オラリオのスタンド使い   作:猫見あずさ

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酔っ払い

ホームへ戻ったマオはすぐさまシャワーで身体に付いた汚れやホコリを落し、夕食の手伝いに入る。

 

手伝いの合い間に果実をラム酒やブランデーの中に入れる。夕食後片付けと装備の手入れを済まし、パウンドケーキの試作に取り掛かる。

 

オリジナルドライフルーツを作るには今日は時間が足りないので、ナッツ系と買ってきたドライフルーツを使いケーキを焼く。生地を型に入れてオーブンへ放り込む。

 

後は焼き上がりにラム酒を塗りこんで完成だ。オーブンからケーキの焼ける甘い香りが辺りに漂う。

 

香りに引き寄せられるように1人また1人と厨房の様子を窺う団員が現れる。彼女もまたそんな匂いに誘われた1人だ。

 

「何を、作っているの?」

 

「アイズさん。 これは今度の『神の宴』に持って行くケーキの試作です。 焼き上がりを試食されますか?」

 

「うん、食べてみたい」

 

アイズの返事を聞きつけて、「俺も」「私も」と殺到する団員たち。品評会に出す作品の試食なので、食べた際は必ず美味しい以外の感想をつける事とした。

 

それでもマオはリリのための一切れを死守するのが精一杯なほど殺到したのであった。

 

「アイズさん、お味はいかがですか?」

 

「うん、おいしいよ。 こっちのフルーツの方が、好き」

 

「お酒の匂いとかは気になりませ……」

 

マオが羊皮紙に目を落し、周囲の団員から寄せられる感想をメモしていた時だった。正面に座ってケーキを食べ、感想を述べていたアイズが突然立ち上がったかと思うと周囲の団員たちを突然投げ飛ばし始めたのだ。

 

顔を真っ赤に染め、目をグルグル回しながら近づく団員たちを投げ飛ばす様は酔っ払い以外の何者でもなかった。

 

「アイズさん……酔っちゃった?」

 

予想外の事にマオは思考が停止状態となり、呆然とその様を眺めていた。

 

『おい、誰か止めろ!!』

 

『無理むりムリ無理だって! Lv.5のアイズさん止められるのなんて……ここにいたーーっ!!』

 

『マオちゃん助けてー!』

 

「みなさんは離れて! それと私以外の止められそうな……リヴェリアさん! リヴェリアさんを呼んで来てください!」

 

団員たちの悲鳴のような救援要請に正気に戻ったマオは慌てて抑えようと飛びかかる。団員たちもフィンやリヴェリアを呼びに食堂から飛び出して行く。投げ飛ばされた者も周囲の手を借りて兎に角アイズから距離を取る。

 

マオの飛び掛りに対してアイズは右手の拳を繰り出す。マオは上半身を反らして交わし、着地と同時にアイズの足を払う。

 

アイズは飛び上がり、その勢いのままマオを一回転して飛び越え、すかさずしゃがんで足払いをやり返す。マオは低く飛び、それをギリギリでかわす。着いた手の力だけでアイズから距離を取るように飛び下がる。

 

マオとアイズが3Mほどの距離をあけて対峙する。アイズはいつもより腰を落とし、両手を広げてマオを捕獲するかのような姿勢をとっている。

 

マオの尻尾が左右に揺れるたびに左右の手が何かを掴むように開閉を繰り返している辺り、やはり尻尾を含めたマオの捕獲なのだろう。

 

アイズはじっとマオを見据え、他の団員の動向に注意を払わなくなっていた。そんな折、食堂に新たな人物が現れる。

 

「なんや? みんなして……って2人して何してんのや?」

 

ロキだ。周囲を見渡し、この異常事態を察したロキは目に怪しい光をたたえる。そして2人に向き直ると、

 

「よっしゃ、アイズたん! 一緒にマオで遊ぼうや~!」

 

と、言うやマオに向けてかの大怪盗の孫も真っ青なダイブを敢行する。Lv.5のマオがそれを避けられない訳が無く、バックステップで難なくかわす。

 

ロキはそのまま地面に顔をしたたかに打ち付ける――かに思えた。

 

アイズがその3M以上の空白を一瞬で進み、ロキの頬に拳を打ち込んだのである。

 

「あびょ!」と声を発したが最後、食堂の壁に全身を打ち付けてロキはそのまま崩れ落ちる。

 

マオはすぐさま駆けつけて治療を施したかったが、目の前のアイズがそれを許さない。ひたすらマオの耳や尻尾に向けて手を繰り出してくるのを避けるので精一杯だった。

 

アイズの暴風のような手足の動きを見極めていなし、時には合気道の技でもって投げ飛ばす。やってて良かったタケミカヅチ式護身特化の合気道である。

 

それでもアイズの突撃は終わらず、とうとうマオは両手を掴まれてしまう。

 

「しまっ!!」

 

 

 

「待ぁぁぁぁぁぁっっった!!」

 

「あぁ、もう何やってんのよ!」

 

アイズの手を掴むティオネとティオナ。その後ろからリヴェリア、フィン、ガレス、ベートがやってきていた。

 

様子のおかしいアイズをリヴェリアがすぐさま介抱する。酔っているだけだと分かると眠らせ、食堂のベンチに寝かせる。

 

マオはすぐさま壁際で治療を施されているロキに向かい、《不壊金剛(クレイジー・ダイヤモンド)》で全快させ、ロキもアイズのすぐ隣のベンチに寝かされる。

 

「何があったんだい?」

 

ようやく落ち着きを取り戻した食堂でフィンが事態の推移をマオを含めた当事者たちに聞く。事態の全貌を把握した幹部たちは深く溜め息をつくのであった。

 

「とりあえず、大した被害がロキだけで済んで良かったよ」

 

「マオもまさかあの程度で酔うとは思わなんだであろう。 量にして(スプーン)2杯程度でまぁここまで暴れたものよ」

 

フィンとリヴェリアの慰めにも似た感想にマオも少しだけ胸を撫で下ろす。しかし、それ以上に執拗に狙われた耳と尻尾が落ち着かないのだ。ペタンと伏せられた耳を手で覆い、尻尾はお腹に巻きついている。

 

「耳と尻尾しか狙われなかったので……と言いますか、そこしか狙われてないのが未だに怖くて」

 

ハハッと気丈に笑うマオの歯はカチカチと鳴っていた。居合わせた獣人の団員たちはその様子を自身に置き換えては恐怖し、耳を伏せた。

 

ベートですら想像しては尻尾をダラリと垂らす程度ではあったが、恐怖を表していた。

 

「あー…それ解るかも」

 

ティオナがそんな恐怖に震えるマオを抱きしめて言う。

 

「だって、マオ可愛いし、耳とか尻尾とかー、触ってて気持ちいいんだもん」

 

ティオナの衝撃的発現に実際に触ったことのある人間は――リヴェリアですら――ウンウンと頷き、未だ触ったことの無い人間はマオの耳を見つめてはゴクリと喉を鳴らすのであった。

 

そんな異様な空気が漂う中、フィンとガレスだけが冷静に事態を見ていた。と、突然「ヒッ!!」とマオの小さい悲鳴が口から漏れ出す。もうティオナは抱きついたままではあるが耳を触っておらず、マオの悲鳴の原因を周囲を見渡して探す。

 

「ウヒヒヒヒ……この感触はウチだけのもんやぁ。 誰にも触らせへんでー」

 

マオの座るベンチの下から伸びた手がマオの尻尾を掴み、スリスリと手を這わせていた。テーブル越しに聞こえた声にフィンが制止を呼びかける。

 

「ロキ、マオが困っているじゃないか。 それに起きたのなら事情をロキの口からも教えてくれないか」

 

「よっこいしょっ」とロキは身を起こし、マオが座っていた位置へマオを持ち上げて座り、膝にマオを乗せる。

 

「ウチも騒ぎが大きくなってから来たし、すぐ気を失ってしもうたからなぁ、よくわからんのや」

 

「あとはアイズが目を覚まして覚えていたら全員からの聞き取りが終わるね、お酒を飲ませたわけじゃないし、マオを叱るに叱れないね。 でもみんなも、アイズにお酒飲ませたらダメだからね」

 

「「「はい!」」」

 

「それはもう!」と身にしみた団員とマオたちはフィンの注意に真摯に返事をするのであった。

 

アイズは結局起きだす気配を見せず、リヴェリアの手によって私室へと運ばれていったのであった。

 

なお、食堂のベンチで寝かされている間、男性団員たちがチラチラと顔を覗き見ていた。

 

それをロキはさりげなくメモを取り、「なんか罰ゲーム考えなあかんなぁ」と呟いていたのをマオとティオナ、フィンだけが聞いていた。

 

 

そして翌日以降、不当な無茶振りを受けたと男性団員たちが愚痴りだすのであった。




戦闘描写といいますか、身体の動きを文章にするのは難しいですね。

……なんでホーム内でそういう描写しているんだろう。
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