唖然と眺める真琴の横手に銀のヴェールが現れ、チューリップハットの男がやって来る。
「たった四体では龍騎を始末できないようだな」
男が言い放つと周囲にいくつも銀のヴェールが現れた。それぞれ化け物が出てくると真琴たちを取り囲む。
長政はとっさに真琴を守るべく背に隠そうとしたが、囲まれた状態ではそれもままならない。
「長政、そっち半分は任せた」
「え?」
「半分はオレが何とか…」
何とかすると言おうとした真琴の周囲が突然の爆発に包まれる。
唐突に起きた爆発は化け物を倒した時に生じるものだった。つまり一瞬にして真琴たちを取り囲むすべての化け物が倒されたことになる。
爆風に襲われた真琴だが、マントが勝手に動いてそれらから守ってくれる。やがて土煙が風に流れていくと真琴たちとは別の仮面ライダーがいた。
「…仮面ライダーカブト」
長政がそうつぶやくそばで真琴は見覚えある仮面ライダーを見つめる。チューリップハットの男もまたその仮面ライダーを憎々しげに睨み付けていた。
そんな中で仮面ライダーカブトは平然と真琴たちに顔を向ける。
「やあ、浅日。僕の真琴を守ってくれてありがとう」
「真琴は緋田先生のものじゃ…」
「だけどもうしばらく真琴を預けるよ。僕はこいつを倒さなければならないからね」
長政の反論をかき消して仮面ライダーカブトは男と向き直る。
「真琴を傷付けたことだけは絶対に許されないよ」
仮面ライダーカブトの戦いは真琴たちとは別次元のものだった。
カブトはクロックアップという技を使うことで自分の速度を加速させることができる。むしろ周囲の時間を遅くさせると言ったほうがいいかもしれない。
そして流れの遅くなった時間の中でカブトは敵を攻撃することができるらしい。
近くで爆発が起きる中、真琴は別の化け物を倒していた。
チューリップハットの男をカブトが倒すというのなら、自分は化け物を相手にすべきだろう。そう考えてのことだが、必殺技を使うことができるだけで戦いはとても楽なものになっていた。
むしろマントの変形したコウモリが化け物の攻撃をすべて防いでくれている。それが真琴の大きな助けになっていた。
だが負傷している脇腹が痛みだしたため真琴は患部に手を当てて動きを止める。
傷は信長の手で縫合され、傷口も閉じている。しかし完治していない以上、激しい動きにより出血してしまうことくらいはあるだろう。
そんなことは外科医である真琴も十分に承知している。
「…ったく、しょうがねぇな」
不意に頭上で声が聞こえたため、手元に目を落としていた真琴は視線を持ち上げる。すると長身の仮面ライダーがそばに立っていた。
仮面ライダーは真琴のカードデッキからカードを一枚取り出す。あげく真琴の手をつかむとカードホルダーのそのカードを入れてしまった。
するとすぐにカードホルダーから「サバイブ」という機械音が発生する。
渦巻くような風が流れてマントを揺らし、そばにいた仮面ライダーが半歩下がる。そしてふたりの元へ向かってくる化け物に対して銃を撃った。
銃を撃ち化け物を倒すその仮面ライダーを先ほど長政がディケイドと呼んでいた。銀のヴェールを出すことができる最初の仮面ライダーだ。
そして長政に戦い方を教えただけあって、仮面ライダーディケイドは強かった。
ベルト部分にカードをセットすると「カメンライド」と機械音が発生する。するとディケイドは別の仮面ライダーに変身してその能力を使うことができた。さらに「ファイナルアタックライド」で変身している仮面ライダーの必殺技まで使うことができる。
そうして周囲一帯の化け物をすべて駆逐した仮面ライダーは真琴の元へ戻ってきた。やってきた仮面ライダーを見上げたまま真琴は口を開く。
「仮面ライダーディケイド?」
問いかけた真琴の目の前でディケイドは肩をすくめるだけだった。横に手をかざすと銀のヴェールが現れる。
「……巻き込んじまって悪かった」
少し不機嫌そうな低くぶっきらぼうな言葉を出したディケイドは真琴の肩を押した。あげく銀のヴェールの中へ突き飛ばす。