緋弾のアリア~白銀と緋色~   作:ほにゃー

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10弾 最初で最後の任務

スマホのアラームで、コウが目を覚ます。

 

目を覚ます際に、時計を止めようと伸ばした手がスマホに付けたレオポンストラップを握り締めていた。

 

握り締めたレオポンをしばらく眺めると、うるさいアラームを止め、起床する。

 

「あ、そう言えば昨日、平賀さんに銃のメンテ頼んでたんだっけ」

 

身支度を整えていると、ふと愛銃のAMTをメンテに出していたことを思い出し、コウは舌打ちする。

 

「仕方ないか、今日はこっちを持ってくか」

 

コウはベットの下からガンケースを取り出し、そこに収められた二丁の拳銃を取り出す。

 

蒼と紅色のコルト・ガバメント。

 

コウには師匠が一人いる。

 

コウだって元からSランク武偵だったわけじゃない。

 

地道に場数を踏んで、努力を重ねていったからこそ、Sランクになったのだ。

 

そして、そんな自分を師事してくれた武偵が一人いた。

 

このコルト・ガバメントは、〝迅雷”の二つ名をもらった時に、その師匠から貰った物だ。

 

特殊な金属を使っているらしく、世界に二つとない銃とのことで、コウはその豪華さに気後れし、あまり使っていなかった。

 

常日頃からにメンテをし、試し打ちも定期的に行っているので使うには問題はなかった。

 

マガジンに45ACP弾を込め、装填する。

 

ガバメント用のホルスターを取り出し、それを装備する。

 

「そう言えばアリアの銃もガバだったな…………あの体で、よくもまぁ、反動の強いコイツを撃てるよな」

 

完全に「お前が言うな」状態だが、今ここにそれをツッコむべきキンジはいない。

 

準備を終えると、コウはいつもの健康食品を一つ口にくわえると、外に出る。

 

雨が降っていたので、ポンチョを被って学校へと向かう。

 

傘を使うのもいいが、コウはいつ何処で襲われるかもわからない状況で、両手が塞がるのは避けたいため、雨の日でもこうして両手が常にフリーになるようにしている。

 

学校に向かって歩いていると、スマホに着信が入る。

 

相手はアリアだった。

 

「どうした?」

 

『コウ!アンタ、今何処にいるの!?』

 

「どこって、今ちょうど強襲科(アサルト)女子寮の前通ってるけど」

 

『なら、強襲(アサルト)棟も近いわね!すぐにC装備で女子寮の屋上に来なさい!』

 

「すぐに行く」

 

通話を切ると、コウはすぐに強襲(アサルト)棟に入り、C装備に着替える。

 

「コウ!」

 

「キンジ、お前もアリアに呼ばれたのか?」

 

「ああ、事件らしい。小さな事件だといいんだが………」

 

「C装備の時点で、それは諦めるんだな」

 

装備を終えると、コウとキンジは足早に女子寮へと向かう。

 

屋上につくと、アリアもすでにC装備に身を包み、無線機で何処かに連絡を取っていた。

 

そして、屋上の扉近くに座り込んでるヘッドホンを付けた少女と、その隣に立つ少年に気づく。

 

少女の名前はレキ。

 

キンジとコウの同級生で、狙撃科(スナイプ)のSランク。

 

少年の方は、志木縞嶺二。

 

レキと同じ狙撃科(スナイプ)のAランク。

 

だが、実質ランクはS同然で、レキとコンビを組んでる狙撃手でもある。

 

「嶺二、お前も駆り出されたのか?」

 

「よぉ、コウ。レキと登校中に神崎から連絡が入ってな。俺とレキに後方支援(バックアップ)を頼んできた」

 

「レキ一人でも十分なのに、お前もいるんだったら安心して背中を任せられるよ」

 

嶺二の胸をたたき、コウは笑う。

 

それと同時に、アリアも通信が終わる。

 

「時間切れね。……これだけの戦力なら十分だわこの5人パーティーで追跡するわよ」

 

「追跡って何をだよ?そもそも、何の事件だ?」

 

キンジがアリアに質問をする。

 

「バスジャックよ。アンタの寮の前に7時58分に停留した武偵高の通学バスがね」

 

「なっ!?犯人は車内にいるのか!?」

 

緊迫した状況だと理解し、キンジが尋ねる。

 

「分からないけどたぶんいないでしょうね。今回のバズジャックの犯人は、あんたの自転車に爆弾を仕掛けた犯人と同一犯。武偵殺しの仕業だわ」

 

「随分と情報が早いな。どうやって分かった?それと、警視庁と東京武偵局の方は?」

 

今度はコウが尋ねる

 

「奴は毎回減速すると爆発する爆弾をしかけて自由を奪い、遠隔操作でコントロールするの。でも、その操作に使う電波にパターンがあって、あんた達を助けた時もその電波をキャッチしたのよ。それと、警視庁も東京武偵局も動いてるわ。でも、相手は動き回るバスよ?準備が必要だわ」

 

「ちょっと待て!武偵殺しは逮捕されたはずだぞ?」

 

「それは真犯人じゃないわ。とにかく!事件はもう、起きてる!作戦目的は車内にいる全員の救助!」

 

「リーダーをやりたきゃやれ!でもリーダーなら状況をもっとちゃんと説明しろ!どんな事件にも武偵は命を賭けてんだぞ!」

 

「武偵憲章1条仲間を信じ仲間を助けよ!被害者は武偵高の仲間よ!それ以上に説明はいらないわ!」

 

「お前、そんな事件の背景もわからずに、どう動けって………」

 

「キンジ、諦めろ」

 

コウがキンジを止める。

 

「今ここで、そんなこと言い合ってもしょうがないだろ。この話は、この事件を片付けてからにするぞ」

 

「コウ………ああ、わかった」

 

キンジは大人しく引き下がる。

 

同時に、上空から一台のヘリがやって来る。

 

「こんなものまで用意するとは、流石はSランクでリアル貴族様。スケールが違うな」

 

「なんだったら、跪いて今までの私に対する侮辱を謝ってもいいのよ?」

 

「はっ、言ってろ。……でもまぁ、しくじりそうな時ぐらいはフォローしてやるよ」

 

「その言葉、そのまま返してあげるわよ」

 

そう言って二人は互いの顔を見ずに拳をぶつけ合う。

 

「「任務開始(ミッションスタート)だ(よ)」」


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