休み時間になると、キンジはコウを脇に抱え、教室を飛び出した。
そして、その後をクラスの男子は全速力で追い掛けた。
理由はもちろんアリアとの関係だった。
そういう話題が苦手で嫌いなキンジはとにかく逃げた。
逃げた先は屋上。
ドアの陰に隠れ、キンジはコウを下ろすと一息つく。
「ふぅ、なんなんだアイツは?」
「さぁ、なんだろうね」
「見た感じ
「僕、三学期からイギリスの方で長期間の出張に行ってたから知らないよ。帰って来たのだって一週間前だし。その頃には春休みに入ってたから
そう言ってコウはスマホを操作する。
「凄い女の子の転校生が来たってね。それが、あの子だなんて知らなかったけど」
「不安定なパラグライダーからの二丁拳銃の水平撃ち。しかも、コルト・ガバメントなんて反動の強い銃を片手で撃てる。おまけに平均交戦距離の倍近い距離からの精密射撃。間違いなくSランクだ」
「ピンク髪のツインテールでチビで二丁拳銃と二刀使いで、チビで検索すれば誰かすぐにわかるだろうね」
(今、チビって二回言ったな……………)
その時、屋上の扉が開き、コウとキンジは扉から死角になってる場所へと移動する。
「あれは……うちのクラスの
キンジは
「ねぇねぇ、周知メール見た?」
「見た見た。武偵殺しの模倣犯だってね」
「てかさ、この被害に遭った武偵ってコウとキンジじゃない?」
(流石は武偵高。噂が広まるのが早いな)
キンジは変に納得しながらそっぽを向く。
「二人も不憫だよね。新学期の初日に模倣犯の被害に遭って、おまけにアリアに目を付けられるとか」
「そう言えば、さっき
「私も二人の事聞かれた。特にコウの事。キンジの方は昔
「じゃあ、コウの事は?」
「コウの事は
(言うほど最強でもないんだけど………)
コウはそう思ったが、実際の所、東京武偵高において、コウと互角に渡り合える存在はいない。
唯一可能とすれば、ヒステリアモードになったキンジか、まだ正確な実力の別っていないアリアだろ思われる。
「キンジとか女嫌いなのによりによってアリアとか最悪だよね。アリアってさ、ヨーロッパ育ちだかなんだか知らないけど空気読めてないよねー」
「でもでも、アリアってなにげに男子の間では人気あるみたいだよ」
「あー、そうそう。3学期に転校してきてすぐファンクラブできたんだって。写真部が盗撮した体育の写真、万単位で売れるヤツもあるって聞くし」
「特に水泳とか新体操の奴は高値で売れてるらしいよ」
そんなどうでもいい情報を聞きながら、キンジは思った。
(どうやら、神崎は武偵高の中でも、一際浮いてる存在なんだな)
放課後になると、キンジは再びコウを脇に抱えると、窓から教室を飛び出た。
窓枠にベルトのワイヤーを引っ掛け、地面に降りると走り出す。
全員から逃げ遂せると、キンジはコウを下ろして一息つく。
「今日は散々な一日だ」
「全く持って同意するよ」
「俺は部屋に帰るが、コウはどうする?今日も泊まって行くか?」
「いや、今日は自分の部屋に帰る。また明日」
コウはキンジにそう言い、
基本
何故かというと、
テレビのチャンネル争いから、寝床決め、入浴の順番等々、日常に置いて銃声が止む事はあまりない。
一年の時、チャンネル争い中に、ある生徒の撃った弾がコウの脇腹に直撃した。
その結果、同居人だった二人は教師に泣きついて、部屋を変えてもらった。
それ以降、コウの同居人になる者は現れず、コウは三人部屋を一人で使っている。
何があったのかはコウとその二人しか知らないが、誰一人として何があったのかを語る者はいなかった。
「久々の我が家だ」
コウはそう言うと、鞄と上着を放り投げると、AMTとナイフを取り出す。
AMTを
日課となってる作業を淡々とこなしていく。
最後にマガジンに45ACP弾を込め、銃に装填し、ホルスターに入れるとコウは今朝の事件の事を考えた。
「武偵殺しの模倣犯はなんで僕とキンジを狙ったんだ?いや、もしかしたらキンジだけを狙ったのか?爆弾もキンジの自転車に仕掛けられてたモノだしな………でも、だからと言って僕が狙われてないって訳でもないし」
その時、イインターホンが鳴り、コウは推理を中断し玄関に向かう。
「誰だ?」
扉ののぞき窓から外を見ると、そこにはアリアがいた。
「な、なんでアイツが!?」
コウは、アリアの急な来訪に驚き、後ろに下がる。
「………居留守使おう」
アリアと関わると碌なことが起きないと察したコウは、リビングへと戻る。
それでもインターホンは鳴り続ける。
「うるさいな……」
そう呟きながら、スマホを弄っていると今度は銃声が聞こえた。
「な、なんだ!?」
慌てて玄関に戻り、外の様子を見ると、アリアはガバメントを抜き、防弾製の扉に向かって発砲していた。
「何してんだ!?このチビ女!」
「誰がチビ女よ!てか、居留守使ってんじゃないわよ!こっちは急いでんのよ!」
「だからって銃で部屋の扉を撃つな!」
「だったら、さっさと開けなさいよ!」
そう言うとアリアは、部屋の中へと入って来る。
「あ!勝手に入るな!」
「その荷物!中に入れときなさい!」
アリアはそう言うと、居間の方へと向かい玄関にはコウとアリアの荷物だけが残った。
「なんで僕が………」
コウは文句を言いながら、荷物を部屋の中に入れると居間に向かう。
アリアは部屋の様子を見て、コウに尋ねる。
「コウ、他に人は?」
「皆、僕との同居は嫌だからって僕だけだよ。それで、神崎は一体何の用?用件言ってさっさと帰れ」
「それはアンタの返答次第よ。それと、あたしの事はアリアでいいわ」
そう言ってアリアはコウの方を振り向く。
「コウ!アンタ、あたしの奴隷になりなさい!」