「起きなさい!」
「あぶなっ!」
翌朝、コウの眠りを妨げたのはアリアの蹴りだった。
コウは咄嗟に攻撃の気配を感じ取り、両手をクロスさせ、アリアの一撃を防御した。
「なんのつもりだ!」
「朝ご飯!出しなさいよ!」
「んなもんあるか!朝はご自由に!」
「お腹空くじゃない!」
「すかせとけ!バカ!」
「バカですって!」
コウはアリアと格闘戦を繰り広げながら制服を着替え、装備を整える。
「お腹減った!減った減った減った減った減った減った減った減った減った減った!!」
「あ~もう!うるさい!これでも食っとけ!」
コウは鞄に手を突っ込み、携帯食として持ち歩いてるスティック状の健康食品をアリアの口に突っ込む。
アリアは口に突っ込まれた健康食品をもそもそと食べながら大人しくなる。
「アリア、お前は先に出ろ。僕は後から出る」
「なんでよ?」
「ここは男子寮だぞ。女子のお前と一緒に出たら変に思われるだろ」
「そう言って逃げる気ね!」
「同じクラスの隣の席で、おまけに同じ学科だろ!どう逃げろって言うんだよ!」
「やだ!コウはあたしの奴隷だ!」
そう言ってアリアはコウの腕を掴む。
「は・な・せ!」
「い・や・だ!」
コウはアリアの腕を振りほどこうと、アリアはコウの腕を離さまいと、玄関で再び騒ぎ出す。
結局コウはバスをまたしても逃し、自転車で登校した。
なお、その際にアリアが後ろに乗せろと言って来て、断ったが、このままだと遅刻しかねないと判断し、しぶしぶ後ろに乗せて登校した。
その光景を見て、バスで登校中だった武偵校生たちは何故かほっこりしたそうだ。
これ以上、アリアに付き纏われるのが嫌なコウはなんとかしてアリアから離れようと考える。
武偵高は一時間目から四時間目までは普通の一般校ど同様に普通科目の授業があり、五時間目から専門科目に別れて実習を行う。
本来ならコウも五時間目は
コウはそれを利用してアリアから一時的に離れ、なんとかしてアリアへの対抗策を考えることにした。
最初はキンジにも手伝わせようとしたが、キンジはキンジで既に
「コーウ」
コウが
コウは口元を引き攣らせながらアリアに尋ねる。
「な……なんでここにいるんだ?」
「コウがここにいるから」
「
「あたしはもう卒業に必要な単位は揃ってるもんね」
出鼻をくじかれたコウは膝から崩れ落ちた。
「それで、アンタなんの
「お前には関係ないだろ」
コウはそう言うと、アリアを無視して校門を出る。
「いいから教えなさいよ。風穴開けるわよ?」
「……たっく………麻薬取引現場の取り押さえだよ。0.5単位で報酬十万円。」
「ふーん……ちょうどいいし、アンタの武偵活動見せなさい」
「断る」
「風穴開けるわよ?」
「上等だよ。やれるもんならやってみろ」
互いに睨み合い、喧嘩腰になりながらも結局、アリアも同行することになり、二人は取引現場に向かった。
コウとアリアの二人は取引現場とされる、倉庫に着き身を潜めていた。
互いに一言も離さず、取引の時間を待っていると、その時間が訪れた。
スーツにアタッシュケースを持った男が同じスーツを着た二人の男と共に現れ、そして、今度は外人が三人、アタッシュケースを手に現れた。
男たちは一言、二言会話をすると、互いに持っていたアタッシュケースを交換した。
そして、中身を確認する。
片方のアタッシュケースには札束がぎっしりと入っており、もう一つのアタッシュケースには白い粉が詰められた袋がぎっしりとあった。
「間違いなくクロね」
「ああ。アリア、ここまで来たなら最後まで付き合ってもらうぞ。僕に合わせろ」
「何言ってるのよ?アンタがあたしに合わせなさい」
「はっ……!寝言は寝てから言え………行くぞ!」
そして、コウとアリアはAMTとガバメントを手に、男たちの前に現れる。
「そこまでだ!」
「武偵よ!大人しくしなさい!」
男たちは一瞬驚くが、コウとアリアの姿を見ると、急に笑い出した。
「武偵と聞いてみりゃ、とんだ子供じゃねぇか!」
「こんなチビの武偵がいるとは驚きだぜ!」
「子供は家に帰っておねんねしてな」
男どもは二人を相手にする価値も無いと判断し、笑い続ける。
すると、二人の銃を持つ手の力が強くなる。
「だ、誰が………!」
「あん?」
「誰が子供よ!私は高ニだ!」
アリアは大声を上げ、男どもの足元に発砲する。
「うをっ!?」
「このガキ!」
一人の男が銃を抜き、アリアに向かって発砲しようとしたその瞬間、一発の銃声が響く。
男の銃は弾き飛ばされ、銃がカラカラと音を立てて、滑る様に転がる。
銃を撃ったのはコウだった。
「誰が………ミジンコマイクロウルトラドチビだ!」
もう一丁のAMTを抜き、相手の武装を全て弾き飛ばすと、今度はナイフを抜く。
そして、眼にも止まらぬ早さで次々と男たちの足や手を斬り、戦闘不能にする。
「す……凄い……」
アリアはコウの戦いを見て、そう思った。
何が凄いのかと言われたら答えれないが、とにかくコウの戦いは凄いとしか言い様が無かった。
怒りで我を忘れた様な戦いではなく、怒りながらも頭の中は冷水の様に冷え、冷静で物事に対処している。
そして、何より凄いのはナイフでの近接戦だった。
相手の行動不能を狙い、手と足に狙いをつけ、ナイフを振り、それでいて眼にも止まらぬ速さ。
まさに“迅雷”の二つ名と“
「くっ、くそがっ!?」
その時、倒れていた男が足に隠し持っていた小型の拳銃を取り出し、アリアに向ける。
アリアはガバメントを抜き、反撃しようとするが、相手との位置が悪く、反撃ができなかった。
やむを得ず、防弾制服で弾丸を受けようとしたが、男が引き金を引くよりも早く、コウがナイフを投げ、肩に当てる
そして、そのまま男の顔を蹴り飛ばし、意識を奪う。
「これ以上抵抗しない方が身の為だ。大人しく塀の中で自分の罪を反省するんだな」
「ま、中々上出来だったわ」
犯人たちを全員検挙し、警察の人間に引き渡した後、コウとアリアは帰路についていた。
その途中でアリアはコウにそう言った。
「あれぐらい、褒められるようなことじゃない。むしろ、あれぐらい出来て当然なんだよ」
「そうかもしれないわね。でもさ」
アリアはコウの方を見ながら、そして、笑って言った。
「あたしを助けてくれたとき、少しだけかっこよかったわよ」
それに思わずコウは顔を赤くする。
「………武偵憲章1条“仲間を信じ、仲間を助けろ”。僕はそれに従ったまでだ」
「あっそう」
「………ったく、腹減ったな。僕は飯食って帰るから、お前は自分の部屋に帰れ」
「なら、あたしも付いてくわ」
「付いてくんな。お前はコンビニでももまんでも食ってろ。そして、太れ」
「アンタこそ、カップ麺ばっか食って不摂生になってハゲろ」
口喧嘩をしながらも、結局二人仲よく、学園島にあるファミレス“ロキシー”で、夕食を食べていた。