オラリオのスタンド使い   作:猫見あずさ

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パーティープレイ

マオが目を覚ます。夕食を取り始めてからの記憶が無い。状況を確認すると、自分のベッドで、ちゃんとパジャマを着て寝ていた。

 

着替えて食堂に行くと、ちょうどティオネがおり、挨拶ついでに昨日のことを尋ねる。

 

ベッドまで運んでくれたのはティオネだった。

 

「いやー、笑わせてもらったから良いんだけどね。 あんたもっと体力つけなさいよ」

 

「そうですね、ガレスさんとメニューの見直ししてみます」

 

「既にやっているならそのままそうしなさい。 それと、フィン団長が呼んでるわ、昨日の魔石のお金を分配してないでしょ。 ご飯食べ終わったら行くわよ」

 

「わかりました。 まずはしっかりいただきます」

 

 

 

 

 

ティオネと一緒に団長室へ向かう。中に入るとリヴェリアとガレスもいた。

 

「待ってたよ。 2人とも良く眠れたかい?」

 

「おかげさまで、夢も見ないでぐっすりと」

 

「はい、私もよく眠れました。 でも~団長と一緒ならもっと気持ちよく眠れると思います」

 

朝から全開のティオネの発言をさらりと流しすフィン。【ロキ・ファミリア】は男女比が3:4と女性の方が多く、ティオネ以外にも虎視眈々とフィンを狙う者はいる。本人は小人族(パルゥム)の相手が欲しいと極一部の者にはもらしている。迷宮都市オラリオで1、2を争うほどの人気を活用する気はどうやらないらしい。

 

「よく眠れたのなら良かった。 昨日のダンジョンの反省会と分配をしようか」

 

昨日の魔石とドロップアイテムの換金分と任務(クエスト)報酬分を合わせて11万7500ヴァリス。3等分して1人3万9000ヴァリスと余り500ヴァリスをティオネとマオで折半する。

 

「さて、次は反省会といこうか。 ティオネ、見ていて思ったことは?」

 

反省会とは言え、7階層までで遅れを取る一級冒険者が居るわけがなく、実質マオ1人に対するものであり、リヴェリアとガレスもマオの指導の成果を確かめるために同席していた。視線を受けながらも少し考えてから真っ直ぐマオを見つめながらティオネが応える。

 

「そうですね、ダンジョン2度目のLv.1とは思えない落ち着きと視野の広さを感じますね。 年不相応な感じがします」

 

うんうんとフィン、リヴェリア、ガレスの3人は体験を反芻しているのだろう、ティオネの意見に同意とばかりに頷いている。

 

「それ以外には?」

 

「スキルがずるいかなーってくらいで、それ以外の動きはLv.1らしかったかと」

 

「そうだね、僕の見立ても同じだ。 あとは子供の体力をどうにかできたらパーティー参加も可能だろうね」

 

ガハハと大きな笑い声を上げながら膝を叩くガレスが「少し訓練メニューの見直しをするか」と呟いていた。

 

「昨日の夕食中に寝落ちて皿に顔を突っ込んだそうじゃないか」

 

リヴェリアは口元に手を当て笑いを堪えながら指摘する。大きな音を立てて皿に突っ伏したこととティオネが慌てふためいたことで昨夜の出来事はその場に居合わせた団員達に知れ渡っていた。

 

「パープルモスは難なく倒してしまっているし、新米殺し(ルーキーキラー)のキラーアントも後半は上手く隙間を突いていたし、ソロでも戻ってこれる範囲なら問題なさそうなんだよね……だからこそ悩ましいよ」

 

軽く溜め息をつきながらフィンはティオネに向きなおす。

 

「ティオネのパーティーは予定は大丈夫かい?」

 

「明日からダンジョンに行く予定ですが、週明けには戻ってくるつもりです。 少し調整しておきます」

 

「うん、頼むよ」

 

週明け半ばから【ロキ・ファミリア】は遠征を予定しており、フィンたち幹部はその準備に追われていた。そのため居残り組でマオの面倒を見れる―ダンジョンに付き添える―人物が居なくなることに頭を悩ませていた。

 

「つまり、私の付き添いが出来ないので悩まれているって訳ですね?」

 

「深層への遠征にLv.2以下は連れて行けない。 悪いけど留守番を、『黄昏の館(ホーム)』とロキを頼むよ」

 

「先週のように料理と槍の練習を含めた訓練をしておきますよ。 あとはこの辺りの地理が不案内なのでちょっと探検でもしてみようかなー……なんて」

 

「人目の無い所にはあまり行くなよ。 出かけるときは必ず誰かと一緒に行動しろ」

 

リヴェリアの提案にフィンも頷く。

 

「そうだね。マオはいつもスカーフ(エンブレム)を身に着けているけど万全ではないし、神はそんなこと(ロキ・ファミリア所属)お構いなしだったりもするからね」

 

「遠征中はずっとロキに面倒をみてもらうというのはどうじゃ?」

 

ガレスの提案にフィンもリヴェリアも、それも悪くないなと思案顔だ。

 

「ふむ。 あとはロキに伝えておけばよかろう。 私はこのあと後衛メンバーとダンジョンの5層あたりで魔法の訓練を予定しているが、マオも来るか?」

 

「はい、お願いします。」

 

この先1週間以上ダンジョンに行けなくなる。それが分かったマオもダンジョンに行けるチャンスは逃したくない。昨日の分の【ステイタス】の更新していないけど、上層ならきっと問題ないだろう。そう考えながら準備をしに部屋を出ようとした所で呼びとめられる。

 

「昨日の分がまだでしょ? ロキに【ステイタス】の更新してもらってきなよ。 で、ついでにロキにこっちに来るように言ってもらっていいかい?」

 

フィンがお使いついでの更新を勧めてくるのでそのまま従うマオ。

 

「はい。 お呼びして来ますね」

 

「更新が終わったら、館の前に集合しよう」

 

「はい!! 行ってきます!!!」

 

マオは元気よく返事をしてロキのもとへ向かう。更新のお願いとフィンが呼んでいたこと。これからリヴェリアとダンジョンに潜ることを伝えつつ更新してもらう。

 

ロキは上機嫌で尻尾をニギニギしながら【ステイタス】を更新していく。

 

「よっしゃ、終わったで! これが新しい【ステイタス】や。 順調に伸びてるし、がんばってるやん」

 

 

【ステイタス】

マオ・ナーゴ

Lv.1

力 I 96

耐久I 67

器用H 101

敏捷I 83

魔力I 92

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

幽波紋(スタンド)

・精神力で力ある像を造りだす。

不壊金剛(クレイジー・ダイヤモンド):モノをなおす力がある。

人魚之首飾(アクアネックレス):液体を操る力がある。

 

 

 

 

 

「ロキさま、いつもありがとうございます。忘れるところでした、これお土産です」

 

手を握りながら《不壊金剛(クレイジー・ダイヤモンド)》でロキの指にできた傷を治す。そして、昨日獲れたブルーパピリオの翅を渡す。

 

「お、ブルーパピリオの翅やん。 これめっちゃ高く売れんで、ええの?」

 

「はい。 日頃の感謝の印です」

 

「ありがとうな。 じゃあフィンにこれ自慢してくるわ。 マオも怪我の無いように気をつけてな」

 

どうやらロキは眷属と仲は良いものの、(本人も望んで?)雑に扱われることが多く。こういった真正面から謝意を示されるのに慣れていないようで、少し挙動不審な動きをしながら団長室へと向かって行った。

 

マオはロキと別れて自室へ、装備一式と鞄を持って玄関へ向かう。リヴェリアと3人の杖を持った団員もちょうど玄関を出ようとしていた所で、玄関で合流を果たす。そのまま足を止めることなく真っ直ぐダンジョンへ向かう。3人と挨拶を交わし、今回のダンジョンへの目的の確認と魔法の講義をリヴェリアから受ける。

マオは【ステイタス】上昇と魔法使いがいるパーティーでの動き方の練習を、魔導士(後衛)は詠唱の高速化または動きながらの詠唱―平行詠唱―の練習となる。

 

魔法は自身の体内で練り上げた魔力を一気に放出する。詠唱に失敗するということはその練り上げた魔力を体内で暴走させることになり、大怪我を負う。これを魔法暴発(イグニス・ファトス)と呼ぶ。

 

マオはバベルへ向かう途中で少し大きめの水筒を買う。今回は《人魚之首飾(アクアネックレス)》をメインに使う予定であることをリヴェリアに説明する。

 

「さあ、一気に5階層の『ルーム』まで進むぞ」

 

リヴェリアを先頭にダンジョンを一気に5層まで突き進む。魔石も道中のものは無視するということで突き壊し、全て灰にして進む。

 

5階層の『ルーム』は深さと広さ、モンスターの生まれてくる頻度など上級冒険者が魔法の練習をするには都合が良く、6階層への最短ルートから外れた『ルーム』は人気であり、早いもの順でもあった。

 

そのため少し遅れてやってきた【ロキ・ファミリア】魔導士一行はやや奥まった『ルーム』まで足を伸ばす必要があったものの、下へ降りる必要が無かった点は僥倖であっただろう。

 

魔導士のいるパーティーが強敵と戦う戦術は単純である。前衛が自身の身体や盾を使ってモンスターを足止めし、後衛である魔法使いが止めを刺す。これが基本の戦い方である。

 

「マオ、どけ!!」

 

リヴェリアの合図で斜め後ろ、壁際に飛びのく。ほとんど掠めるように飛んでいった魔法がモンスターたちを焼き払う。ほとんどが魔石ごと焼き払われて行くため、ドロップアイテムも残らない。

 

『ルーム』のモンスターを一掃し、外から呼び込むか、生まれてくるのを待つか、という状況になる。

 

マオが今がチャンスと水筒を取り出し、ふたを開ける。

 

「《人魚之首飾(アクアネックレス)》!」

 

三つ又槍(トライデント)を持った人魚(マーメイド)が出てくる。

 

丁度生まれてきた正面のフロッグ・シューターに向けて《人魚之首飾(アクアネックレス)》を走らせる。下半身が魚という姿《フォルム》にもかかわらず、水の上を滑るように地面を這い進み大きく開いた口の中に飛び込む。

 

突然口内に侵入して来た水に目を白黒させて戸惑う大蛙(フロッグ・シューター)……唖然とする魔導士(リヴェリア)たちを尻目にゆっくり3つ数えると、フロッグ・シューターが灰になって崩れる。

 

灰の山から魔石を体内に取り込んだ人魚(マーメイド)がマオの元に戻ってくる。リヴェリアはマオが何をしたのか理解できるが、他の魔導士は訳が分からず軽い混乱状態に陥る。

 

「落ち着け、今のはマオの『スキル』だ」

 

リヴェリアの説明にもならない言葉であっても【ロキ・ファミリア】の上級冒険者達である。すぐに気持ちを切り替える。

 

マオもそういうものだと簡素な説明だけに押し止め、《人魚之首飾(アクアネックレス)》を操り、前衛が2人いるかのように操りながら自身も槍を振るう。

 

再び『ルーム』内のモンスターを一掃すると、リヴェリアが外からモンスターを引き連れてくる。それをマオがけん制し、魔導士が止めを刺す。内と外とを繰り返し、ちょうど10を数えたあたりでリヴェリアが壁を壊すよう指示する。

 

「よし、いったん休憩を取ろう」

 

「そうだ。1つ実験してもいいですか?」

 

マオが水筒に水を戻し、壊した壁の破片を『ルーム』入り口に集め始める。

 

「何をする気だ?」

 

リヴェリアも他の魔導士も皆怪訝な顔つきでその作業を見つめる。

 

壁が壊れている間はその壁からはモンスターが沸かない。通路と『ルーム』の境目に扉があるわけが無く、常に侵入されないように警戒する必要がある。マオはこの通路を塞げないかと話す。

 

「ガレキ程度では崩されたり乗り越えられたりして意味が無い。鞄で塞いだところでモンスターに気づかれたら、鞄がダメになるだけだぞ?」

 

誰もが1度は考えることとリヴェリアたちも意図は理解できても無駄だと口々に言う。

 

「ガレキだったらそうですよね……でもこうだったら? 《不壊金剛(クレイジー・ダイヤモンド)》!」

 

ガレキと化した壁を入り口の隙間を埋めるように直していく。薄いが隙間のない壁が出来た。視覚と嗅覚を遮ることはできるが、音は伝わるであろうことが触った感触から感じられた。

 

「ほぉ……これは前代未聞だな。 完全に気を抜くことはできないが、良いかもしれないな。 少なくとも壊した3方からは来ないから、あとは昼食をとりながら経過観察だな」

 

ウンウンとうなずいているリヴェリアの横で完全に動きの固まった3人の魔導士がいた。床に敷き物を広げ、昼食を広げるとゆっくりと動き出す。

 

「「「あ、あんた何者なのよーーー!!」」」

 

「こら、大きい音を立てるな」

 

ポカリ!と頭を叩かれる3人。今までの常識を覆る出来事に冷静でいられない。先ほどの水を自在に操るだけでも驚いていたのに、ダンジョンの壁を壊れる前の状態に直すなどという有り得ない事態を7歳の子猫(マオ)がやってのけるのだ。

 

頭を(さす)りながら腰を下ろし昼食を取る。マオが『スキル』の説明をし、リヴェリアがそういう事情だからと特別扱いになっている現状を説明する。3人とも魔法でもないのに自由自在に水を操って見せるマオを目の当たりにした今、ただただ納得するしかない。

 

そんな遠征前に集中を欠くような出来事に会いながらも流石は上級冒険者だ。昼食を食べ終えるころには落ち着きを取り戻していた。入り口を塞ぐという行為も成功し、モンスターが壊して入ってくることもダンジョンが異常事態(イレギュラー)になることもなかった。

 

ただし、壊した壁が修復されるにあわせて入り口に作った壁は壊れていったので、後半はその隙間から見つかるかも知れず、見張りは欠かせないという結論になった。

 

 

 

魔法を使える者が気をつけないといけないことの1つ、精神疲弊(マインドダウン)。さすがに魔法の練習で精神回復特効薬(マジック・ポーション)を消費するのは不経済だ。休憩を挟みつつ、十分な余裕をもって引き上げる。

 

地上に戻っても日はまだ高く、3時半を少し過ぎたばかりであった。ギルド本部で換金を行う。マオは今回得たお金を辞退し、遠征費用の足しにしてもらう。

 

その代わりにとマオはリヴェリアたちからこれまでの遠征であった出来事や準備に必要な物などを聞いて回る。

 

その様はじゃれ付く子供でしかなく、周囲を飛び跳ねるようにチョコマカと動き回るマオの動きに合わせて首輪(チョーカー)の鈴がリンリンと鳴り響き、周囲の注目を集めていることにマオは全く気づいていなかった。

 

リヴェリアもその集まる視線の大半は無視していたが、いくつかの好色ともいえる不埒な視線に対しては鋭い視線を返し、けん制するのであった。

 

――マオはただ無邪気に跳ね回っていた。

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