オラリオのスタンド使い   作:猫見あずさ

10 / 63
看板猫娘

フィンやリヴェリアと一緒にダンジョンに潜っていたマオだったが、耐久が思うように上がらず悩んでいた。

 

幽波紋(スタンド)】を使った先制攻撃に回避と、モンスターの攻撃をその身で防ぐことが1度としてなく、鎧もピカピカの新品同様であった。

 

そのせいでマオは戦っているんじゃなくて、2人のサポーターをやっているんだ、子守を団長と副団長が行っていると思われていた。

 

2人は意に介さずいつもどおり、時間があれば訓練や座学、ダンジョンにとマオに付きあっていた。遠征が間近に迫ってきているため、2人とも調達やら調整の指示で忙しく、ガレスにも手伝ってもらい、実戦形式で耐久を上げるべく訓練に(いそ)しんだ。

 

――ガキン!

 

――ブゥゥゥン、ドゴン!

 

――ヒュンッ!バンッ!

 

訓練場に戦斧と長槍のぶつかる音、が鳴り響く。地面が揺れ、壁が震える。

 

「ほりゃほりゃほりゃーーーっ!!」

 

ガレスが戦斧を振るい、槍を構えるマオ目がけて上から横からブンブンと風切り音と共に打ちつける。マオは槍を両手で構えそれを避けることなく受け耐える。

 

嵐のような戦斧の攻撃がガレスの呼吸と共に止まる。その1瞬を逃すことなくマオは足を使って周囲を飛びまわりガレスを翻弄しようとする。すぐさま槍で攻撃を仕掛けないのは手がしびれて握るだけで精一杯だからだ。

 

だが、マオの敏捷は所詮Lv.1のもの。ガレス(Lv.6)はじっと目だけでマオを追いかけ、足の止まるその瞬間を待つ。

 

マオもそれが分かっているため足を止めない。またあの嵐が待っているのだから――

 

「甘い甘ーーいっ!」

 

ガレスの子供扱いする言葉と共に戦斧がマオに降りかかってくる。槍を頭上で構える――足が止まった。

 

「あぅぅ、くぅぅぅぅーっ!」

 

再びガレスの一方的な攻撃が始まり、ついに耐え切れなくなったマオが吹き飛ばされる。訓練用の斧と槍であり、刃がつぶされているためアザは出来ても切り傷は出来にくい。

 

マオが敏捷や器用を使った動きでガレスを翻弄しつつ攻撃するもすぐさまガレスからの反撃が来る。避けると耐えるを交互に繰り返すもののその差は歴然だ。

 

昼食の時間には息も絶え絶えな幼い猫人(キャットピーピル)の出来上がりである。

 

「はぅぅぅぅぅっ!!」

 

ガレスとの特訓初日、あまりの激しさから昼食に顔を沈めるという大技をマオは()()()()()やってしまう。

 

今回はすぐさま跳ね起きるが、周りのニヤニヤとマオを見つめる視線がマオの羞恥心を掻き立て、顔を真っ赤にして(うずくま)る。

 

遠征前とあって、多くの団員がおり、軽い訓練などで身体を解したり、所持品の確認や買い出しに出かけたりと、談話室や訓練場はいつになく賑わっていた。

 

午前中に体力を使い果たしたマオは夕方まで昼寝をして過ごす。その後は夕食の仕込みを手伝い、ふと思いだす。

 

(そういえば、今日はティオネさんたちが帰ってくる日か。ちょっと迎えに行ってみよう)

 

仕込みで汚れた服を着替える。

 

白いブラウスにいつもの【ロキ・ファミリア】のエンブレムが描かれたスカーフを巻き、膝上丈のスカートとスパッツを履く、ぱっと見た感じはセーラー服だ。

 

護身用にナイフをポーチに入れて、肩から斜めにかける。たまにはおめかしをしてお買い物という雰囲気は、良い所のお嬢様という雰囲気がにじみ出ている。

 

談話室にいたガレスに、「北のメインストリートで買い物すること。暗くなるまでに帰ってくること。あわよくばティオネたちを迎えにいくこと。」を伝えて館を出る。

 

門番をしている『お兄ちゃんたち』にも同じことを告げて踊り出すようなステップを踏みながらメインストリートへ向かう。

 

「お、マオちゃんいらっしゃい。 今日は可愛い格好してるじゃん。 どうしたの?」

 

「えへへ、ちょっとお洒落してみました。 ダンジョンじゃなくてお買い物にと思って」

 

 

獣人用の服屋で肌着と下着を買い足して、冒険者用の服屋へ。こちらでもマオは店員と親しく会話を交わす。こちらでは鞄やポーションホルダー、鎧の上からも着れるような外套などを扱っており、マオは以前から何度か予算と合わせてどのような品があるのかを勉強しに来ていた。

 

「今日は何か買っていくのかい?」

 

「えぇ、足に留めるポーションホルダーと空の試験管(ビン)を」

 

脚用のポーションホルダーと空の試験管を2本買う。《人魚之首飾(アクアネックレス)》用に携帯しやすい方が良いだろうと以前の水筒ではとっさに使うことが難しいと考えたのだろう。ポーションホルダーであれば、本来の使い方もできる為、買い損になることもないと判断した。

 

(っ!! しまった! ティオネたちは?)

 

買い物に集中しすぎたと、慌てて会計を済ませ、外へ出る。特に何かあった気配は無いので、露店のおばちゃんにジャガ丸くんを買うついでにティオネたちが帰ってきていないか尋ねる。

 

アイズは行きと帰りに必ずと言って良いほどジャガ丸くんを買う。どうやらまだ帰ってきていないようだった。

 

(もうちょっと使っちゃおうかな)

 

お金もまだ余裕があるので奮発してアクセサリーでも買ってみようと、露店の向かいにあるアクセサリーショップに入る。中は入り口から右半分が街中向け。左半分が冒険者向けのつくりになっていて、鎧や武器を飾る用のアクセサリーなんかもあり、冒険者以外の客でも店内は賑わっていた。

 

マオはこちらの店で綺麗なビーズをあしらったポーションポーチもあって「こっちで買えばよかった……」なんて軽い後悔をしつつも、ちょっとオシャレなイヤーカフを見つける。

 

冒険者用アクセサリーとして売られていた其れは、3600ヴァリスで透き通るような青い石は宝石ではないらしいもののとても綺麗で耐腐食コーティングが全体にされていた。現在のマオの手持ちが5160ヴァリス、マオは日常の中で誰もが経験するちょっとした決断という冒険をする。

 

「綺麗な青だろ?っとお嬢ちゃんの目の方が綺麗な青色してるじゃねぇか。 そんな可愛いお嬢ちゃんにはオマケだ。 はいよ」

 

「わぁあ、可愛いリボン!! おじさん、ありがとう!!」

 

アクセサリー屋のおじさんはオマケとして鈴の付いた青いリボンをくれる。リンリンと可愛く鳴るそれは髪留めにも最適だろう。あまりの可愛さに思わず予備にあと2つほど欲しくなる。

 

「これ、まだありますか? 予備に欲しくなりました。 おいくらですか?」

 

「まだまだあるぜ。 いくつ欲しい?――2つか。 だったらその3つともオマケでやるよ」

 

店主の好意をマオは素直に受け取る。そしてリップサービスも忘れない。

 

「ありがとうございます。 また次もここで、今度はいっぱい買い物していきますね」

 

「おう! その時はよろしく頼むぜ!」

 

キャッキャッとはしゃぐマオの様子に店内は先ほどよりも一層華やかさを増す。マオに釣られて何組かアクセサリーを購入していく。マオもイヤーカフの代金を支払い、その場でイヤーカフを右耳につけ、リボンは尻尾の先に結ぶ。

 

「そういう使い方か。 てっきり髪を結ぶもんだと思ってたよ」

 

「本当は髪用に使いますよ。 なんとなく……ただ、なんとなく尻尾にもつけてみたくなったんです」

 

灰色の尻尾の揺れに合わせてチリン、チリンと鳴り響く音にみんなニコニコしてながらこっちを見ていた。店主も予想外の使い方ながら、青いリボンが良いアクセントとなっていることに満足気だ。

 

マオは楽しそうにその場で小踊りして鈴の音を奏でる。クルリと回り、丁寧にお礼をしてお店を出る。背後から小さな拍手が鳴り響いていた。

 

マオは白亜の摩天楼(バベル)までチリン、チリンとリズムを刻むように歩いていた。

 

ただただ尻尾と首から鳴り響く鈴の音が楽しくて――

 

まさかそんな自分が目立っていただなんて思いもしないで跳ねる様に(スキップしながら)進んでいた。

 

そんなマオの行く手を遮るようにざわめきが聞こえてくる。

 

『【狂狼(ヴァナルガンド)】だ』

 

『【剣姫】と同じパーティーかよ。 羨ましい』

 

『ヒリュテ姉妹も居るじゃねぇか。 こんなの誰が勝てるんだよ』

 

『ベッドでの勝負なら是非とも勝負したいね』

 

『まだガキじゃねぇか。 あんなのが好みかよっ!!』

 

『『『やめろ、死にたいのか!!!』』』

 

最後の言葉はどれに対してのものなのかは判らない。だが、不用意に近づくことは死を意味するということだけはわかった。

 

マオは人波を掻き分けティオネたちの下へ駆けていく。周囲を声を意に介さずにバベルから歩いてくるティオネたちを見つける。

 

「ティオネさん、おかえりなさい」

 

「あら、マオ。 どうしたの?」

 

「今日帰ってくる予定だったから、買い物のついでに、もしかしたら会えるかなーって」

 

「そのイヤーカフと尻尾の鈴? さっきから聞こえていた鈴の音はあんたのだったのね」

 

「ね、ね、この子が噂のすっごい子?」

 

ティオネと良く似た顔に褐色の肌とその肌をほとんど覆い隠さない服。アマゾネスであることは一目瞭然ではある。姉妹のようにも見える。

 

「そうよ。 この子がマオ。 で、こっちは妹のティオナよ」

 

ティオネはそのまま「あと、この子がアイズでそっちのがベート」と順番に紹介する。マオもそれにあわせてお辞儀をする。

 

アイズは向き直って「……よろしく」とお辞儀を返し、ベートは「けっ」とそっぽを向く。すかさずティオナに叩かれ怒られる。

 

2人の喧嘩を尻目にティオネと話を続ける。

 

「今回のダンジョンはどうでしたか?」

 

「ま、いつも通りね。 アイズがどんどん潜っちゃうから、みんなでそれを止める感じ。 さすがに食料とポーションが切れてるって言って引き返させたようなものだもの」

 

「……ポーション切れたんですか?」

 

ポリポリと頬をかきながら、照れくさそうにマオに治りきっていないケガを見せる。

 

「あー…『黄昏の館(ホーム)』に戻ってからお願いしていい?」

 

「今すぐにでも出来ますよ。こんなの、目をつぶってだって出来ちゃいます!」

 

マオが張り切る様子にティオネを除く3人はいまいち要領を得ない顔だ。マオは4人のケガの状況をつぶさに見て回り、すぐさま《不壊金剛(クレイジー・ダイヤモンド)》を発現させて、みんなのケガを治していく。

 

マオは外では使わないようにと言われていたことを思い出し、とっさに誤魔化すために両目をつぶり、傷口に手を当て「痛いの痛いの飛んでいけー」とさもおまじないのように振舞う。

 

マオの行動を馬鹿にしていたベートもケガが跡形もなく治ると表情が驚愕へと変わっていく。

 

「おいっ! これはどういうことだ!!」

 

ベートがたまらず叫びだす。それをティオネが手で制する。

 

「うん。 やっぱアンタ便利だわ」

 

「もっと便利になるように鋭意努力中です」

 

エヘヘと頭をかきながらマオは照れて見せる。ジャガ丸くんの露店の前から動かなくなっているアイズの手を取ってホームへと引っ張る。

 

このままいつまでも立ち止まっていては夕食に遅れる。マオ、ティオネ、ティオナは歩きながら中層や下層での出来事を聞きながら帰る。

 

チリン、チリンとリズミカルに音を立てながら……




どうにかしてアイズたちとも絡ませて見たかった。

自分の中のアイズさんはコミュ障すぎて、上手く動いてくれなかった……orz

マオの方から歩み寄りを模索中。(とは言え、書き溜め分はまだあります)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。