青年が桜並木の坂道を駆け上がる。黒髪のオールバックに黒い目。頬にはナイフに斬られたような傷跡。
見た感じ、不良っぽい感じがする。
暫くすると校門が見え、その側にスーツの上からでもわかる筋肉質の男性が立っていた。
「おはようございます。西村先生」
「おはよう高町、振り分け試験残念だったな」
「いいですよ、気にしていませんし。寧ろ退学になってもおかしくないんですけど。」
振り分け試験の時、隣に居た幼馴染みが突然倒れ、心配したところ担当教師が俺自身を注意した。
その教師は倒れた彼女を放置したので、少しキレた俺は理由(という名の言い訳)を言って思いっきり男性の大事な急所を蹴って彼女を背負い、荷物を持って退室して保健室に向かった。
「それについてはあの後、別の生徒からその教師に脅迫されていると報告があったてな。緊急職員会議を開いて尋問したんだ。」
「で、どうなったんですか?」
「案の定、白を切っていたが匿名の情報が入ってな。恐喝罪その他諸々の余罪で懲戒免職だ。で、高町は。」
「3日間の謹慎処分ですか。」
まあ仮にも教師に暴力を振るったから良くて停学、悪くて退学だと覚悟していたんだがな。運がよかったんだな。
「高町、お前の行動は少し暴力的だ。だが、人の為に行動するのはいい事だ。誇ってもいいぞ。」
と西村先生は微笑んでくれた。
補習室の鬼と恐れられているが、実は生徒思いで俺が尊敬する数少ない教師だ。
他にも理由があるんだけどな。
「暴力的なのはどうかと思うのだがな・・・」
「アハハハ・・・」
「それはさておき。ほら、クラス分けの封筒だ・・・・結果は言わずもがな・・・」
「途中退席しましたからね。」
俺は制服の内ポケットからペーパーナイフを取り出し、封筒を開けた。
『高町 零児 Fクラス』
「そのナイフ、持ってきていたのか・・・」
「形見ですからね・・・」
このペーパーナイフは死んだ親父の形見だ。形は短刀みたいな形をしている。
「一応危険だから預かっておくぞ。」
「はい、お願いします。」
他の人には預けられない大切なもの、でも西村先生は凄く信頼できる先生だから、俺の親父の形見を安心して預けることができる。
「大変だとはわかるが、頑張れよ。」
「はい、頑張ってきますよ。」
受け取った封筒を胸ポケットの中に入れ校門を潜ろうとした。
「(あいつを保健室に連れて来てくれてありがとう。)」
西村先生は小声でそう言った。
「(どう、致しまして。)」
・・・・・・・・・・・・とりあえず、言いたいことを言わせてくれ。
「学園生活に思いを馳せていたよ。Aクラスは豪華なホテルかと思ったよCクラスは中々の教室だよFクラスは酷すぎるだろ!」
あまりの廃屋で言っちまったよ。・・・・どんなに健康な奴でも体調崩すぞこれ。
「零児君おっはよう~!」
「あ、おはよう
腰まで長い紅のストレートヘアー。側頭部は編んで黒いリボンを付けて垂らしている
先程話にあった幼馴染みだ。
「零児君。あの時、迷惑かけてごめんなさい。」
「構わないよ。当たり前の事をしただけだよ。」
「そう?・・・ありがとう。」
「お、おう、どういたしまして。」
長年彼女と一緒にいるけど・・・この笑顔はやっぱり慣れない。なんかドギマギしてしまう。
「それじゃあ教室に入りましょ。」
「そうだな。」
俺は扉を開けながら大きな声で挨拶をした。
「おはようございm「早く座れウジムシ野郎」・・・・。」
なんでいきなり罵倒されなきゃアカンの!失礼な教師だなオイ!
俺は罵倒したやつの姿を見た。そいつは教師ではなく俺と同じ学生だ。赤いライオンヘアーで獰猛な目。正に野生児だな。いや、ゴリラか?
「ちょっとあなた!いきなり失礼じゃないですか!!!!」
「す、すまん。てっきりあいつかと・・・」
「どちらにせよ罵倒する気満々だったんですね!あなた、そこに正座してください。」
「え、なんで正座しなくちゃいけねぇんだよ!それに俺には坂本雄二って言う名があるんだ・・・」
「つべこべ言わずに正座しなさい!!!」
「は、はいっ!」
彼女の威圧に負けて雄二というらしい学生は美鈴に叱られている。あいつの説教はきついぞ~。まぁ時間が無いことだから止めるか。
「美鈴、説教はやめとけ。先生に迷惑掛けることになるぞ。」
「うっ、そうですね。・・・雄二さん、もうそんな事を言ってはいけませんからね。わかりましたか?」
「わーったよ。」
雄二は反省はしていないらしい。一応彼女を宥めかせて席に移動した。雄二曰く席は決まってないらしい。そんなFクラスで大丈夫か!?不安でしゃーないんだが・・・
「それにしても酷い設備ですね。・・・畳腐ってそう・・・。」
彼女の言うとおりだ。隙間風が吹く教室、脚の折れたちゃぶ台、綿のない座布団、腐ってそう・・・いや絶対腐っている畳。これじゃあ身体の弱い人は直ぐに体調を崩すぞ。
「あの、零児君。さっきから視線を感じるのですが・・・気のせいでしょうか?」
「美鈴、気のせいじゃないぞ。」
さっきからクラスの男子が睨み付けている。その声をよく聴くと・・・
『なんだあいつ・・・いちゃいちゃしやがって・・・』
『恨めしい、恨めしい。』
『女子が増えることは喜ばしい事だが隣にいる彼奴は絶対許早苗だ!』
『ぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱる』
只の嫉妬か・・・最後から二人目はなんかネタ使ってるし、最後の奴はなんか言ってるし…
「男の嫉妬程、醜いものはありませんね。」
「同感。・・・・なあ美鈴、少し寝不足だからちと寝るわ。」
「自己紹介の時には起こしますね。」
「頼んだ・・・zzZ」
そのまま俺は微睡の中に落ちて行った。
「ーーーーて、--きて、起きて零児君!」
「う・・・もう自己紹介か?」
「丁度始まったところですよ。」
「そうか、起こしてくれてありがとな美鈴。」
「どういたしまして。」
だからその笑顔はやめてくれ、恥ずかしいから・・・
そんな事を考えていると声が聞こえてきた。
「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる。」
見ると一瞬女の子と間違えそうな男の子がいた。なぜか年寄口調だ・・・。
「という訳じゃ。1年間宜しく頼むぞい。」
・・・・ふむ、微笑は正に女の子っぽいが、美鈴の方が上だな・・・って何考えているんだ俺は!?
「……土屋康太。趣味は写真撮影。」
あいつは確かムッツリーニと呼ばれている男だったな。前は盗撮して写真を売っていたが、俺が一度ここの学園長に頼まれカメラを探したが、偽物を掴まされて一敗喰わされた記憶がある。一度停学寸前になったがこの隠しスキルは監視カメラとして使えます、と彼を擁護してトイレと更衣室以外に監視カメラとして使わせることで停学されずに済ませた。
この後、盗撮より許可を得て撮った写真の方がよく売れるんじゃないかという俺のアドバイスを実践したところ売上が上がったらしい。一応商売として被写体と学園側にいくらか払っているようだ。
あの頃からあいつとは交流があったな。
「島田美波です。海外育ちで、日本語は話せるけど読み書きは苦手です。」
美鈴以外の女子がいたようだ。確かドイツ育ちで英語が苦手らしい。
「趣味は吉井明久を殴ることです♪」
なんかバイオレンス少女が出たぞオイ!・・・・これは危険視だな・・・。
それから数人の紹介が終わって次の男子は・・・
「僕は吉井明久です。気軽に『ダーリン』って呼んでくださいね♪」
「美鈴!耳塞げ!」
「はいぃっ!」
『ダァ~~~~~りぃーーーンっ!』
野太い声の合唱。耳を塞いでおいて正解だったな。
「ごめんなさい、忘れてください・・・」
明久ってやつ、アプローチの仕方ミスったな・・・乙!
「なぜだろう・・・変な慰めをされたような気が・・・?」
こいつ、勘が鋭いな…認識を改めたほうがいいな・・・
ん?よく見れば・・・どこかで会った気が?
次は・・・美鈴だ。さっきみたいにヘマするなよ・・・
「私の名前は西村美鈴です。趣味は運動です。これから宜しくお願いします!」
うん、無難な自己紹介だな・・・
『女子キタアアアアアアアアアアアアッ!』
うるせーーーー!女子に飢えてんのかこいつら!?
『し、質問です!』
すると一人の男子が手を挙げた。
「はい。なんですか?」
『まさか・・・父親って・・・』
「ええ、私の父親は皆さんご存知の西村先生ですよ。」
『えええええええええええええええええええええええええええええええええええ!あの鉄人の娘さぁぁぁぁぁぁんっだってええええええ!』
そう、こいつの父親は西村先生だ。西村先生とは家が隣でご近所付き合いがある。しかも俺の死んだ父親とは、幼馴染みだった。
「どうりであの叱り方が鉄人に似ていると思ったらそういうことかよ・・・」
雄二もどうやら納得していたようだ。
「そういう訳なので、皆さんよろしくお願いします!」
『は・・・・はぁ~い・・・・・・』
・・・・皆、なんでこんなに落ち込んでいるんだ?まぁいい、次は俺か。
「俺の名は高町零児。趣味は運動。美鈴とは幼馴染みだ。」
『異端審問会ーーーーーーーーーー!』
「はうぇい!?」
自己紹介をしたら土屋と木下と雄二と島田以外の男子生徒が変なローブを見に纏い鎌を持っていた。見た感じ、俺の嫌いな差別集団によく似ている。
『近郷、罪状を述べよ』
『はい、こやつ高町零児(以下ゼロと表記)は西村美鈴(以下鉄人の娘と表記)は朝から登校し、教室内で駄弁っており幼馴染みという関係で・・・』
『完結に述べよ。』
『幼馴染みで羨ましいからであります!』
なんじゃその理不尽は!?バカかこいつ等・・・
『うむ、簡単でよろしい・・・皆の者、判決は』
『「『死刑!死刑!死刑!』」』
『よってゼロは屋上から紐なしジャンパーの刑に処する!』
紐なしバンジーって・・・死ぬじゃねえか!
『お前たち、ゼロを捕まえよ!』
『『うおおおおお!』』
「くそっ!」
鎌を持った集団が俺目掛けて襲いかかってきた。この人数じゃあ撃退は無理だ・・・逃げるか。
俺が逃げ道を探そうとしたがもう囲まれていた。
『大人しく、お縄を頂戴しろ―!』
一人が縄を持って飛びかかる。それを合図に他の奴らが向かってきた。
諦めかけたその時だった。
「「
『ぎゃああああ!』
『ごふぇえ!』
誰かが飛び蹴りを喰らわせ、蹴られた二人は他の集団を巻き込んで倒れた。
「つ、土屋!それに・・・吉井さん?」
そこに居たのは土屋と吉井だった。土屋が俺を助ける理由は何となくわかる。が、何故吉井さんが?
「まさか零児・・・僕の事忘れちゃった?」
ん?忘れた?
「ほら、武術道場で一緒だった明久だよ。」
「・・・・・・・あああああ!お前、あの明久か!」
「やっと思い出したんだね・・・遅いよ・・・」
「わりいわりい。なんせ五年ぶりだからな。」
思い出した。小学生の頃、同じ道場で競い合った友達だった。
『吉井!土屋!歯向かう気か!』
変な集団の男性の一人が二人に向かって叫ぶ。
「僕は喧嘩をやめさせるだけだよ。ただ・・・」
「・・・零児を襲うなら容赦は・・・」
「「しないだけさ!」」
・・・なんだこの展開・・・。どこかの冒険ものですか?
「それに僕は君たちをやめさせなきゃいけないからさ。」
『どういう意味だ・・・数の暴力には勝てんぞ!』
「…どうだか・・・忠告しておく、直ぐに静まったほうがいい。」
『それは一体・・・』
『ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!』
すると奥から悲鳴が聞こえた視線を向けると美鈴が須藤にアイアンクローを決めている所だった。
「美鈴さんのアイアンクローだ・・・・・あれは痛いってレベルじゃないよ・・・・」
「…遅かったみたいだな。」
美鈴の握力はあの細い腕では出せないくらい高い。
『か、会長!?鉄人の娘の握力はどれくらいあるんだ!』
「美鈴の握力は60あるぞ。リンゴなら簡単に握り潰せるぜ。」
『なにいいいいいいいい!』
まあ彼女は武術を習っているし、親譲りの力があるからな。・・・さて、俺も負けていられないな。
「3人がいいとこ魅せたんだ・・・俺もなんかやらねえとな。美鈴!こっちに投げろ!」
「解りました!」
美鈴は片手で須藤を投げた。向かってくる須藤を俺は肘で彼の腹を突く
「
次に後ろに回り込み、背中を打ちつける
「
そして前にまた周り込み、腕に力を溜め、か〇は〇波みたいに前に突き出す。狙いは彼の腹と固まっている集団!
「はああああっ!
吹き飛ばされた須藤は固まっている集団に激突した。一応手加減したから痣くらいで済むだろう
「これに懲りたらもう変なことをするんじゃないぜ。」
変な集団は渋々自分の席に戻った。土屋と吉井も戻っていった。
・・・・まだ数人こちらを恨みの目で見ているが美鈴が道端で拾ったそこら辺にある石を握り潰すと直ぐに前を向いた。
ん?あの石?俺が今日拾った。
「では須藤君ではなく、ドアの前に立っている姫路さんからどうぞ。」
「は、はい!」
先生はさっきの乱闘の後だというのに物怖じせず、淡々と次の人にまわす。あの先生、肝が据わっているな。
それと、さっきからドアの前から立ち往生していた女の子が自己紹介を始めた。
名前は姫路瑞樹。俺と美鈴同様、試験中に途中退室したようだ。
その女の子は明久と雄二の間に座った。明久が話しかけようとすると雄二がそれを遮る。
「あれは確信犯ですね。」
「そうだな・・・あ。明久が泣いてる。」
「なんか、変な事でも言われたんじゃない?」
「だろうな」
その時、注意した先生が教卓を叩くと音をたてて崩れ去った。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・この設備の酷さはヤバいですね。」
「ああ・・・・・後で学園長のとこに行くか?」
「賛成です。」
先生が出ていくと、明久が雄二を連れて教室の外に出た。明久の事だ、多分さっきの姫路ちゃんの為にする気だろう。なら俺は、それに参加するだけだな。
オリキャラ説明
高町零児(たかまち れいじ)
外見 本文参照
文月学園に通う学生。幼い頃から武術を習っており、8人位なら相手にできるがそれ以上は無理。
西村先生とは家が隣で、死んだ父親が幼馴染みだった為、ご近所付き合いがある。美鈴とは幼馴染みである。
明久とは中学に上がる前まで道場で競い合ってた仲である
西村美鈴(にしむら めいりん)
容姿 東方projectの紅美鈴
零児の幼馴染み。父親が西村宗一である。趣味が運動と、親の遺伝子を受けている。
強さは美鈴>=零児=明久
感想にてご指摘がありましたので、美鈴の握力の強さを変更いたしました
ご迷惑をおかけしました。