「いっ……」
突き飛ばされた拍子にバランスを崩した真琴は変身したまま別の世界に転げ落ちた。
強かに背中を打ち付けた真琴は痛みに顔をしかめながらも起き上がる。床に手を当て身体を起こすといつの間にか背中のマントは消えていた。
「何なんだあいつは」
「それはこちらのセリフですよ」
いきなり突き飛ばすとは何事かと憤る真琴に冷静な声が突き刺さる。そのため視線を持ち上げると目の前に三成が立っていた。
「変身した状態で研究室に来ないでください。外から雑菌を持ち込むようなものですよ」
「……あっ、すまない」
「では今すぐ変身を解いてください」
三成に言われるまま変身を解いた真琴は疲れの残った顔でため息を吐き出す。
最初に銀のヴェールへ飛び込んだのは夜中のことだ。それから戦場や海辺、ミラーワールドにも行っている。そのため時間の感覚がおかしくなっている気がした。
立ち上がった真琴は壁につけられた時計に目を向ける。すると時刻は五時を過ぎようとしていた。
「真琴は病室を抜け出して戦いに参加したんですか?」
「あ、ああ…でも守られてばかりでほとんど戦ってない」
時計に目を向けていた真琴は三成の質問に視線を戻しながら返した。すると三成はそうですかとつぶやきながら眼鏡を押し上げる。
「ではとりあえず患部を見せてください。痛みはありますか?」
「少し…」
少し痛むと訴えたところで三成の視線がさらに温度を下げた。呆れた様子を見せた三成はため息を吐きながら「病室へ戻りなさい」と言い出す。
そのため真琴は反論することすら許されず病室へ戻ることになった。
病室に戻った真琴は砂っぽい寝間着を脱いで新しいものに着替えることにした。その間に診察道具を持った三成がやってくる。
「みんなはまだ戦ってるんだよな」
「そのようですね。しかしあなたには関係ない話ですよ」
脇腹の状態を診ながら三成はきつい言葉を返してきた。
そのため真琴は痛みとは別の理由で表情を曇らせる。
「…関係ない、ことはないだろ」
「いいえ、関係ないんです。あなたは仮面ライダーになる予定ではなかったんですから。浅日が言ってませんでしたか? あなたを戦わせたくないと」
「言っていた。でもそれは俺に気を使っただけだろ。あいつは優しいから」
「予定外の者にまで負担を強いるものではありませんからね。ですから明紫波もあなたには何の説明もしませんでした。戦い方もミラーワールドの事も」
「やっぱりあいつ、隠してたんだな」
やはり自分にだけ隠し事をしていたのか。そう思い真琴は淡い怒りを覚える。
自分より後で仮面ライダーになったにもかかわらず幸村のほうが事情に詳しかった。それもおかしなことだと思っていたのだ。
「戦力から除外されて情報も与えられず守られるだけで……俺はそんなに頼りないか」
怒りのあまり手が震えるのを感じながら真琴がつぶやく。すると三成は違いますよと返してきた。
「月城に来たばかりのあなたに守ることを強いるのはどうかと思ったんですよ。そもそも浅日が仮面ライダーになった時、あなたはまだフランスにいましたからね」
人数に含まれなかった理由を聞いた真琴は目を丸めて三成を見つめた。しかし三成は処置を終えるなり話も終えたとばかりに立ち上がる。
「少し休みなさい。興奮が覚めないようなら眠れる薬を処方しますよ」
「……いらない」
薬を処方すると言われた真琴は首を横に振って返した。そうして三成が立ち去ると、ひとり静かな病室内でため息を吐き出す。