オラリオのスタンド使い   作:猫見あずさ

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強襲

全員が食事を取り、片付けも終わった頃。フィンが全体を召集し、この後の予定を告げる。

 

「今日はこの後、【ディアンケヒト・ファミリア】からのクエスト、カドモスの泉から水を汲んでくる。 52階層以下のアタックは明日行う予定だ。 今から呼ばれたものはカドモスの泉に向かうから、このまま残ってくれ。 では、――」

 

フィンはガレス、ティオネ、ティオナ、ベート、アイズ、ラウル、そしてレフィーヤの名を呼ぶ。

 

フィンは居眠りしていたとの報告をリヴェリアから受け、マオを居残り組に回したのだった。リヴェリアは49階層での一斉射による魔力の消費と明日のアタックを考慮しての温存のため居残りに回し、代わりにレフィーヤに【経験値(エクセリア)】を稼がせる目論見だ。

 

ラウルとレフィーヤがサポーターとしてバッグを(かつ)ぐ。ラウルはフィン、ガレス、ベートの男班。レフィーヤはアイズ、ティオネ、ティオナの女班と2班に分かれ、必要量を短時間で回収する狙いだ。

 

フィンと一緒に居たいティオネがごねるのをフィン(みずか)ら説得に当たっている中、マオがレフィーヤを呼ぶ。

 

「これ、万能薬(エリクサー)が3本と精神回復薬(マインド・ポーション)が2本。 それと、組み立て式のハルバートとランスが入っている。 どっちも不壊属性(デュランダル)だから、結合部から折れるとかは無くて、持ち歩くのに邪魔にならないと思うから念のために持って行って」

 

「マオはこれどうしたの?」

 

「今回の遠征のどこかで使ってみようと思って用意してたんだ。 私の出番は明日みたいだし、組み立てなくても刃の部分は投げても良さそうじゃない? 予備武器(サブ・ウェポン)として持っていってよ」

 

不壊属性(デュランダル)。それは何があっても壊れないという特殊武装(スペリオルズ)の1つ。ただし、壊れないだけでその切れ味などはどんどん磨耗していく。

 

それでも。それでもダンジョンにおいて武器の有無は生と死を分かつほどに重要だ。ましてやここは50階層という深層である。【ロキ・ファミリア】はここに下りてくるだけで5日を要したのだ。壊れないということはとてつもなく大きな意味を持つ。

 

マオは自身の戦闘スタイルと身長を加味し、組み立て式かつ壊れにくい武器をと以前から考えていた。そして、試作品ともいえる2本を今回の遠征に持ち込んでいたのだった。

 

「うん、持って行くね。 ありがとう」

 

「じゃあ、私は一眠りして待ってるね。 いってらっしゃい」

 

マオはもう限界だと言わんばかりにテントの隅に折りたたまれていた毛布の中にもぐりこみ、そのまま寝息を立て始めた。レフィーヤはクスリと笑いをこぼすと、アイズたちが待っている方へと踵を返し向かっていくのであった。

 

 

 

「……オ!! ……ろマ………おき……マオ…………起きろ! マオ!!」

 

「ふみゃ!」

 

大声で起こされたマオはガバッと毛布を跳ね上げ飛び起きる。

 

聞くと、モンスターが崖側から上ってきていて、ケガ人も出ているという。強力な酸を吐き、何人もけが人が出ていること。体液も同じ酸のようで武器が攻撃する度に溶けて使い物にならなくなっていること。

 

そして、致死ダメージを与えると破裂して体液を周囲に撒き散らしてくるため、前線が大混乱に陥っていること。

 

最後まで話を聞いたマオは武器も溶かされていると聞き、武器も防具も身に付けずにテントを飛び出す。

 

崖側に駆けつけたマオが見たものは――芋虫を思い出させる形のモンスターであった。

 

(足多いの苦手なのにーーっ!!)

 

うねうねと動くその足を見てマオは背筋にゾゾゾと悪寒を走らせる。が、団員たちの悲鳴を耳にしてすぐさま行動に移す。まずはリヴェリアと連携を取る。

 

「リヴェリアさん!!」

 

「マオか! 詠唱時間が稼げん。 どうにか出来るか?」

 

「破裂させてもいけないんでしたよね……じゃあ固めてみますか」

 

マオの言葉にリヴェリアは「アレか?」と聞き、マオも「アレです」とお互いニヤリとしてみせる。作戦が決まるとリヴェリアは指示を出していく。

 

「体液がかかった者は下がれ! 無事なものは液を防げる物で押し返せ!! マオが出る! しばし耐えろ!!」

 

リヴェリアの言葉に合わせて、リンリンと鈴を鳴らしてマオは崖のすぐそばまで躍り出る。マオの右眼が金色に輝いているのを見ると、団員たちは口々に「不思議な力で吹き飛ばすぞ」と、その様子を想像して期待に胸を膨らませていた。

 

しかし、一向にマオの周囲の極彩色の芋虫は動かない。

 

全体的に白みがかったように見えるそれらはピクリとも動いていなかった。動かない芋虫の後方から新手がマオめがけて酸を吐きかける。

 

「危ないっ!!」

 

マオを見ていた団員たちの口からもれ出る言葉にリヴェリアは動じることなくその様子を眺めていた。もはや詠唱すら必要ないといった余裕を見せている。

 

飛んできた酸はマオにかかる手前で固まり、そのまま地面へと落下し、バキンと割れる。

 

「……固まった? いや、凍ってる?」

 

誰かが呟くように起こっている出来事を分析する。

 

そう、マオは水分の温度を操作してモンスターの吐く液だけでなく、モンスターそのものを凍りつかせたのである。マオがLv.3にランクアップ果たしたときに新たに身につけた【幽波紋(スタンド)】、隼氷結士(ペットショップ・アルバム)である。

 

マオは両手を頭上に掲げる。すると手のすぐ上に氷の(ハヤブサ)が出来る。まるで生きているかのようにクチバシを開閉しては鳴き声をあげるソレは、生きているようにしか見えなかった。

 

マオが手を振り下ろすと隼は滑空し、芋虫に向かって飛んで行く。

 

芋虫を正面から食い破り、体内へと入っていくが、体液を凍らされた芋虫は破裂することも出来ずに侵入される。そのまま芋虫がのたうち回ったかと思うと、隼が魔石を口に芋虫の背を突き破って出てくる。あとに残るは灰の山だ。

 

氷の隼を操りながら、マオ自身も崖の上まで登ってきた芋虫たちを凍らせては落としていく。登ってきている芋虫たちが巻き込まれて一緒になって落ちて行き、崖下で破裂しては周りに酸を撒き散らしては連鎖反応のように次々に破裂している。

 

「……さて、そろそろ真面目にやりますか」

 

リヴェリアに合図を送ったマオは足元からどんどん白くなっていく。いや、氷の全身鎧(スーツ)を身に纏い、崖を飛び降りる。

 

クッション代わりにと芋虫の背に飛び降り、衝撃を和らげた後にすかさず凍らせる。後は腕をつっこんで魔石をもぎ取るという傍目にはえげつないやり方で順番に灰に還していく。

 

もちろん芋虫もやられまいと酸を飛ばして応戦するが、マオの氷スーツに全て凍らされてしまう。挙句の果てには氷の剣で魔石付近を切り落とされ、猛威を奮うどころか恐れ戦きつつあった。

 

「あー……やっぱり無事かぁ」

 

51階層への入り口の方角から間の抜けた声がした。

 

見ればティオナ、アイズ、ベートが立ち尽くしており、その後ろをフィン、ガレス、ティオネ、ラウル、レフィーヤが駆けていた。

 

ティオナの手には大双刃(ウルガ)ではなく、マオが念のためにと渡したハルバートが握られていた。氷のスーツを着たマオが芋虫を破裂させずに倒していく様を見て、アイズたちはすかさず残った15体ほどの芋虫の足を刈り、マオの手助けに努める。

 

動けなくなった芋虫をマオと氷隼(ひょうじゅん)で次々と灰に変えていく。酸を撒き散らさない戦い方にフィンも感心しながらキャンプへと戻る。マオも程なく全て倒し終え、キャンプへと戻る。

 

「みんなは無事かい?」

 

「何人かが最初にやられたが、マオが対処してくれたお陰で回復に余裕が出来た。 みな無事だ」

 

「そうか。 こっちは男班の武器が全部やられたのとラウルがやられたよ。 合流してからはマオの武器が役に立った。 ありがとう」

 

「はて? ……あ、不壊属性(デュランダル)か。 そうか、それなら溶けなかったんだ」

 

マオはフィンに言われて初めて自分の用意した武器がたまたま最適解を導いたことに気付いた。マオは単に「アイズさんと御揃いの不壊属性(デュランダル)武器で並ぶと面白いかも!」くらいの発想だったので、顔を真っ赤にして照れていた。

 

「それに、あのモンスターは今までに見たことが無い……ん? なんだ?」

 

フィンがリヴェリアに話を続けていると地面がゴゴゴと揺れる。

 

「あっち!!」

 

ティオナの指差す方向に皆が顔を向ける。

 

そこは51階層への入り口。その入り口周辺の壁が入り口もろとも大きな音を立てて崩れ落ちた。




純粋な氷になった意思ある氷の隼。
マオの意思でも動きますが、自動でフォローもしてくれる優れもの。
欠点:回りから寒いとクレームが入る

どちらの能力にしようかと悩んだ上で、ニコイチにしました。
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