キンジが運転する自転車の後ろに座りながら、コウは風を感じていた。
ぼーっとしながら風を身体に浮けていると、背後から何かが近づいて来る音に気付いた。
「キンジ、後ろから何かが近づいて来てる」
「何かって何だ?」
コウは後ろを向き、その何かを確認する。
そして見えたのは無人のセグウェイと、それに取り付けられたスピーカーにイスラエルIMI社傑作の
UZIの銃口が二人に向けられる。
「その チャリには 爆弾が 仕掛けて ありやがります」
スピーカーからネットで有名なボーカロイドで作った人工音声が流れる。
予想外の事にコウとキンジは思わず固まる。
「チャリを 降りやがったり 減速 させやがると 爆破 するで やがります」
「キンジ」
「なんだ?」
「絶対、減速するなよ」
その瞬間、キンジはあらん限りの力で自転車を加速させる。
「助けを 求めたり ケータイを 使った場合も 爆発 するで やがります 」
「なんなんだよこれは!?」
「つまりあれだろ!武偵殺しの模倣犯だ!」
コウはそう叫ぶと、自転車のサドルを調べる。
そこには確かに爆弾があった。
「キンジ!どうやら本物だ!イタズラなんかじゃない!」
「マジかよ!」
キンジは叫びながらも自転車を漕ぐ。
「爆弾は!?」
「型まで分からないけど、爆弾はプラスチック爆弾!大きさから考えるに…………自転車どころかビルの解体にも使える量だ!」
「くそっ!なんでこうなるんだよ!コウ、なんとか出来ないのか!?Sランク武偵だろ!?」
「Sランク武偵が皆万能と思うな!確かにこの程度なら解体できるけど、自転車に乗りながら不安定な足場で解体なんか出来るか!それに、解体をしようとしたら爆発する可能性もある!てか、それ言ったらキンジだって元Sランク武偵だろ!なんか解決策考えろよ!」
「Sランクじゃない!
「ああ、そうだったなコンチクショー!」
コウは叫びながら頭の中で解決策を考える。
「キンジ、取り敢えず今は、周りへの被害を出さない方向で考えよう。この時間なら、第二グラウンドが空いてるから、そこまで移動するんだ」
「わかった」
キンジは自転車を全力で漕ぎながら、自転車を第二グラウンドまで向ける。
そして、第二グラウンドに差し掛かったその時、二人は信じられない物を見た。
第二グラウンドの近くにある建物。
その屋上に一人の少女がいるのを。
何をしてるのかと思ったら、少女は突如、屋上から飛び降りた。
その行動に、キンジはペダルを踏み外しそうになるが、なんとか持ちこたえる。
少女は事前に滑空準備をしていたパラグライダーを広げ、コウとキンジ目掛け降下してくる。
「バ、バカ!来るな!この自転車には爆弾が!」
キンジがそこまで言い掛けると、少女はパラグライダーを方向転換させ、両足の太腿のレッグホルスターから銀と黒の大型拳銃、コルト・ガバメントを抜く。
「そこのバカ共!頭下げなさい!」
そして、少女は銃を発砲する。
放たれた弾丸は全てセグウェイに当たり、セグウェイは大破し、そのまま横転した。
拳銃の平均交戦距離は7mとされている。
だが、少女のいる位置とセグウェイの距離はその倍以上離れていた。
おまけにパラグライダーと言う不安定場所から、二丁拳銃の水平撃ち。
そんな芸当がコウ以外に出来る奴がいたことにキンジは驚いた。
少女はガバメントを仕舞うと、そのまま二人に近づく。
「ま、待て!この自転車には爆弾が!」
「バカ!」
少女はキンジの頭を踏みつけ言う。
「武偵憲章1条!仲間を信じ、仲間を助けよ!行くわよ!」
そう言うと、少女は二人の頭上を飛び、パラグライダーのブレークコードにつま先を引っ掛け、逆さ吊りの姿勢になる。
「キンジ、ハンドルを離したらすぐに僕に捕まって。そして、何があっても離すな」
「ああ、くそ!昨日見たアニメ映画かよ!」
そして、二人と少女が近づいた瞬間、コウは少女の両手首を掴み、少女はコウの両手首を掴む。
キンジは素早くハンドルから手を離し、コウにしがみ付く。
乗り手のいなくなった自転車は徐々に減速をし、そして、大爆発を起こした。
爆風は三人を巻き込み、三人はそのままグラウンドの隅っこにある体育倉庫へと吹っ飛ばされる。
パラグライダーは途中で木に引っ掛かり、もぎ取られ、三人はそのまま体育倉庫の扉を破壊し、中に突っ込んだ。
「い、イテェー………!」
キンジは地面にうつ伏せになりながら言う。
体育倉庫に突っ込んだと同時に、キンジはコウの腰から手を離してしまい、そのまま体育倉庫の地面に叩き付けられた。
キンジは今でこそ、
そこで鍛えられた肉体のお陰で、地面に叩き付けられても平気だった。
「そうだ!コウとあの子は!」
二人の事が気になり、キンジは両手に力を込め起き上がる。
そして、コウと少女が自分の真下にいることに気付いた。
それも至近距離で。
「可愛っ……!」
言い掛けた言葉をキンジは飲み込む。
(あ、危ない……思わずコウの事を可愛いと思っちまった………)
キンジは額の冷や汗を拭き、息を吐く。
(自分の親友を可愛いと思うとか……どうかしてるだろ。そうだ、これは不意打ち。不意打ちで思わずそう思っちまっただけだ………てか、この子とセットだと、凄い絵になるよな………)
「へ、変態!」
コウと少女のセットが思いの外いい感じだったと思ってると、突然アニメ声が響いた。
下を向くと、先程の少女が顔を真っ赤にしてこっちを見ていた。
キンジは何故少女が変態と言ってるのかを考えた。
片方は身長150以下で小学生にも見えるコウと小学生(?)もしくは中学生(?)の少女を押し倒してるように見えるキンジ。
そして、顔が至近距離。
見方によってはキンジが二人を襲ってる様にも見える。
「いや、違っ!?誤解だ!」
キンジは誤解を解こうと、声を上げた。
その瞬間、突如UZIを搭載したセグウェイが七機現れ、銃声が響き渡る。
「キンジ!」
「伏せなさい!」
すると銃声で目を覚ましたコウとその少女がキンジを押し倒し、AMTとガバメントを抜く。
「な、なんなんだアレは!?」
「決まってるでしょ!武偵殺しの玩具よ!」
少女はそう叫び、ガバメントを抜いて、発砲をする
コウもAMTを発砲し応戦する。
そんな中、キンジは一人違う事を感じていた。
(コウって小さくて華奢な感じがするのに、意外と胸板しっかりしてるんだな……って、俺は何を考えてるんだ!てか、この子の胸が顔に………!だけど、この二人をセットで見ると、本当にいい絵になるし、二人の匂いが合わさってなんかいい感じに…………!)
コウと少女に押し倒されながらキンジはこんなことを思っていた。
そして、自分の中の血流が加速するような感覚を感じた。
コウと少女の応戦でセグウェイは一旦引き上げる。
「終わったのか?」
コウがマガジンを変えながら、少女に尋ねる。
「いいえ、一時的に追い払っただけよ。すぐにまた来るわ」
少女はコウの質問に答えながらマガジンを変える。
「そうか、なら上出来だ」
「へ?」
キンジは突然二人を自分の腕に乗せるようにして持ち上げ、立ち上がる。
「よく頑張ったね。ご褒美に、二人をお姫様と王子様にしてあげよう」
「なっ!?」
「………え?」
少女はキンジの突然の行動に混乱し、コウは何故?っと思った。
二人をマットレスの上に置き、二人の手から銃を取り、ホルスターに仕舞う。
「あ、アンタ!急になんなのよ!?急に態度が変わって………!」
「やれやれ、ここは死角だって言うのに。弾が勿体ない」
戻って来たセグウェイが体育倉庫の中に向け、UZIを発砲してるのを見て、キンジはそう言って、入口に向かう。
「危ない!撃たれるわよ!」
「二人が撃たれるよりマシさ」
「だから!なんでさっきから急にキャラ変えてんのよ!なにするつもり!?」
「二人を守る」
キンジはベレッタを抜いて笑う。
その光景にコウは、キンジに対して引いた顔をする。
銃声が収まり、キンジは七機のセグウェイの前に姿を現す。
キンジを認識したセグウェイは、キンジの頭部に向け発砲。
(狙いは頭部。正確だな………だが!俺には当たらない!)
キンジは弾丸を躱すと、ベレッタを向け、弾丸を七発発砲。
弾丸は寸分の狂いなく、UZIの銃口に吸い込まれるように飛び、UZIを破壊した。
ベレッタをホルスターに戻し、キンジは体育倉庫に戻る。
すると、少女は何故か跳び箱の中に隠れていた。
「べ、別に感謝なんかしないわよ!あんなの、私一人でどうにもなったし………ほ、ホントのホントなんだからね!そ、それに!アンタ、私とソイツの事、襲おうとしたでしょ!これは犯罪よ!」
少女は爆風の衝撃でホックの壊れたスカートのファスナーを締めようとする。
それを察しだキンジは、自分のズボンのベルトを取り、少女に渡す。
「それは悲しい誤解だ。俺は高校二年になるんだ。幾ら何でも、年の離れた中学生を襲う訳ないだろ。それに男にも興味は無い。コウは俺の友人だ。友人の、それも男に対してそんなことするわけないじゃないか」
「わ、私は!中学生じゃない!」
少女は地団駄を踏んで言う。
「キンジ、幾ら何でも失礼だろ」
見かねたコウがキンジに注意する。
「その子はインターンで入って来た小学生だよ。ごめんね、えっと………アリアちゃんか」
コウは少女の胸元にあるネームプレートを見て、名前を確認する。
「アリアちゃんは凄く優秀なんだね、将来が楽しみだ」
コウは腕を組んで頷く。
「………助けるんじゃなかった」
少女もといアリアは震えながら、ゆっくりとガバメントを抜く。
「私は………高二だ!」
そして、コウに向かって発砲する。
「うおっ!?」
コウは後ろに下がり、足元に撃たれた弾丸を回避する。
すかさずコウはアリアに接近し、銃を持ってる手を掴み、そのままトリガーを押す。
ガバメントから残りの弾が全部撃たれ、スライドがオープン状態になる。
すると、アリアは銃を捨てると、そのままコウを背負い投げで投げ飛ばす。
「徒手格闘……!バリツか!」
コウは一瞬でアリアの使った技がバリツだと分かり、地面に着地する。
「逃がさないわよ!私を侮辱したこと、後悔させて………あれ?」
アリアはマガジンを交換しようとスカートに手を入れるが、マガジンが見当たらず首を傾げる。
「探し物はこれかな?」
そう言うキンジの手の中には、アリアのガバメントのマガジンがあった。
「ああー!私のマガジン!」
「ほいっ」
キンジはそのままマガジンを遠くに投げ飛ばし、すぐに回収できないようにする。
「もう!許さない!ひざまずいて泣いて謝っても、許さない!」
アリアは銃をホルスターにしまうと今度は背中から刀を二本抜いた。
「強猥男とそこのチビは神妙に―――っわぉきゃっ!?」
するとアリアは謎の悲鳴を上げて、転ぶ。
地面にはアリアのガバメントの弾、45CPA弾が散らばっていた。
「ごめんよ、ちょっとばら撒かせてもらった」
キンジは45CPA弾を見せながら笑う。
「コウ、行こう」
「あ、うん」
呆気にとられたコウは、頷きキンジの後を追う。
「逃げるな!この卑怯者!」
アリアは刀を杖にし、立ち上がり叫ぶ。
「でっかい、風穴開けてやるんだから!」
これが、後に“
後に“緋弾のアリア”として世界中の犯罪者を震え上がらせる鬼武偵、神崎・H・アリア。
そして、“
硝煙のニオイが漂う、最低で最悪の出会いだった。