは時間の問題だった。

 

「あぁ、そうだな。

だから こうするんだ!!」

 

叫ぶと同時に、一夏は自身のこめかみに空いている左手の人差し指と中指を充てがい、そして……。

 

「俺自身のリミッターを打ち砕く!!」「!?」

 

一夏の言葉に束は目を見開いて驚愕する。

一般的に、人間の身体は脳がリミッターがけられており、平常時は肉体の持つ力の30%程度の力しか出せず。

もし、出せたとしても肉体がその力の負担に追いつけず、身体に大きなダメージを負ってしまうとされている。

それを一夏は自身の能力を用いて強制的に外し、自身の肉体の持つ全ての力を一気に引き出したのだ。

 

(ただでさえいっくんは魔力の過剰補充で身体に負荷が掛かってるのに、それに加えて脳内リミッターを解除……そんな、下手すれば死にかねない真似を!?)

 

「ウオォォォォォォォォォッッ!!!!」

 

驚愕する束、その隙を逃すまいとする一夏は、雄叫びにも似た叫び声を上げ、デスジェノサイド(魔力レーザー)の光は爆発的に勢いを増し、束の魔力を一気に押し返した!

 

「そ、そんな……私が押し負け……」

 

束が言い終わるよりも早く、一夏の魔力は瞬く間にの魔力を押し込み、束の眼前に迫る!!

 

「これで、最後だぁぁーーーーっ!!!!」

 

そして、光は束を飲み込んだ…………。




次回予告

天災・篠ノ之束との戦いは一先ずの終結を迎えた。
しかし、それは幻想郷を揺るがす真の異変の序曲でしかなかった。

全ての力を使い果たし、倒れる一夏。
己の無力さを噛み締める千冬。

そして、幻想郷の存在を知った弾達は、ある一つの決意をするに至る。

次回、臨海学校編最終話。

『決意〜強くなるために〜』

束「あ、はは……すごい、凄いよいっくん」

千冬「今のままじゃダメだ。今のままじゃ、勝てない……」

セシリア「これは、私なりのケジメですわ」
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