黒い聖域   作:安岡久遠

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第五巻 聖域の闇 秘宝(1)

 天真宗が所有する枕木山に重大な秘密の臭いを嗅ぎ取った森岡洋介は、まず景山律堂にその旨を訊ねたが、これといった目ぼしい答えは返ってこなかった。次いで、榊原壮太郎に調査を依頼したが、さしもの彼でも総本山は勝手が違うようで、期待した成果は得られなかった。

 末弟である栄相の、己の血脈者による法統継承という宗門への反逆にも等しい野望を見抜いた宗祖栄真大聖人は、遺言によって血脈者による後継を否定しただけでなく、栄相及び彼の子孫が妙顕山に子院を建立することすらも認めなかった。

 そこで栄相は、妙顕山の西方に位置する枕木山に小さな庵を構えた。交通や連絡手段の困難な時代である。在野に下り、総本山の動向が掴み難くなってしまえば、総本山内に足掛かりを築くことさえ困難になる、と危惧してのことだった。

 栄相の子孫は捲土重来を期して慎ましやかな草庵生活を続け、ついに室町時代に入り、護山である高尾山に瑞真寺を建立することに成功した。

 だが、天真宗所有の山とはいえ、総本山どころか護山でもない枕木山の草庵である。瑞真寺建立の代償として、時代の流れと共に世間はもちろんのこと、総本山からも忘れ去られる運命を辿ったのである。

 景山と榊原から目ぼしい情報が得られなかった森岡は、次の手立てとして、京都祇園のお茶屋吉力に大河内法悦を招待した。京都大本山傳法寺の元貫主だった高僧である。

 大河内は別格大本山法国寺貫主の座を巡って、影の法主と目されるほどの実力者久田帝玄と総本山総務・藤井清堂の実弟清慶との板挟みになり、苦渋の末に傳法寺の貫主の座を辞していた。森岡の依頼を受けた永井宗務総長の因果を含める巧妙な示唆によってである。

 したがって大河内にとって森岡は、いわば不倶戴天の敵と言えなくもなかったが、予想に反して快く面談に応じてくれた。

 

 お茶屋吉力は古都京都でも一、二を争う老舗の名店で、当然のことながら一見はお断りの店である。いかに著名人あっても社会的地位が高い者でも、店が認めた人物からの紹介がなければ敷居を跨ぐことはできない。

 大阪梅田の幸苑と同様、森岡は大学時代に神村の相伴で何度も訪れていた。神村の有力な支援者の中に京都の老舗人形店の社長がいたのだが、彼の饗応がこの吉力だった関係で、森岡は女将の和泉貴子(いずみたかこ)とも昵懇だった。

 女将は戦国時代、宇治会合衆の一人だった和泉家の子孫である。会合衆とは、自治都市宇治の運営にあたって指導的役割を果たした合議制の機関のことで、簡単に言えば京都でも名立たる豪商の一人だったということである。

「過日は、大変ご迷惑をお掛けしました」

 森岡は開口一番、あらためて謝罪した。

「そのことはもう良い」

 大河内は磊落に笑い返した。

「また、本日はこのような場にお呼び立て致しまして申し訳けございません」

 品行方正な大河内が、華美な饗応を嫌っていることを森岡は知っていた。

 いや構わない、と大河内は顔の前で手を振った。

「私も神村上人や御前様の懐刀には興味があった。それに傳法寺の貫主を辞したことだし、観世音寺はすでに愚息が継いでいるから、いまさら世間を憚ることもない」

 大河内はそう言うと苦笑いを浮かべた。

「ただ、隠居の身で夜の外出は肩身が狭いがの」

 観世音寺というのは大河内家所有の単立寺院である。

「重ね重ね申し訳ありません」

 森岡は再度頭を下げた。大河内は皮肉を言うような人間ではないとわかっているが、神村のためとはいえ、彼を今の境遇に追い遣ったことに対する良心の呵責があった。

「冗談じゃよ、森岡君。それどころか、愚息を無量会の仲間に入れて貰ったお蔭で、子々孫々の生計に憂いが無くなったと感謝している」

 大河内は身を正して礼を言った。

 森岡は岩清水哲弦が取り組んでいた京都堀川にある無縁仏移設に絡んで、別格大本山法国寺の裏山に大規模な霊園事業を展開しようとしていた。その霊園を供養管理する四ヶ寺からなる無量会に観世音寺を参入させたのである。最終的には、一寺院当たり、年間一千万円以上の供養料が見込まれる大規模事業であった。

「霊園開発は順調に進んでおりますので、早ければ来年から多少の供養料が入ると思います。後は順次拡大して行く予定ですのでご安心下さい」

「君のことだ。間違いはないと安心している。私も身軽になったことだし、のんびりと余生を送ることに決めたよ」

 大河内は晴れ晴れとした顔つきで言った。

「さて、世間がそのように放ってくれましょうか。まだまだお上人の出番はあるように思えますが」

 森岡は追従したのではない。なんとなく、この先大河内に頼る場面がありそうな予感が働いていた。

「ふふふ……」

 大河内は声もなく笑うと、

「それはそうと、今日の用件は何かな」

 と本題に入れと促した。

「実は、お上人にお尋ねしたいことがございまして」

「それは珍しい。神村上人の知らないことを私が知っているとも思えないが」

「それが、枕木山についてなのです」

「枕木山? 総本山の」

 はい、と森岡は期待の視線を大河内を向けた。

 大河内は、長らく宗門の大学である立国大学で教鞭を取っていた。専攻は宗教史である。当然のことながら、その中心は天真宗ということになる。また、在野の僧侶にしては珍しく、妙顕修行堂で三度の荒行を満行している。つまり、総本山について博学である可能性が高いと推察できた。

「枕木山について何が知りたいのかな」

「何か秘伝といいますか、秘密のようなことはないでしょうか」

「秘密のう」

 大河内は腕組みをしてしばらく考え込んだ後、

「中腹に古い史跡があるが、そのことかな」

 と探るような目で森岡を見た。

 森岡が黙って首を縦に振ると、大河内の面が強張った。

「下手をすれば瑞真寺を敵に回すことになるが」

「すでに敵対行為を受けています」

 森岡は坂根の拉致監禁行為を打ち明けた。

「なんと……」

 大河内は苦渋の声を絞り出すと、

「門主は何か良からぬことを考えているのかのう」

 と呟いた。

「良からぬ、とはどういうことでしょうか」

「それは、まだ何とも言えない。あくまでも私の憶測に過ぎないのだ。それに、私も宗門の一員だからの、余計なことを言って波風を立てたくはない」

 大河内もまた、久田帝玄と同様に言葉を濁した。二人の高僧が一様に口を閉ざす瑞真寺というのは、余程不可侵の聖域らしいと森岡は心に刻んだ。

「わかりました。それに付きましてはこれ以上お訊ねしません。ですが、枕木山には何かあるのですね」

「これも確かかどうか不明だが……」

 大河内は前置きすると、

「ずいぶんと昔になるが、鉱脈が眠っているという資料を見たことがある」

「鉱脈……何の」

「そこまではわからない」

「では、その資料はどこに」

「立国大学の宗門歴史研究室なのだが、あくまでも戦国時代の、とある宗務総長が残した備忘録に過ぎないのだ」

「いえ。それだけお伺いできれば十分です。後は私の方で調べてみます」

 森岡は明るい声で言うと、アタッシュケースから風呂敷包みを取り出した。

「これは本日の御礼です」

「何を言っているのだ。礼を貰うようなことはしていない」

 大河内は強く固辞した。その外形から札束だと誤解したのかもしれない。

「現金ではありません」

「現金でなくとも礼を貰う筋合いではない」

「いいえ。お上人が傳法寺の貫主の座を辞して下さったお蔭で、御前様が法国寺の貫主になれたのです。無量会の件だけでは不足だと思っておりました」

 森岡は大河内法悦自身への謝礼は済んでいないと言った。

「しかし……」

 と尚も遠慮する大河内に、

「とにかく、一目ご覧になって下さい」

 と、森岡は風呂敷の結び目を解いた。

「おお」

 大河内は、思わず小さな歓声を上げ、手に取って舐めまわすように見た。

「これは見事なものじゃなあ」

 森岡は、相心寺貫主の一色魁嶺を籠絡するために製作させた般若心経の経典十式を持参していた。

 一色貫主が神村への協力を翻意したため、使途目的を失っていたものである。いかに芸術的な逸品でも、門外漢の森岡にとっては猫に小判である。向後の神村のために役立てようと取って置いた三十式のうち、十式を大河内に進呈することにしたのだ。

「私の手にあるより、お上人に貰って頂いた方が遥かに経典の値打ちが上がるというものです」

「本当に良いのかね」

 はい、と言って森岡は再び経典を風呂敷で包み、アタッシュケースに直すと、そのまま大河内に手渡した。

「では、難しい話はこれくらいにして、後は京都の夜を楽しみましょう。と申しましても、お上人はお嫌いでしょうが」

 森岡は遠慮がちに言った。

「いやいや、実は私もそれほど嫌いではない」

「そうなのですか」

「大本山の貫主だったからの。誹謗中傷されないように己を律してしたのだよ。隠居の身であれば、世間の目を気にすることもない」

「そうと知っていれば、舞妓や芸妓を呼びましたのに。お嫌いだと思い、華美なことは控えました」

「よいよい。そこまでされると恐縮する」

 それでは、と森岡は隣室に控えている蒲生亮太を呼んだ。

「女将にな、料理を頼むと伝えてくれ。それと彼女は来ているか」

「すでにいらっしゃっていますが……」

 蒲生にしては珍しく歯切れが悪い。

「なんや、不都合なことでもあるんか」

「いえ。片桐さんには同伴者がいらっしゃるようなので……」

 やはり煮え切らない態度を取った。

「同伴者やと……何者や」

「わかりません」

 蒲生が首を振った。

「男か女か」

「若い女性です」

 ふむ、と瞬時思案した森岡は、

「まあ、ええわ。瞳を呼ん来てくれ」

 と命じた。

 森岡は舞妓や芸妓を控えた代わりに、瞳を呼び出していた。吉力の後、彼女が経営するクラブ菊乃へ繰り出そうと考えていたからだ。

 蒲生が去って間もなく、瞳と見知らぬ若い女性が部屋に入って来た。

 森岡は思わず息を呑んだ。

 年の頃は十七、八歳か、京都言葉で「はんなり」という表現がぴったりの美女であった。はんなりとは「華なり」が転じて発音されるようになった言葉で、『華やかでありながら気取りがなく、上品さと気品を兼ね備えてるさま』を表現している。山尾茜や児玉桜子、沈美玉とも面立ちは違うが、間違いなく類い稀な美貌の持ち主であった。

 大河内も唖然として目を丸くしているが、森岡とは少し意味合いが違っていた。

「洋ちゃん、じゃなかった、洋介、話は済んだの」

 瞳が気軽に声を掛けた。

「洋ちゃん?」

 若い女性の反応に、森岡は顔を顰めた。

「こら、お客様を前に気安い言葉使いをするな」

「お上人さん、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」

 森岡の怒ったような口調も、どこ吹く風といった素振りで瞳は大河内に挨拶した。

「ママも元気そうじゃな」

 なんと、大河内もにこやかに応じるではないか。

 森岡の怒った口が半開きになった。

「ママは大河内上人を存じ上げているのか」

「お店に何度か足をお運びになっていらっしゃるわ」

 大河内の先刻の言葉は、満更嘘でもなかったようだ。どうやら、傳法寺の貫主を辞してからは京都の夜も適当に満喫しているらしい。

「それより、彼女を紹介するわね。鶴乃(つるの)ちゃんです」

 紹介された女性が、ぺこりと頭を下げた。

「やはり、そうだったか。素顔なので、もしやと思っていたが……素顔の鶴乃に会えるとは生涯の吉事じゃな」

 大河内が破願した。だが、森岡は狐に抓まれたような顔つきである。

「もしかして、洋介は鶴ちゃんを知らないの」

「申し訳ないが、全く」

「あら、こんな唐変木が居たんだ」

 瞳が嘆息すると、

「森岡君、君は私を堅物だと思っていたらしいが、私に言わせれば君の方がよほど世間知らずだよ。本当に彼女の名を聞いたことは無いのかい」

 大河内までが呆れ顔になった。

 当の鶴乃は、珍獣でも見るかのように目で森岡を見詰めている。

「彼女はそれほど有名人なのですか」

「鶴乃と言えば、京都、いや日本一の舞妓だよ」

「それだけじゃないわ。私たちの世界では三十年に一人の逸材と、専らの評判よ」

 大河内に続いて瞳も絶賛した。

 片桐瞳は、元は芸妓である。今は身を転じているとはいえ、花柳界に詳しいことには違いがない。

 なるほど、鶴乃の素顔であれば、おしろいを塗って、目を描き、紅を引けば、それは艶やかな絶世の美女の誕生となるであろう、と森岡は想像した。素顔があまりに端正な顔立ち過ぎると、舞妓に変身したとき、却ってきつい面立ちになる。

「本当に森岡君は名前も聞いたことがないか」

 大河内が念を押した。

「……」

「二年前マスコミで取り上げられて以来、有名俳優やら、ミュージシャン、スポーツ選手、政治家、青年実業家など、次から次と浮名を流しているのを知らないなんて……。もっとも、テレビも雑誌もいい加減なもので、みんな向こうが勝手に熱を上げているだけだけどね」

 と、言葉の出ない森岡に瞳が世間に流れている艶聞の裏を明かした。

「この数年、京都は足が遠くなっていましたし、テレビ、しかもバラエティ番組はほとんど観ませんので……」

 森岡は大河内に弁解すると、

「そう言われてみると、耳にしたようなしないような」

 とあやふやに呟いた。

「だけど、どうしてそんな有名人が瞳と一緒なんだ」

「置屋が一緒なのよ。今日洋介から誘いがあったから、久々に柳屋のお女将(かあ)さんに挨拶に行ったら、鶴ちゃんと出会ってね。世間話をしているうち洋介の名前が出たら、彼女が興味を持っちゃって。着いて行くって利かないのよ」

「おいおい、お座敷はどうしたんだい」

「そこですよ、お上人さん。鶴ちゃんは言い出したら利かない子ですから、お女将さんも困っちゃって、急病ということにして全部キャンセルしたのです」

「だったら、こんなところにいて大丈夫なのか」

 吉力は、それこそ舞妓鶴乃の主戦場である。

「洋介、それは大丈夫なの。彼女の素顔を知る客はほとんどいないし、外を歩くときはマスクをするから、バレることはないわ」

「なるほど、そういうことか」

「それより、今日一日分の花代は洋介が払ってね」

「それは構わないが……」

 森岡はあらたてめ鶴乃を見つめた。

「彼女は日本花柳界一のアイドルってことか」

「いややわあ、そないに見つめられると恥ずかしいやおへんか」

 と、鶴乃は初心な少女のように恥じらった。

 

 そこへ、料理が運ばれて来て、女将の貴子が若女将の百華(ももか)も挨拶に訪れた。

「森岡様、ほんにお久しぶりでございます」

「今も話していたのですが、久しく京都に足を運んでいませんでしたので、いや京都自体には何度も足を運んでいたのですが、夜は大阪に戻っていたものですから」

「噂によると、大阪に良い人がいらっしゃるようで」

「良い人ってどなたどすか」

 女将の嫌味の利いた言葉に、鶴乃が反応した。

「あら、鶴ちゃん。気になるの」

「別に……」

 瞳の声にからかいを感じた鶴乃は、ぷいと顔を横に向けた。 

「おお、そうだ。森岡君、供の者をこちらへ呼んだらどうかね。広い座敷だから大人数の多い方が良い」

 まだ幼げの残る鶴乃の仕種に、大河内が微笑みながら言った。

「宜しいのですか」

 遠慮がち言った森岡に、大河内はさらにとんでもないことを口にした。

「吉力(ここ)を見張っている者たちもあのままにしておく気かね」

「ご存知でしたか」

「君が観世音寺に迎えに来てくれたとき、後尾の不審な車に気づいていた」

「それは余計な気をお使いさせました」

 と、森岡は詫びた。

「その筋の者ですが、いつもどうしたものかと困っています」

「その筋って、まさか洋介は命を狙われているの。だったら、警察に通報しないと」

 瞳が泡を食ったように言う。

「ママ、その逆だよ。彼の身辺警護だろう」

「身辺警護って、やはり誰かに狙われているということじゃないですか、お上人さん」

「そうじゃない。ある頼み事を受けたので大事に扱ってくれているのだ」

 森岡は瞳を宥めるように言った。

「頼み事とは、神栄会かな」

 大河内が訊いた。

 観世音寺も参画している法国寺裏山の大規模霊園開発事業に、神栄会傘下の土木会社が関わっていることを知っていた大河内の推量である。

「はあ、いえ」

 森岡は煮え切れない態度を取った。

「違うのか。とするといったい誰から……」

 と言った大河内の目が鋭くなった。

「まさか、蜂矢」

「蜂矢って、神王組の六代目……」

 瞳が茫然と呟く傍らで、女将の和泉貴子が、

「極道者を通すことなど、吉力が暖簾を上げて初めてのことですわ。もっとも幕末の混乱期は、身分などいちいち詮索はしていませんでしたでしょうが」

 と腹を括った様子で言った。

「他ならぬ森岡さんのお連れですから信用いたしましょう。それに、強面にあのように店の前を見張られては客足が遠退いてしまいますわ」

 そう言った女将は、ほほほ……と大らかに笑って見せた。

 さすがに会合衆の末裔は胆が据わっている。

 森岡は蒲生に命じて九頭目ら三人を部屋に引き入れさせた。

 女将は強面と言ったが、それは長年に亘って一流の男たちと接して来た彼女だからこそ看破できるのであって、九頭目を含め他の二人も、その大企業の社員然としたスーツ姿を一見した限りでは、とてものこと極道者とは見えない。目つきはさすがに鋭いが、それとて極道担当の警察官と比較すれば、むしろ柔らかい方である。

 森岡は、峰松から影警護の申し出を受けたとき、人目を憚るためそのような人選を依頼していたのである。

 吉力の女将が三人を招じ入れる決断をしたのも、彼らが一般人と見間違う身形だったからで、もし見るからにその筋とわかる風体であれば、いかに森岡の護衛役だとしても入店は断っていたであろう。

 何事かと、緊張の体で部屋に入った九頭目は、思わぬ展開に戸惑いを見せた。

「場違いでしょうが、この方が貴方も安心でしょう」

「それはそうですが……」

 森岡の言葉にも、落ち着かない様子の九頭目に向かって大胆な問い掛けをしたのは鶴乃だった。

「おたくさんの親分さんは、森岡はんに何をお頼みされたんどすかあ」

 あまりにもあからさまな問いに、驚きの顔になった九頭目は、

「私の口からはちょっと……」

 言えない、と小さく頭を下げた。

「何や、つまらんお人やわあ」

「鶴ちゃん、そないに男はんをいじめたらあきまへん。この九頭目はんというお方はこの先偉ろうなられると見ましたえ」

 咎めるように言った鶴乃を、女将が諌めた。

 幸苑の女将の村雨初枝もそうだが、吉力の女将の眼力も確かであろう。

 だが鶴乃は、

「ほんまに」

 と無頓着な声を上げた。

「鶴乃ちゃん。九頭目さんは、二、三十年後には九代目を張ってはるかもしれん逸材やで」

 森岡が諭すように言った。

「とんでもない。森岡さん、いきなり何を言われるのですか」

 豪胆な九頭目が珍しくも動揺を見せたので、すかさず蒲生が思わぬ言葉を添える。

「九頭目さんの名は公安にリストアップされています」

「公安か。そりゃほんまもんや」

 森岡が複雑な声で言った。

 言わずと知れているが、左翼過激派やスパイの疑いのある外国人と共に、暴力団員も公安の監視対象になっている。むろんのこと、暴力団員全員を監視対象にしているのではなく、現執行部を含め、将来最高幹部となりそうな人物が対象である。

 九頭目がその対象者であるということは、ある意味で警察当局のお墨付きをもらったようなものなのである。もちろん、四六時中監視対象になっているのは限られた人数で、極道者で言えば「釣り上げ」、つまり麻薬や拳銃所持、賭博などの罪状による逮捕予定者か、抗争に発展しそうな組織の幹部が対象になっている。

 神栄会は、神王組切っての武闘派組織であるから、一旦抗争の芽が息吹いたと判断されれば真っ先に当局の監視対象になるが、目立った抗争の無い昨今では、神王組の若頭に就任した寺島龍司と、若頭の峰松重一の二人ぐらいである。

 それでも森岡が複雑な声を上げたのは、警護役の九頭目が公安にリストアップされているということは、何かの拍子に自身との繋がりも当局に把握されているというになるからだった。

 蒲生は森岡の声からその心中を察した。

「ですが、公安のマークからは外されているようです」

「ほう。それはまた何でや」

「それは、社長の方がご存知のはずです」

 蒲生が森岡に謎掛けをした。

 数瞬考え込んだ森岡は、

――伊能さんか。

 と思い当っていたが、口には出さなかった。伊能剛史の警察庁時代の同期には、公安部の課長がいた。何らかの交換条件を提示し、上手く話を付けたに違いない。

「どうやら、警察幹部にも知り合いがいるようだの」

 大河内の言葉に、軽く会釈した森岡は、

「ともあれ、警察当局も貴方の将来性を認めているということですよ、九頭目さん」

 と持ち上げたが、

「おだてられて舞い上がる年ではありません」

 九頭目は早くも冷静に戻っていた。

 

 事実、森岡洋介は九頭目九代目の可能性は低くないとみていた。

 野島真一と同級生だった九頭目弘毅は、森岡より一歳年下の三十五歳で、高校を中退して極道世界に身を投じた。高校は大阪でも有名な進学校で、彼の成績であれば帝都大学への進学も可能であった。家庭に不幸が相次ぎ、人生に絶望した彼は、いわばやけくそで極道になった。

 元来が文武両道の優秀な男である。すぐさま頭角を現した九頭目は、上部団体である神栄会の峰松の目に留まり、二年の下積みを経てから、四代目の弦巻一人(つるまきかずと)の許で本家修行を積んだ。

 九頭目の本家修行は五年にも及んだのだが、これは実に異例なことであった。

 本家、つまり神王組の組長の許には、毎年全国の傘下組織から選りすぐりの組員が二十名前後招集されるが、彼らの任期は通常二年と定められている。それを倍の二期四年を上回る五年も務めたということは、よほど当代に気に入られたということになる。この時点で将来を保証されたと言っても過言ではなかった。

 というのも、九頭目が修行を積んだ弦巻一人こそ「弦一(つるいち)」との異名を取り、神王組内から畏敬の念を集めた影の伝説の極道だからである。

 世間的には、全国制覇を成し遂げた三代目の田原政道が伝説の大親分として知られているが、実際にその陣頭指揮のほとんどを仕切ったのは、神栄会の初代会長にして三代目神王組の若頭だった弦巻である。

 田原の弦巻への信頼は絶大で、重要案件は皆の意見が出揃った後、必ず弦巻に意向を求め、仮にそれが小数派の意見だったとしても、彼の考えに異を唱えなかったと言われている。そこから「鶴の一声」ならぬ「弦の一声」と崇められ、略して「弦一」と言われるようになった。

 神王組の全国制覇は、この弦巻が服役中に動き出した。

 黎明期ともいえる関西制覇を弦巻不在の中で成し遂げたのは、田原の舎弟だった金刃正造である。金刃は大阪でも歴史のある博徒組織の親分で、その名から「浪速の鬼刃(きば)」という異名を持つほどの極道だったが、田原と会った瞬間、その度量の大きさに惚れ、その場で舎弟となった。

 知る人ぞ知る大阪屈指の極道の田原帰順により、関西一円は目立った抗争もなく神王組の傘下になった。

 ところが、大功労者の金刃が麻薬所持により収監されてしまうという不測の事態が起きてしまった。関西を手に入れた田原にとっては、北陸、中部、中国、四国、九州、東海、東北、北海道、そして本丸ともいうべき関東進出への切り札と考えていた金刃の離脱は大きな痛手だった。

 その穴を埋めたのが、金刃の収監と入れ違うように出所した弦巻であり、その下で獅子奮迅の働きをしたのが、当時神栄会の若頭補佐だった寺島龍司と、行動隊長だった峰松重一である。したがって、二人は最後の抗争と言われた九州戦争での罪でそれぞれ五年と八年の服役経験がある。映画「仁義なき抗争」で有名な広島抗争から約二十年後のことである。

 いずれにせよ、弦巻一人のような生粋の大物極道から認められた九頭目である。九代目の可能性は大いにあると言えた。

「しかしなんだな、彼を警護に付けるぐらいだから、森岡君は神王組にとって最重要人物ということだな」

「お上人さんはそう仰いますが、いったい何を依頼されたのやら」

 瞳が怒ったように口調で言った。

「あくまでも合法の事業だから心配するな」

「あっちも事業、こっちも事業って、身体は大丈夫なの」

「何のことだ」

「松尾会長とも共同事業を始めるようね」

「なぜ知っている」

 森岡は驚き目で瞳を見た。

「飯盛会長から聞いたのよ」

 飯盛とは画期的なセラミック技術を実用化した京洛セラミックの創業者飯盛和彦 である。現在は日本経済連盟会会長の要職も務めている。

「会長も店に来られるのか」

「誰かさんのお蔭でね」

「俺は何もしていないよ。第一、飯盛会長とは面識がない」

「洋介は面識が無くても、飯盛会長は御前様の護山会に入会されたらしいの。そのお二人がご一緒にお店に来られたときに、洋介の話になったのよ。飯盛会長が松尾会長と盟友なのは周知の事実だし、松尾会長は神村先生を通じて御前様とも誼を通じておられるの。なので、御前様から松尾会長が得意満面で洋介のことを話しておられたとお聞きになって、是非自分も会ってみたいと飯盛会長が仰ったの」

「なるほど、思わぬところで繋がるものだな」

 森岡は、この世の巡り合わせの不可思議さに感心して見せた。

「全く他人事なんだから……」

 瞳は嫌味を言うと、

「それで、松尾会長とは何をするつもりなの」

 実は……と森岡は榊原壮太郎の榊原商店、福地正勝の味一番を含めた共同事業の全容を話した。福地正勝が拉致監禁された事件を神栄会が解決してくれたことも付け加えた。

「榊原さんに見込まれたのも驚きだが、あの味一番もなあ」

 大河内が嘆息した。

「福地さんは、かつて岳父だったお方です」

 森岡は、榊原と交誼を結ぶことになった経緯と、亡妻である奈津美との馴れ初めも話した。

「なるほど。話を聞いてみれば、全ては神村上人のお導きなのだな。君が上人のために命懸けなのが良くわかった」

 大河内が得心顔で肯いた。

「とはいえ、縁を繋いで下さったのは神村上人でも、それを太い絆にしたのは森岡さんご自身ですわ。奈津美さんが亡くなって縁は切れたはずなのに、それでも森岡さんに会社を継いで欲しい思われる福地さんや、親身になって支援して下さる榊原さん。なまじのことではありませんよ」

 女将の和泉貴子が感心するように言い、

「おまけに世界の松尾正之助まで虜にするなんて、なんて人なの」

 瞳も呆れ顔で同調した。

「森岡さんって、面白い人なんやなあ」

 鶴乃がにやりと笑った。

 だがこのとき、森岡の視線は若女将の百華に向いていて、鶴乃の小悪魔的な瞳の輝きを見逃してしまっていた。この何気ない一言は、鶴乃の胸中に湧いたある思惑の発露だったのだが、むろん森岡が知る由もない。

「何やら百華ちゃんは統万が気になるようだね」

 部屋に入って来たときから、しきりに足立統万に視線を送っている百華を冷やかすように言った。

「いけずやわあ。統万さんと言われるのですか、何やら森岡さんと顔立ちが似ていると思っただけです」

 百華は顔を赤らめて言った。

「これは失礼しました。二人の紹介がまだでしたね」

 と、森岡は皆に、元警察官の蒲生亮太と祖父の代から付き合いのある足立家の長男統万を紹介した。

「それで蒲生さんは公安のことを持ち出されたのね」

「ただの警察官やないで。首相の警護をしていた元SPや」

「それじゃあ、まさに呉越同舟じゃない」

 瞳は蒲生と九頭目らを交互に見た。

「まあ、そういうことやな」

 森岡はそう言うと、

「それはそうと、百華ちゃん、俺と統万が似ているのは当然なんや。何と言っても俺たちは血が繋がっているのやからな」

 えー、と皆が驚きの声を上げた。

 中でも、

「社長、血が繋がっているとはどういうことですか」

 統万本人が一番驚いていた。

「万吉爺さんや万亀男おじさんから何も聞いていないのか」

 はい、と統万は神妙に肯いた。

「そうか、だったら俺が話をして良いかどうかわからんが、実は俺の祖父ちゃんとお前のアキ祖母(ばあ)さんとは異母兄妹なんや。せやから、俺の親父と万亀男おじさんは従兄弟、俺とお前は又従兄弟ということになる。ぎりぎりだが六親等の親族には違いない」

「そうだったのですか。しかし、社長のお祖父(じい)様と私の祖母が異母兄妹というはどういう経緯なのですか」

 うん、それやが、と森岡が話し出す。

「俺のひいばあさん(曾祖母)は、洋吾郎祖父さんを生んだ後の肥立ちが悪く、数ヶ月後に亡くなってしまったんや。ひいひい祖父さん(高祖父)は、婿養子だったひい祖父さん(曾祖父)、つまりお前のひい祖父さんにもなるが、まだ若い身空で乳飲み子を抱えさせ、灘屋に縛っておくのは忍びないと、何某かの金を渡して解放したんやな。ひい祖父さんは、その金を元手に境港で事業を始めたというわけや」

「足立興業の前身ですね」

 そうだ、と森岡は肯いた。

「そのひい祖父さんが再婚して生まれたのがアキ婆さんで、万吉爺さんが島根半島の村から婿養子に入ったという経緯や」

「よくわかりました。では、本当に社長と血が繋がっているのですね」

 統万は嬉しそうに言った。

「百華ちゃん。統万は将来性があるし、恋人もいないようだ。唾を吐けるなら今のうちやで」

「森岡さん、けしかけるようなことは止めて下さい」

 すかさず、女将が釘を刺した。

「女将、お言葉を返すようですが、統万は境港でも有名な足立興業の御曹司ですし、場合によっては、私の事業の一つを任せても良いと考えています。どちらにしても、そこいらの男よりは断然買いの有望株だと思いますよ」

 それでも、不安顔の女将に向かって、

「ご心配なく。統万にはややこいしい事業は任せませんので」

 森岡は、暗に神王組から依頼された事業からは外すと言うと、

「とはいえ、これ以上は止めておこうか」

 自分で話に蓋をした。

「社長は本当に不思議な人ですね」

 誰に言うわけでもない蒲生の呟きに、鶴乃が興味を持った。

「どないなことどすか」

「私は社長と知り合って半年にもなりませんが、その華麗な人脈には驚かされました。榊原さんや福地社長、松尾正之助会長、大物政治家の唐橋大紀に、果ては神王組の六代目まで……」

 蒲生は、そこで一息吐いた。

「しかし、もっとも驚いたのは奈良岡先生とも繋がりがあったことです」

「奈良岡?」

 大河内が敏感に反応した。

「まさか、あの奈良岡先生か」

 その驚きの口調に、彼の脳裡に浮かんだ人物を察した森岡は、はいと肯いた。

「なんだと!」

 さしもの大河内が興奮の声を上げた。

「お上人様、いったいどうされたのです」

 大河内の取り乱しように、女将の和泉貴子が訊いた。

「声も大きくなるというものだ。奈良岡というのは戦前、戦中、戦後と、一貫して日本の思想的支柱であられた奈良岡真篤先生のことなのだぞ」

「まあ……」

 と、女将の貴子は口をあんぐりとしたが、鶴乃と百華そして瞳までも、

「誰なの?」

 という顔をしている。

「若い人は知らないだろうが」

 と、大河内が奈良岡真篤の偉大な足跡を話して聞かせた。

「神村上人は奈良岡先生と昵懇の間柄だったということは耳にしていたが、その関係からかの」

 神村の自坊である経王寺に寄宿して二年後、森岡は神村に随行してとある大企業の創業百周年記念のパーティーに出席した。招待客は取引企業を中心に八百名だった。

 その折、来賓客を代表して祝意を述べたのが奈良岡真篤であった。奈良岡はそれこそ天皇陛下をお迎えするような接遇を受けたのだが、そのにこやかな表情が一瞬緊張した瞬間があった。

 神村が森岡を紹介したときである。

 このとき、奈良岡は自身の高祖父が、森岡の六代前のそれと同じであることを知っていたが、誰にも公言しなかった。

 その後、奈良岡は自身を師と慕う政財界の重鎮たちとの懇親の席に、神村はむろんのこと森岡も参席させていた。いかに奈良岡から後継指名されていた神村の書生とはいえ、森岡は一介の大学生に過ぎない。その彼が、日本のトップリーダーたちと会食するだけでも異例のことなのに、なんと奈良岡は、森岡を自身の横に呼び寄せ、親しく話し掛けたのである。

「仰るように、神村先生のご紹介で奈良岡先生に親しく接することを許されたのですが……」

 森岡はほんの束の間、逡巡した。父洋一の遺言書によって、森岡家と奈良岡家の関係を知った彼は、さっそく神村にその事実を打ち明けた。神村自身も高野山金剛峰寺の奥の院で、堀部真快大阿闍梨からその因縁を聞かされていたので、そのことを森岡に話し、洋一の遺言書の内容が真実であることをあらためて保証した。

 然様に、神村は存知しており、さらに右翼の首領である宗光賢治の知るところとなったからには、ことさら世間に秘匿する必要もなかったが、さりとて安易に口にすることには憚りがあった。

 だが森岡は、

「実は、奈良岡家と私の生家は親戚関係にあるということがわかったのです」

 と、大河内には正直に話した。彼に邪念が無いことは明らかだったからである。

「な、な……」

 大河内は絶句した。

「洋介がそんな凄い人と親戚だっただなんて、どうして隠していたの」

 瞳が代わって訊いた。

「別に隠していたわけじゃない。俺もつい先日、親父の遺言書を読んで知ったんだ」

「それはおかしいじゃない。お父様がお亡くなりになったのはずいぶん前じゃなかった」

「俺が小学校五年生のときだ」

「それが、どうして今頃になって遺言書がどうのこうのという話になるわけ」

 確かに事情知らない者にとっては当然の疑問だった。

「詳しくは言えないが、しばらく浜浦の菩提寺に預けられていたし、今年のお盆に住職から受け取ったのは良いものの、遺言書を開くには条件があって、先日まで読むに読めなかったんだ。それに親戚といっても、俺の六代前の先祖が同じというだけだから、俺と統万との関係よりずっと薄い」

「いや、それは違うよ、森岡君」

 大河内が咎めるように言った。

「そりゃあ、日本人なんて先祖を遡れば、皆親戚になるというが、六代前といえば幕末の頃だろうから、姻戚関係ははっきりしている」

「はあ」

「君と神村上人の出会いも得心がいった。君は高野山の堀部真快大阿闍梨様とも血が繋がっているのだからの」

 大河内は、二人の出会いは仏縁による宿命だったのだろうと言った。

「大阿闍梨様って、偉いお坊さんのことどすなあ。お上人さんより偉いのどすか」

 鶴乃が不躾にも訊いた。何と言っても、京都は寺院の街である。だが、花街に生きる鶴乃でも 大阿闍梨という称号は知っているが、身分の階級までは知らないようだ。

 おそらく日本国民の多くも同じだと思われる。

 たとえば、宗門宗派の頂点を指す呼称には、法主、座主、貫首、管主、管長、門主などがあるが、本来であればそれらの称号は、南都六宗、天台宗や真言宗あるいは鎌倉六宗のように歴史と伝統があり、数千の寺院、万を数える僧侶そして数十万、数百万人の信徒を抱える巨大宗派のトップに立つ高僧に与えられるべきものである。

 ところが現実には、元は末寺の寺格でしかないにも拘らず、宗門から分派独立して新宗派を興し、自坊を本山、自身を法主や座主と名乗っている者が少なからずいるのである。

 しかし、一般人にはそのような事情など知るはずもなく、法主や座主という肩書に盲目的に畏敬の念を抱いているというのが実情である。

 ははは……と大河内は磊落に笑った。

「大阿闍梨様は、下世話な言葉で言えば日本仏教界の首領といったところかな。私などにとっては雲の上のお方だよ」

「ということは、森岡はんって経済界や裏社会だけやなく、宗教界のお偉いさんともお知り合いってことどすなあ」

「それだけではないぞ。奈良岡家の血脈者となれば、今後各界のリーダーたちとも交流を深めることになるだろうの」

 無邪気な鶴乃に大河内が諭した。

「いえ、大河内上人。もうこれ以上は勘弁願いたいと思っているところです」

 森岡は、苦笑いをしながら肩の荷が重いと付け加えた。

「もう遅い。君が避けても向こうから近づいて来るだろうて」

 大河内が引導を渡すかのように言ったとき、仲居が女将と若女将を呼び戻しにやって来た。

「あら、いけない。すっかり長居をしちゃって、他のお客様へのご挨拶が残っていたわ」

 女将は若女将の百華に言い、

「私どもはこれにて失礼致しますが、皆様はごゆるりとなさって下さい」

 と挨拶をして二人は座敷を出て行った。

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