もし沢田綱吉が不良だったなら。   作:青クマ

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大喧嘩

「うっは、今日も勝った勝った……ヒック」

 

 並盛をご機嫌で歩くナイスガイがいた。もちろん俺である。

 なぜこまでご機嫌かと言うと、その存在を意識してからさらに精度が上がった超直感を使った台選びによりパチンコでいつにない大勝ちをしたからだ。

 勝率は元々高かったが最近は勝利の質にまで磨きがかかっている。この能力をフルに活用すればきっと宝くじを当てる事も不可能ではないのかもしれない。

 宝くじを当てる自分を想像すれば今朝にユニから死ぬ気弾という変な弾丸を無理矢理押し付けられたイライラも忘れられるってもんだ。

 未来が希望に溢れ過ぎてて勝利の美酒が美味い。勝った分の金全部使って飲んじまったぜ。

 

 帰路の途中に並中を通るとボールをバットで打つ小気味良い音がする。

 陽はもうすっかり沈みあたりは暗くなっているのにだ。

 超直感が様子を見に行けと告げた。行けば守護者が増える、とそんな予感がしている。

 グラウンドまで行けば野球部の部員が一人で練習していた。名前は思い出せないがあれは確か同じクラスの奴だった筈だ。

 高いフェンスを助走をつけて一息で乗り越える。

 

「うおっ!……誰だ?」

 

 着地した時の足が地面に擦れる音で気づかれた。ノックをしていたのによく気づけたものだ。これはいい耳をしていると言うよりも……。

 

「よう、えっと同じクラスの山内君だよな?」

 

「沢田か、つか俺の名前覚えてられてないのな。……山本だよ」

 

「ちょっとしたジョークだよ。ちゃんと覚えてる、山本剛だろ」

 

「俺は武なのな、剛は親父の名前」

 

「あぁ、うん。思い出した思い出しましたー。んな目で見るなよホントにホント本当だって。……で、お前何やってんの?」

 

「見ての通り野球の練習。最近スランプ気味でさ」

 

「わり、質問変えるわ。そんな適当に練習して上手くなるって本当に思ってんのか?」

 

「……どういう事だよ」

 

 うしっ!切れた、天然野郎に煽りが効くか不安だったが大正解!

 

「次の質問な。山本さ、何で俺が来たのに気づけたん?」

 

「そりゃあ後ろから音が聞こえたら普通気づくと思うのな」

 

「俺はボールを打つタイミングで着地したのにか、そうじゃなくても集中してたら周りの音なんて聞こえねーよなぁ」

 

 実は嘘八百だ。インパクトの瞬間に合わせるなんて面倒臭かったのでしていない。だが切れてる人間の思考は疎かになる、記憶なんて不確かなモノは一瞬でも信じた嘘で改竄されさらに信じ込むだろう。

 

「確かに集中出来てなかったかもしれねぇ、だけど沢田は何が言いたいんだよ」

 

「もっと親しげにツナって呼んでくれてもいーんだぜ、友達だろ?」

 

「……たいした用が無いんならまだ練習するから帰ってほしいのな」

 

「そう焦んなって。んじゃ本題って事で一つ予言しようか。……そのまま無茶な練習続けると身体壊すぞ」

 

 そう言って少し山本を小突いてやる。

 

「痛ッ!」

 

 よろけて転んだ山本にキッと睨まれた。

 

「おー怖い怖い。でもそんな強く小突いてないんだよなコレが。つまりそんだけ身体に負担がかかってるって事なんよ。まぁスランプなんて精神的なモンだから練習なんてしてないで休んだら?」

 

「……そんなに軽く言うんじゃねぇよ、沢田に何がわかる」

 

「全然わかんないけど?野球なんぞに必死になってる奴の気持ちなんか。つかボロボロになるくらいなら野球辞めたらいいのに」

 

「ふっざけんじゃねぇ!俺には野球しかねぇんだよ、野球辞めるくらいなら死んだ方がマシだ!」

 

 俺に飛びかかろうと山本が立ち上がろうとしている。これだけ意思が強ければ大丈夫かな?

 

「んじゃ、死ね」

 

 ズガン!なんて簡素な音じゃなかったが確かに鳴った。

 ここ一週間で二度目の発砲だ。射出された弾丸は山本の額に吸い込まれていく。

 装填されていた弾は死ぬ気弾、ユニ曰く撃たれた時に後悔した内容を死ぬ気で行うらしい。一歩間違えば死人が出る危険な賭けだが超直感はゴーサインを出したので多分大丈夫だろう。

 

 山本が倒れた。

 胸元の服が盛り上がり裂ける。

 

復活(リ・ボーン)!死ぬ気で身体を休めるのな!」

 

 脱皮するかの如く立ち上がった山本はもう一度座って寝始める。

 ふと見れば山本はパンイチ。

 全方位に怒りが湧き始めた。

 山本は俺をほっといて寝るし、ユニに言われた通りに自分に死ぬ気弾を使えば俺がパンイチだった事実にも腹が立つ。

 山本はその場に放置。あわよくば捕まれ。

 俺は無視されるのと情けない姿を晒すのが大嫌いだ。

 

 

 

 家に着くなり扉を勢いよく開けた。

 

「おい、ユニ!テメェ俺をパンイチにさせようとしやがったな!」

 

 ユニは食べていた饅頭を喉に詰まらせたらしく噎せている。ざまぁ。

 

「けほっけほっ。ち、違いますよ。ツナ君が使っていたらぱ、パンイチにはならなかった筈です!」

 

「人によって効果が変わってたまるかよ。現に山本は並中のグラウンドでパンイチで寝てるじゃねぇか!」

 

「それは死ぬ気状態に慣れてなかったからですよ!もっと深い死ぬ気モードに到達すらば服も裂けません!」

 

 ああ言えばこう言う、小癪な小娘だ。

 今日こそは許さんぞ。超直感を使って徹底的に詰ってやる。

 

「胡散臭ぇんだよ。だいたい深い死ぬ気モードって何だよ、催眠術みたいに言ってんじゃねぇ!山本のアレも本当は催眠術じゃねぇのか!?」

 

「なっ、催眠術なんかと一緒にしないでくださいよ。しかも死ぬ気弾はツナ君用の物です。勝手に山本君に撃たないでください!」

 

「勝手って言うならそっちも勝手に人に催眠弾押し付けんじゃねぇ!あと酒!煙草も!勝手に捨てんなよ!!」

 

「死ぬ気弾は最近のマフィアの嗜みですよ!あと未成年はお酒も煙草も法律で禁止です!」

 

「嗜みなら脱法してこそだろ!酒を飲む、煙草も吸う、パチンコも打つ、全部やってこそのマフィアだ!」

 

「飲む打つ吸うにそんな情熱をかけるマフィアなんて情けなくて私涙が出ますよ!」

 

「うるせぇぇぇぇ!!お前も飲んだらいいんだよ!」

 

「わっ、ちょ待っ、私ホントにお酒は飲めなっ、うむっ?!……。…………きゅう」

 

 ユニが顔を赤くして倒れた。

 一口しか飲んでねーだろ。マジか、コイツ。

 僅かに赤く上気した顔と目尻に溜まる涙。

 エロ可愛い、じゃなくて。

 俺多分酔ってたわ。パチ屋出た辺りから記憶が曖昧だもん。火照っていた体が急速に冷めてきた。

 ユニを見れば厳しくし過ぎてごめんなさいとかうわ言のように呟いている。

 今更遅いが正直申し訳ない事をしたと思っている。全部俺の我が儘だし、結局の所悪いの俺だし。

 そういえばユニは初対面の俺に凄く良くしてくれてるのを思い出した。人に避けられていたばかりだったから甘えていたのかもしれない。

 

 のろのろと立ち上がった。

 水道からコップに水を汲んできてユニにゆっくりと飲ませる。気分も多少はマシになってくれればいいのだが。

 水を飲ませ終えた後はベッドまで運び布団を掛けてやった。

 

「……いつもごめんな、あとありがとう」

 

 まだ酔いが残っていたから言えた言葉だ。こんな恥ずかしい事、素面だったら絶対言えなかった。

 

「……あの」

 

 いつの間にか正気に戻っていたユニに声をかけられた。

 

「どうした」

 

「私こそ、いつも厳しくしてごめんなさい。それにありがとうございます」

 

「その言葉はもう聞かせてもらったよ、つかさっきの聞いてたのか」

 

「はい、しっかりと。……忘れませんからね」

 

「……好きにしろ」

 

「ふふっ、そうします。あと……大好きですよ。言葉にするのって恥ずかしいのに今なら言えます。お酒の力も良いものですね」

 

「……気持ちは、何となく知ってた」

 

「超直感ですか?」

 

「ああ、あの時ばかりは使ったのを後悔した。……会って間もないのに俺のどこが好きなんだ?」

 

「うーん、それ…は、まだ……恥ず、かしいので……内緒、です……」

 

 途切れ途切れに言った後はスースーと寝息を立てて寝ていた。

 未だに新しいベッドを買っていないため同じ布団に入る。最初は意識していた事も当たり前のようになっていた。

 

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