朝一番、川神学園の校庭には全校生徒が集められていた。
緊急の全校朝会であり、今朝方ニュースにて一斉放送された「武士道プラン」である
清楚、義経、弁慶、与一の紹介がおもな通達事項である。
「ごほん、それじゃあみんなも気になっている武士道プランのメンツを紹介するぞい」
学園長の爺さんの言葉にみんなが色めき立つ。
「まずは三年のSクラスに入ることになる葉桜清楚じゃ」
爺さんの声に促され、少し緊張気味に清楚が前へでて挨拶をする。
「葉桜清楚です。偉人のクローンだなんて紹介されて、一体どんな人物なんだろうって思ってるかもしれませんが、
皆さんが思われたとおり、葉桜清楚なんていう英雄はいません。本当は私も他のみんなみたいに教えて貰うはずだったんですが―」
そこで一端言葉を区切ると、全体を見回すようにし、俺を見つけると微笑んでみせた。
自意識過剰でも、何でもなく、そっと口元を、クロウ君と俺の名前に形作って居る所から見ても、
其れが裏付けられる。
「いま、俺に向かって微笑んだ」
島津やヨンパチが鼻息を上げている。
どうやら、殆どの人間にはこの行為は、ただ話にためをもたせただけに見えたようだ。
数人から跳んでくる好奇の視線を覗けばだ。
「二十歳になるまで教えて貰うのはやめる事にしました。なので実際はだれのクローンなのかはわかりません。でも、読書が好きだから清少納言とかだったら名前も似てるし嬉しいかなって思ってます。皆さんよろしく御願いします」
清楚のその言葉に男性だけでなく、女生徒までが黄色い声を上げる。
こう言うのもカリスマっていうのかねぇ。
「はいはーい、全生徒を代表して質問しまーす」
ヨンパチが手を上げて騒ぐが、梅先生に即鎮圧されて無かったことにされた。
「続いて、二年じゃ。三人ともS組じゃな」
爺さんの声に続き、義経と弁慶が壇上に上がる。
与一は……、出るわけがないよな。
「自分は、源義経という。性別に関しては気にしないでくれ。清楚、先輩もさっき行っていたが、
義経は確かに源義経だが、それでもこうしてここにる自分はやはり、過去の義経とは別なんだと思う」
と義経が挨拶すれば、その様子をご満悦に見守り、挨拶がしっかりできたことを喜ぶ義経を愛でて、
弁慶がマイクの前に立つ。
「おなじく、一応弁慶らしいです。言いたいことはもう先の二人に言われちゃったし、特にいうこともないんですけど、ひとつよろしく御願いします」
そう言い残すと、ふと手元の瓢箪から杯に中身を注ぎ、くいっと一気に煽った。
「って、おーい弁慶が酒のんでるぞー」
気だるげな雰囲気に飲まれそうになっていたクリスが突っ込みを入れる。
非常識さではクリスの所も大して変わらぬきがするが、それでも本人にとってみれば
見過ごせないわるいこういなんだろう。
「あぁ、大丈夫です。これは川神水ですので」
ノンアルコールだから昼間から飲んでも大丈夫。
そんな風に言って昼間からそれを頼み、会社で立場があやうくなる事件が発生していたりするが、
弁慶も例に漏れず、やはり問題とされた。
「皆も知っている通り、内の学園は、内申を捨てる、多額の寄付をするなどの対価を払うことによって服装の自由化など多少校則に目をつぶることもある」
その通り、現にS組の不死川やクリスの姉貴分であるマルギッテ・エーベルバッハ、九鬼英雄、F組のキャップなどである。
もちろん、前者が多額の寄付金を行い、後者が内申点を捨てるという行為を対価に黙認されている。
公平や不公平なんていう言葉でなく、欲しければ勝ち取れという学長がよく言っている言葉のように、認められたければそれなりの行動を起こさなければいけないのは学生といってもおなじである。
「今回の弁慶の件だが、確かに川神水はノンアルコールだが、それでも学び舎である学園での飲食は褒められたことではない。よって本人と九鬼家との間で話し合った結果、テストの結果が5位以内に入らなければ即退学でも構わないということになった。みなもそのつもりでいてくれ」
とまぁ、こんなこと言ってはいるが実際のところ弁慶が5位以下になったところで即刻退学ということはありえないと思う。
これだけ大々的に打ち出した武士道プランのクローンが学び舎で酩酊状態になり退学となれば学園、九鬼共にイメージダウンは間逃れない。
謹慎や、罰はうけるだろうが学園自体にはいることが許されるだろうと俺は見ている。
九鬼は有言実行をするかもしれないが、学園はそうはいかない。
如何にに武神川神鉄心と言えど、世論の声は無視できないのである。
もっとも、九鬼の人間たちがそんなことを許すはずがないし、学園で大した罰を受けなくても、九鬼によって矯正が行われるはずだ。
大人の事情だとか、そんな子供じみたことを言うつもりはないが結局の所、盛大に全校生徒と九鬼を巻き込んだ茶番っぽく見えるのは俺だけだろうか。
「さて、次に那須与一でませい」
学園長の声の後に、スピーカーからなにやら揉めるような声が聞こえてくる。
『……った、分かったから。やめてくれ、姉御』
『結局認めるんだったら最初からそう言いなよ。そら、主を困らせた罰だ」
『う、うおおおお。姉御おおおおお』
そんな絶叫とともに、数メートル上空から後ろ手に縄で縛られた薄い色の髪をした男が落ちてきた。
落下の衝撃からルー先生がマイクスタンドを守っているが、与一を守らずにそれを優先するあたり、どうなのだろうか。
いや、与一はそもそも武士道プランの人間だからこの程度は大丈夫であると見ているんだろうけれど。
「糞、めちゃくちゃ痛え。……あー、那須与一だ。まぁ、見知りおいてくれ」
そういってシニカルに苦笑すると、壇上の与一が何者かに引きずり降ろされた。
まぁ、十中八九弁慶だろう。
「さて、二年に転入する三人を紹介し終えた所で、次は一年への転入生、を紹介するところなんじゃが、その前に連絡することがある」
武士道プラン以外にも転入生がいたらしく一年生へ転入生がいたらしい。
英雄のクローンと一緒に全校生徒へ紹介されてしまうとはなんとも不運な転校生もいたものである。
否が応でも、印象は少なくなるし、なにより全校生徒に武士道プランのみなよりもあとで紹介されるとか、自分だったら勘弁願いたいものである。
「2年F組 九条蔵人は本日より武士道プランの4人の面倒役となる。武士道プランに関することで、付近に九鬼の従者部隊が居ない場合は彼に申し出るように」
学園長の言葉で、自分の周囲にいた人間が一気に退き周囲に空間ができる。
モーゼの十戒という話の中に、追っ手から逃げるために神に祈り、海を割いて対岸へ逃げるという場面があるが、きっとこんな感じに綺麗にわかれたんだろうなあ。
俺は全校生徒からの視線を一身に受けながら、今後の日常生活が慌ただしくなることを悟った。
壇上では学園長が悪戯を成功させたことにニヤついており、その脇には申し訳なさそうな清楚、義経、与一と、川神水を煽りつつニヤついてコチラを見ている弁慶がいる。
さよなら、俺の穏やかな学園生活。
少しずつリハビリが進んできて文を書く感覚が戻り始めた。10くらいからもっとテンポ上げてきます。