10数個の鋳鉄製の
剣と槍。
2つの凶器は交わる度に甲高い金属音を立て、洋燈より一際強い光を放っていた。
剣の主は赤の長髪。中性的で整った顔立ちはやや曇った表情で汗を滲ませていた。
遠く背後には黒髪の青年。
焦げ茶色のラインが入った詰襟型の制服を身に纏っている。その表情は赤髪の剣士と同じく、強ばった表情を浮かべていた。
「────────っ!!」
交差する武具から耳を塞ぎたくなるような金属音が鳴ったと思うと、赤髪の剣士の身体が大きく吹き飛ばされていた。
赤髪の剣士は1、2回地面にぶつかり小さくバウンドした後、身を返し、体勢を立て直した。
同時に吹いた一陣の風が、制服の青年──────遠坂の前髪をわずかに揺らす。
「うへぇ、容赦ないやつだなぁ…………大丈夫?セイバー」
「心配するな、マスター。まだ、やれる」
「もう、自信無くなってきたよ。せめて土御門さんが用事済ますまではかっこいい感じでいこうと思ったんだけどなあ。ちょっと余裕無くなってきたかな」
「なら、マスター。撤退した方が──────」
「ダメ。あいつを土御門さんに合わせるのだけは絶対ダメなの」
「ふーん、それは何故かしら?遠坂の坊や」
銀髪赤目の少女が呻く遠坂を煽るように、不敵に笑った。
拘束服のように大量のベルトが巻き付いた真っ白な服を着込んだ彼女は、まるで散歩するかのように歩き出す。
すぐ隣には女の
彼女からは白銀の鎧と白銀の槍からは万物を貫かんとする気迫が遠く離れていても感じられた。
「私はその土御門って子に挨拶に来たのよ。早く退いてくれると私は助かるわ」
「挨拶ねぇ…………会ってどうするってのさ、アインツベルンとこの木偶人形さん?」
「お友達になるのよ。私、あの子と戦いたくないから」
「はぁ?ちょぉっと何言ってるかわかんないなあ。大体さぁ、聖杯戦争での御三家の衝突は極力無いようにソッチも言われてるはずなんだけど、どう言うつもりさ」
「もちろん聞かされてるわ。間桐と遠坂の所のお坊っちゃんとは関わるなって、それこそ耳が痛くなる程聞かされたわ」
「でも──────────」
アインツベルンは顔を顰めながら、手をゆっくり振り下ろした。
「しょうがないじゃない。私の通る道に立っていたのは貴方よ?」
瞬間、白銀の槍兵の身体が前方へ加速した。
闇夜を駆ける必殺の一線は赤髪の剣士に目掛けて。
その勢いは止まる事を知らない。
「ちょ、セイバー頼む!これ僕も巻き込まれるやつ!」
「はっ、あああああああぁぁ!!」
セイバーは剣の腹を迫る脅威に向け、怒号と共にそれを迎えた。
大きく、そこら一帯を包み込むほどの土埃が広がる。
「私のランサーは最強なの。アンタの軟弱なサーヴァントで太刀打ちできると思わないで」
土埃が晴れると、そこには槍の切っ先を剣で抑えるセイバーの姿と、後ろで尻餅をついた遠坂の姿があった。
ギリギリと両腕を震わせながらセイバーとランサーの両者は武器を押さえつけ合っていた。
「──────もういいよ、やっちゃえランサー」
セイバーが槍を突っ返した直後、容赦なく銀槍による刺突が瞬時に繰り出される。
セイバーはすんでのところで避けるが、間髪入れずに次の一撃が放たれる。
「ぐっ、マスター。どいてくれ、汝を守りながらでは満足に戦えない」
セイバーはかろうじてランサーからの攻撃を受け流しながら、苦しげに喋った。
一連の様子を不思議そうに眺めていた遠坂は、セイバーに言われるとハッと気づいたように身を起こした。
「ごめんごめん。置き土産、やるから……さっ!」
遠坂の手から放られた数個の宝石は対峙する従者の間を舞った。
宝石魔術。
十数年もの歳月をかけて流転した魔力を内包した鉱物は絶大な威力をその身に秘めている。
赤、青、緑、その他諸々、鮮やかな光を撒き散らしながらその宝石は、一時の間を置いた後、爆ぜた。
セイバーはそれを予期していたかのように回避し、険しい表情で再び巻き起こった土埃を睨む。
「わっはー!もったいねー!まだ聖杯戦争始まったばっかだってのにさあ!ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
狂ったように叫ぶ主人を気にかけることも無く、セイバーはまだ見えない土埃の向こうの影に向かって剣を構え直し、静かに告げる。
「マスター、今のままでは仕留めきれない。宝具の許可を」
「宝石使ったってのに、真名まで明かすってか…………まぁ、ここで倒せればいいしなあ…………うーん」
少しずつ、槍兵の姿が露わになる。
「よし!いいよ、許可しよう!」
「マスター、感謝する──────」
土埃の帳を破り、銀装の槍兵が神速の一刺を放つ。
セイバーはそれに応じず、紅刃の剣を地面に刺し、かくて述べた。
「──────