オラリオのスタンド使い   作:猫見あずさ

14 / 63
ご注意ください。

同日連続投稿しております。

お気に入り等から飛ばれた場合は、1話戻ってお読みください。

前話から『第2章』という括り方をしております。(特に何事も無く時間が大きく進みました)


神ニヌルタ

「ん、ここは?」

 

「やあ、お目覚めかい? よく眠っていてくれたお陰で楽にここまで運ぶことが出来たよ」

 

目を覚ますと1人の男がベッド脇のイス座り、読んでいた本を閉じて話しかけてきた。癖のある茶髪と(たくま)しいアゴ髭を生やした40歳前後と思われる男だ。

 

マオは手足はベッドに縛り付けられていて身動きが取れない。目だけで周囲をぐるっと見回すと、窓が視界に入った。外はもう暗い。部屋の中は男の座っているイスとテーブル、それとマオの寝ているベッドだけの狭い部屋だった。

 

使われていない部屋なのだろう、物が何も無く少々ホコリっぽい。

 

「……あなたは?」

 

「ちょっと待っていなさい。 私の、そして()の神様を連れてくるから。」

 

(あー…攫われてしまいましたか。 でもバベル、それも天下の【ヘファイストス・ファミリア】の店内で犯罪に及ぶってことは、それだけの規模のあるファミリアか、単に馬鹿なのか。 出来れば後者であって欲しいな)

 

そんなことを考えているとドアが開いて男が2人入って来る。1人は先ほどの男だ。

 

「やぁ、(リン)ちゃん。 窮屈な真似をさせてすまないね。もう少しこのまま我慢しておくれよ」

 

ニコニコと話しかけてくるもう1人の男。おそらくこの男がここの神なのだろう、整った顔立ちと赤胴色した短い髪をしている。

 

「貴方はどなたでしょうか? それとここはどこですか? もう日も暮れてしまっているようですので、私は早く帰らないといけないのですが」

 

手足を縛られて動けないにもかかわらず、マオは気丈に振舞う。相手にマオを傷つける意思がないとはっきりと見て取れること。

 

何より怖気づくことが今は一番してはいけないことだと思ったからである。

 

そんなマオの様子に何も気づかずご機嫌な神は続ける。

 

「これからここが(リン)ちゃんのお家だよ。 私たちと一緒に暮らすんだよ」

 

マオはこの馬鹿神は自分の都合の良いことしか言わないと感じ、斜め後ろに控えたさっきの男に視線を向ける。男はマオが不安に思っているのだろうと思い、優しく語り掛ける。

 

「まぁそういうことだ。 今日はまだこの部屋から出すわけにはいかないが、欲しいものがあれば何でも言ってくれ」

 

「では、【ロキ・ファミリア】の『黄昏の館』に帰してください」

 

「残念だがそれは無理だ。 我が主神が君を欲しいと言った以上、帰す訳にはいかない」

 

「では、そちらの神様と貴方のお名前を教えてください。 貴方や神様では言いにくくて仕方が無いです」

 

馬鹿神はうんうんと大きく頷きながら仰々しく自己紹介する。

 

「私はニヌルタ。 鈴ちゃんがどうしても欲しくなってしまってね。 ついつい攫ってしまったよ。 はっはっは」

 

(ニヌルタ……聞き覚えがな……いや、確かメソポタミアの神だったかな。 ゲームのアイテム名で言いにくかったから印象に残って調べた記憶があった。 こんな我が儘な属性(せいかく)になるような逸話は無かったと思うんだけどな、神はいつでも誰でも我が儘か)

 

「どうだい、改宗しないか? 悪いようにはしないぞ?」

 

「他にも可愛い猫人なら無所属でいくらでもいるでしょう。 どうして私なんですか?」

 

(まずは時間を稼ごう。 ロキさまならきっと何か手を打ってくれるはず。 今すぐ《不壊金剛(クレイジー・ダイヤモンド)》でぶん殴ってもいいけど、こっちの男の実力が分からない以上は無茶はできそうにない)

 

「街で君を見たときに思ったんだよ。 君が欲しい!とね」

 

そう、これはある意味マオの身から出た錆とも言えるのであった。誰にでも愛嬌を振りまいた結果、凶行に及んだ神が出てきたのである。神ニヌルタから見れば、ロキの元に居るマオは継母に虐められるシンデレラのように、または城を追い出された白雪姫のように庇護欲をかき立てられる存在であった。

 

妄想を爆発させて語る神ニヌルタを落ち着かせ、男はマオを説得しにかかる。

 

「確かにいるかも知れないが、ニヌルタ様がお見かけになられたのがお主でな、何としてでも連れて帰って来いと言われてこういう状況だ。 素直に来て欲しいと頼んでも断っただろ?」

 

「ええ」

 

「まあ来てしまったのだから諦めて改宗してくれないか」

 

「嫌です」

 

明らかにガッカリしている神ニヌルタと、そう簡単に行くはずが無いと分かっていた顔の男。

 

「今日はまだ混乱しているだろうから正しい判断ができないようだな。 明日また聞こう。1つ言っておくが私はLv.4だ。 まだLv.1のお前では敵わないから逃げようなどと無茶な真似はしないでくれ」

 

「……まえ」

 

「ん?」

 

「あなたの名前をまだ伺っていません」

 

「これは失礼。 私は団長を務めるアル・タユ。ここは【ニヌルタ・ファミリア】のホーム、『フ・ゾイ宮』だ」

 

「では、一応私もマオ・ナーゴ。 【ロキ・ファミリア】のLv.1です。 ファミリアの規則(ルール)で夕食は一緒に取ることになっています。 帰って来ない私を今頃は探していることでしょう」

 

【ロキ・ファミリア】が遠征中であり、下位メンバーしか居ないことを把握しているのだろう、2人は全く気にも留めずにマオの名前を知れて満足気な様子を見せていた。

 

「おぉ! 鈴ちゃんはマオというのか。 これからはマオちゃんだな。 これからは私のためにその鈴を鳴らしておくれ」

 

「探しているかも知れんが、ここまで辿り着けたとしても今は遠征中で主要な者は居るまい」

 

「そうだ。 それまでにマオちゃんが改宗に乗ってくれれば問題などどこにもない!」

 

神ニヌルタは本人(マオ)が目の前にいて理性が今にも吹き飛びそうになっている。そんな様子に危機感をもったのか、団長アル・タユは話を切り上げて明日以降に改めようとする。

 

「まぁゆっくり考えてくれてかまわない。 また明日聞きに来る。 部屋の鍵は閉めさせてもらうが、外に人を置く。 何かあれば声を出して呼びたまえ」

 

そう言うと2人は部屋から出て行った。このロープはLv.3の【ステイタス】でも引きちぎれないほどの強度があるという。切れないのなら《不壊金剛(クレイジー・ダイヤモンド)》でロープを解く。音を立て無いようにゆっくりと伸びをし、身体の状態を再確認する。手首、足首が縛られていた分、多少痛むがそれ以外に怪我など痛む所は無い。

 

そっとベッドを下り、窓から外の様子をうかがう。マオが今居る部屋は3階、実体を持たない《不壊金剛(クレイジー・ダイヤモンド)》を透過させて建物の外と部屋の外、廊下側をそれぞれ窺う。建物の外は暗く、見張りが居るのかさえもわからなかった。廊下側は団員と思われる男と女が1人ずつ、扉とは反対側に簡易のテーブルとイスを置いて雑談に興じていた。

 

(向こうは油断している)

 

マオは自力で脱出すべく策を講じる。マオ1人をLv.4の団長を筆頭にファミリア全体で監禁している。おそらく今廊下に居るのもLv.3か2なのだろう。マオが何らかの方法で拘束を解いたとしても逃げられるはずは無い……そう慢心しているはずだ。そこに付け込もうと思考をまとめる。

 

いつでも逃げられるように準備を始める。

 

マオはまず手足を拘束していたロープを結び、1本の長いロープを作りベッドの足に結びつけ窓の外へと垂らした。後はベッドの下にもぐりこみ、脱出したかのように見せかけることにした。

 

遅くとも朝にはこの仕掛けを見付けるだろう、その時にベッドの下を調べられたらお(しま)いだが、外に逃げたと思わせる事ができたらマオの勝ちだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。