ならそんな物を投稿するなって話なんですけどね。
中学校生活に於いて生徒が盛り上がる行事というのは主に二つある。一つは文化祭、もう一つは体育祭だ。それは我が並盛中も例外ではなかった。
季節は夏、燦々と輝く太陽の日差しは未だ厳しい今日この頃である。
俺はイライラしていた。
普段なら俺が登校しようとすると、他の生徒は怯え道を譲り悠々と登校できるのだが最近はそうもいかなくなっているからだ。体育祭が近づくにつれて皆浮かれ周りが見えなくなっている。体育祭とは普段勉強出来ない奴の活躍の場であり、いいところを異性に見せれば甘酸っぱい学校生活が送れるチャンスでもある。
中学生の青春にかける熱は凄まじいものであり全校生徒での総量は太陽の如き熱だ。そしてそんな熱に冒された馬鹿が隣にも一人。
「ツナ君!ツナ君は体育祭何の競技に出ますか?」
お察しの通りユニだ。
「……どれにも出ない」
「折角の体育祭なんだから出なきゃダメですよ!」
「いや、出たらどうせ勝つから楽しくないし」
そう、どうせ勝つ。恭弥ならまだしも他の生徒と競ったら俺が負ける訳ないのだ。俺が体力測定を行ったとしよう、そうすれば結果は全て学校記録が出る。自惚れる訳ではないが基礎的な身体能力に隔絶とした差がある時点で勝負が成り立たない。
確かに勝利は好きだ。だがドーベルマンがチワワを虐めて得た勝利になんの価値があるのか。もちろん奮戦したチワワ側からしたらそれは価値の有る一戦かもしれないがチワワの視点からの話でありドーベルマンからしたらただの作業なのだ。
勝負は同じ土俵の相手と行ってこそ意味がある。勝利は同じ土俵の相手から奪ってこそ意味がある。
つまり何が言いたいかっていうと作業ゲーは嫌でおじゃるってこと。
「わかりませんよ、ツナ君でも勝てないかもしれないじゃないですか」
「俺の身体能力で誰に負けるんだよ」
まず恭弥は体育祭には出ない。全身にダメージを負ったので療養するのと俺に勝つために修行をするからだ。次に俺に勝てる可能性があるのは獄ちゃん、山本、了平だが三人合わせればまだしも二人は同じクラスで敵対するのは了平しかいない。一人なら今の俺には確実に勝てないだろう。
「ツナ君は負けますよ、予言します」
「随分と自信有り気に言うな。……賭けるか?」
「ええ、構いませんよ。私は予言を外した事が無いですからね、ツナ君が勝ったら何でも言う事を聞きましょう」
予言を外した事が無い、ねぇ。
「じゃあ俺が負けたら何でも言う事を聞こう。競技は?」
「うーん、棒倒しがいいです!やっぱり目玉競技ですからね、そこしかないでしょう!」
「……はぁ、わかったよ」
溜め息を一つ吐いて了承した。
言動や表情と裏腹に恭弥と喧嘩してから身体の調子は常に最高潮を保っている。
負ける筈がない。
文字通りの一騎当千、それを行える自信がある。
今の獄ちゃんと喧嘩したら開幕ワンパンだし、了平と試合したら最初のアッパーで沈めれる、恭弥と戦っても小細工無しに勝てるだろう。
もう一度言う、負ける筈がない。
体育祭当日、棒倒しが始まる三十分前に学校に到着した。俺の所属するA組を探す。聞けば了平もA組で総大将をしているとか。
「すぅーー、……極限必勝!!」
すぐに見つかった。姿こそ大勢の人に囲まれて見えないが馬鹿でかい声がビリビリと響いてくる。
「……邪魔だ、どけ」
低い声で一声かけて了平の周りの生徒を退かした。
「むっ、沢田か。お前も棒倒しに参加してくれるのか?」
「そうだ、それと俺が総大将をやる」
「だがオレがやると既に決まって……」
「強い奴が大将だ、ボクシングでもそうだろ?」
「うむ、極限にそうだな!勝つために総大将を譲ろう!」
「それでいい」
次は恭弥にメールをした。
棒倒しをA組対残りのチームに変えるようにと。
十分も経たないうちにピンポンパンポーン、と間抜けな音がした。
「えー、急遽、協議の結果として今年の棒倒しはA組対B・C合同チームとなりました。繰り返します……」
流石の恭弥だ、仕事が早い。
たがこれでも俺が勝つと超直感は告げる。
ユニは予言を外した事が無いと言っていたがここから如何にして俺を負かすつもりなのだろうか。
体育祭最終競技の棒倒しがついに始まった。
急な総大将の変更と多勢に無勢な相手チームでA組の士気は著しく低い。
例外はあそこの三人。
「極限に勝つぞー!」
「絶対に十代目を勝たせます!」
「やるからには勝とうぜ」
立てられた棒に登る。その分太陽が近くなりヂリヂリと焼けるような感覚さえ覚えた。
戦力差は単純計算ではおよそ二倍だが、上から見ると更に差が大きく見えた。多い分はおそらくユニのジッリョネロファミリーの人間だろう。合同チームの総大将にいたっては金髪の白人で隠す気すらなく思わず苦笑が漏れた。
これでも負けない。勝つのは俺だ。
空砲が開始を報せると同時に金髪の所まで飛び移る。総大将が地面に落ちなければ負けないという競技の性質上、棒倒しは俺にとって個人競技と変わらない。
金髪を蹴り空中で腹に追撃をした。蹴り落とされた金髪は地上の人間を土台に地面には着かない。
おーけー、土台削りゲームか。
金髪を追い棒から降りると合同チームが群がってきた。死角から足を掴もうと腕が伸びてくるのを超直感で察知し逆に足場にする。
馴染む、超直感が馴染む。今までは攻撃が来るのを察せられるだけだったが、今はどの方向に何が有るのかが正確に判る。まるで頭の中に立体マップが存在するかのようだ。
身体も実によく動く。スイスの時計の様に精密に動き、思考に身体が置いていかれる事もない。水の中から陸に上がったかの様に、自らを縛る鎖から解き放たれたかの様に常にイメージ通りの動作を再現し続ける。
うじゃうじゃと沸いてくる足場を踏みつけながら更に金髪に攻撃する。満身創痍の金髪と倒れ伏しだいぶ数を減らした足場たち。
次で最後だ。
延髄直撃コースで首を掌で打って気絶させ、人の少ない方向に蹴り飛ばした。
吹き飛んだ金髪は地面に落下し、
ーー数瞬遅れて喧しいブザーが鳴る。
俺の勝ちだ。結局殆ど消耗していなかったA組の歓声が沸いた。
「ツナ君、お疲れ様です!」
A組の観客席に戻るなりユニに労われた。
「宣言通り俺が勝ったぞ。予言、外したな」
「うーん、外したって言うより元から予言は使っていませんでしたからね」
「使っていなかった……?じゃあ何がしたかったんだよ」
「ふふっ、体育祭楽しめましたか?」
予想だにしていなかった言葉に思わず虚を突かれ目が点になった後にユニの言葉を理解した。
あー、くそっ、いい女だ。素直にそう思った。ここまでされれば認めるしかないだろう、尤も絶対に口には出さないが。
…………楽しかったよ。
「来年は一緒に二人三脚やりましょうね!」
こちらの心情を知ってか知らずか、いつもより更ににこやかに笑いながら言う。
「……覚えてたらな」
「あ、それと賭けのお願いは何にしますか?」
「ランボもどうせ応援に来てるんだろ?」
「はいっ、向こうの日陰でジュース飲んでますよ」
ユニの指差す方向に視線をやればランボはサングラスかけジュースを飲んでいた。ジュースを持っていない方の手には菓子を抱えている。あ、目が合った。こちらに駆け寄ってくる。
「ならこのまま三人で飯でも行こうぜ、それでいい」
「なら私、新しく出来たラーメン屋さんに行きたいです!」
「わかったからそんなに押すなっての」
「ツナ格好良かったもんね!」
駆け寄って来たランボが飛びついて来た。
「当たり前だろ、俺を誰だと思ってるんだ」
「ツナだもんね!」
「……ラーメン食いに行くぞ」
脚にしがみ付いていたランボを引っ掴み肩に乗せた。肩の上で暴れるのは勘弁してほしかった。