夏の日差しが照らす下で濃紺と銀色の装備をまとったライダーが化け物を倒す。その様は化け物の出現に恐怖した人々の心に大きな安心を与えた。
しかし装備をまとった瞬間に戦士になってしまった真琴は人気のない場所で変身を解き、酷い脱力感に襲われていた。
子供たちの歓声を受けながら立ち去るのは本意ではないし、戦うことも柄ではないと思えてならないためだ。
「疲れた……絶対無理だ」
こんなことは続けられない。そう呟いた真琴は大きなため息を吐きながら建物へ入る。
すると真琴の目の前に光秀がやってきた。
「お疲れさん」
「…………は?」
唐突な言葉に驚く真琴をよそに光秀は肩をたたくとそのまま肩を組むように歩きだしてしまう。
「光秀まさか……」
「良いからちょっと来い」
知っているのかと問えないまま真琴は光秀に連れられ地下へと向かった。
地下の研究室にやってきた真琴は光秀が三成に声をかけるのを眺めた。PCを見つめたまま動かない三成は、光秀が「ライダーを連れてきた」と告げると視線だけ向けてくる。
「何のライダーなんですか?」
「たぶんナイトだな。真琴が持ってるのもカードデッキみたいだ。なあ?」
語尾とともに光秀の目が真琴へ向けられる。
すべて知っているらしい光秀を前にした真琴は隠すことなく変身に使う四角い物体を取り出した。
ふたりに見えるように差し出すと光秀が「ほらな」と三成に告げた。
すると三成はやけに真剣な顔で立ち上がり真琴の元へやってくる。
「少しお借りしても?」
「構わない。むしろこれが何なのか教えてくれ。ふたりは何を知ってる? コートの男の事も知ってるのか?」
借りたいという三成に手渡しながら真琴は立て続けに問いかけた。
するとふたりは顔を見合わせ、そして三成が話すよう光秀に促した。
そのため光秀は肩をすくめて真琴と向き合う。
「おまえが会ったとかいうヤツは鳴滝っていうんだわ」
光秀の説明はわかりやすいが情報は少なかった。なにせ『鳴滝という謎の男は世界を渡り歩いている。そして鳴滝は仮面ライダーを恨んでいる』という程度の情報しか出てこなかったのだ。
ただ光秀もその程度のことしか知らないらしく、真琴が仮面ライダーになったことにも驚いたと言う。
それでも真琴にとっては、誰かがこの状況を知っているということに安堵した。少なくとも『変身して化け物と戦う』ということをひとりで抱えなくて済むのだ。
「でも知ってるってことはふたりとも変身できるんだよな?」
安堵感とともに問いかけた真琴の視界の中でふたりは顔を見合わせる。
そしてふたりそろって変身できるわけがないと言い放った。
その答えに真琴は眉を潜める。
「だとしたらどうして知ってるんだ?」
鳴滝という男についてなぜ知っているのか。当然抱いた質問を向けた真琴は光秀によって乱雑に頭を撫でられた。
「外科部長さんにもいろいろあるんだよ」
簡単な方法で誤魔化された真琴は光秀から仕事へ戻るよう言われて研究室を後にした。