仮面ライダーと月城医大   作:とましの

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最終話 仮面ライダーディケイド

季節が冬へ近付く頃には真琴の怪我も癒えて仕事に復帰することができた。あの夜以降、化け物の襲撃もなく月城医大は平穏を取り戻している。

 

早朝、寮を出た真琴は早い時刻だが医大に向かっていた。今日は午後から手術の予定が二件入っている。

どちらも難しいものではないが、患者にとっては命を懸けた戦いとなる。そのため簡単だからと気を抜くことはせず、常に準備万端で挑みたい。

そうして誰よりも早く出勤したつもりが、職員用玄関に早い人間がいた。

むしろあの男なら出勤したのではなく、帰宅していないのかもしれないが。

 

職員用玄関の前にいた光秀はバイクにまたがった若者と何か話をしている。しかし真琴が近付くと光秀がそれに気付いて声をかけてきた。

「よう、早いな」

「オペの準備をしたいから」

「それはご苦労さん」

真琴の返事を聞いた光秀は腕を組んだ姿勢から手を伸ばして真琴の頭を撫でまわす。

その様子を眺めていた若者は笑みを浮かべるとヘルメットを手にした。スクータータイプのその後部座席には段ボール箱が紐で固定されている。

 

「おまえ名前は?」

 

不意に若者から問いかけられた真琴はそれに驚きつつも名前を告げる。すると若者はヘルメットをかぶり肩をすくめた。

 

「大体わかった」

「何の話だ。おまえの名前は? 光秀の知り合いなんだよな?」

名前だけで何がわかるのかと小さな私憤と共に質問を重ねる。すると若者が真琴に目を向けてきた。

 

「門矢士。その外科部長と会うのは初めてだ」

真琴の質問に答えてくれた若者はバイクのエンジンをかける。すると光秀が若者に悪かったなと声をかけた。

 

「長いこと借りたって、本物たちにあやまっておいてくれ」

「気が向いたらな」

光秀と言葉を交わした若者は愛想を見せないままバイクで走り出す。それを見送った真琴はきょとんとした顔のまま光秀を見上げた。

 

「誰なんだ?」

「通りすがりのライダーだよ」

「ライダー…ああ、バイクに乗ってるからか」

真琴自身はバイクに詳しくなく興味もない。しかしバイク乗りをライダーと呼ぶことくらいは知っている。

そのため返したのだが、光秀は笑いながら真琴の肩を叩き歩き出した。

院内へ向かう光秀に真琴も後を追いかけ隣を歩く。

 

「知り合いでもない相手から何を借りてたんだ?」

「今朝の真琴君はやたら質問が多いけど、外科部長さんに興味津々な気分かしら?」

問いかけることを茶化された真琴は顔を赤らめて勢いよく首を振った。光秀はそんな真琴の反応を笑いながらも前方に目を向ける。

 

つられるように目を向けた真琴は不機嫌顔の信長を見た。

「おはよう、真琴」

「ああ、おはよう。信長は当直だったか」

真琴が挨拶を向けても信長の不機嫌な顔は崩れない。そのためどうしようかと頭を巡らせた真琴のそばで光秀が動いた。仕事に戻るからと言いながら立ち去る光秀を眺めていると、不意に手をつかまれる。

 

「おいで真琴、引き継ぎ業務をしてあげるよ」

仕事に戻るらしい信長に手を引かれて、真琴は光秀とは別の方向へ歩き出す。そうして人のいないロビーを歩きながら、真琴は先ほどの若者について考える。

 

「信長、カドヤツカサって知ってるか?」

「仮面ライダーディケイドだよ」

「……は?」

 

しばらく聞かなかった名前を耳にした真琴は驚きのまま信長を見つめる。

すると信長はつまらなさそうな顔を真琴に向けてきた。

 

「仮面ライダーディケイドが気になるのかい?」

「気になるというか……そいつだけ中身を知らないからな。だけどあいつがディケイドだったのか」

 

あの戦場で初めて見た仮面ライダーは幸村や長政を含めて三人いる。けれどディケイドだけ正体がわからないままだった。だから気になっていたのかもしれないが、特に興味があるわけではない。

そう説明すると信長の顔から不機嫌が薄れた。

 

「最後にあいつから巻き込んで悪かったと言われたんだ。だけど俺はあいつに巻き込まれたとは思ってない。カードデッキも鳴滝が落としたものを拾っただけで、誰かに押し付けられたわけじゃないからな。それにあんな化け物が現れたのに仲間を見捨てて自分だけ戦わないたいう選択肢はない」

「あの一件以降、君は月城に馴染んだように思えるね。それの以前の君なら『仲間』なんて言葉は出なかっただろうね」

 

信長の指摘に驚いた真琴は素直に目を丸める。けれどその内容は素直に納得できた。

そんな真琴に信長はさらに言葉を向けてくる。

 

「君は若いから、人の影響を受けやすいんだろうね」

「信長はもう年なのか」

「君が若すぎるという話だよ」

 

真琴の失礼な物言いに、信長は怒ることなく返してくる。あの一件以降変わったと言えば、信長も少し丸くなった気がした。

少なくともあれから真琴はメスを向けられることがない。むしろ怪我をしていたせいか信長からやや過保護な扱いを受けていた。

 

「真琴にひとつ教えてあげるよ」

「ん?」

職員室へ向かうため階段を上がりながら、不意に信長が緋色の瞳を向けてくる。

 

「僕はわりと君のことが気に入ってるんだよ。僕に最も近い人間だからね」

「おまえも天才だからな」

 

同じ天才と呼ばれる人間同士なのだから、近いと言われれば確かにそうだ。そう納得した真琴のそばで再び信長が不機嫌な顔を見せる。

しかし怒る理由のわからない真琴はそれに首をかしげることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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